ビッキーもの 著者:ほっけ様
体中が痛かった。
普段優しい瞳はまるで刃のように鋭く、冷たかった。
強い力でわたしの体の自由を奪い、机に押し付ける
暴れても、足掻いても無駄だった。何でだろう…紋章も、使えない。
怖いときは、テレポートで逃げてしまえるのに。いつもいつもそうだったのに…。
この人からは、逃げられなかったのだ。
そして今も。
「嫌…ぁ…」
服の隙間から入り込んだ冷たい手が、胸のふくらみを優しく解す。
有無を言わさない、蕩かすような責めに、すぐに体は熱くなってしまう。
「…ッ…ん…ぁ…っ」
甘く、しびれる。
嫌なのに。望んだものではないのに。体は素直に反応してしまって。
それを楽しむように、手の動きも変化してく。
「ひ、ぅ…ん、ん…っ」
硬くはりつめはじめたふくらみの頂を、指で擦るように愛撫する。
手つきは優しいのに…言いようのない痛みが体中を襲っている気がした。
目の前の鏡に映る姿。
笑っている。情の通わない嗜虐的な笑みに、射抜かれる。
「…ひ、ゃ…っ?」
突然に、スカートの上に感触を感じた。
表情に気をとられているうちに、手が服から出て、腰のあたりへ移動していた。
そう厚くもない布の上から、秘された場所に人差し指を当てていた。
「ぁ…っん…く、ぅ…」
明確な場所がわかると、強めに押し付けた指でゆっくりなぞりはじめる。
動きにスカートの布地がついていっている感触は、恐らく湿っているから。
快楽を感じているのは事実。
純潔を散らされた時に、泣いても叫んでもお構いなしに教え込まれた快感。
それが鮮明によみがえって、恐怖に力が抜けた。
ほほに熱い筋がある。それを見て、また。
笑った。
突然足に涼しい風がかかる。足にあったスカートの布の感触もなくなった。
「だ、め…っ」
それが何を意味するかも、刷り込まれている。
机をつめで掻いても、体は捻ることが出来ない。
秘部を覆っている最後の砦である薄い布を膝まで引き下ろされるのは、
スカートの時と違い、きちんと、頭の中ですぐに理解できた。
「やだ、や、だ…やぁ…」
いやいやするように首を振るも、それは何にもならない。
自分を汚しているものを悦ばせるだけ。
露にされた部分に、熱い何かが当てられると、とたんに声がやむ。
ひゅっ、という音とともに息をのんだ。心を引き裂かれるような感じがして、呼吸を一瞬忘れた。
許可を取る言葉など、ない。ただ無遠慮に、サイズの合わない巨大なものが、
容赦も手加減もなく奥まで入り込んでくる
「嫌…ぁ…ぁう…あぁっ…!」
はっ、はっという重い呼吸まじりに、精一杯叫んだ。
でも、今はか細い嗚咽が精一杯で。
痛みがないことがとても痛くて、全身に広がる絶対的な快感もまた、痛い。
「ぅ…ぅう…くふっ…ぁうぅ…」
目の前にあった自分の手を思い切り噛んで、何とか声を抑えようとする。
歯が強く食い込んで、痛い。白い手を覆う布に、かすかに赤い染みも浮かぶ。
それを見て、また笑う。
冷たい両手が、私の両腕を掴み、思い切り引き寄せた。
「ひぁ……ッ!?」
とたんに体がそり、秘部は深くまでずるりと強張りを飲み込んでしまう。
液体が跳ねる音。衣擦れ。
自分の声。聞こえなくていいのに、耳にくっきりと焼きつく。
「あっ…はぁんっ!やぁ…ぁっ…!」
抑えられないものがあふれ出ていく。
意思に反したはしたない声は、部屋の外に聞こえてしまうほど大きいかもしれない。
薄く開いた瞳。目の前の鏡には、恍惚の表情を浮かべた、みだらな姿があった。
信じられなかった。でも、自分だった。
何もかもが一気に崩れた気がした。今更。今までの優しさ、何もかもが全て否定された。
「ふぅ…っんぅ…ぁは…あん…っ!」
手には何も握れない。足は地につかない。そして心は大きく揺れ、磨り減る。
空虚になっていくような喪失感が、一瞬で心を塗りつぶしたようで。
「い…ぃっ!はぁっ…ひぁ…あぁん…っ!」
欲望というものの形をはじめて知った気がした。
塗りつぶした色は真っ黒で、それは体の本音を悠長に語り始める。
貫かれるたびに、悦び、体をくねらせる事。
受け入れる場所が潤むこと。
気持ちいい。
その言葉が、体が秘める本音。
「あっ…も、ぉ…んっ、ぅん…っ」
滑り出せばとまらないのは、必然であって。
そして滑り出したのは…純潔を散らされた時だったと、思った。
「ひ…ぁ……あぁぁん…っ!」
急激に白くはじけたように視界がフラッシュして、
体が弓なりに大きく反り返る。
力がはいらなくなり、自分の体重が急に増えたように感じる中
強張りは体の中に、熱を帯びた欲望をほとばしらせた。
流れ込むそれに体はぶるりと振るえ、自分を汚す者も快楽に軽く震えていた。
強張りが抜き取られると収まりきらない白濁がこぼれ、足をゆっくり伝う。
手は開放されて、机に体重を預ける。体にたまった甘い熱は、ゆっくりと逃げていった。
あたりが暗くなったのは、満足した自分を汚す者がランプの火を消したのだろう。
足音が短い距離で遠くなって、扉が開閉する音が聞こえると、急に意識がまどろみはじめる。
服をその場で出来る最低限まで整えて、数歩ほど先のベッドに思い切り飛び込む。
そのまま寝るには、まだ、痛い…肉体は、悦びの余韻をかみ締めて、
心は―――
次の朝に、自分を汚したものは、笑っていた。
ちゃんと、優しくて、誰もが尊敬する英雄。
誰も、知らないのだ。
鏡に映ったあの刃のような瞳を。
いつもの場所に、きしむ体を動かしていこうとすると、
微笑みをひとつ、くれた。
痛い。
だけれど、もう逃げられないのだ。
なぜ私なのか、それは知らない。
だけれど、この痛みは癒えるはずがない。
根拠も何もない。だけれど、そう思った。
FIN