2主×テレーズ 著者:6_30様
本拠地内の一室、美しき元市長の執務室の前に、僕は来ていた。
ある計画と、彼女たちに対するプレゼントを携えて。コンコン。ドアを軽くノックする。
「はい、どなたですか。」
「僕です、リオウです。ちょっと用事がありまして。」
「リオウ殿?すぐに開けますね。」
僕が答えてから間を置かずに、ドアが開けられる。
開けたのは僕に答えていた女性ではなく、異国の装束に身を包んだ剣士だ。
「こんにちはー、テレーズさん、シンさん。」
「はい。こんにちは、リオウ殿」
「……。」
部屋の主、テレーズさんと挨拶を交わす。やっぱり声も綺麗だなぁ。
それに対してシンさんの方は無言。おいおい。僕はここの軍主やで。
もしかして僕の計画に気づいたか?いやいや、雰囲気は隠せているはず。
「今日はね、いつも長時間働いていているテレーズさんのために、
ハイ・ヨー特製のチョコレートケーキを持ってきたんですよ。」
「え?私にですか?そんな、リオウ殿自ら…」
うんうん、軍主じきじきの贈り物ってことで、恐縮してくれてるな。ここでもう一押し。
「テレーズさん、グリンヒルから来て以来、働き詰めでしょう?
甘いものを食べれば、疲れも取れます。たまにはこんな時間も必要ですよ。」
「は、はい。ありがとうございます。いただきますね。」
テレーズさんは、嬉しそうな笑顔になって、奥からティーセットや皿を持ち出してくる。
そうだよね。逃げてきたという負い目を優しく気遣われては嬉しいはず。
うーん、僕ってなんて優しい軍主。隣に立つシンさんも、少し警戒が解けているようだ。
「それじゃあ、いただきましょうか。あ、もちろんシンさんもご一緒に。」
机に3人分のケーキやお茶を並べ、椅子に座ってお茶会の開始。
「「いただきます。」」
僕とテレーズさん、それと無言のシンさんがフォークで同時にケーキを口に入れた。
その途端、2人の動きが止まる。バタンガチャン。シンさんの方は、机に崩れ落ちた。
テレーズさんの方は、椅子にもたれかかったまま気を失っているようだ。
「どうかされたんですか?お二人とも。」
どうなったかは分かってるんだけど、一応確認してからでないとね。
僕は席をそっと立つと、2人の口に手をやり、息をしていることを確認した。
ナナミ特製チョコレートケーキ。
人を殺すこと「だけ」は無いナナミ料理だから、2人とも呼吸はしている。
「この世にはね、毒に対して耐性を持っている人間もいるんだよ、シンさん♪」
ナナミと僕以外の人間は、ナナミ料理を食べると正気を保てなくなる。
シンさんの方は突然の訪問者からの差し入れに対して警戒心を持っていたようだが、
その訪問者が差し入れに同時に口をつければ警戒は和らぐ。
まして、僕は一応軍主だ。目の前で毒見をするってわけにもいかないしね。
倒れている従者の油断に感謝しつつ、僕はテレーズさんの体を横抱きに抱えた。
にゃー!なんていいかほり。グリンヒルから持ってきたシャンプーかなー。
この地方には珍しいサラサラの金髪は腕にかかるし。もう欲情してしまいそうだよ。
さて、ナナミ製チョコレートの特殊効果、
「軽い混乱と興奮」に陥ったテレーズさんは、どんな姿をさらしてくれるかな?
(多分続く。続かせてもらうと嬉しいな。)