???×ルセリナ、5主人公×ルセリナ 著者:群島好き様
稀代の英雄譚。後の世の人々は伝えられるファレナの騒乱をそう語る。
父と母の命を奪われ、妹はその敵の手に落ち傀儡人形と化す。
しかし逃げ延びた王子は多くの仲間と、見事に両親の敵を討ち、妹を取り戻す。
大人から子供まで夢を見て、憧れる破格の冒険譚でもあった。
しかし真実と事実が異なり伝えられるのは世の常。
冒険譚の主人公は義に厚く、情に脆く、そして常に仲間を牽引する熱血漢である。
これの全てが虚飾であるとは言えない。
しかし多くは民に都合の良いように―それがいけない事だとは言えないが―脚色されたものであるのも確かである。
それだけ多くの者にとってはそう見えたのも事実ではある。
しかし実際の所、ファレナの王子―ファルーシュ・ファレナスはどちらかと言うと物静かな人物の類に入る。
騒乱よりも穏和を好み、ましてや他人を傷付ける事など望んでやる人物ではない。
しかし多くの者が望み、そして何よりも自分の譲れない想いが彼の我を殺し、英雄に仕立てあげていったのである。
ファルーシュは多くの大人から見て聞き分けのいい子であった。
周りの人間の言う事をよく聞き、他人に迷惑をかける少年ではなかった。
一を聞いて十を知る、とまではいかなくとも、他人の言葉の本音を聞き取ることに長けていた。
それ故ソルファレナから逃げ延び、対抗する勢力を率いる事を了承し
サルム・バロウズの策略を退ける事も出来た。
ただ一つの失敗は叔母であるサイアリーズの心の動きまで読めなかった事である。
無論その事に動揺もしたし、独りでいる時には涙も溢した。
それでも自分を信じてくれている仲間の前ではそんな顔を見せなかった。
見せる事は許されないのだと頑固なまでに思い込んでいた。
「良かったですねぇ。優しい軍師さんで」
そう微笑む臨時の護衛代行の女性の言葉に微かに頷く。
サウロニクス西方にある遺跡―
自らの身を持って命を救ってくれた護衛の少女に報いてあげられる事はこれしかなかった。
命の危険の山は越えたものの、いまだ意識が覚めることはない。
その回復の為の手段は今の所、それしかない。
ならば行くしかない、懸けてみようとファルーシュは初めて我侭を通す。
「それでは早速…と言いたい所ですがぁ、色々と準備も必要でしょうしぃ。二時間後に船着場と言うことでぇ」
その言葉に他の二人も頷く。
「それでは王子も後でですぅ。食料や薬は男性陣に運んでもらいますけど調達は私がしてきますねぇ」
その言葉を受け、ファルーシュも準備に向かう。もっとも自身に必要なものなどは何もなかったが。
「殿下!お待ち下さい!」
自分の相棒でもある三節棍の再調節をしてもらったあと、澄んだ声がファルーシュを呼び止める。
「ルセリナじゃないか。そんなに慌ててどうしたの?」
少し軍隊には不似合いな令嬢に何の動揺も見せることなく答える。
「殿下…。本当に四人だけで行かれるのですか?せめてもう何人かだけでも…」
そこに他意はなく、ただ密かな好意を持つ相手への純粋な心配だけ。
「別に誰かと戦いに行く訳でもないしね。ルセリナだってあの三人の強さは知っているだろう?」
「それは…そうですが。ですが!万が一と言う事も…!」
自らを案じてくれる少女に嬉しく思う。
「心配してくれるのは素直に嬉しい。だけど大丈夫、危険な事はしないよ。
それに建前上、サウロニクスに大勢で行ったらそれこそ失礼だろう?」
「そ、そうですよね…。申し訳ありません。分不相応な発言をしてしまい…」
そのどこまでも固い表現についつい苦笑する。
「ルセリナ」
「は、はい」
「そんな畏まらないでよ。確かに名目上、僕はここの盟主ではあるけれどそこに身分の優劣など存在させない。
立場の上での上下は必要だけれど、ここに集う人はみんな横一直線。僕も含めて、ね」
「殿下…」
「それに僕はルセリナがどれだけ僕の為、皆の為に心を砕いて働いてくれているか知っている。
だからありがとう。そしてこれからもよろしくね?」
「は、はい!」
破顔する。やはりこの少女は笑っているほうがいいと思った。
「うん。それはそうと…ルセリナも何処かへ出かけるの?」
その笑みに少し照れた所を見せまいと顔を逸らすと、脇に荷物が見える。
「はい、エストライズへ。人員の割り振りとルクレティア様に頼まれた書類を代行の方に届ける為に」
「エストライズか…。そっちこそ大丈夫?あまり敵が多くはないとは言えレインウォール方面は危険だよ?」
先程の心配を返すように問い掛ける。
「付き添いの方もいますし、帰りの途中までは斥候隊の方もいらっしゃいますから大丈夫ですよ」
「そう…それならいいんだけど。でも用心だけはしてね?」
「はい、有難う御座います。殿下もお気をつけて…。リオンさんの事もよろしくお願いします」
そこで話を終え、二人は別れる。
約束の時間が近付き船着場へ向かおうとする。そこでわずかな疼きを感じる。
ファルーシュはルセリナのほうを振り向く。すでに彼女は階上に消えた。
右手の紋章が微かに光っていた――
「…そうですか。それにしてもまた遺跡で怪物に会うなんて王子も余程波乱を呼ぶ人ですね」
賭けは成功した。西の遺跡で黎明の紋章は新たな力に目覚め、リオンの意識を呼び戻す事が出来た。
「…好きで呼んでるわけじゃないんだけど…」
遺跡での戦闘を思い出し、ウンザリしながら苦笑する。
「竜馬騎兵団のほうもよい感触だったそうで。王子は人に好かれるのが上手いですねぇ」
「普通に話を通しただけなんだけど」
遠慮の無いこの軍師にはファルーシュも本音を隠さず話す。
その心根を読めないのはゲオルグに次いで二人目。だからこそお互い本音を出し信頼が生まれた。
「それが王子の力なんですよ。相手をこちらに向かせる事の出来る力、ですね」
「こんな風に役立たせるのは忍びないけどね」
まるで多くの人を利用しているようだ、と口には出さず葛藤する。
その表情を呼んだのかルクレティアはただ真っ直ぐ見つめるのみ。
「王子」
「ん、ごめん。これじゃあ愚痴だね。そうそうルセリナはまだ戻っていないの?
流石にもう戻ってきてると思ったんだけど」
呼びかけの後に続く言葉を遮るように話を逸らす。
「あら、会いたいのですか?まぁ年頃の男の子ですもの、色々ありますよね」
表情をコロリと変え、ふふ、と笑う。
「何か含みを感じるけど…別にそんなんじゃ――」
ない、と思う。ルセリナが好意を持ってくれているのは分かる。
すこし硬さがあるが、そのどこまでも厚い信頼感は男として嬉しく思う。
真面目なのだけれど、どこか年上とは思えない可愛らしい間の抜け方は庇護欲をそそられる。
気の抜ける仲間は多くいれど、心を許せる者は多くない。
彼女と話をする時は自然と笑みが零れる。異性としての魅力は間違いなく感じている。
好き、なのだろう。
ふと考え込んでしまった自分に気付き、顔を上げるとそこには相変わらず、ふふ、と笑うルクレティアがいる。
「あらあら…いくら常勝不敗の軍神と言われていても、やはりまだまだ可愛らしい男の子ですね」
見抜かれた。バツが悪くつい声を荒げる。
「ル、ルクレティア!」
「いえいえ、お気になさらずに。…でも確かにもう戻っていてもいいはずですが…
またレインウォールに人を増やしたとも聞きますし…」
「ルクレティア様っ!!」
そこにバンッと扉が開けられる。声の主はルクレティアの薫陶を受けているレレイだった。
その表情に焦燥が見て取れる。
「あら、レレイさん。そんなに慌ててどうしました?」
「で、殿下もいらっしゃったのですか。失礼しました。じ、実は報告を受けたのですが、
レインウォール方面の斥候隊の行方が――」
「レレイさん、駄目です!」
レレイの言葉を遮るように普段は出さない声を荒げルクレティアはレレイの傍に近付こうとする。
だがそれよりも早くファルーシュがレレイの前に立つ。
「斥候隊の行方がどうした」
「え?え?」
普段とは打って変わった二人の様子に混乱するレレイ。
だがファルーシュの圧倒的な威圧感に言葉を発してしまう。
「どうしたと聞いている」
「ゆ、行方がふ、不明…逃げ延びた、一人が、そ、そう報告を」
言葉を最後まで聞かずファルーシュは部屋を飛び出す。
「で、殿下?」
「レレイさん!王子の後を追って下さい!行かせてはいけません!!」
走った。必死の形相で走った。皆が奇異の目で見てくるが構わない。
あの時の疼きはこれだったのだ。黎明の紋章は教えてくれたのに。なのに気付かなかった。
後悔と怒りが胸の内を締める。
「ビッキー!!」
目的の人の元へ辿りつく。
「は、はいっ!ご免なさいっ!…って王子様?どうしたの、そんなに怖い顔で?」
「今すぐ一緒にエストライズへ」
「え?でもでも私達二人だけ?」
「いいから早く!!」
有無を言わせぬその迫力に疑問にも思ったが、空間を渡る少女はただ頷く。
「う、うん。えーいっ!」
殿下、お待ちください!後ろから聞こえるその声を敢えてファルーシュは無視した。
目を開けばそこはエストライズ。
「うん、ちゃんと出来た!でも王子様?ここで何を――」
「ビッキー、ありがとう。でもよく聞いてくれ」
その真剣な表情に焦りが見えるのはどうしてか、少女は不思議に思ったが、
「あそこに見える家にボズさんの奥さんのドナさんがいる。
その人に僕の名前を出して、僕が戻るまでそこに居てくれ。いいね!」
「あれ?あれ?王子様?」
言い終わると同時にファルーシュは街の外へ消えていった。
「おら、さっさと歩け!」
まさかこんな風に戻ってくるとは―ルセリナはそう思った。
用事を全て終えて城へ戻ろうとした帰り、運が悪く敵の部隊に見つかってしまった。
演習でもあったのか大部隊であったため、逃げ切る事も出来ず、こうしてレインウォールへ連行された。
剣を持たぬ彼女に反抗など出来る筈もなく言われるまま従った。だが――
「で、ですがこんな格好で街の中になんて…」
今のルセリナの身を包むのは下着のみ。兵士達に卑猥な目つきで見られるだけでなく、街中でもその姿を曝せと言うのだ。
「はっ!いいじゃねぇか、バロウズの令嬢の恥ずかしい姿をとことん見てもらいな!」
「そ、そんな…」
彼は知っていた。ルセリナの正体を。
既に全ての国民がバロウズの非道を知っている。その罰だとでも言わんばかりに兵士達は彼女を歩かせる。
見ろよ、バロウズの娘だ…
はっ、いい気味だぜ…
奴もあんな目にあっちまえ…
死んだほうがマシだと思わせろ…
その街に以前のような活気はない。多くの者が自らの利益を求めつつも栄えていた街の面影はない。
あるのは憎悪、嫉妬、悔恨、そして全てを引き起こしたバロウズへの呪詛があった。
ルセリナは羞恥に耐えながらも故郷を見る。
自分を見る目は憎しみ、欲望。どの住人にも生気がない。
どこからかは壊れた笑い声が聞こえる。
涙が出て来る。そして実感させられる。これが私への罪なのだ。
「ここだ、入れ」
連れられた先は通りより離れた河を挟んだ高台、窓も全て塞がれた家だった。
背筋を悪寒が走る。ここは何か危険だ、と。
「さっさと奥へいけ!このアマッ!」
だがルセリナに拒否権はない。首に繋がれた縄をひかれ入れられる。
むわっ、とした蒸し暑さを感じる。不快な臭いもする。
「おい、新しい奴を連れてきたぞ」
最奥のドアの前へ連れて行かれる。本能がここには入るな、開けるなと告げる。
ドアを開けた先、ルセリナはまず熱を感じる。次に生臭い臭い。
そしてその目に映ったのは、三人の男に嬲られる女。その周りにはまだ数人の男が居る。
犯されていた。嬲られている女には所構わず精液が付着しその目は虚ろだ。
ここは肉欲の館。レインウォールの狂気の果てがあった。
「ひっ!いや、いやっ!いやあぁーっ!!」
少女にこの光景は強烈過ぎた。男と女の関係を知っていてもこの異常さに耐えられる訳もなく。
ただ錯乱し恐怖の声を上げる。
「くそっ…うるせぇな。っておい結構イイ女じゃねぇか」
「おうよ、しかもあのバロウズの娘だぜ?いくら犯っても心が痛まないぜ?」
「ぎゃははっ、違ぇねぇ!さっさと連れて来いよ?」
品性の欠片も感じさせない声で笑い合う。
「おい、この女はどうする?」
「そいつもう全然反応しなくてつまらねぇんだよな。家の前にでも捨てとけば他の連中が拾ってくれるだろうよ」
「う…あ…」
ルセリナと入れ違いに犯されていた女は外に連れて行かれる。汚いモノにでも触れるように。
「いや…いやぁ…」
怯え震えるルセリナを男達は輪を作り、中心に投げ込む。
「この反応、いいねぇ。最近は反応薄い女ばっかりでつまんなかったからなぁ」
「しかもホントイイ女だぜ。貴族の女を犯せるなんてここは楽園だなぁ」
「ちゃんと働いてさえいれば、女を抱き放題だもんな。ここ離れたくねぇよな」
その言葉にルセリナがはっとする。
「まさか…さっきの人は街の…?な、なんて事を!」
外道の行いにも男達は平然と答える。
「何言ってやがる!悪いのはお前らバロウズじゃねぇか!」
「そうそう、悪い事したらちゃんと罪を償わないとねぇ〜」
「俺たちゃ、そのお手伝いをしてるだけだもんな!ひゃははっ!」
不条理を平然と言い切る。
「だからと言って街の者を…!」
「あ〜もう、うるせぇなぁ。俺たちはすっきりできればいいんだよ。もうやっちまおうぜ」
「ひっ!いや!来ないでっ!!」
近付く男達に後ずさりするものの、輪の中では逃げ場はなくすぐに体を捕まえられる。
何本もの男の手がルセリナの体を這いずり回る。下着は剥ぎ取られ露になった乳房を、股間を遠慮もなく触られる。
「いやぁっ!やめてぇ!誰か、誰か助けて!」
その叫びに応えるものは誰一人としていない。
ルセリナに欲情し興奮している男達はその悲鳴をもスパイスとして行為を加速させる。
「いぎっ!?いた、痛い!いやぁ!」
既に胸はいびつに歪んでいる。足は舐められ、膣に指を入れられる。
相手の事など一切考えずにモノのように弄ぶ。
「ほら、咥えな」
口の中に男のものが入れられる。
「むぐっ!?うぅ〜!もごっ!?」
「ははっ、いい気味だ!ほら手も使え!」
両手にも肉棒を握らされる。その間も体を這いずり回る手は一向に減った気配がない。
「よ、よし、まずは一発目だ!」
口の中に液体が流れ込む。生臭く喉に絡みつく。
それは口の中だけでなく周りからも顔に出される。
「うえぇ…げほっ、ごほっ!いやぁ…やめてぇ…」
「ひゃはっはっ、いい顔になったなぁ」
男達が笑う。何が楽しいのか、ルセリナには理解出来ずただ泣くことしか出来ない。
「よーしっ、俺が最初だ!お前ら体押さえろ!」
「しょうがねぇなぁ。おい、あの薬忘れんなよ!」
それでも男達の陵辱は止まない。体を押さえられ足が開かれる。
そこでルセリナは今日一番の恐怖を味わう。
「いやっ!それだけは、それだけは!お願いですからっ!!」
「安心しなよ。これ飲みゃ大丈夫だからよぉ」
そう言われて口に何かを入れられ、飲まされる。
「い、今…何を…」
「心配すんなって。ただの妊娠しにくくなるような薬だ」
妊娠。その言葉がより一層ルセリナの恐怖を煽る。それはつまり――
「だからいくら膣中に出しても問題ないってこった!ぎゃははっ!」
「やだやだやだ!助けて、殿下ぁっ!!助けてぇっ!!ファルーシュ様ぁ!!」
錯乱したように叫ぶ。こんな人達になんて。ただ愛する人の名を呼ぶ。救いを求めて。
「王子様ぁ?そうか、残念だったな。ほらよ、っと」
「ーーーーーーーっ!!」
衝撃が走る。体に突き刺さる痛み。救いはないのだと知る。
「あ……かはっ……」
声にならない悲鳴を上げ、息も絶え絶えになる。
「おや、初めてだったのか。そいつは悪い事したなぁ。
てっきり向こうでは王子様に足開いてるもんだと思ったんだがなぁ」
「そん、な…こと…してな…」
男が腰を動かすたびに激痛が走る。大して濡れてもいないのだから当然だ。
しかし男はルセリナを省みることなく欲望に忠実に動く。
「うあがっ!?やめっ、いたい、本当にいたいのっ!」
何度そんな遣り取りをしたのだろう。涙は止まらず声は掠れる。
男達はニタニタと笑いながらルセリナを見下ろすだけだ。
「そろそろ、出すぞ…!」
「ひっ!?いやだ、だめっ、せめて、そとにっ!」
それに返答はなく男はただスピードを上げてルセリナの奥底に打ち付ける。
男の体の動きが止まった瞬間、
ドクドクドクッ
「い、いやああぁーーーっ!!」
願いは無残にも崩れ去った。
「う、あぁ…殿下…ファルーシュ殿下ぁ…」
何よりも恐れた事態に、ルセリナは愛する人の名を呼びむせび泣く。だが悪夢はまだ続く。
「ったくいきなり中出しかよ。後の奴の事も考えろよ」
「わりぃわりぃ、あんまり気持ちよくてな。でもこれで滑りが良くなるじゃねぇか」
聞こえてきた言葉は絶望への道標。
「え…?あとの…やつ…?」
「何だお前、ここに何人いると思ってんだ。全員で回すにきまってんじゃねぇか」
全員で。今と同じ事を。まだ終わらない。
「いやぁ!もういやぁっ!!もうしたくないっ!!ファルーシュ様、助けてぇっ!!」
恐怖も混乱も最高潮に陥る。気が触れたほうがましだと思うほど。だがそう簡単に人は狂えない。
「はいはい、王子様はもういいから。あんなガキの事なんか忘れさせてやるからよっと」
「うああぁっ!?や、だっ、もうやっ!?」
「うるさい口は塞いじまおうなー。ほらしっかり、しゃぶってくれよ。」
上下からの責め。つい先程まで清らかな乙女には想像も出来ない狂乱の宴。
「うぐっ、むぐっ!?ひゃぶっ、じゅるっ……」
「ほらほら、よがってないで手も使えよ。終わんねぇぞー」
よがってなんかない!苦しいだけだ!と声を上げたかった。
だが彼女にはそれすら許されない。今彼女に出来るのは男達の欲望の捌け口となるだけ。
「こりゃ、まじで名器だぜ…。こいつ実は淫乱なんじゃねぇ?」
「あぁ、口の中もいい…うっ、出るっ…!」
ドクドクッ
再び飲み込まされる。口の中に入ったままでは息もままならないからだ。
「おえぇっ…、も、や…だ…んぶっ!?」
引き抜かれたと思えばまた次の肉棒が入り込み、休む暇などどこにもない。
今の状況は上と下にペニスを捻じ込まれ、両手にも握らされ無理矢理しごかされている。
乳房も男に咥え嘗め回され、何がいいのか素足を舐め回す者までいる。
果てには髪の毛でペニスを包んでしごいている者まで居る。
使わされていない所などない。男達にとってルセリナは肉人形でしかなかった。
ドクドクッ
既に何人膣中に出したのだろう。ルセリナには考える暇すら存在しない。
「むぐっ、ぷはっ!ま、た、中にぃ…もう…いやぁ…」
既に体力は限界で声をだすのも億劫だ。それなのに。
ズグッ
「うああっ!ま、だ、いる、の…?ひくっ、ぐすっ…」
それでも宴は止まず、
「ごぶっ!?ごくっ、ごくっ、うえぇ…もう、飲み、たくない…むぐぅ!」
ルセリナは弄ばれる。
「おい、そろそろ、ケツも使おうぜ。こっち向かせろよ」
また聞いた事のない単語が聞こえた。これ以上何をしようと言うのだろう。
そんな事を薄ボンヤリと考えていると体の位置を変えさせられる。
膣に入れている男が下に回り、それに乗りかかる格好になる。
「うああっ!もっ、と中にぃっ!?」
重力の関係でより中に抉り込む。
「よし、入れるぜ。口はしばらく空けとけよ。噛み千切られたりしたら大変だからな、ひゃははっ」
そう言いながら男のペニスが触れるのはもう一つの穴。
「ひいっ!?そこは、ちが、んんっ、やだ…や…そんなとこ…はいらなっ!?」
ズグッ
「あがああぁっ!?は…かふ…あ、あ…」
二本のペニスがリズムを違わせて出し入れされる。
「うがぁっ!?くるしっ、こんな、こんなの、狂ってる…」
「ははっ、ケツの穴もいい気持ちだ!お前さん変態の素質あるぜ?」
「そろそろ、大丈夫そうだな。ほら咥えろ!」
「むぐっ!?もごっ、ごぶっ、ぷはっ、ひゃ、ひゃめて…」
三つの穴が全て塞がれここに一つの陵辱の形が完成する。
「よし…出すぞ…!」
「オレもオレも。」
「よーし、チームワークの良さを見せてやるかっ!」
「んあっ、やだ…むぐぅ、じゅるっ、ぷはぁっ、やめてえぇーーっ!!」
ドクドクッ ドクドクッ ドクドクッ
声が館に木霊しただけだった。
「うおおっ…?」
ドクッ…ドクッ…
「ふぅ…出した出した。ついやりすぎちまったなぁ」
「オレもオレも。こいつ、気持ちよすぎるもんなぁ」
最後まで残った男達がそう呟く。ルセリナは――
「う……あ……」
時折ビクッビクッと体を痙攣させる。彼女の様相は実に惨たらしいものだった。
膣と菊門からは大量の、何人分もの精液が流れ出ている。
体と髪には精液が触れてない場所などないとばかりにこびり付いている。
空気を求める口からも、飲み切れなかった分が零れ出し溜りを作っている。
既にルセリナの頭には汚された事よりも、ファルーシュに申し訳ないと思う事よりも、
ただただ行為が終わったことへの安堵感しかなかった。
「ファ…ルー…シュ…さ…ま……」
「なんだぁ?まだ王子様ってかぁ?」
「よっぽど惚れてたんだな。まぁ、こうなっちまったら見向きもされなくなるだろうがな、ぎゃはっはっ!」
そしてルセリナは初めて殺意を抱く。生まれて初めて人を殺したいと思った。
だが憔悴しきった彼女には体を休ませることしか出来ない。
許さない。必ず殺してやる。
だが悪夢はまだ終わらない。
ガチャッ
「おっ、やっと来たか」
「まったく今日も上官がうるさくてたまんなかったぜ。んで、そいつがそうか?」
「なんだよー、汚ねぇなぁ。次の奴の事も考えろよ!」
再び大勢の男が入ってくる。
「わりぃわりぃ、つい興奮しすぎてな。水でもぶっかければいいじゃねぇかよ」
「な…に…これ…なん…なの…?」
「へっへっへ、ルセリナちゃ〜ん、まだまだ可愛がってあげるからね〜」
「せっかく終わったと思ったんだろうけど、まだまだ兵士はいるからなぁ。」
「そうそう、もっともっとオレ達の精液飲ませてあげるからな、ひゃはははっ!」
理解が出来ない。何故私がこんな目に。マダオワラナイ。
「イヤアアアァーーッ!!!」
館のドアは無常にも閉じていった――
ファルーシュは焦っていた。自分でもこんなに心を動かした事などない。
レレイからの報告に目の前が真っ暗になった。
ルセリナの事を考えていた時だけに後先考えずに飛び出したのだ。
こんな風に心を黒く塗り潰されたのは、両親を失ったと聞かされた時にもリオンが刺された時にもなかった。
そして王子は知っている。
戦争に、いや戦争時だけでなく女性が敵に捕まった時どんな扱いを受けるのかを。
ましてや報告から時間を逆算すれば既に一晩は経っている。それが一層ファルーシュの心を曇らせる。
それにいつもより兵士の数が多いのだ。連れて行かれたとすればそれはレインウォール以外有り得ない。
だが迂闊には近付けない。情報を得て万全の態勢で赴かなければならない。
「くそっ…!!」
独りごちる。だが都合よく大雨が降り出してきた。ファルーシュは外套を被り、人目につきにくい場所を走り抜ける。
そしてまたしても運が良かった。間抜けな顔をして欠伸をしている兵士が一人だけでいた。
周りにも人の気配はない。情報を聞き出すならこの男からだと思い、気配を殺し後ろから近付く。
相手は未だに腑抜けた様子で呆けている。
護衛用の短刀を取り出し、相手の口を塞ぎ、短刀を首に添え体の動きを止める。
「動くな。少しでも動けばその首を掻き切る。尋ねた事だけに答えろ」
ファルーシュの普段からは考えられないような冷淡な声。
まだ新参の兵士なのかそれに怯え首を立てに振る。
「最近反乱軍の斥候を捕まえたか?」
首を振る。
「何人?数だけ首を振れ」
一回。嫌な予感がする。
「誰を捕まえた?名前だけを言え」
少しだけ口を塞ぐ手を緩める。
「ル、ルセリナ・バロウズ…」
舌打ちをする。状況は最悪だ。
「何処に連れていった!?何のために連れていった!?」
語気が荒くなる。この答えだけは違っていてくれ…!
「ほ、捕虜にする事なんて決まってる…。それがましてや女なら…」
怒りがこみ上げる。
「貴様は、貴様は彼女を犯したのか!?答えれば命だけは助けてやる!」
「…あぁ、そう――」
兵士は台詞を途中までしか言えなかった。約束を破ったとは言え、生かしておく気にもなれなかった。
心が漆黒に染まる。怒りでも哀しみでもなく、どこまでも深い色の――憎悪。
目が覚めた時には部屋には自分しかいなかった。
いつの間に気を失っていたのかと逡巡しながら体を起こそうとする。
しかしずるりと手が滑り体は床に打ち付けられる。
そこにあったのは精液の水溜り。いや手の所だけではない。体全体に降りかかっている。
フラリと体を動かすと股間からもゴプリと流れ出る。
「ふ…ふふ…あは…あはは…」
乾いた笑い。昨日までは処女だったというのに一晩だけで何人の男の精を受け入れたのか。
「あは…は…う…ううぅ……うあぁぁ…」
悔しさに嗤い、悲しさに身をよじる。
「うぅ?おえぇっ!げぼぉっ!げほっ、ごほっ、かふっ…」
吐き気を催し、白い水を吐き出す。いや、白い水ではない。飲み込まされた男の精。
「う、あああぁ、うわあぁぁ!!」
頭を抱え込み泣き叫ぶ。これが罪なのか、これがバロウズに与えられる罰なのか。
私は何もしていない。ただ王子に片思いをしていただけだ。それすらも罪なのか。
部屋の隅で呆然としていると再び人の気配が聞こえてきた。
ドアが開けられ数人の男が入ってくる。また始まるというのか。
「うっわ、なんだこれ。臭えぇー。やりすぎだろが、こりゃ」
「こりゃ、ひでぇや。水溜りが出来てやがる」
どの口がそれを言うのか。ガタガタと震えながら男を見る。
「おやおや、すっかり怯えちまって。まぁいいや。ほれメシだ」
そう言って冷えたシチューが差し出される。そういえば何も食べていなかった。
「ほら、こっち来いよ。じゃねぇと捨てるぞ」
その言葉に渋々近付き手に取ろうとする。しかし――
「待った。いい事思いついた。ちょっと待て」
一人の男がそう言うと食事を持って部屋の中心にしゃがみこむ。
「な、なにを、しているの?」
「はっはっは、これがお前さんのメシだ」
そう言って差し出されたのは、白いモノでコーティングされたシチューだった。
「な、なんてことを!こ、こんなもの食べられるはずが―」
「嫌ならいいんだぜ。まとめて捨てるだけだ」
「ぎゃははっ、何かと思えばえげつねぇ真似するなぁ!」
「昨日は散々、ごくごく飲み干してたもんなぁ。無理じゃなぇわな!」
男達は笑い出す。どうしてこんな事が出来るのか。本当に同じ人間なのかと疑いたくなる。
しかし、逃げ出すためにはこれ以上体力を失う訳にはいかない。
「わ、わかりました…、た、食べます…」
「素敵な精液のご飯を食べさせていただきます、だろうがよぉ!」
「す、素敵な、せ、い…えきのご飯を、ひっく、食べさせて、ぐすっ、い、いただきます……」
「よく言えました。ほらよ」
シチューを掬う。ドロリと精液が流れる。見ないように口に入れる。
「んぐっ、…ぱくっ、…ごくん…」
精液の悪臭が鼻につく。喉に絡みまた吐きそうになる。
「ははっ、本当に食ってやがる!貴族のお食事とどっちがおいちいですか〜?ぎゃはははっ!」
全てを食べ終わるまで男達の罵声は続いた。
屈辱的な食事をさせられた後、鉄の鎖の首輪を付けてルセリナは外へ連れ出される。
「今度は…どこへ…」
身に何も着けさせられない羞恥心よりも不安が勝る。
「さすがにオレらも仕事はしなきゃいけないからな。お前の相手は出来ん。お前さんの暇潰しの為だ」
そうとしか言われずただ付いて行くしかない。
歩くたびに痛みが走り、股間からは精液が垂れ流れる。
そうして連れられた先はレインウォールの大通り。今は昼近くだというのに人の姿はほとんどない。
「ほらよ、ここだ」
そういって鎖を繋がれる。
「じゃあな。仕事が終わったら迎えに来てやるよ」
「な…なんで、こんな所に…」
男達の意図が分からず動揺していると、男達はまたいやらしい笑みを浮かべ言う。
「言ったろ?仕事中はお前の相手は出来ねぇって。だからその間は街の連中に可愛がってもらおうと思ってな。
お前らバロウズのせいで散々酷い目にあった奴らだ。さも執拗に相手してもらえるだろうよ。
な〜に、心配すんな。時々見張りが来るから死ぬような事はないだろうよ」
その言葉を聞いて、辺りを見回してみる。あちこちから好奇と憎しみの視線がある。
「ひっ!や…いやぁ!お願いです、何でもしますからこんな所には!」
される事は一つ。また悪夢が始まるのだ。
「まぁ、せいぜい張り切りなぁ!ひゃっはっはっ!」
ルセリナの懇願を無視し兵士達が消えていく。それと同時に。
ぞろぞろと、わらわらと。どこにこれだけの住人が隠れていたのかと思うほど。
憎しみと欲望に塗れた目を持つ者達が寄ってくる。
ルセリナは叫ぶ。しかしその声は男達の熱気の中に消えていった――
「ふぐっ!むぐぅっ!じゅるっ!ごぶっ!?」
既に何時間が経過したのだろうか。男達の群れは途切れることなく、ルセリナを陵辱する。
「いやっ…もう、入れないで…すこ、し、休ませて…いぎっ!?」
太陽は隠れ、雨が降り出したというのに男達が減る気配はない。
入れ替わり立ち代わり男達の肉棒が咥内に、媚肉に、肛門に突き入れられる。
ルセリナは元々気丈な人間の部類に入る。その気丈さ故に家族を捨て、自らの信念に従ったのだが―
「ぶはぁっ、ふぐっ!?くるしっ…!おなか、が…!?」
それ故に狂う事もままならない。狂ってしまえば、嬌声を上げてしまえば楽にはなれるのだろう。
一人の人間ではなく、一匹の雌として肉欲に身を任せてしまえば。
だが周りの男達もそんな事は望んでいない。
これは復讐なのだ、当然の権利なのだと、自分達の犯している罪をごまかす為にルセリナに罰を与えようとしていた。
彼らにとってこれは陵辱ではなく、復讐の行為―それは言い換えればルセリナを破壊する行為だった。
「も、う、いや…」
ルセリナが声を出す。
「もう、いやあぁっ!こんなのっ!こんな事したくないのぉっ!!」
叫び。魂の奥底からでた叫び。少女の心からの叫び。
「うるせぇ、メス豚」
ドクッ ドクッ ドクッ
大量の白濁液がルセリナに降り注ぐ。白い雨―
「てめぇは人間なんかじゃねぇんだよ。人形か豚だ」
「豚は豚らしく犯されてろ」
「楽になんかさせてやらねぇ」
「ただ咥えこんでりゃいいんだよ」
「……ぶっ壊してやる」
男達のドス黒い憎悪。
「あ…う…あ…」
ルセリナは精液に塗れた自分の両手を見る。――人形。――豚。破壊の行為は続く。
「イヤアアァァアアァァーー!!」
「………」
レインウォールを見上げる一人の男がいた。愛する人の無事を願い、愛する人を助けに来たファルーシュであった。
深緑の外套に身を包み、その全身からは殺気が満遍なく溢れ出している。
そして何よりもその目。ギラギラとした憎悪の目はそれだけで人を恐怖に陥れそうだ。
そこにファレナを奪還しようと皆の期待を一身に背負う王子の姿はない。
人の持ち得る全ての負の感情――憎悪、憤怒、怨嗟、呪詛――に委ねた一人の男だった。
ここに来ると思い出す―。ファルーシュは見つからぬよう忍び込みながら思う。
母がおかしくなったのも、ロードレイクが乾いたのも、故郷を奪われたのも全てはここから狂いだした。
怒りが増殖する。
だがここに来なければ、とも思う。
レインウォールに身を寄せなければルセリナはこんな目に遭わなかったのではないかと、
ルセリナに罪の感情を背負わせたのは自分なのではないかとも思う。
ルセリナから全てを奪ったのは自分なのだと後悔する。
だが、しかし。
ここの人間が許せなかった。自分だけならまだしも家族を、多くの人間を利用しようとした者を。
思えばここを捨てたあの日、初めて怒りのまま人を殴った。
――バロウズでなくなったルセリナ様に用はありませんよ
散々自分にルセリナの事を聞いて、貴族でなくなったらもう用はないのか。
「なら、王族でなくなった僕にも用はなかっただろうっ!!」
そう叫び、殴り飛ばした。
全ての者がそうだとは思わないがここに来る人間は狂うのだ、そうファルーシュは思った。
「……は……ぜ……」
人の声が聞こえる。気配を消し、足音を消し声が聞こえる所まで近付く。人数は…二人。
「…ったく、こんな雨の日に哨戒だなんてついてねえなぁ」
レインウォールに駐在する兵士のようだ。
「まったくだ。あ〜あ、今頃他の奴らはあの女を輪姦してんだろうなぁ」
あの女。その言葉に悪寒が走る。
「へへっ、あいつ、ほとんど昨日の夜から休みなしのようなもんだからな。今日は壊れてんじゃねぇか?」
「昨日は良かったよなぁ〜。いや、いやって可愛らしい声で抵抗するもんだから興奮しちまったよ」
「おう、オレも何発もだしちまったぜ。明日にゃどうなってるか楽しみだぜ、ぎゃっはっはっ」
…もう聞きたくない。…もう喋るな。
ファルーシュは飛び出し、一回転し遠心力の効いた三節棍の一撃で一方の男のこめかみを打つ。
ゴシャリッ
最大の力で打ち付けられて、鈍い音がする。頭蓋骨が砕けたようだ。
「なっ――」
突然の襲撃と同僚に起きた惨劇にもう一方の男は驚愕する。だが――
その間すら与えず同時に握っていた短刀で、三節棍を放し喉を浅く切る。
シュパッ …カラン
落ちた三節棍の音が聞こえ、血が噴出しファルーシュにかかる。だが構わずヒュー、ヒューと息を漏らす男の顔を壁に打ち付ける。
「ルセリナは何処だ」
地獄の悪魔もかくや、という声で男に問い掛ける。
しかし、混乱しているのか男は涙を流し喉を押さえるだけ。
もう一度、今度は短刀を頬に突き刺す。ズブリ、と刃は口内にまで及ぶ。
「ルセリナは、何処だ」
先程よりも凄みの効いた声で脅す。そしてついに男がある方向を指差す。
(あっちは、確か…離れの高台?)
レインウォールを案内された時の地理を思い出す。河を挟んだ橋でしかいけない場所だ。
そして男を打ち付けていた手を放す。ズルズルと男は崩れ落ち、しかしこれで助かると思った。
「死ね」
短刀を目に突き刺す。奥に届くように、根元まで押し込んで。
――許すものか、皆殺しだ
命の灯火が消える寸前、男はそんな声が聞こえた気がした。
「んぐっ…ちゅぱっ…はむっ…ごくっ…」
また飛んだ。意識が。それでも何も言って来ない。無意識でもちゃんとやっていたのか。
時刻は夜。場所を処女を散らされた館に戻され、相手も兵士達に変わっていた。
昼近くからレインウォールの住民に犯され、ほとんど休みなしで今も嬲られ続けている。
既に抵抗する気力もなく、男達の言うがままにされている。
ペニスをしゃぶれと言われれば、口に咥え舐め回した。
自分から挿入れろと言われれば、自分から男の体に乗り、秘部を拡げ媚肉で咥え込んだ。
床に溜まった精液を飲めと言われれば、汚れた床に顔を近づけ精液を舐め取った。
自らの手で膣に溜まった精液を掻き出し、それをそのまま飲まされた。
今のルセリナは半ば客観的な視点で自分を見つめていた。
これは自分ではない。この人は別の人間だと思っていた。
一種の自己防衛的行動――
これ以上は壊れるというスイッチが入り、彼女は外の世界を遮断した。
「じゅるっ…ぐちゅっ…んあっ…はぶぅ…」
その変化を感じ取った男達は口々に文句を言う。
「なんだよ、全然反応なしかよ、つまんねぇ」
「やっぱ、やりすぎたかねぇ?昨日から合わせて何人やったよ?」
それは単に自分達が満たされないという勝手な思い。
「あぁ〜、昼間凄かったみたいだしな。回収しに行ったら死んでたかとおもったぜ」
「そうそう、アソコやケツからゴボゴボ溢れてたし、口からも白いモン吐き出してたからなぁ」
「人間、こうはなりたくないと思ったね、ぎゃはっはっ!」
まるでそれが日常事かのように軽口を叩き合い、ルセリナを犯し続ける。
「じゅばっ…けほっ…ごほっ…」
「うっ…、出た出た。まぁ、二、三日すりゃ喜んでよがり声上げてくれるようになるって」
「それはそれでつまんねぇなぁ…。抵抗してくれたほうが張り合いがあって何発も出来るんだけどよぉ」
「いいじゃねぇか。飽きたら捨てて、また新しい女かっ攫ってくりゃいいんだしよ」
「反乱軍にゃあ、イイ女がたくさんいるらしいぜ。あ〜あ、王子とかが喰いまくってんだろうなぁ」
「コイツもそれ知らないだけだったりしてな。良かったなぁ、こっちに来て。
オレ達にたっぷり可愛がってもらって幸せだろう?あぁ?」
その問いにも意識を遮断し、混濁したルセリナには答えられない。
「う…?あ…?」
「チッ、駄目だコイツ。さっきから全然反応しねぇ」
「しゃあねぇ、あと二回ぐらい出したら帰るとす――」
その時、轟音がした。
返り血を気にする事もなくファルーシュは橋を渡った。
橋の前に一人だけ兵士がいたが容赦なく殺し、河に投げ捨てた。罪悪感など微塵も感じない。
橋の向こう側に見張りはいない。無用心だな、と思いながらニヤリと笑う。
さほど広い家ではない。ならば橋を落としてしまえば館の人間は逃げられないし、追っ手も来ない。
本音を言えば、この街の兵士を皆殺してやりたいがそれは不可能だ。
ならばルセリナを助け出す事に専念し、そこを邪魔する者だけを殺す。敵と名の付くものに同情も理解も一切与えるものか。
ファルーシュはそう考えた。
館もさほど広くはない。そして兵士の全てがここにいる訳でもない。
多く見積もったとしても二十人前後。まして奇襲される筈のない場所で襲われればそれだけで人は混乱する。
「ルセリナ…」
快活に、そして照れてはにかむ彼女の笑顔を思い浮かべる。
そして橋を落とそうと右手の紋章を掲げる。
また、疼く。まるでこんな事に使ってはいけない、と警告するように。
「ハハ…」
乾いた声を出し、嘲笑する。
「これぐらい、奴等に比べたら何でもないだろう?」
そう右手に囁く。そして雨の夜に光が炸裂した。
素早く扉の影に立つ。
「なんだ、これは!?」
「は、橋が落ちてる!?」
予想通り。突発的な事態で人をまず原因を探しに行かせる。最初はキサマらだ――
影から悠然と出て、余程慌てていたのか裸でいる男達を打つ。
まず振り下ろし一人目の脳天を穿つ。グシャッ。脳漿が飛び出る。
返す刀で二人目の急所を打ち上げる。何かが潰れる音がして男は泡を吹いて意識を失う。
そして三節棍の連結を外し、より遠心力のついた一撃で三人目の男の顔を砕く。
そして館の中に入る。裸のまま何か喚き散らしている。もう一つの扉の前に九人。
「…焼け死ね」
恐ろしく底冷えのする声で怨嗟を右手の紋章から放つ。
再び放たれた黎明の紋章は一瞬にして右手にいる五人を焼き尽くす。
左手から男が剣を上段に掲げ襲い掛かってくる。隙を突いたいい攻撃なのだが――
憤怒で熱くなっているならいざ知らず、今のファルーシュは憎悪で冷静。
あっさりと三節棍で受け流し、回転しそのまま後頭部を狙い撲殺する。九人目、あと三人。
今殺した男の剣を拾い、男に投げつける。咄嗟の奇抜な行動に男はただ受けバランスを崩し倒れる。
それを呆気に取られる他の二人だがそれが命取りになる。
すこし目を放した隙に目の前まで近付かれ、勢いの付いた突きで喉骨を砕かれる。十人目。
倒れる瞬間に男から剣を奪ったファルーシュはそのまま倒れている男の顔を横から斬る。
顔の半ばで止まった剣を捨てる。十一人目。残りの一人はガチガチと歯を鳴らし失禁している。
あまりの手際の良い殺人術にただ震えた手で剣を構えるだけだ。
泰然自若に近付くファルーシュに、それに怯え後ずさり剣を左右に振るだけ。
――こんな奴等に
ギリッと歯噛みする。こんな下劣な奴等にルセリナは――
そして連結を外した三節棍で剣を絡め取り、零距離で曙光を浴びせる。
人肉が焦げるいやな臭いを発し、十二人目はその体を左右に分けさせられた。
ドガンッ!
扉を勢い良く蹴破る。少し待ち反撃がないのを確め中に入る。ひどい臭いだ――
そして探し人が見つかる。最悪の状態で。
白く濁った水溜りの中で白く汚されていた。
「ルセ、リ、ナ……」
「な、な、なんだ、てめぇは!?」
「お、王子ぃ!?な、なんでこんなとこにいやがる!?」
中にいた五人の男達が喚く。その声も不愉快だ。
「煩い、喋るな」
今日三度目の曙光。一人があっという間に焼けた肉塊と化す。
「ひいいぃーーっ!!」
残りの男達が腰を抜かし、ルセリナから離れる。
そしてファルーシュはゆっくりとルセリナに近付く。
その惨状に心を痛め、ルセリナの顔を拭う。
「…ルセリナ」
「あ…あ…?で、ん、か…?」
色を失っていた瞳に生気が宿り始める。
「うん、僕だよ。ファルーシュだよ」
何の躊躇いもなく男達を殺した者と同一人物とは思えぬ優しい声で語りかける。
「でん、か…いやぁっ!見ないでぇ!見ないでぇっ!!」
心が戻ったルセリナだが、最初の感情は拒否。
助けてくれた事よりも、愛しい人に汚された自分を見られる事の恐怖が勝ってしまったのだ。
だがファルーシュはどこまでも優しく
「…ごめん、ルセリナ。本当に……ごめん」
大丈夫?などとは聞かない。聞ける訳がない。
そう言って自分の外套を掛ける。そして、憎しみは男達へ。
「キサマラ…、殺してやる」
男達は逃げ出す事も忘れて、ただぶるぶると震えるばかり。恐怖が最高潮へ達したのだ。
ファルーシュは手身近にいた男に近付き、ただ乱暴に三節棍を振る。
「なぜ犯した」 ゴシャッ
「なぜこんな事が出来る」 グシャッ
「貴様らは人か」 ゴズッ
ガキッ、ゴグッ、グシャッ、ゴズリ
そこに武術の欠片はなく、ただ粗雑に殴り殺す。
最初こそ悲鳴を上げていた男だが、途中から声も聞こえなくなる。それが絶命だと誰にも分かった。
だがファルーシュは止めない。肉が飛び散り、骨が砕け、返り血が付く。
文字通り肉塊と化した男への手をようやく止め、後ろへ振り向き、また一人、男へ近付く。
服に血が、肉が付いているのを一向だにせず、表情は凍り付いている。
「や、やめてくれぇ!!」
目の前に立たれた男が恐慌し、泣き喚く。手を上に掲げたが衝撃は来ない。激痛は下に来た。
「それを貴様が言うか」 股間への蹴り。
「ルセリナはそれを言っただろう」 ただただ乱暴に。
「貴様はやめたのか」 純粋な暴力。
「なら僕もやめない」 赤いものが流れる。
男は白目を向き、泡を吹いて倒れる。そして次だ。
残った四人の中で幾分まともな思考を取り戻した男が喚く。
「て、てめぇだってオレ達の同僚を殺してきた癖に、な、何言いやがる!」
その男の顔を見てファルーシュは凍える笑みを浮かべる。
「続けろ」
「な!?」
「続けろと言ったんだ。言いたい事は言ってみろ」
どこか楽しげに、どこか哀しげにあざ笑う。
「て、てめぇは何もかも持ってるじゃねぇかっ!だからオレ達も分けてもらって何が悪い!
全て持ってるお偉方にはオレ達のことなんかわからねぇだろう!恵まれたおまえにゃあ、わかんねぇだろう!」
どこまでも身勝手な物言いだった。まるで整合性がない。話の前後すら合ってない。
しかし、ファルーシュは笑った。何とも形容し難い笑みで。
「全てを持っている?」
何も持ってなどいない。自慢ではないが自分ほど何もかも奪われた人間はいないだろう。
本当に欲しかったものはあの日全てこの手から零れ落ちた。
父を、母を、妹を奪われた。唯一傍に残った肉親は遠くへ行った。大切な者まで奪いそうになる事態を起こしてまで。
そしてルセリナを。これ以上何を奪おうというのか。取り返すにはもう遅い――
「もう、何もないさ」
笑って、呆然とする男を殴る。
「これ以上、何を奪うと言うんだっ!?」
感情がごちゃ混ぜになる。取り繕うことなどしない。
「まだ、あれだけ奪っておいて!お前達は足りないとでも言うのかっ!!」
大切なおもちゃを壊された子供のように殴りつける。
「次は何だっ!?次は誰だっ!?僕から世界までを奪うと言うのかっ!!」
涙が溢れる。拳の感覚が麻痺する。
「それともっ!僕はいらないのかっ!?世界が僕をいらないのかっ!?答えろぉっ!!!」
「殿下!!」
気絶している男を殴る手が止まる。ファルーシュを呼び戻す声。ファルーシュが聞いていたかった声。
「ル、セ、リ、ナ……?」
愛しい人が、大好きな人が自分の足に絡みついている。必死に。
「殿下…、殿下は必要な人です。皆にとって。……私にとって」
「だけど、だけどそれは!英雄が必要なだけだっ!皆に都合のいい英雄がっ!」
抱き締められる。
「違います…。私が、私が必要なのはファルーシュ…あなたです」
心に風が吹く。柔らかな暖かい風が凍りつきそうなファルーシュの心を溶かす。
ファルーシュ、と初めて名前だけで呼ばれた。それがとても心地よくて、ファルーシュはルセリナの胸に頭をうずめた。
どれぐらい抱き締められていたのだろうか。ただ一人生き残った男は這いずりながら外へ逃げた。
その男を追うでもなく二人は抱き締めあって――いや、ルセリナがファルーシュを抱いていた。
精液と血が溢れ出るおぞましい部屋。
混沌と狂熱が存在するこの部屋の中、二人の周りだけが清廉だった。
子供のように泣いていたファルーシュがやがて落ち着き、声を発する。
「逃げるよ、ルセリナ」
短くも力強い言葉。その言葉に安堵しルセリナは
「はい」
とだけ告げる。
見た目よりも力のあるその腕でルセリナを抱き上げる。
「しっかりと掴まってて」
そしてルセリナもファルーシュの首に手を回す。
館の入り口から外を見る。既に騒ぎを聞きつけた兵士達が橋のあった向こう側で右往左往している。
これでは逃げられない、とルセリナの体が震え、手の力が強くなる。
しかしファルーシュはどこまでも優しく諭す。
「大丈夫、ルセリナは必ず守る。僕を信じる?」
信じられない筈はない。ファルーシュはここまで来てくれたのだから。
「勿論です、殿下」
そして河に飛び込む。高さもあるが迷うことなく。
ルセリナを抱え、苦しまないようファルーシュの背中から水の中へ沈んでいった。
「河へ飛び込んだ!下流を探れ!決して逃がすなっ!!」
それを対岸から見ていた兵士達は渋々散っていく。
彼らは知っているのだ。同僚がどのように死んだのか。
あの館には二十人弱はいたはずなのに飛び込んだ男は一人だった。
それはつまり全員殺されたと言う事。そんな強い奴を元々怠惰な兵士達は張り切って探そうとは思わなかった。
場所は変わり、ある場所の河岸。
「げほっ!ごほっ!無茶しすぎたかな…。ルセリナ、大丈夫かい?」
「ごほっごほっ…は、はい。何とか」
河から上がりぐったりする二人。特にファルーシュはルセリナを抱え泳いだのだ。
決してルセリナの体を離す事無く。体力の消耗は著しいはずだ。
「けほっ、ですが殿下。このままでは追っ手が…」
頭の回転が速いルセリナは瞬時に疑問を口に出す。ところが
「ああ、それなら大丈夫。上流…ハウド村に向かって泳いでたから」
今頃兵士達は慌てて下流を隈なく探し回っているだろう。
「だけど、あんまりのんびりはしてられないね。よっと」
「で、殿下!?私はもう抱えなくても大丈夫ですから!」
「駄目。それは許さないよ。もう…離したくないし」
揺るぎない決意。ルセリナと自分への永劫の誓い。
愛する人を抱き上げ、ファルーシュはエストライズへ向かう。
エストライズへ着いたのはそれから丸一日経ってからの事だった。
敵に見つからぬよう遠回りに走ったものの、丸一日で、というのはファルーシュの力に寄る所が大きい。
ルセリナがいくら休むように勧めても、一刻も早く休ませたいが為殆ど小休止で済ませていた。
「はぁ、はぁ、…ふぅ。ルセリナ、ご免、ここにいて」
ボズの実家の扉の横にルセリナを座らせる。
コンコン
「はい、どちらさま?」
「すいません夜遅くに。ファルーシュです」
「王子殿下!?あら、どうなされたのです?」
扉を開けられドナが姿を現す。
「すいません、ビッキーを呼んでもらえますか?ここに世話になってくれと言っておいたのですが」
「はい、確かにいますよ。すぐ呼んできますね」
姿が見えなくなってからルセリナを見る。
一目見たところ擦り傷などがあるものの大した傷はない。しかし心に負った傷は何よりも重傷の筈だ。
すぐに休ませなければならない。
「はい、お待たせしました。…ほら、ビッキーちゃん、王子殿下ですよ?」
「ふにゃ…、おうじ様…?おかえり…むにゅぅ」
いつも夜見かけるビッキーそのままがいた。
「すいません、ドナさん。このお礼は必ず後で伺います。今はこのまま消えるのを許して下さい」
「いえいえ、王子殿下のお役に立てることでしたらいつでもどうぞ。でもお待ちしておりますわ」
「はい、すいません。…お休みなさい」
そう言って、寝ぼけ眼のビッキーを引きずっていく。
「ビッキー、ビッキー。お願いがある。僕の部屋にテレポートしてくれないか?」
「むにゅう…やってみるぅ…え〜い」
些か頼りない返答ではあったが果たして次の瞬間にはファルーシュの部屋にいた。
成功した!と思いまずはすぐにルセリナを自分のベッドに運ぶ。
今は疲れたのか眠っている。しかし辛そうな顔で、悪夢でも見ているのかうなされている。
「当然だよな…」
実際彼女は悪夢を見てきた。それこそ終わりなき悪夢を。自分の不甲斐無さに腹が立つ。
まずはビッキーを所定の位置まで送ろうと振り返り、そこで足がガクンとなる。
ファルーシュも既に限界だったのだ。しかしここで膝をつく訳にはいかない。
えへへ、と奇妙に笑いながら眠るビッキーをいつもの位置まで戻し、医務室へ向かう。
同室で眠るリオンを起こさぬよう最小の音でノックする。
「シルヴァ先生、いらっしゃいますか?」
十数秒後、ドアが開かれる。
「王子か、こんな時間にどうした。リオンなら――」
「すいません、急患なんです。付いて来て下さい」
自らの言葉を遮ってまで話すファルーシュに驚くものの、急患、の言葉に直ぐに医者の顔になる。
「…どこだ?」
「僕の部屋です!お願いします!」
そしてシルヴァを伴い、部屋に来てルセリナを診せる。
厳しい顔を変えないシルヴァが彼女の体を診て愕然とする。そして怒りの声が混じる。
「王子。これはどういう事だ」
年老いたとは言え、同じ女。ましてやシルヴァは戦場にもいた。これが分からない筈がない。
「すいません…、事情は必ず後で話します。ですからまずはルセリナを…!」
そのファルーシュの様子に只ならぬ事態を感じ取り、それ以上質問する事無くルセリナを診る。
理解してくれた事とルセリナをお願いしますとの気持ちを込め、一礼し部屋を出る。
これでいい、ようやく彼女を休ませられる…そう思いファルーシュは部屋の少し前で意識を喪失した。
目が覚めた時、見知らぬ天井が見えた。ここはどこだ…?
「あら、お目覚めですか」
慣れ親しんだ声が横から聞こえる。
「…ルクレティア?」
「はい、そうですよ。貴方の軍師の素敵なルクレティアさんです。気分はどうですか?」
未だルセリナの惨状が頭に焼き付くファルーシュは彼女の事を想い返事をする。
「…反吐が出る程最高です」
「そうですか。まずは無事で何よりです」
ファルーシュの皮肉をさらりと受け流し、それでも安堵の表情を浮かべる。
「貴方は部屋の前で倒れてました。他の人に見つかると色々厄介な事になるので私のベッドに寝かせました。
私のベッドに男性が寝るのは初めてなんです。思う存分感謝して下さいね」
「ありがとう。…ルセリナは?」
ルクレティアの軽口を聞き流し、今最も知りたい事を尋ねる。
「まだシルヴァ先生が診ておられます。あの人と私以外立入禁止にしてあります。
……大方は聞きましたが、やはり…そうなのですか?」
ルクレティアにしては歯切れの悪い問い掛け。だがそれだけで何を聞いているか分かる。
「…ああ」
そう答えるだけでルクレティアにも分かったのだろう。沈痛な表情を浮かべる。
「王子」
「言いたい事は分かってる。一つ間違えれば僕も捕まり、ここの軍が空中分解する事態にもなりかねなかった。
それでも、そして今でも行くしかなかったと思っている。結果良ければ全て良しだなんてとは言わない。
頭に血が上ったのも確かだ。それでも…助けたかったんだ」
ルクレティアの言いたいだろう事を先に言って、それから非難と叱責の言葉を待つ。
しかし彼女の口から出たのは、
「そんな事は言いませんよ。王子なら分かってるだろうと思ってましたから別に言うことじゃありません。
ただルセリナさんを助けて下さってありがとうございました」
呆気に取られる。
「また見透かされてたか…。でもルクレティアが言うことでもないだろうに」
「いいえ。レインウォールに人員を増やしたとは聞いていました。そんな中、彼女を使いに出した私の失策です」
「ルクレティアのせいでもない。悪いのは…奴等だ」
再びファルーシュの表情に憎悪が出てくる。歯軋りをし、唇を噛む。
「今は…何とも出来ません。それよりも今は彼女の元へ行ってあげて下さい。きっと待っている筈です」
「だけど…」
今男である自分が近付いて大丈夫なのだろうか。
しかしその迷いも見透かされ
「大丈夫です」
その思いが今は嬉しく
「本当に…敵わないなぁ。うん、行ってくる」
「ええ。……支えてあげて下さい」
「言われなくても。…介抱ありがとう」
そして部屋を出て行く。その後姿を見送りルクレティアは誰に言うでもなく呟く。
「変な所で理性的なんですから。こういう事に策などいらないんですよ」
それからルセリナはファルーシュの部屋で療養する事になった。
チャックが詰め寄ってきたり、カイルやミアキスなどの類がからかってきたりもしたが、
そこはそれ百戦錬磨のルクレティア、シルヴァ、そしてファルーシュの三人はうまくはぐらかした。
「重い病で静かな環境がいいのだ」
そう周りには言っておいた。無論、間違いのでもないのだが。
ただルセリナは普通に寝起きをしているのだが、未だ人、ことさら男性には恐怖を覚えている為の止むを得ずの処置であった。
そのルセリナも例外にファルーシュにだけは接する事は出来た。そしてそれが唯一の治療法でしかなかった。
ファルーシュはその事に嬉しくも思ったのだが、同時に不甲斐無さを感じる。
例えば、お互いが普通に話していても、ただ集団の人の足音が聞こえるだけでルセリナは体が震える。
体に染み込まされた恐怖は未だ何も消え去っていない。そしてもうひとつ――
例の事件から十日程経ったその日も、ファルーシュは二人分の食事を持ち自分の部屋へ戻る。
今まで皆と取っていた食事も今ではルセリナと二人だけが習慣となっていた。
このままでいいのかとも、このままがいいとも相反する思いを抱き階を上がる。
今まで以上にルセリナと一緒にいられるのは嬉しい事なのだが、状況が状況なだけに今一踏み込めない。
ふぅ…と一つ溜息をつき、部屋の前に立つ。
「ルセリナ、僕だよ。入るね」
返事はない。妙だなと思いながらもう一度声をかけようとする。
その時、中から苦しげな声が聞こえてきた。
「……うぁ……くぅっ…」
また発作か!と思い、中に入ろうとする。ルセリナは今まで原因不明の発作を時々起こす。
いや、原因ははっきりしている。悪夢にうなされる為だ。
しかし中に入ったファルーシュの目に映ったのは発作に苦しむルセリナではない。
「ううんっ!…あぁ、ぐすっ、どうして…こんなぁ…んあっ!」
涙を流し、自分の行為を不快に思いながらも、淫らな姿で秘部を慰めるルセリナ。
その光景に愕然とし、食事の乗ったトレイを落とす。その音にルセリナがようやくファルーシュに気付く。
「殿下!?……ああぁ、私、私…」
余程熱中していたのか自らの乱れた姿を隠す事無くただ呆然とする。
どうして、こんな。
ファルーシュは何も答えずにルセリナに近付く。
なんでルセリナがこんなにも苦しまなければならない。
ベッドに横たわるルセリナを見つめる。そこに情欲などなく。ただ助けたいと思った。
そしてルセリナの横に座り抱き締める。あの時にしてくれたように。そして囁きかける。
「苦しいのなら…辛いのなら。僕が慰めてもいいかい?」
恋人に囁くように。
ルセリナは初め、何を聞いたのかと思った。さぞ自分で自分を慰める姿に失望したのだろうと思っていたから。
そして同時にファルーシュもそうなのか、と思ってしまった。結局王子も男なのか、と。
しかしそれは間違いで、最初に唇が触れる。
「んんっ!?うぅ…はむぅ…」
不快な気持ちなど微塵も感じない。ファルーシュの唇からはただ愛しさと優しさを感じ取れた。
「はぁ…ちゅぱっ、じゅるっ、くちゅっ…で、ん、か…はむっ…」
それに安心し舌を差し出す。ファルーシュも変化に気付きルセリナの舌を絡め取り、咥内を舐めまわし、口付けをする。
思えばこれがファーストキスなのだとルセリナは思った。
レインウォールの男達にとって、口はペニスをしゃぶらせる為のものでしかなかった。
何人もの肉棒を咥え込み、その精を飲まされた口なのに、ファルーシュは何処までも優しく穢れを落とすように舐め回す。
「ぷはぁっ…殿下、殿下ぁ…」
長い長い濃厚なキスの終わりに、二人の口からは唾液の糸が垂れる。
そしてファルーシュに優しく横にさせられる。壊さないように、穢してしまわないように。
服を優しく脱がせられルセリナの肢体が露になる。
ほうっ…とキスで蕩けた目にファルーシュの姿が目に入る。
穏やかな柔らかな笑み。男に触られる恐怖など感じず、全てを委ねられると思った。
そしてファルーシュの口が、手が乳房に触れられる。
「ふわあぁ……でんかぁ…んんっ、ああぁっ、んはぁっ!」
甘い声が出た。愛する人に触れられる事はこんなにも気持ちいいのか。
苦痛も恐怖も感じさせない。ただ心から暖かな気持ちになる。
「こんなっ、すご、いっ!あふぁ…んくっ、ひゃあぁ…」
乳房の形が歪む。舌が嘗め回し唾液がトロリと糸を引く。指先が乳首をコリコリと弄られる。
「んああっ!こ、えが、とまらなっ、ふわぁ…でんか…でんかぁ…」
最愛の人の愛撫に嬌声を上げ、愛しい人へ呼び掛ける。
「もっ、とぉ…もっとして、くださいぃ…わたし、を、味わってぇ…」
より極上の快楽を求める。もっとこの気持ちを昇華して欲しかった。
それに同意したのか、ファルーシュの手が今度はルセリナの秘肉に触れられる。
シュッ…シュッ…と擦られるだけでルセリナはより蜜を垂らす。
「ひゃああぁっ!すごっ、こんなっ、あた、まが、しびれっ…!」
未だ胸は口に含まれたまま、自らの秘部は汁を垂れ流しファルーシュの指をも濡らす。
「んはぁっ!ゆびが、ゆびがぁ…入って、くるぅっ、中がぁ…擦られっ…」
濡れそぼった媚肉は容易くファルーシュの指の進入を許す。いや自ら飲み込んだのだ。
中に入った指は前後に動き、また角度を付けて優しく抉る。そのアクセントがルセリナをより感じさせる。
「でんかぁ…すごいのぉ…これ、これ、感じすぎっ、すごすぎるぅっ!」
あまりの心地よい快楽に口からは涎が垂れ流れ、またそれをファルーシュが舐め取り口に含ませる。
「ふむぅ、じゅばぁ、ちゅるっ、あふぁ…でんか、でんかぁっ!」
獣のようにお互いの唾液を飲み干し、媚肉は指を飲み込む。そして指が蜜壷に触れられる。
「んああぁっ!そこっ、だめぇっ!くるうっ…狂ってしまいますぅ…あはぁっ!」
何かが来る。恐ろしいものではない。悦んで受け入れられるものだ。
指の出し入れの速度が上がる。胸は口に含まれ歯で乳首を甘噛みされる。蜜壷がコリッとひねられる。
「んはああああぁぁーーーっ!!!」
絶頂の悲鳴、否、絶頂の歓喜の声。蜜壷からは汁を噴出し、ファルーシュの掌をぬらす。
心地よい疲れと愛しい人に抱き締められている安堵感から、ルセリナは眠りに落ちようとする。
その間際、情事の間、一言も発しなかった愛する人の声が聞こえた気がした。ただ一言、
「おやすみ…」
と。
久しぶりの快適な目覚めだった。何にもうなされる事もなく爽快な気分だった。
ふと昨夜の事を思い出す。しかし自分はちゃんと寝間着を着ているし、ベッドのシーツも濡れていない。
あれは夢だったのかと思う。悪夢に耐えられず、都合の良い幸福な夢を作り出したのかと思った。
そう疑問にも思ったが、はたと気付いて自分の体を見る。
痕がある。唇の痕。ファルーシュが自分に触れた証がそこにあった。
コンコン
ノックの後に想い人の声が聞こえる。
「ルセリナ、僕だよ。もう起きてるかい?」
急な出来事にどんな顔をしたものかと迷いながら
「は、はい。起きてます」
と答えざるを得ない。ファルーシュ殿下はどんな顔をしているのか――
「良かった。もう起きてたんだね。お早う、ルセリナ」
しかしあるのはいつも通りの穏やかな笑顔。思わずドキリと心が鳴る。
「お、お早うございます、殿下。あの…」
「朝食を持ってきたんだけど、食べられる?起きてすぐなら、無理はしないでいいけど」
まるで何事もなかったように喋っている。しかしそこにいつも以上の優しさが垣間見えるのは気のせいか。
「い、いえ、大丈夫です。頂きます。すいません、いつもいつも…」
「ん、それなら一緒に食べよう。話しながら食べたほうが楽しいしね」
そう言って食事のトレイをテーブルに置く。
「じゃあ、着替え終わったら呼んでね。先に食べちゃったら怒るからね」
そしてひとまず部屋を出る。その後姿を見送り、本当に昨夜の事はあったのか頭を捻らざるを得ないルセリナだった。
普段着に着替え、二人一緒に朝食を取る。朝食はパン、野菜と果物のサラダ、それと紅茶だった。
シチューなどの汁物の類は一度ルセリナが吐き気を催して以来ない。
それを察してくれて、今は固形物のみを選んで運んで来てくれる。
朝食はとても楽しかった。爽快な目覚めのお陰か今日は何時もより口数も多くなる。
それでもやはり気になる。はしたない事だとは分かりながらも聞かずにはいられなかった。
「殿下」
「うん?どうしたの、真剣な顔つきになって…」
お替りの紅茶を含んでから答える。
「そ、そのお聞きしたい事があって…。あの…昨夜の事なのですが…」
恥ずかしくて語尾が小さくなる。
「……うん。あの時はああするしかなかったんだ。あまりにもルセリナが辛そうだったから。
本当はいけない事だったのかもしれない。だけど僕は、ルセリナを助けたかった」
泣きそうな顔になり、語るファルーシュ。
「だから…気に障ったのなら、もうしない。ごめん」
その優しい気遣いが本当に嬉しくて。
「で、殿下が謝る事なんてありません!わ、私は、その、う、嬉しかったものですから…」
言ってから顔を赤くする。何て事を口走ってしまったのだ!
「う、嬉しかった?それ…本当?」
「は、はいぃ……」
顔から火が出そうだ。だけどここまで来たのなら、と決意する。
「そ、それで、あの、殿下がよろしければ今後もその…してくださると…嬉しいです…」
最早言葉尻は消え入りそうだった。
「え?あ、うん。そ、その、えと、こ、今後ともよろしく」
「は、はい!こちらこそ!不束ものですが、お、お願いします!」
新婚の初夜のように二人とも半ばヤケクソだった。
その日から奇妙な関係が続いた。
食事を一緒に取り、今や内務の仕事も出来るまでには回復したルセリナとファルーシュはなるべく一緒にいた。
同じ机で仕事をこなし、休憩は共に取りおおいに盛り上がる。
ルセリナはまだ部屋から出たがらないものの、二人とも最高のパートナーのように過ごす。
夜はルセリナが発情してしまった時にだけ、ファルーシュが慰め、眠りに落ちたのを確めてから別の部屋の寝室に戻る。
そう、ファルーシュは決して自ら求めない。そして抱こうともしない。
自分の欲望をひたすら抑え、ルセリナに恐怖を思い出させないよう、ただルセリナの快楽だけを昇華していた。
初めはそれでもよかったのだ、ルセリナには。自分の身を案じてくれるのは嬉しい。
しかし、少なからず彼女にも不満があったのかもしれない。
そして望んでいるのかもしれない。ファルーシュと結ばれたいと――
ファルーシュはその日、一日中違和感を感じていた。ルセリナの様子がおかしい。
共に仕事をしていてもどこか呆然としていたり、また呼び掛けてみれば、
「は、はいぃ?なな、何の御用でしょうか?」
上擦った声で非常に歯切れが悪い。どこか調子でも悪いのかとも思ったがルセリナはそれを否定する。
嫌われた訳ではないようでホッとする。
いくらルセリナの為とは言え、その体の隅々まで見てしまっているのだ。
その優しさでただ受け流されてるのではないかと気を揉んだ事もある。
それを伝えた時はいつもの照れてはにかむ笑顔で
「殿下だからこそ、してもらいたいのです」
と言ってくれた。なのに今日は変だ。どこかおかしい。
その悶々とした気分で夜を迎える。
「ファルーシュ殿下…」
艶っぽい声色でそう呼ばれては今日も慰めるしかない。
ルセリナを助けてあげられるのは自分しかいないのだから。しかしその後に続く言葉があった。
「その……もう、いいのです…」
それは拒否の言葉。やはりこんな事は間違っていたのだ。
「そう……ごめん。君の気持ちも考えずに。…帰るね」
目の前が真っ暗になり、身を翻そうとする。
「あ、あの殿下?」
「もう、いいんだろう?もう僕は必要ないんだろう?だったら…」
ルセリナがしまった!というような顔をする。それを妙に思い、先を聞こうとする。
「あ、あの殿下!そうではなくて、その、もう、我慢される必要はないと言う意味で……」
「?」
「い、いつもいつも私ばかりが気持ちよくなってしまって…。で、ですから殿下にも、その…。
気持ち良くなってもらいたいと言う意味で、その…」
まるで顔から火が出るのを通り越して沸騰しそうな表情で言葉を紡ぐ。
「それは……つまり、僕がルセリナを…?」
「は、はしたない女だとお思いでしょうが、わ、私も殿下に…大好きな人に…抱いてもらいたいのです…」
大好きな人。その言葉に頭を物凄い勢いで金槌が殴りかかる。
「僕で…僕で、いいのかい?」
「殿下が、ううん、殿下でなければ嫌なのです。
私のような穢れた女に、こんな事を言われるのはご迷惑でしょうが……んんっ!?」
ルセリナの唇を奪う。あまりにも愛おしくて。
「ちゅぷっ……穢れてなんかいない。ルセリナは綺麗だよ…だから、笑ってくれる?」
いつか言った言葉を再びかける。
「僕も、君が好きだ…愛してる」
「殿下…殿下ぁっ!!」
涙を流しながら、必死に笑おうとする少女を抱き締める。
もう、何もないさ、そう言い放った少年は今、何よりも大切な人をその手に掴む――
キスを重ねながらルセリナの服を脱がす。ベッドにしゃがませて。
今までに何度も見てきた筈なのに、今日は一段と輝いて見える。それは彼女を抱けるという興奮からなのか。
「本当に……綺麗だ、ルセリナ」
もう一度囁く。
「で、殿下…そんな風に言われると恥ずかしいです……」
顔を真っ赤にして背けるのがまた可愛らしくてつい悪戯をしたくなる。
かぷ
「あひゃああぁっ!?ででで殿下!?どこを噛んでるんですかっ!」
背けた時に目の前にあった耳を甘噛みしたのだ。予想もしない攻撃にルセリナは素っ頓狂な声を上げてしまう。
しかしそんな非難にもめげずにファルーシュはあっけらかんと答える。
「いや、ちょうど目の前にあって美味しそうだったから。それとルセリナ」
「は、はい」
「僕の事、名前で呼んで」
あ、また可愛い表情だ。ぼけっとしている。
「え、えぇ!?で、ですが!」
「折角恋人同士になれたのに、殿下、ってなんか余所余所しいんだよね。だから名前で呼んで、ね?」
その笑顔はルセリナにとって強烈な破壊力だった。こんな笑顔で迫られては断れる筈もなく。
「ふぁ、ふぁ、ふぁ」
「うんうん」
「ふぁるっ、ふぁるっ、ふぁるっ」
壊れたオルゴールのように繰り返す。
「ふぁ、ファルーシュ……」
ようやく言えたと思えばボンッという音が聞こえそうな程真っ赤になる。
「そうそう、これからはずっと名前だけで呼んでね?せめて二人きりの時だけでも」
「はい…ファルー…シュ、今日は何か意地悪です」
プクーッと頬を膨らませる。やっぱりもっと色んな表情を見たい。そう思わされる。
「ごめんごめん。ルセリナが可愛すぎるから」
「やっぱりファルーシュはずるいです。そんな風に言われたら許すしかないじゃないですか」
そして二人で笑い、また唇を重ねる。
「んんっ、ちゅるっ、はむぅ…ふわあぁ…」
キスをする場所を唇だけでなく、少しずつ下へずらしていく。
もう興奮してくれているのか肌が赤みを帯びていく。
「ああぁ…ファルーシュ…ふはぁ…」
口付けをし、時折舌で舐め、ルセリナの肌を味わい尽くす。
そしてさらに位置をずらし、一つ目の目的地へ辿りつく。柔らかな膨らみを口に含む。
「ああんっ…むね、感じて…しまいますっ…!」
左の乳首を舌で弄び、右の胸を掌で覆い被さり揉みしだく。
「んはぁっ!そ、こ、よわいのっ!あんまり…強くしないで、んくっ、くださいぃ…」
甘い声を惜しみなく聞かせてくれる。自分の脳が蕩けてしまいそうになるほど魅力的な甘さだ。
もっと聞かせて欲しい。
「本当に…?本当はもっと強くしてもらいたいんじゃないの?」
歯で噛み、指でキュッとつねる。
「あああぁっ!!ほん、とに、よわい、んああっ!からだがっ、支えられ、なくぅっ!!」
後ろに倒れそうになるルセリナを片方の手で支え、胸から離される。
「ふうぅ……はぁ……ファルーシュぅ…」
弱弱しい声で少し恨めしそうに見る。
「ごめん…少しやりすぎた」
あまりバツが悪くなさそうな顔をしてルセリナをそのまま横たわらせる。
「ううぅ〜〜〜」
自分は果たしてここまで責めっ気があったのかと、自分のことながら不思議に思ってしまう。
どうにもルセリナは色々な意味でそそられるようだ。
ベッドに横たわるルセリナは当に珠玉の宝石に見えた。
その柔らかな、普段は生き物のように揺れる髪がファサッ、と広がる。
全てをファルーシュに委ねているルセリナに最早怯えはどこにも見当たらない。
そして足元に顔を寄せ、ゆっくりと足を開かせる。
顔を近付かせ、ふぅっ…と息を吹きかけると、ひくひくと蠢く。
既に十分すぎる程、茂みは濡れそぼっていたがまだ勿体無い。もっともっと味合わなければ。
「ルセリナ…口でやるよ?」
「は、はい。ファルーシュのお好きなように……」
本当にそそられる台詞を言う。これではいじめてくれと言っているようなものではないか。
舌で茂みの先のクレパスをなぞる。
「あああっ!なに…これぇ…ふああぁっ!!」
未知の感覚に、それでも嬌声を上げる。今までに口で秘部を慰めた事はない。さぞ嫌悪感を感じるものと思ったのだが。
「んふぅっ、ふわぁ、ああんっ、中に、なかにぃ…した、が、あはぁっ!」
舌先を中に捻じ込ませ媚肉を舐め回し、粘膜をつつき、愛液をわざと音を出して吸い取る。
「ひゃああんっ!!そんなぁ、やめてぇ……恥ずかしい、んっ、ですぅ…」
指先も動員して中へ挿入する。そして舌で一番敏感な所を開き、覗かせてからつつき回す。
「ふああっ!だめっ!そこっ、かんじっ、すぎっ!?くる、くる、きて、しまいますっ!!」
「そのまま、気持ち良くなって!思う存分感じてくれっ!」
速度を、強さを上げ、絶頂へ導く。
「っ!?ファルーシュっ!?んああああぁぁーーーっ!!!」
プシャアァッ
ルセリナの絶頂の証がファルーシュの顔にかかる。まるでお漏らしをしてしまったように。
「凄い……ルセリナ。今までより気持ち良かったんだね…」
舌先でルセリナの吹いた液体を舐め取り、だらしなく口を空けるルセリナを見つめる。
「う、あ…ごめ、ごめんにゃはい…わたし、ふぁるーひゅのぉ…」
涎をたらし、絶頂の余韻に呂律が回ってない。それにまた興奮してしまい、
「ルセリナ…、じゃあ、舐めて。顔にかかったもの、舐めて綺麗にして、ね?」
その言葉を理解したのか、必死にファルーシュを舐め回す。
生まれたての子猫に舐められるような、そんな感触だった。
チロチロと触れる感触にファルーシュの興奮は最高潮になる。ついに、ついに!と思わずかぶりつきそうになる。
だけど本能の激流を必死で押し留める。ここで焦っては全てが台無しになる。
「ルセリナ……もう我慢出来ないよ。…いいかい?」
再び破壊力抜群の笑顔。今日だけで、この顔をすればルセリナは何もかも許してくれると確信出来ていた。
それを分かっていて尚も笑顔を見せる。人を惹きつける、王子の真骨頂がそこにあった。
「はい…ファルーシュ。来て、来てください。私で…気持ちよく、なって下さい…」
予想通り、ニヤリ、と笑いそうになる口を必死で抑え、真面目な顔を作る。
「うん。じゃあ……入れるよ…」
ズヌリ
絶頂を迎え、既に十分に男を迎え入れる準備が出来ていた媚肉は、何の抵抗もなく男根を飲み込む。
「うあああぁっ!!ファルーシュっ!ファルーシュぅっ!!」
最早、名前を呼ぶ事に何の躊躇いもなくなったルセリナは、目の前の恋人の名を呼びその体に手を回す。
「うああっ…やわらかっ…!?すごすぎ、る…!?」
一方、ファルーシュは自分のペニスを包み込むその感覚だけで果ててしまいそうになる。
入れただけでキュッキュッと締め付けるその快楽に、大した経験もないファルーシュは頭が痺れる。
それでも何とか男の面子を保とうと、必死に腰を動かす。
「うはぁっ、ふぁるっ、しゅ…おおきい…なか、なかがぁ…えぐられっ、んああっ!」
ファルーシュに先程のような余裕はもうない。自らのペニスを包み込む感触と、
甘く甘く嬌声を上げるルセリナの声に、ただただ飲み込まれていくばかり。
「んふぅっ!もっとぉ…もっとぉ、して、ああっ、くださいぃ…あひゃあっ!」
これはまずい。まずすぎる。こんなものに耐えられる訳がない。
苦痛も悲しみも耐えられる。だけど…これはっ…!
「うああっ、ルセ、リナ…まず、い…!?」
ルセリナが笑った気がして、その時また締め付けられる。
ドビュルルルッ!
「あ、あ…うあ……」
繋がったまま、中に出してしまう。その快感に体を震わせる。
「ああ…ファルーシュ、そんな、に、気持ちよかったのですか…?」
ルセリナの声に我に返る。
「ご、ごめん、ルセリナ。つい我慢出来なくて…」
ふふ、と笑いながらルセリナはファルーシュの頭を撫でる。
「いえ、私は嬉しかったのです。ファルーシュが、私で気持ち良くなってくれた事。
そしてファルーシュの精を中で受け入れられた事が」
「ルセリナ…」
「そ、その少しは年上らしい所を見せないといけませんし…って、ええっ!?」
まただ、また。何もわかってない、この娘は。その言動全てが男を興奮させているのだと理解させてやらねばいけない。
股間のものが再び硬度を増していく。
「んあっ、そんな、出したばかりなの、にっ、また、大きく…!?」
「ルセリナ…そんな可愛い事を言ったら治まりがつかなくなるじゃないか…。
もっと、味合わないと…いいよね?」
今日一番の破壊力を持った笑顔が炸裂した。
「うああぁっ!すごっ、さっきよりっ、はやっ、ふああっ!」
一度精を放出した為か、少しばかりファルーシュに余裕が生まれる。
ただ腰を前後に突くだけでなく、少し角度を変えたりしてルセリナを抉る。
「ふわぁっ…ファルーシュぅ…こんな、こんなのって、ああんっ!」
膣中を突きながら胸を口に含み乳首も弄る。それだけでなく蜜壷も責める。
自らの快楽だけでなく、ルセリナの快楽をも増幅させようとしているのだ。
自らを襲う快感に、しかしルセリナは恐れる事無く身を任せる。
「ひゃんっ!あぁ…すご、いっ!?ぜんぶ、全部感じて、ふあぁっ!しまいますっ!」
知らず知らずにルセリナも自らの腰を浮かしたりして、より快楽を求める。
二人が繋がっている場所からは、淫靡な水音がして、先程の精液が小さな白い泡となり掻き出される。
少女は女として大切なものを奪われた。
少年は周りから何もかもが消え去っていった。
だけれども。
奪われた二人は今、何よりの幸福を手に入れる。
お互いの傷を舐め合うではなく、お互いで支え合い助け合い、ようやく一つになれた。
二人はこれからも罪を背負い生きていくしかない。
しかし許し合いながら生きていけるはずだ。
「ファルーシュっ!もっとぉ…もっとぉっ!ファルーシュぅっ!!」
「ああ…ルセリナ、ルセリナっ、ルセリナっ!!」
絶頂が、近い。
「ファルーシュ、ファルーシュ、一緒に、いっしょにぃっ!!」
「うああ、イク、イクっ!ルセリナっ…!」
傷は消えない。それでも。
「ふあああああぁーーーーっ!!!」
大切な人を、取り戻した――
「ねぇ、ルセリナ」
「なんでしょう?ファルーシュ」
ベッドの上で二人、情事の後の甘い睦み合いの中、ファルーシュはルセリナの髪をクルクルと弄りながら話しかける。
「その、こんな事は聞きたくないのかもしれないけど…体は大丈夫?」
思いがけず、半ば雰囲気に流されたように抱いてしまったのかもしれないと後悔する。
「……。心配して下さるのは嬉しいです。まだ……他の人は怖いですけれど、
ファルーシュと一緒なら、いつか笑って過ごせると思います」
矢張り強い女性だ、と思った。自らの傷を認め、尚、前を向いて歩こうとしている。
だから自分は支えなければいけない。罪の意識を与えてしまったこの少女を。この小さな可憐な、自分が愛する少女を。
「ルセリナ…大好きだよ」
それらの思いを託して抱き締める。もう二度と離さない、もう誰にも奪わせない。
「ファルーシュ……大好きです」
ルセリナも誓う。強くなければいけないこの人を守る、と。
自分の前でだけ、弱さを、辛さを吐き出したこの少年を精一杯包み込むと決心をする。
「ふふ…可愛いです、ファルーシュ」
「ル、ルセリナ?」
よしよしと頭を撫でられるファルーシュ。こんなのは幼い頃、母親にしてもらっただけだ。
「一応、私のほうが年上ですから…。甘えたい時はいつでも言ってください、ね?」
極上の笑顔。どんな宝よりも手に入れにくい、最高の微笑み。そして男を魅了する魔性の笑み。
まただ、また。この男を興奮させる笑顔。
理解させなければいけない。他の男に見させない為に。これを見る事が出来るのは自分だけだ!
「じゃあ、甘えるね。…ルセリナ」
「あ、あの、ファルーシュ!?」
あの最早逆らう事の出来ない破壊力抜群の笑顔をして押し迫る。
夜は長い。未来も長い。
一からこの少女は教育しなければ。
<完>