●『君主論』研究_第一章





『君主政体にはどれほどの種類があるか、またどのようにして獲得されるか』

・政体の種類
1、共和制
2、君主制

きょうわ-せい 【共和制】
〔republic〕世襲による君主制に対し、主権が複数者にある政治形態。国家元首や人民の代表者を間接・直接に選出し、主権が人民にある民主的共和制と、少数特権階級にのみ主権がある貴族的共和制・寡頭的共和制などがある。(goo辞書)

くんしゅ-せい 【君主制】
〔monarchy〕君主によって統治される政治形態。憲法などの制度により制約を受ける制限君主制と、君主の意思が何ものにも制約されない絶対君主制とがある。王政。(goo辞書)


・君主政体の種類
1、支配者の血筋が長いあいだ君主として続いてきた世襲の政体
2、新興の君主政体

・新興の君主政体の種類
1、全面的に新しいもの(フランチェスコ・スフォルツァの手に帰したミラノのごとく
※1
2、獲得した君主の世襲政体に付加された増築箇所のようなもの(スペイン王の手に落ちたナポリ王国のごとく
※2

※1 注より。フランチェスコ・スフォルツァは傭兵隊長の息子で、ミラノ公に仕えた。ミラノ公の死後、市民の蜂起によりアンブロジアーナ共和国が成立した後、共和国防衛総指揮官としてヴェネツィア軍と対戦したが、ヴェネツィア軍と密かに手を結び、1450年、共和政体を崩壊させ、ミラーノ公国を再建し、みずから新興の君主となった。マキャベリはスフォルツァを理想的なな君主像として位置付けているらしい。マキャベリにとって、敵と通じ自らの属する共和政体を崩壊させ、自分がトップに立つ君主政体を擁立することは、badではないようだ(?)

上記に関し、ネットを調べて補足。ミラノ公の死後、スフォルツァは後継者に任じられたが、市民の蜂起により共和制となる(君主の座を奪われた形か?)。しかし、その後は結局スフォルツァを支配者に迎えたらしい。スフォルツァを再び支配者とするにあたり、市民側の感情などは不明。たぶんいい気はしなかったんじゃないかと思うけど、推測の範囲を出ない。
ソース:
http://www.ekakinoki.com/m_history/sforza.html
http://ocean-s.hp.infoseek.co.jp/italia/jrh/ita1.html


※2 注より。スペイン王(=フェルディナンド二世、通称カトリック王)はフランス王ルイ十二世と密約を交わしナポリ王国を分割統治するも(1500年)、その後、領有をめぐりルイ十二世と争う。ルイ十二世を破ったスペイン王はナポリ王国を全部手に入れることになる。ナポリの変転については第三章に詳しく書かれている(主にルイ十二世の失敗から学ぶ形で)。マキャベリによれば、スペイン王は理想の君主像らしい。

ポイント
マキャベリが理想的とする君主が登場。フランチェスコ・スフォルツァ、並びにスペイン王フェルディナンド二世。また注によればチェーザレ・ボルジアもそうらしい。


・新たに獲得した支配地の種類
1、それまで君主の下で暮らすことに慣らされている(支配以前も君主政体だった)
2、自由であることに慣れてきた(支配以前は共和政体だった)

・どのように獲得したか?
1-1、他者の軍備に頼って獲得
1-2、自力(自己の軍備)で獲得
2-1、運命により獲得(※3)
2-2、力量により獲得

※3 注によれば「運命」はマキャベリの思想を読み解くキーワードの一つ。今は良く分からないので置いておく。第七章にて詳しく述べられるらしい。


第一章のまとめ

政体――共和制
     君主制――世襲の政体(2)
             新興の政体――まったく新しいもの(6-9)
                         付け加えられたもの(3)

〔カッコ内は詳述される章の番号〕

世襲の政体→この土地はいつも私の一族が君主として君臨しているのです
新興の政体→新しくここを(ここも)治めることになりました

まったく新しいもの→さあ、いまからこの国で君主としてがんばっていくぞ
付け加えられたもの→ウハハハ、また領地が増えたわい。ここもワシの領地じゃー。ワシが君主じゃー。

新しくゲットした新興の政体――今までは君主制だった(4)
                    今までは共和制だった(5)

「新しくゲットした新興の政体」=「付け加えられたもの」

どうやって獲得したの?――他人の軍備に頼った(7)
                  自分の軍備で頑張った(6)
                  
どうやって獲得したの?――運命によって(7)
                  力量によって(6)

注記
第一章は『君主論』第十一章までの流れを示したガイドラインらしい。
以下、参考までに第十一章までの章のタイトルを挙げておく。

2:世襲の君主政体について
3:複合の君主政体について
4:アレクサンドロスに征服されたダレイオス公国で、アレクサンドロスの死後にも、その後継者たちに対して反乱が起きなかったのは、なぜか
5:征服される以前に、固有の法によって暮らしていた都市や君主政体を、どのようにして統治すべきか
6:自己の軍備と力量で獲得した新しい君主政体について
7:他者の軍備と運命で獲得した新しい君主政体について
8:極悪非道によって君主の座に達した者たちについて
9:市民による君主政体について
10:どのようにしてあらゆる君主政体の戦力を推し量るべきか
11:聖職者による君主政体について

第一章に書かれた内容と第二〜八章までが対応しているのは分かる。
注によれば、第九〜十一章は「運命のためか力量のためか」に関わる記述らしい。
なお、訳者は君主論の全体を4つに分け、第一〜十一章を「その一」としている。


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