「ルナスの夜」(5主人公×リムスレーア) 著者:7_846様
リオンが一礼して去っていった後、僕はベッドに横になった。
ルナスはさすが聖地というだけあり、空気がファレナとは違って少し肌寒くさえある。
それでもうとうととまどろみかけた時、そっと扉のノックされる音がした。
「兄上…まだ起きておるか?」
「…リム?」
ひょこっと少し開いた影から覗いたのは、愛らしい妹の顔だった。
「一緒に寝てもよいかのう?」
少し迷ったが、頷く事にした。
手招きをするとえへへ、とリムが嬉しそうにちょこちょこ駆け寄ってきた。
ぼふっとベットに飛び乗った拍子にサラサラの茶色い長い髪が舞う。
次期女王候補という事もあり、少し大人びた面を見せる時もあるが、
僕の前ではいつも無邪気でかわいい妹だった。
「こんなに兄上の近くで寝るのは久しぶりなのじゃ」
リムがはにかみながら、こっちに身を寄せてくる。
いい匂いが鼻をくすぐって、少しどきりとした。
「婚約の儀が終われば、もうこんな機会はないかもしれぬからのう…
思い切って来てみてよかったのじゃ」
リムの声が沈む。
そうだ…リムは闘神祭の勝者のあいつと婚約してしまう。
よりによってあんな奴に渡したくはない。でも…僕にはどうしようもできなかった。
改めて自分の無力さをかみしめる。
「のう…兄上?お願いがあるのじゃが…」
「なんだい?」
リムの頭を撫でる。リムの言う事なら何でも聞いてやりたかった。
「兄上は、わらわの事が好きか?」
「勿論」
今更何を言うんだ、とばかりに僕は即答する。
「ほ、本当か?」
「あたり前じゃないか」
「だったら、キスというものをしてほしいのじゃ」
目が点になった。キス?
「ミアキスが言っておったのじゃ!好きなひとにはキスをするものだと」
ミアキス…またお前か!
楽しそうな彼女の姿が目に浮かぶようだった。
「いや…それは…」
うろたえる僕に、リムはぎゅっと抱きついてくる。
「…わらわは…婚約などしとうない…ずっと兄上と一緒にいられればいい、とそう思う…」
「リム…」
「何だか怖いのじゃ。何かが変わってしまいそうで…」
震えるリムの体を、安心させるように抱きしめると、ますます強くしがみついてくる。
いつでも僕を捜し求めるリムが心底可愛くて、そして愛おしくて。
「キス…だけならいいかな」
大粒の涙を零す、目の前の可憐な姿を無視することなんてできなかった。
「い、いいのか?」
「ただし、今回だけだからね」
「うんっ、うん、ありがとう兄上!!」
興奮して何度も頷くリムの顔を上向け、そっと口付ける。
驚いて離れようとする小さな身体を片腕で抱きとめた。
リムは目をまんまるにしたまま固まっていて、
ちょっと悪戯心がわいてキスを深くしてみると、
次第に服を掴む手から力が抜けていくのがわかる。
やがて唇を開放してやると、リムの口から甘い息が漏れた。
「だいじょうぶかい?」
「こ…これがキスというものか…」
顔を赤くして震えるリムの瞳は、初めての刺激の為か潤んでいて
その色気に僕は思わずごくりと唾を飲み込んだ。