娼館シリーズ・リオン編(???×リオン→5主人公) 著者:10_442様
ED後の旅先で、なにがあったか娼館デビューすることになってしまったリオン。
ちなみに王子とは、別の旅先で既に結ばれているので、そういう意味での深刻さはあるんだかないんだか微妙な感じ。
「り、リオンです。よっ、よろしく……お願いしますっ」
当たり前だが毎度毎度換えられる為清潔なシーツが覆うやたらにでかいベッド。
上で、リオンはちょこんと正座している。
見下ろすは、娼館に来る客としては特に可も無く不可も無く。
恋人がいないため定期的に性欲処理をしに現れる、別に殆どモブなのでAさんでいいだろう。
「はじめて?」
「……はい……」
誰が見たってわかると思うが、見抜かれてさらに羞恥を煽られたか真っ赤になるリオン。
A氏は本当に普通の人だったので、極端には走らず、少しの嗜虐欲と庇護欲と、
その結果としての「可愛いな」という感想を抱いただけだったが。
「じゃ、優しくするね」
はじめてや数度目の少女を相手した経験もあったので、特に手管に滞りは無い。
こういう時は、下手にリラックスさせようと余計な会話などを重ねると
なおさらいざことに及んだ時の空気が気まずくむず痒くなるものである。
不言実行。実践として、体を優しくゆっくりとほぐしてやるのが、一番冴えたやり方だ。
「っ」
あっさりと押し倒されて、リオンが息を呑む。
体術とはある意味、全く別の技術体系。
「ひゃっ」
脇腹を触れられて、白皙の肌が固く凍結する。
ゆっくりと、掌ではなく五指が尻の方に撫でて。
そのためでもあるまいが、幾ばくかの余裕が見られているシーツが、リオンに、深く二つ掴みにされる。
「……はっ……ふぁっ!?」
鳥肌が立っている。そんなに嫌がらなくてもと少し傷つくA氏。
リオンは目を瞑り。A氏が触れる場所を変えるたびに、
その場所を確認するように目で見てそれからその光景に耐えられないといった感じにまた目を瞑り、を、忙しく繰り返している。
生理として濡らして突っ込むこともできなくはないけれど、それよりは快楽を重ねたいと思う一般人のA氏は
しばらく続けて、それでも改善の兆しを全く見せない彼女に、とうとう妥協案を出すことにした。
「リオンちゃん」
「…はっ、はいっ!」
自分の乳房を触れる男の手を、カズラーの触手を見るような眼差しで射抜いていたリオンが
枕の上の顔を弾かれたように上げる。
リオンのその目に僅かある、しかしA氏に対するものではない嫌悪感に、確信した氏はため息を隠して、尋ねた。
「リオンちゃん、好きな人……ていうか、恋人が居るでしょう」
「っ!?」
驚いたように、というか少し青ざめてすら、リオン。
「いや、責める気はないんだけどね。そうか……うーん……じゃあね」
横にした掌を、リオンの視界を覆うようにしてかざすA氏。
「目を瞑って」
「……」
すこしの沈黙のあとに、そうされた気配。
「僕はこれから、もう喋らないから。そうしたらリオンちゃんは、僕をその彼だと思えばいい」
「!?」
吃驚したような、音にならない声がした。
懊悩があったのか、間の後に、なにかが決壊したように吹き出る勢い
「――でもそれはっ!」
「ストップ。駄目だよ、リオンちゃん。リオンちゃんだって、もう立派なプロなんだから」
「……!」
律儀そうな外見印象を当て込んで、そこにつけこむ。
「お客さんがそういうプレイをしたいっていったら、ルールに反しない限りはきちんと対応しなきゃ」
細分化されている店もあるが、この店は、娼婦に傷をつけない限りは、基本何でもありの店。
彼女にそういう意味で抗弁の余地はない。
「…いいね?僕がこの手を下げたら、もうリオンちゃんは、全て終わるまで、目を開けちゃ駄目だよ」
「……はい」
見えている唇が、きゅっとひとつに噛み締められる。
「……」
こっちだって、別の男を思い浮かべられながらなんて本当は嫌なんだよ、とは、大人気ないから言わないA氏。
一度離れて、宣言どおり、口を利かぬまま乳房に戻る。
刺激が中断されている間に、元の柔らかさを取り戻していた桃色の乳首を、今度は赤子のようにくわえこむ。
リオンの二の腕があわ立ち、それだけで顎が鋭く仰け反った。
次はどこに来るのか、わからないのはさっきまでだって似たようなものだった筈なのに、
確認できないだけで大分こわくなるものらしい。
目隠しプレイははじめてなので、それなりに女遊びに慣れてるA氏も、微妙に確信はできんけど。
そして、やはり葛藤はあったようだが
その恐怖を紛らわすように、うわ言めいた名が、リオンの口から囁かれはじめる。
「……王子……!……王子……!……王子……っ!」
(……オージ? 道具屋のおっさん(48)と同じ名だな)
まだ余裕あるA氏は、そんなことを考える。
だがどうやらその名の効果は覿面らしい。恐怖や嫌悪感は、自らの内、
そこにはっきりとある、愛する男のイメージに没入する、たしかな手助けともなるものだから。
……単なる、現実逃避ともいうが。
やがて、氷の彫像のように美しい白だった喉肩のラインが、まずうっすらとピンク色に染まりはじめる。
無機物の人形が、人の温かさを徐々に取り戻す。不快に耐えていた指先が、相反する別の感覚に耐える為曲がり
つう、と熱くも寒くも無いはずの室内に伝う、汗をぺろりと軌道にそって舐め上げる。
「はぁっ……あっ……っおうじっ……っ」
(随分と感じやすいな)
少しの後、まさにまな板の上の鯉といった感じに晒されている、実は殆ど変わっていないリオンの体勢を見下ろしながら、思うA氏。
そろそろ肉のにおいと体の熱で、少しの差異は、気にならなくなっている頃。
そうとあてにし、本格的に覆いかぶさる。
「――ひゃうぁっ!?……お、王子っ、やさしく……優しくしてください……おうじっ……!」
約定があるから、「応よ」とも言えんので、柔らかい頬に埋めた鼻面を頷かせて了解を伝える。
片手を下にやり、まだ包皮の内で震えている花芯を絶妙にこね回し、同じ手の指でまだまだ開ききってはいない慎ましやかな花弁の筋を
するするとあまり粘性のない愛液を潤滑としてノックする。
「あぁっ!……だめ……うぁ……そんな……とこ……だめ……です……っ!」
反射的に閉じようとする内股を、さきほど指摘されたプロとしての云々を思い出してか、必死の意志力で開け戻すリオン。
どうぞと差し出される健気さに喜んだA氏が、もっともっと感じさせてあげようと無言のまま発奮したのは
リオンにとっては、いいことなのか悪いのか。
「っ…あっ…ぁあっ……やっ……おうじっ……おうじっ……ぃ……っ!!」
性感をもっと追おうと、まだ青いお尻が、僅かに持ち上がっているのに気付いていない。
本当に可愛い娘だなと、恋人であろう「オージ君」のふがいなさ――こんなところに自分の彼女が居る事も知らないなんて!――に、
憤りながらもすこしA氏は嫉妬する。
甘い声音の恋する響きに、心奪うことは無理なのだろうなと、ちゃんとわかってはいるけれど。
「!!!……だめっ!!そ、こは、……そこは……まだ、なんですっ!……お願い……お願い……、やめて、くださいっ!!!」
徐々に移していた責めるポイント、へそ側から背中側に、つまりは場所柄からすれば信じられないほどくすみのないアナルへと
ようやく重点的な責めが移行していると気付いたリオンが、青くなって瞬間、道理を押して懇願してきた。
互いを覆うべとべとの汗が、その瞬間に冷たくなったのを感じ、
素質ありそうなのにと乱れ姿を思い出して執着するも、まあ、はじめてなら一朝一夕には無理かと、大人しくA氏は諦める。
また肌から伝わってくる首肯の動きに、ありがとうございます、とか細く漏らしたリオンの体が、ようやく安堵に弛緩した。
勿論、これは終わりではない。
「っ」
準備そのものは、もうとっくに終わっているそこに怒張をあてる。
いまから入ると筋をなぞると、リオンの体が、あからさまに強張った。
だが今度は、拒絶の声はない。
これ以上のそれは仕事に対する甘えでしかないし、それに、リオン自身それをわずかでも望んでいなかったかというと…
あるいは、微妙な線ではなかろうか。
なにせ今のA氏は、リオンの真の精神的な没入具合はともかく、表向きは「王子」だ。
リオンが拒む理由は、あくまで表向きとはいえ、なにもない。
妄想に火照りきった若い体を、慰撫する為のとどめを受け容れてもいいのだと
このプレイにはそんな誘惑の意味もある。
「っ……っ……っ……はっ―――ぁぁあぁっ!!」
いつくるかいつくるかと、本来なら視界の相手の動きである程度は予想されるそれが
全く足りない情報からしか予想できない、未知のおそろしさ。
整えるように出し入れされていた息が、一気の突入に、またもすぐさま乱される。
身も世もない哀しげな声に、蜜のような甘さはたしかに混ざっていたけれど。
揺るやかに開かれていた腿から上は、突き上げの為、A氏を挟んで立て膝になり跳ねて、
腰の辺りで握られている両手は、いまだ、シーツを剥がすほどに強い。
「ぁっ! あっ! あぁっ! あぁっ!」
もっと多面接触が欲しいなと、冷静に考えるA氏が動いた。
「ふぁっ!? ぁっ! なにっ!? あっ! あぁぁうっ!?」
掴んだリオンの腰を、浮かせて、より深く結合を求める。
「ぃひっ! ひゃっ!? こ、こわいぃっ! ……お、おうじっ! ぁあっ……な、なにをっ!?」
恐怖を快楽で塗りつぶせるギリギリの見極め。
そのまま両側からリオンの背中に腕を入れて、抱きしめるように膝の上に乗せる形。対面座位といっただろうか。
そんな体位に移行されては、勿論リオンはシーツを握ってもいられず、
たしかな支えを求め、A氏の首にかじりつくように腕を絡めることになる。
随分な動きにも、目は瞑られたまま。たいした忍耐力だと感心するA氏。
互いの体温が、伝わりきる形。
匂いが違う。体型が違う。重さが違う。息づかいが違う。
それら誤魔化し切れぬ差異を、接近により改めて確認させてしまい、
ひかえめな胸が愛する人への想いと、今確かにある性の悦びに引き裂かれていることが、A氏にははっきり伝わった。
「――王子っ!――王子っ!――王子っ!――王子……っ!」
自らを暗示にかけるように呟く、喉で喋るような空気の洩れ音のような声に
不愉快にもならず、やはり可愛いなと微苦笑してしまうA氏。
微笑ましいといえば微笑ましいが
同時にその角度を益々増したリオンの中のものを思えば、彼女にはそんな余裕はまったくないか。
(とりあえず、一度出すか)
薬による一時的な処置は、客たちにそれを許してくれる。
リオンが王子を呼んだまま、しかしその半分を喘ぎ声に交代させて、A氏と同時に絶頂を向かえたのは、十二分の後のこと。