5主人公×リオン 著者:7_825様
戦勝の祝宴も終わり、不思議な高揚感を抱いたままファルーシュは自室のベッドに寝転んだ。
ログやハレスに勧められるがまま慣れない酒を飲んだからだろうか。
それとも、多大な犠牲を払った戦いが終わったからだろうか。
瞼を閉じると母と父、そして伯母の姿が浮かぶ。
戻らない平和な日々、もう母の優しい声を聞くことも、自分をおもちゃにする父を見ることも、
リムと自分のことを最後まで心配してくれた伯母と話すことも出来ない。
そう思うと、押さえつけていた涙が止まることなく溢れ出した。
幼い頃に「男なら泣くな!」と父に言われた記憶が蘇る。そんな昔の何気ない一言でさえ、
今のファルーシュには悲しかった。
「うっ…ううぅっ…」
いつしか嗚咽からベッドに潜り込みうなるようにファルーシュは泣いた。
──母さん、父さん、伯母さん、今は、今だけは泣かせてください──、と
不意にベッドがきしみ、ファルーシュの頬に優しく手が添えられた。
「え…」
涙でぼやけた視界が薄い桜色でいっぱいになる。
「リオン…?」
顔を上げて涙をぬぐうと、そこにはいつもと変わらない微笑みを浮かべているリオンの姿があった。
「王子…」
リオンはまるで子供をあやすかのようにファルーシュをそっと抱き寄せた。
その体からは心地よい暖かさと、落ち着く懐かしい香りがした。
ファルーシュもその心地よさに身を任せ、またさめざめと泣いた。
そんなファルーシュをリオンはただ背中をさすりながら抱きしめ続けた。
「王子、わたしはこれからもずっとずっと王子のお傍でお守りしますから…」
そういうとリオンは抱きしめていた腕を緩め、頬を伝う涙を拭い、
そして静かにファルーシュの唇にキスをした。
ただ唇を重ねるだけ。しかしその唇からはリオンの暖かい気持ちが流れ込んでくるようだった。
リオンは唇を離すと、照れくさそうに俯いてしまう。
そんなリオンがファルーシュにはたまらなく愛しく、流していた悲しい涙もいつの間にか止まっていた。
「リオン」
そう呟くと、今度はファルーシュがリオンの腰に腕を回し、自分の方へ引き寄せキスを交わした。
最初は重ね合わせるだけ。そしてどちらからということもなく舌を絡み合わせ始める。
「んぅ、んぅ…んふっ…」
「んふっ、ふぅ、んっ…」
いつもの二人からは考えられないような激しいキス。
ファルーシュが小首を傾げ角度を変えれば、リオンもまたそれを逃がすまいと丹念に唇に吸い付き、
リオンが舌を差し出せば、ファルーシュはそれに答え、さらに舌を絡ませリオンの口腔を貪る。
「んっ、ちゅ、んんふっ…」
「んっ、んふっ、んっ…」
歯列をなぞり、舌に唾液を絡ませて相手の口腔に送り込む。今度はそれに舌を絡ませ、こそぎ落し、
自分の唾液と混ぜて送り返す。十数回ほど繰り返してから、互いに唾液を分け合いコクリと飲み込んだ。
お互いの唇を塞いでからどれくらい経ったか、痺れるような快楽に名残惜しむように静かに唇が離れていく。
その瞬間、互いの唇から唾液が銀色の糸のように引いてぷつんと切れた。
「リオン…」
「王子…」
焦点の合わない目でお互いに見つめあうと、再び唇を重ね合わせた。
リオンの上唇、下唇をついばみ、唇を舌で割り開いて絡み合わせる。
「んっ、ふっ、ぴちゃ、んふっ、んっ…!」
「あ、んふっ、ふぅ、ぷはぁ、んんっ…!」
次第に粘膜質な水音が聞こえ出し、唇からは唾液が零れ落ちる。
それにもかまうことなくお互いの唇を貪りあった。
「ん…ぷぁ…リオン…」
「ぷぁ…っは…はぃ…」
ファルーシュはそういうと唇を重ねたままリボンを引き、リオンのケープと鎧を脱がし始めた。
ケープを、剥ぎ鎧を取ると、なんともいえないリオンの優しい香りがして、ファルーシュは思わず唇を離して
リオンの首筋にしゃぶりついた。
白い首筋に吸い付くと、リオンの汗や体臭が鼻腔の中を刺激した。
「おっ、王子…」
リオンが照れくさそうな、はにかむような声を上げたが、ファルーシュは意に関せずリオンをベッドに横たえ、
衣服の中に手を入れた。吸い付くようなリオンの素肌がひどく心地よく、何度も何度も手を滑らせた。
やがて右手が脇腹に至ると、ファルーシュをかばったときの傷を見つけた。
その傷は柔らかなリオンの肌では異質なものだったが、逆にファルーシュはその傷を何度も何度もさすり、
またリオンと唇を重ねた。ごめんという謝罪と、ありがとうという感謝の意味を込めて。
そんなファルーシュの意図を読み取ったのか、唇が離れると
「王子、大丈夫ですから…」
と、微笑を浮かべて答えた。
ファルーシュはゆっくりと頷くと、両手をリオンの脇に入れ、胸元を開いた。
今にもプルンという音が聞こえてきそうな、小振りだが形のいい乳房がそこにはあった。
もっとよく見ておきたいところだったが、リオンが両手で覆い隠してしまったので、
今度はスパッツとショーツを脱がしにかかる。
リオンの脇腹から手を入れて、お尻の丸みをなでるようにしながらゆっくりとおろしていった。
下腹部、恥丘と徐々に露わになっていくとリオンは恥ずかしさからか今度は顔を覆い隠してしまった。
ファルーシュはあえて秘部を見るのを避け、先にスパッツとショーツを足から脱がし、
自分も下着を残して服を脱いだ。
改めてリオンのつるつるの恥丘から視線を下げると、秘裂からはすでに大量の蜜が流れ出していた。
「ぉ、王子、そのわたし…」
そんな声を上げるリオンがまたたまらなく愛しく感じたファルーシュはそのまま顔を股間に埋め、
秘裂に口をつけた。
「お、王子!そ、そんなっ…」
リオンがファルーシュの頭を押して秘部から離そうと抵抗するが、
両手で腰を掴んでいるファルーシュは離れない。いや、むしろよりきつく抱きしめるように腰を掴んだ。
やがて本格的にリオンの秘裂を舐めだすと自然と抵抗する力も弱くなっていった。
秘部のしわを一本一本なぞるように丁寧に舌を動かす。
「はぁっ…王子っ…そ、あんっ!」
襞の外側、内側を丹念に舐め、クリトリスを避け、円を描くように舌を動かすと、
また秘裂の奥底から蜜が溢れ、それを舌に絡ませて襞をなぞる。
リオンも抵抗をやめ、むしろファルーシュの頭を秘部に押さえつけるようにしている。
それまで腰に据えられていたファルーシュの手もリオンの乳房を揉み回し、時折乳首をつまんでは弾いた。
ぴちゃぴちゃという舐める音と共にリオンの体にも快楽が走る。
「あ…あはぁ…んっ…あぁあっ!」
秘裂を舐められる感覚にも慣れてきたとき、不意にファルーシュが今まであえて避けていたクリトリスを
強く吸いだした。そして吸うだけではなく、舌先で転がし軽く歯を立ててリオンに更なる快楽を与えていく。
「あふっ…んっ…もうダメ、もうダメです、おうじぃ、ぉぅじぃ」
うわ言のようにファルーシュを呼ぶ声。ファルーシュはそんな声とは裏腹に、手は乳房を揉みしごき、
さらに舌は秘裂の中まで差しこまれ、唇でも襞を撫でるようし、激しくリオンを攻め立てた。
「ダメ…おうじぃ、あぁぁああっ!」
リオンはぶるぶるとかぶりを振り、顔だけではなく体全体までも紅潮させ、
普段からは想像も出来ないよがり声を上げてファルーシュを求める。
「はっ、あぁっ、おうじぃ、おうじぃ、おうじぃっ!ああぁああっ!!」
リオンは悲鳴めいた声を上げ、体を硬直させて激しく上体を反らせると、
秘裂からとろりとした蜜液が絶え間なく流れ出した。
「あっ…はぁ…はぁ…はぁ…」
リオンはぐったりと四肢をベッドに投げ出し、ピクピクと体を痙攣させている。
ファルーシュは秘裂から溢れ出した蜜を綺麗に舐め取ると、そのままリオンの横に寝転び、
まだ肩で息をしているリオンを抱き寄せて、今度はファルーシュがあやすように抱きしめる。
「…王子…ずるいです、ダメって言ったのに…」
と目を伏せたままリオンがそう呟いた。そんなリオンにファルーシュは再び抱きしめてキスをしていた。
「んっ、ふぅっ、んふっ、んっ…」
「んっ、んんっ、ぷぁ…王子、ダ、ダメですよ、今度はわたしの番です」
というとリオンはキスをしてくるファルーシュを止め、少し呼吸を整えるとするりと腕の中から抜け出した。
そのまま膝立ちでファルーシュの足の間に納まると、なぜか正座で失礼しますと一礼。
ファルーシュはそんな様子が可笑しかったが、リオンは真剣そのものだったので茶化すのはやめておいた。
リオンは大きくテントを張っているファルーシュの下着を脱がせようとするが、先ほどの愛撫で怒張しきった陰茎が
それを拒む。手間取っているリオンを見て、ファルーシュは苦笑いをしながら陰茎を抑え、
ようやく下着を脱がすことが出来た。
リオンは恐らく初めて見るであろう勃起した陰茎をおそるおそる触り、
「ぉ、王子、楽にしていてくださいね…」
とゆっくり舌を伸ばした。
「んっ…はぁっ…んっ…」
「いっ…あぁ」
拙い舌使いだが、初めての受けるぬめりとした刺激にファルーシュは思わず声を漏らす。
裏筋からカリ首、そして鈴口まで舌を動かすと小さな口を開けて亀頭をくわえ込んだ。
「んっ、ちゅぷっ、んふっ、んっ…」
くわえ込むだけではなく、拙いながらも舌を動かし、ファルーシュに常に違う刺激を与え続ける。
鈴口をこねくり粘液を舐め取ったり、カリ首をなぞったり、裏筋を舐めあげ、滲み出す粘液を吸い上げる。
たどたどしい舌使いではあるが初めて粘膜質の刺激を受けた陰茎はすでに臨界寸前まで高まってしまっている。
ファルーシュは射精しそうになるのを、歯を食いしばって必死に耐えていた。
「んっ、んふっ……ちゅぷっ、んっんっ、んっ!」
リオンもそれを感じ取ったのか一層激しく陰茎を攻め立て、射精を促す。
「んっふ、んふっ…ん、ちゅ、んんっ!」
「あぁっ、リオン…リオンッ!あっ!」
ファルーシュの声も聞こえていないように、リオンは頭をゆっくり振って短いストロークで刺激し始めた。
新たな刺激で陰茎は痛いくらいに反りあがり、ファルーシュの我慢もついに限界を迎えた。
「んっ、んっふ、んっ、おうふぃ、おうふぃ」
「あぁっ、リオン、だっ、あっ、あぁぁあっ!!」
ついに堤防が決壊するようにリオンの口腔にファルーシュの陰茎から大量の精液が放出される。
その奔流は瞬く間にリオンの口腔内を満たし、口の端からこぼれだした。
それでもリオンはまぶたをきつく閉ざして口腔内の精液を数回に分けて飲み込むと、ゆっくりと陰茎から口を離した。
「リ、リオン…?」
「けほっ、けほ、だ、大丈夫です…大丈夫」
流石に辛かったのか、少し涙目になりながらベッドに寝転び、
ファルーシュが腕枕をつくると、リオンが遠慮がちに擦り寄ってそれに甘えた。
「ねぇ、リオン?」
「…はい?」
射精の余韻もまだ残っているのか、少し気だるそうにファルーシュは訊ねた。
「あの、凄く嬉しかったし、気持ちよかったのだけどどこでそんなことを…?」
もしかしたら辛いことを聞いたのかも知れないと、言い出してから後悔したが、返ってきたのは意外な答えだった。
「あ、あの…こういうこともあるだろうといって、サイアリーズ様が…いえ!わたしは結構ですって言ったのですけど…」
そう、リオンは耳まで真っ赤にして答えた。
────あっははははははは!────
なぜか瞼を閉じると、さっきまでは悲しい気持ちになった伯母の姿が、両親と一緒に高笑いをしていたような気がする。
…あとで伯母さんの好きな酒をセラス湖に供えようと思った。
そうして少しお互いにじゃれあっていると、いつの間にかファルーシュはキスをして、またリオンの体を弄り始めた。
「んっふっ、ちゅ、ふっ、んっ」
「あっ、んんっ、ふ、んふっ…」
リオンを下に組み敷き、唇を塞ぎ、手は乳房を揉みしごき、足は互いに絡ませあい、
再び怒張し始めた陰茎を秘裂の上に滑らせた。
ネチャネチャと秘裂と唇から粘膜質な音が響き、二人の興奮は更に高まっていく。
小振りな乳房についた乳首はピンと勃ち、秘裂の上のクリトリスもその存在を主張している。
ファルーシュはリオンから少し離れて膝立ちになると、リオンは仰向けのまま膝を立ててゆっくりと足を開いていった。
程よい肉付きの太もも、その奥から顔を覗かせている秘裂は蜜液に濡れ、
とても官能的でファルーシュは思わず唾を飲み込んだ。
リオンが空けたスペースにファルーシュが納まると右手で陰茎を持ち、濡れそぼったリオンの秘裂にあてがった。
数回、亀頭を秘裂の上でグラインドさせ、たっぷりと蜜液をつける。
「リオン…いい?」
「はい、王子におまかせします…」
二人は互いに見詰めあい、リオンは少し緊張した面持ちで答えた。
ファルーシュはリオンの腰に手をかけると、少しずつ陰茎を秘裂に押し込んでいった。
「あっ、づぅっ…んんっ…」
ファルーシュは痛がるリオンに申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも最奥へと陰茎を押し込んでいく。
リオンの膣内はひどく心地よく、あたたかで、吸い付いてくる。
口腔内とはまた別物で、このまま嬲りたいという本能が次第に大きくなってくる。
しかしそれを理性で押し留め、少しずつ、少しずつ、リオンを気遣いながら最奥を目指す。
やがて陰茎が完全に秘裂に埋まると、ファルーシュは思わずリオンを抱きすくめた。
「入ったよ…」
「はぃ、はい…嬉しいです」
ファルーシュがそう呟くと、リオンは一つになれた喜びからか、または破瓜の痛みからか、涙を流した。
「少し、このままで…すみません、少しだけ…」
「うん、うん、ごめんね」
「いえ、いいんです…王子の…ですから…」
ファルーシュはリオンの痛みを和らげようと、優しいキスをしたり、頭を撫でながら髪を梳いたり、耳を甘噛みして睦みあった。
すると数分前まで苦痛に歪んでいたリオンの表情は、すっかり落ち着いたものとなっていた。
「王子…あの、その…そろそろ、平気だと思います」
催促するようで恥ずかしいのか、また耳まで真っ赤にし俯いてそう告げた。
ファルーシュはリオンの顔を見て、強がりを言っているんじゃないと判断すると、軽くキスをしてから、
「じゃあ、ゆっくりね」
と、最奥まで進んだ陰茎をゆっくり戻し始めた。
少し動かしただけでこれまで経験したことがないような快感が全身を駆け巡り、すぐに射精してしまいそうになるのを、
必死で堪えた。リオンの奉仕も気持ちよかったが、これはまた別次元の快楽だった。
少し引いては、押し込み、また引いては、押し込む。
その動きと一緒にぷるぷると小振りな乳房が揺れ、両手でその感触を楽しんだ。
「平気…?」
「えぇ、手前は少し痛みますけど、奥のほうはなんとか大丈夫みたいです…あんっ」
リオンがそう答えると、ファルーシュはあまり大きく腰を引かず、短いストロークで膣奥を重点的に攻めることにした。
大きく開かれた腿の付け根を見ると、また少しずつ、蜜液が漏れ出しているのがわかった。
「あっ…あん、あっ…はぁっ…あっ」
「んっ…くっ…んっ…」
リオンが少しずつ嬌声を上げ始める。ファルーシュも陰茎に伝わる刺激に思わず上擦った声を漏らす。
ねっとりとした蜜液が秘裂から大量に溢れ、陰茎に絡みつき、くっちゅくっちゅという卑猥な音が部屋に響く。
無意識のうちにリオンはより深く繋がるため、足をファルーシュの腰に絡ませてより陰茎を奥へ奥へと導いていた。
ファルーシュもリオンをもっと感じさせようと首筋にキスを浴びせ、クリトリスを指先で転がし始めた。
「んっ、あふっ、んんぅっ…んっ!あんっ!あぅんっ!!」
「はっ、はぁっ、んっ、はぁっ!」
いつのまにか二人は声を殺すこともせず、お互いを求め合っていた。結合部からは血混じりの泡立った蜜液が溢れ、
二人の体をつたい、ベッドのシーツに大きなシミを作っていた。それでも止まることなくお互いを呼び合い、さらに求め合う。
膣襞の隙間という隙間にリオンの蜜液がぬめりこみ、ファルーシュの陰茎をぬちゅぬちゅとしごき上げていく。
「んっ、ふっんん、んんっ、はぁん!」
「んんっ、んふっ、ちゅっ、んんっ!」
唇も、手も、足も、体が一つになるように絡み合い、二人の距離は限りなくゼロになる。
陰茎はリオンの子宮口を盛んにノックし、結合部からは盛んに水音が響いた。
部屋にはいやらしい雄と雌の匂いが充満し、二人は更なる高みに上り詰めてゆく。
「あぁんっ!おうじっ!おうじぃっ!はぁぁんっ!あぁぁぁああああっ!!!」
「んくっ、リオン、リオンッ!」
叫び声とともにリオンが絶頂に達する。今まで以上に膣襞がくにゅきゅっと締まり、絶え間ない快感が陰茎を包み込む。
ぬちゅぬちゅという淫靡な律動を繰り返す膣の中でファルーシュは陰茎を深く突きこむと同時に大量の精液を放出した。
───ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!───
子宮に直接届けとばかりにファルーシュの精液が子宮口に叩きつけられる。リオンはそこでさらに二度目の絶頂を迎えた。
ファルーシュが最後の一滴まで精液を出し切り、ゆっくり自分のものを引き抜くと、リオンの秘裂から白濁液が零れ落ちた。
そのまま気だるそうに寝転ぶと、そのままリオンを抱き締め、深い、深いキスをした。
「…王子…」
「…リオン」
二人はそのまま心地よい疲労感に身を任せ、眠りについた
前日の祝宴の影響からか、太陽宮はいつもより幾分のんびりとした空気が流れていた。
衛兵は欠伸を噛み殺したり、女官は昨日振舞われた酒がまだ残っているのか心なしかいつもより動きが重い。
「それにしても兄上はまだ起きんのか?」
ようやく平和を勝ち得て、ファルーシュと四六時中、一緒にいられると思っていたリムは、
いきなりの兄の寝坊にご機嫌斜めだった。
女王になったらまず最初に「王族の兄妹は同衾すること」とかいう典範を無理やり付け足そうと考えているらしい。
「姫様ぁ、王子はきっとお疲れなんですよぉ、いっぱいお酒も飲まされてましたしぃ」
「それにしてももう昼過ぎじゃぞ?」
「まぁまぁ姫様、王子に甘えたいのはよくわかりますけど、今は休ませてあげましょうねえ」
「なななな、なにをいう、ミアキス!」
「まだまだ『お兄ちゃん』ラブラブなお年頃ですからねぇ〜」
「うううううう、うるさいっうるさいっ!もうよい!わらわが起こしてくるのじゃ!」
リムはもうまてんっ、と玉座から飛び降りズンズンと紅い絨毯を踏みしめ、謁見の間から出て行ってしまった。
「あ、姫様、だめですよぉ〜、姫様ぁ〜」
ミアキスも追いかけるが本気で止める気はないらしい。
───ひめさまあ〜…待ってくださぁぃ〜…ダメなんですってばぁ〜〜…ふふっ───
その数日後、ファルーシュとリオンは周辺諸国の見聞という名目でゲオルグと共に旅立つこととなる。
合掌。