心配性?(4主人公×ミレイ) 著者:すいこ〜でん〜様
「お出かけですか?」
「うん…そうだけど…ミレイ…」
よりによって今一番会いたくない人物に出会ってしまった、何故か?それは昨日フォーの部屋での出来事であった。
暇を潰そうとわんさかわんさか集まった男集達でやったババ抜き…チープ―との接戦との末、ジョーカーを最後に持っていたフォーが罰ゲームを受ける事になってしまったのだ…その内容とは。
「既に話はつけてある…だから発注元のラズリルの道具屋で一人一人の趣向のエロ本買って来い!」と言う極めてえげつない罰ゲームだった。
だが彼らにも人の情という物はある、ちゃんとお金を渡してくれた事だけだったが…。
「では、今日は私もご一緒させていただきます」
「い、いや…行くのはラズリルだし…僕一人で」
「いいえ!いけません!フォー様は私達、反クールーク艦隊のリーダーである御方です!そんな御方が一人で出歩くなど!」
そうは言われてもラズリルにそんな脅威は残っていないし、来られるのが本当の脅威だ…今、フォーにとっては最大の敵は女性であるミレイと言っても他ならない。
「あ、あのさ、ラズリルは…」
「何を言っても私はフォー様の護衛をさせていただきます!」
そんな真剣な表情で見られては困ってしまう…だが一緒についてこられるともっと困ってしまう。
「ラズ…」
「護衛させていただきます!」
「ラ…」
「護衛させていただきますので宜しくお願いします!」
もう蛇に睨まれた蛙…言葉がカウンターの様に防がれて段々顔が近づいてくる。さすがに逃げるのは無理だろう…なら道具屋までついて来て貰って外で待ってもらえばいい。
「分かったよ、僕の負けだ…護衛お願いするよ」
「あ、有難う御座います!」
深々と一礼をして満面の笑みを見せるミレイ、余計な頑固さがなければいい娘なのに…とフォーは溜息をついていた。
「ラズリルは大丈夫だと思うけどなぁ…」
「安心して下さい、全身全霊を持ってお守りします」
ミレイの事は諦めるしかないだろう、後はどうやって上手く本を買い漁りかえってくるかが問題だ。フォーは目の前の問題を諦めて次の問題に移ろうと考えながらビッキ―の元に向かいラズリルに飛んでいった。
ラズリル…フォーが拾われ育った街でもあり無実の罪を着せられ追われた街でもある。
つい最近まではフィンガーフート家により無血開城で明渡され、クールークに支配されていたが、フォーを筆頭とする解放軍によりその自由な姿を取り戻した。
「大きな袋です、一体何を買うのですか?」
「う、うん…何だろうね」
それは今から皆のエッチな本を買うんだ、大きくなくては持ち帰れない。かなり大きな袋の為に街の皆も視線をこちらに向ける。
「あ、フォーさんだ」
街を解放した英雄として知られているフォーは一度誰かに気づかれると伝染病のように伝わって街中の皆から声を掛けられる。
「フォー、そっちの女の子は恋人かぁ?」
他の人と来る時も言われる言葉…護衛だと知っている筈なのだが昔から馴染んでいる人はそうやってからかう事も少なくは無い…だが冗談だとは分かっているフォーは曖昧な笑みを返して答えるだけであった。
「わ、私が…フォー様の…」
「…何か言った?」
「あ、い、いえ!何でもありません!護衛を続けさせて頂きます!」
街の人の会話を聞いて真っ赤な顔で慌てふためくミレイ。いつも冷静な彼女しか知らないフォーには意外だった、というか何を慌てているのか分からずにいた。
「はぁ…早く終らせないと…やだな…」
背中に背負っている大きな袋をよいしょ!と背負い直すと重い足取りで道具屋の方へ歩き出したが、ミレイが少し距離を置いてついて来るようになっていた。
「ごめんよ、あの人昔からああだから、あまり気にしないで」
「き、気にしてなどいません!寧ろその様に見てくれて嬉しいです…ってあれ…な、何言ってるの私…」
「嬉しいですって、何が?」
鈍感極まりないフォーは彼女の言葉の意味を理解できずに頭を傾げていた。だが本音を言ってしまったミレイはというと真っ赤になり、あまりの恥ずかしさに両手で顔を隠していた。
「ももも、申し訳ありません!フォー様にご迷惑をかけるような発言をしてしまって!」
「迷惑?」
何か迷惑でもかけられたかな?とまたしても鈍感な頭で考えるが、ラズリルに来てからさっきまでの間に思い当たる節が無い。
「別に迷惑なんてかけられた覚えは無いし、逆に僕は感謝しているよ」
「か、感謝…?」
「うん、いつも部屋の見張りもしてくれるし、護衛だって大変なのに自ら志願してくれてさ」
「そ、そんな…私は自分の意志でしているまでで…感謝なんて…」
フォーから顔を逸らしてミレイは困惑しているが表情は嬉しそうだった。
「だからさ、もし良かったらこれからもお願いできる?」
「私で良ければいつまでも…」
「ありがとう」
微笑を浮かべて感謝の言葉を述べると歩き出したフォーの隣にピタッとミレイがくっついて歩調を合わせると、そのまま道具屋に向かって行った。