●読書メモ_純文学(1)



失楽園 失楽園

著者:ジョン・ミルトン / 平井正穂
出版社:研究社
本体価格:1,300円
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不倫のお話ではなく、キリスト教の神と悪魔のお話。サタンの堕天、エデンを追われる人間などを描く、英国詩人ジョン・ミルトンの一大叙事詩。歴史的に言えば、堕天使を美しく描いた初めての作品。極めて壮大で格調の高い文体だが、それゆえ読みにくく、また当時のセンスを踏まえなければ溜飲できない表現も多い。物語自体は壮大なので、ノッてくれば高揚感を覚えるが、普通の人は読んでると疲れる。それでも聖書を読むよりはまだ楽しいので、『創世記』に興味のある人、ルシファー様大好きな人などにはオススメできる。

刺青改版 刺青改版

著者:谷崎潤一郎 / 谷崎潤一郎
出版社:新潮社
本体価格:438円
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《オススメ》谷崎の処女作『刺青』を含む短編集。女性の肌に蜘蛛の刺青を入れてハァハァする刺青師を描く表題作の他、女装して夜の街を走ったりする『秘密』や、4PロリコンホモスカトロSMの『少年』など、何がどう純文学なのか良く分からない。だが、それらのムチャクチャなテーマが谷崎の無駄に美しく格調高い文体で描かれると、妙に妖艶な輝きを放ち出す。悪魔主義文学の輝ける一冊。小学生にこれの読書感想文を書かせてみたい。

君主論 君主論

著者:ニッコロ・マキャヴェリ / 河島英昭
出版社:岩波書店
本体価格:1,300円
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純文学にジャンル分けしていいのだろうか?社会の教科書にも出てくるマキャベリの『君主論』。君主はどのように振舞うべきかを説いた書で、「民に優しく」とか「人を信じましょう」とか、そういう道徳的な観念は無く、あくまで現実的な君主のあり方を説いている(そしてマキャベリはみんなから嫌われた)。「殺られる前に殺れ」「部下に力を持たせるな」辺りが基本。読んでると君主になんかなりたくなくなる。歴史的な書だが、非常に簡潔に書かれているため、無駄に小難しかったりはしない。銀河英雄伝説に出てくるマキャベリスト、オーベルシュタインが好きな人は是非ご一読を。

日蝕 日蝕

著者:平野啓一郎
出版社:新潮社
本体価格:400円
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錬金術のお話。非常に有名な作品で巷でも話題となったが、残念なことにその魅力が分からなかった一冊。錬金術の知識は別に必要ないが、プラトンに関する知識がある程度必要とされた覚えがある。このテの作品は神々しさとか壮大さとか、そういうのを感じなければ単なる意味の分からない作品だと思うが、残念ながらそういうのが感じられなかったので、単に意味が分からなかった。

青春の蹉跌改版 青春の蹉跌改版

著者:石川達三
出版社:新潮社
本体価格:438円
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映画化もされたお話。大学の法学部生で知力・体力ともに優れた『野望の王国』みたいな学生が、司法試験に受かって良いとこのお嬢さんと婚約して、でも他で女の子を孕ませちゃったから、その子を殺して捕まってしまう話。なんか難しいテーマとか、メッセージとかあるのかもしれないが、単に面白いサスペンスドラマ。平易で読み易い。

心理学と錬金術(1) 心理学と錬金術(1)

著者:カルル・グスタフ・ユング / 池田紘一
出版社:人文書院
本体価格:3,200円
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ユングは学術書ではなく文学書であるというのが、僕の持論。様々な症例や文献研究からユングが再構成する世界像の整合性と美しさは圧倒的。どんな文学作品よりも感動できる宗教にも似た酩酊感。多分に神秘主義的色合いを持つので、オカルト好きにも必読の書。ただ、致命的な問題として、難しすぎる。ユングの描く世界の壮大さに心打たれるのが先か、難解な文章に挫折するのが先か。気力・体力共に自信のある人は是非挑戦して欲しい。僕は疲れた。
心理学と錬金術(2) 心理学と錬金術(2)

著者:カール・グスタフ・ユング / 池田紘一
出版社:人文書院
本体価格:3,200円
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秘密の動物誌 秘密の動物誌

著者:ホアン・フォンクベルタ / ペレ・フォルミゲーラ
出版社:筑摩書房
本体価格:2,913円
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尊敬する写真家、ジョアン・フォンクベルタの良く知られた(?)作品。失踪した動物学者の残した新種の動物レポートを掲載した書(以下ネタバレにより反転)……という体裁のフェイク本。火を吐く大トカゲや、足がたくさんあるヘビとか、耳で空を飛ぶ象とか、非常に馬鹿らしく素晴らしい。現実とファンタジーの境を、写真というメディアで以って繋げようとした芸術作品。純文学じゃなくて写真集か。

スプートニク スプートニク

著者:ホアン・フォンクベルタ / スプートニク協会
出版社:筑摩書房
本体価格:2,600円
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《オススメ》同上、フォンクベルタの作品。詳しくアツイ書評はこちらから。米ソ宇宙開発競争時代に宇宙船の事故により帰らぬ人となったソ連宇宙飛行士の知られざる物語(以下ネタバレにより反転)……という体裁を取った、やっぱりフェイク本。本作に登場する死んだはずの宇宙飛行士はフォンクベルタの軍服&宇宙服コスプレ写真。やっぱり、これも純文学というより写真集だよなあ。

くるぐる使い くるぐる使い

著者:大槻ケンジ
出版社:角川書店
本体価格:476円
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《オススメ》大槻ケンヂの短編集。正直、何をもって純文学とその他の線引きをすれば良いのか分からないので、独断によりこれを純文学へカテゴライズしたい(一般的にはSFだろうか)。白眉は「のの子の復讐ジグジグ」で、少女の可愛らしい悪戯心を人類絶滅という全世界規模のスケールで描く。阿鼻叫喚のうちに全ての人間が死に絶えようと、少女の悪戯は悪戯でしかなく、どこまでも可愛らしい。無上のカタルシスに溢れた、最高に気持ちの良いお話。

オーランドーある伝記 オーランドーある伝記

著者:ヴァージニア・ウルフ / 川本静子
出版社:みすず書房
本体価格:2,800円
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架空の英国貴族オーランドーの奇怪な伝記小説。途中で性転換するし、400年くらい生きてるのに36歳だし。オーランドーが英詩のメタファということらしいのだけど、バックグラウンドの知識が無いため、言われないと分からない。400年の歴史経過も英国史によって語られるため、英国史が分からないから全然把握できない。基本的に知識がなければ理解できないが、不思議なことに退屈ではない。何一つ頭に残らず、2行前の文章すら覚えていられないが、読んでいる時だけは高揚感と安定感を覚える変な本。出産時の描写が秀逸。




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