2003.03.13 update
 FanFiction Novel 「苦労症のレディ」: FINAL FANTASY XI


あたしは眠れなかった。
閉じた瞼を透かして焚火の明かりが赤くゆらめいている。
ケープにくるまって仮眠を取る野宿の冒険者。よくあるコトだ。
しかし。
あたし達が背にする、崩れかけの廃虚の壁の向こう。壁を挟んでいるとはいえ、ごく至近の距離で。
押し殺した喘ぎ声に、重なりあう荒い息づかいと囁きがはっきりと聞こえる。
見張りを引き受けた二人組がそんなモノはそっちのけで愛しあっているのだ。こんな荒野で、しかも一緒に仲間がいるにも関わらず。

「……ぁっ……ぁっ……ああん!!」
堪えきれなかったと思しき明らかなソノ声に、あたしの肩がぴくんと動く。
(んもーあの人達わーー!)
あまりに奔放な仲間の行動に、半ば怒り、半ば呆れつつ、あたしは眠れなかった。


一日中歩いてモンスターと戦って魔法を唱えまくって、泥のように疲れているのに。
眠らなきゃ……と焦っても、背後から聞こえて来る音と気配に、冴えてしまった頭には一向に眠気は現れず。

エルヴァーンの女戦士の艶やかでなまめかしい快楽の喘ぎに、低く通るエルヴァーンの騎士の囁き声が、興奮を滲ませて応える。
そんな二人の興奮と快楽が、壁一枚隔てて寝転ぶあたしにもじわじわと伝染ってきて。
(やだ、濡れてきちゃった)
心臓が脈打つ毎に身体の中心が熱くなってくる。
ぎゅっと目をつぶって、頭の中で「気にしない。気にしない」と唱えるも、耳に入って来る刺激的な音に容赦はなくて。

あたしはとうとう我慢できなくなって、みずからの手を脚の間に伸ばしてしまう。
隣で眠っているはずの相棒に気づかれないように少しだけ脚を開き、ローブの裾を割ってスロップスのボタンを外す。
が、音もなく伸びた手にその腕を掴まれた。驚愕に悲鳴を上げそうになるが、その時は既に別の掌が口を覆っている。
「……っ!!!」
「やはり、起きていたな」
驚愕を解きほぐす優しい声が、耳許に届く。低く、少し唸るように喉を鳴らす、独特の声だ。

「ガウェン……」
ほっと力を抜いた。姿勢を変え、愛しい相棒の広すぎる胸に抱きついて顔を埋める。興奮した顔を、見られたくなかった。
そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、身体を離して顔を覗き込んでくる。
「他人同士の交わりにも、興奮するものなのか?」
解ってて言ってるのか、性を持たないガルカの純粋な疑問なのか、とまれ、あたしの顔は興奮に酔って真っ赤になっているハズだ。恥ずかしいよ……。

「むーー」
流石にハイなんて答えられなくて唸っていると、ガウェンが低く笑った。相変わらず、笑うとちょっと怖い。
「どれどれ……」
外されたボタンの間から、太い指先がするりと分け入って来て、そっと秘所に触れた。
「あ……」
既に溢れる程に濡れていたあたしは、その僅かな刺激でさえ、背を仰け反らせてしまう。
「随分とぬれているな。パーシヴァル」
ふむ。と感心したように低く呟く。
(いつからそんな女たらしに……ガルカなのにっ)
遊び慣れた男の様な相棒の行動に、思わず心の中でツッコミを入れる。
大きな身体に似合わない繊細な動きで、彼の指先があたしの中心をいらう。

「…………っく……ぅ……」
向うに聞こえてしまう。
あたしは指を噛んで必死に声を噛み殺す。
快感が突き抜ける。
「…………ぃ……ぃぃ……ぁっ……」
指先から与えられる鋭すぎる快楽に、浅く荒く息をつく。押し殺した声の代わりに涙があふれる。
涙に気づいた彼が、慌てて手を引っ込めた。
「そうか、声が出せないと辛いのか。すまなかった」
本当にすまなそうに眉尻を下げて、彼は謝った。

狂おしくうずく身体を、あたしはどうすることも出来なかった。
「だめっ、やめちゃだめ……おねがいっっ、やめないで、やめないでっ」
なりふりも構わず懇願する。押し殺した声が掠れてもどかしい。叫び出したい衝動にかられて彼の服を握りしめる。
わずかな戸惑いをみせながらも、彼が愛撫を再開する。
「ぃぁぁぁぁっ……」
悦びに、身体が震えた。
彼は涙をぬぐって、柔らかくキスをしてくれる。
優しすぎるその腕のなかで、あたしはイった。

壁の向うの二人もいつのまにか静かになっていて、あたしは彼にくっついたまま、朝まで眠った。
狩りの途中、小休止して身体を休めるあたしの横に獲物を探しにいったはずの女戦士がつつっとよって来た。
「あれ?レイヴン、獲物枯れてるの?それともプロテス切れた?」
「うふふーパーシヴァルぅ。あなたとガウェンがそーゆー仲だったなんて、知らなかったわ♪」
ひそひそとささやいて、にんまりと笑う。
「やるわねー、相手はガルカよ? よっぽどあなたのコト愛してるのねー」
顔から火が出るとはまさにこの事だ。そして、むふふふと意味ありげに笑うエルヴァーンに、嫌な予感が頭を掠めた。
「だめっ! だめよレイヴン! 彼によけいな事言ったりしたり教えたり手出ししたら許さないからっ!」
奔放な彼女の魔手から彼を守るべく、あたしは回復を中断して立ち上がった。
「ええー、経験豊富なお姉さんが、いろんなワザを伝授し……」
「よけいなコトしなくていいからっ!」
背の高いエルヴァーンをせいいっぱい見上げて凄む。
「なんだ? なんの話だ?」
「なんでもないわっ!」
きっ! と睨みつけるあたしに、レイヴンはアハハと笑って走っていく。
ガウェンが困ったように、ぽりぽりと頬をかいた。





end


パーシヴァル&ガウェンの続編です。
なんつかシヤワセなカップルですよねぇ、ついドンゾコにたたき落したく...(ぉぃ


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