娼館シリーズ・バレリア編 著者:義勇兵様

知る人ぞ知る、知らない人はまったく知らないある場所にひっそりと立つ館があった。
いろいろと言葉を飾ることは出来るがぶっちゃけていえば娼館である。
その館の一室で「烈火のバレリア」の異名をとる女剣士がベッドの上に禅を組み瞑目していた。
別に剣の修行をしているのではない。客が来るのを待っているのだ。
どういう経緯でこういうことになったんだ? などと突っ込んではいけない。
女も29にもなれば色々あるのだ。え、年齢の件には触れないほうがいい、地獄を見る?
はい、金髪の秘密工作員みたいな人が親切に忠告してくれたので素直に従うことにします。

ともかく彼女は客を待っていた。今日が彼女の初仕事の日なのだ。
バレリアはこの日が来るのを一日千秋の思いで待っていた。彼女と同門の剣士であり、
なにかと張り合っているライバル、アニタの存在がそこにはあった。
ラウンディア・ハイアの道場の門を同じ日に叩いて以来、剣の腕だけにとどまらず、知力、酒量、チンチロリン、
紋章、男の扱いに至るまであらゆることで競い合ってきた女である。
はたから見れば互いに刺激しあいお互いを高めあうよきライバル関係であり、実際当人達も内心はそう思っているのだが、
そんなことは口が裂けても言葉にはしない。
そのアニタはバレリアよりも少し早く仕事を始め、なかなかの評判を得ている。
そしてそのことでことあることにバレリアに対して優位に立っているぞと言わんばかりの言動を繰り返すのだ。
剣の腕でこそバレリアはアニタに一歩勝っているが、男の扱いに関してはバレリアが一歩どころか十歩は遅れをとっていた。
今までは剣士にとって最重要である剣で勝っているという気持ちがあったからそれでもよかったのだが、
今は男の扱いこそが仕事である。
なのにいつまでも大きく差をつけられているとあっては沽券に関わるのだ。
「見ているがいい、アニタ。余裕を見せていられるのも今日までだ」
かっと目を開きバレリアが力強く拳を握り締める。と、ついにひかえめに扉を叩く音が聞こえてきた。

「し、失礼します…」
落ち着かない様子で入ってきた男は余裕のない様子で室内をきょろきょろと見回している。やがてその視線は寝台の上のバレリアに止まった。
ノックと同時に神速のスピードでしどけなく両足を崩した姿勢にチェンジしたバレリアが妖艶な笑みを浮かべて男を迎えている。
「ほ、ホンモノだ…」
ごくり、と唾を飲み込み、思わず呟く。
この館の存在をあるつてで知ってから、しがない一般人である彼には生半可な覚悟では用意できないポッチをどうにか捻出し
この場に立つまでに実に半年以上がかかっている。
そして目の前で色っぽく微笑んでいるバレリアは、彼にとって彼女が帝国仕官だった頃からの憧れなのだ。
「どうした? そんなところに立っていないでこっちへ来るといい」
「はっ、はははははいっ! ただいま!」
これではどっちが客だかわからない。バレリアは彼の緊張をほぐそうと、表情を誘うような笑みから子供に向けるような穏やかな微笑に変えてみせた。
「なにも緊張することはない。ただ君は今のこの時間を楽しめばいいのだ。そのために私はここにいる。君の好きにしてくれていい」
「お、俺の好きに…」
おっかなびっくり、というのがぴったりの彼の態度ではあったが、それでもいくらか緊張がほぐれたのかその手がバレリアに伸びていた。
バレリアは自ら身を男に寄せてその腕の中に身体を預け、彼に唇を寄せる。ついばむような口づけを繰り返す。
しばらくそうしている内に、やっと彼も調子が出てきたようだ。口づけをしながらも、その手は彼女の胸元に伸びていた。

女の服を脱がせるなど慣れていないのだろう、やたらと不器用な手つきの男を手伝うように
さりげなく身体を動かす。やがて隠すもののなくなった裸の胸が男の目の前にさらされた。
「き、綺麗だ…」
陳腐ではあるが彼の心情をこれ以上ないほど正確に表す言葉が自然と口から漏れる。
豊かな胸の頂点に息づく桜色の乳首。それに目を奪われ硬直する男に軽い笑みを浮かべ、
バレリアはいきなり両腕を突き出した。
「わっ!?」
長い腕が男の首に巻きつき、一気に引き寄せられた。顔がやわらかな巨乳に埋まり、
彼は息が出来ない苦しさと男の至福に酔いしれた。
やがて手の力が僅かに緩み、胸と顔の間に空間が出来た。目の前には桜色に染まった乳首。
興奮のためか、そこは既に固く立ち始めている。部屋に漂う淫靡な空気に当てられたように、
男はためらいなく乳首にむしゃぶりついた。
「ちゅば、ちゅぶっ、ちゅ…ちゅちゅっ、ちゅぢゅうっ」
「あはっ…あふっ、あん」
舐め、吸い、しゃぶり、軽く甘噛みする。
欲情の向くまま、思いつく限りの行為を乳首に加えていく。
しばし我を忘れて乳首弄りに没頭した男は、両方の乳首を唾液まみれにしてからやっと顔を上げた。
「はあっ、はあっ、はあっ…」
既に興奮は極限にまで高まっている。熱に浮かされたかのようにぼうっとしはじめた頭で、
今度は意識を下半身に向けなおす。
「い、いいですか」
「言った通りだ…好きにしてくれ」
「は、はいっ」
幼子のような無垢な笑顔を浮かべ、バレリアの下着に手をかける。気が逸るあまりの
少々乱暴な手つきも受け入れ、さりげなく腰を浮かせて男の手伝いをする。
「バ、バレリアさん、バレリアさん…」
ひたすら憧れの人の名を呟きながら、亜麻色の髪と同じ色の茂みに覆われた秘所にそっと手を伸ばす。
くちゅっ…
軽く触れたそこは既に潤いを見せ始めている。
「バ、バレリアさん…」
「なにかな?」
「バレリアさんのここ…舐めたいです…」
にこり、と笑みを返し、バレリアは男の肩をそっと押し、寝台に横たえた。そして身体を反転させ、
彼の顔の部分に股間を持ってくるような姿勢をとる。
「うはっ、こ、これはっ」
69の体勢。彼は舌を伸ばし、かすかに垂れ始めている愛液を舐め取った。
「ひゃんっ!」
可愛い声を上げて、びくん、と身体を撥ねさせる。その反応が面白くて、
彼は必死になって溢れ始めてきた愛液を夢中で吸い、舐め、飲み始めた。
「ちゅう〜っ…れろれろれろ…ちゅぶっ、ちゅぶっ、ちゅぼっ、ごくん」
「はふっ…はぁん、あんっ、あっあっあっ」
彼の必死な愛撫にバレリアは絶え間ない喘ぎ声を上げ続ける。

正直なところ、バレリアは大して感じているわけではない。女体の扱いには不慣れであろう
彼の愛撫は稚拙な上に単調で、この娼館の主であるジーンから直々に娼婦としての訓練を受けた
バレリアにとっては物足りないことこのうえない。
しかしバレリアはそんな気持ちは一切出さずに、やはりジーンから仕込まれた、
感じていると男に思わせる喘ぎ声を様々なバリエーションで上げていく。
この館で一時を過ごすために必要なポッチは極めて高額で、この見るからに一般人な青年がここに来るために
どれほどの苦労をしたかは容易に察することが出来る。
そんな苦労をしてまで自分とともに過ごす時間を欲してくれた青年に幸せな時を過ごしてもらおうと、
バレリアは指導で身につけた演技力を惜しみなく披露した。
「バレリアさんが、バレリアさんが俺で感じてくれてる! 俺がバレリアさんを感じさせてるんだっ!ひゃっ、ひゃあっ!?」
歓喜にうち震えながらさらに愛撫に熱を入れようとした男がひっくりかえった声を出す。
唐突に生まれた大きすぎる快感に、腰から下に電流が走ったような錯覚を覚える。
視界はバレリアの唾液と愛液の入り混じったべたべたの秘所で覆われているために見ることはできないが、
今まさにバレリアの口の中に自分の肉棒がおさまっているのだ。
「じゅぷっ、じゅぽっ、じゅじゅじゅっ、ちゅっ」
「は、はわ、はわわわわ…」
肉棒に丹念に舌を這わせ、裏筋まで舐め上げて、同時に袋を手で刺激する。
と、いきなり喉の奥まで咥え込んでのディープスロート。
絶え間なく襲いくる変幻自在の舌技の快感に、彼はもはや翻弄されっぱなしだった。
「じゅぱっ、じゅぱっ…どうした、私のアソコはもう飽きてしまったかな?」
「は、はうっ…と、とんでも、ありま、せんっ」
男のプライドを全開にして、快感に悶えて言うことを聞かない身体をむりやり動かして攻めを再開する。
「れろっ、ぺろ、じゅぱっ…うはああっ」
だがそれも僅かな間。経験のない彼にとって、バレリアの攻めは強烈すぎた。やがて完全に動きが止まってしまい、
バレリアの奉仕に身を任せるままになる
(さて…頃合、かな)
ちゅぽん、と音をたててバレリアは肉棒から口を放す。
「…は? はれ…」
唐突に中断された刺激を不審に思い、自分の股間を見ようと男が首をもたげる。
その瞬間を狙っていたかのように肉棒にバレリアの右手が添えられ、そしてそこに宿った紋章が輝いた。
「私のとっておきのサービス、君に捧げよう…!」
はやぶさの紋章。ラウンディア・ハイア門下の剣士が免許皆伝の証として授かる紋章だ。
これを使うことで一時的にバレリアは身体能力を飛躍的に高めることができる。
この紋章の力を解放しての神速の百列突きが剣士のバレリアとしての必殺技であった。
(これが…今の私の必殺技だっ!)
はやぶさの紋章で向上した身体能力。握るものを剣から肉棒に変えて、バレリアはその力を使った。
「うわわっわあわわwったwらwら!!??」
目にも止まらぬ超スピードの手コキ。超高速でしごき上げられる肉棒は凄まじいまでの快感を生み、
瞬きする間もあらばこそ、彼はあっという間に絶頂に達してしまった。
どくんっ、どくん、どくん…
「あ〜はあ〜…よかった…はあっ!?」
射精の快感に酔いしれるがそれも一瞬。バレリアの必殺、百列手コキはそんなものでは止まらない。
さらに加速する手の動きに刺激され、まだ射精が続いているにも関わらず彼の肉棒は再び白い欲望を吐き出していた。
「そんなっ、一度目の射精が終わる前に二度目の射精を促すなんてっ!? …はうあっ!!」
一体この日のためにどれほど溜め込んでいたのか。雨のように降り注ぐ白濁液を頭から浴びながら、
バレリアは手の動きを緩めない。
それどころかまるで摩擦で肉棒を焼け焦げさせようとしているかのように、
そのスピードはさらに高まっていったのだ。
「そんなっ…こいつは強力すぎる!」
「抵抗するんじゃない…イッちゃいなさい!」
とどめとばかりにしごきあげた肉棒の先端から三度目の激情が迸る。
天にも昇る心地で男は残らず欲望を吐きだし、男はあまりの気持ちよさに失神したのだった。

「ん…あ、あれ? 俺は」
「目が覚めたかな?」
意識を取り戻した男は僅かな間状況をつかめずぼんやりしていたが、
バレリアの涼やかな声を聞くなりすぐに意識をはっきりさせてバレリアに向き直った。
「お、俺、まさか気絶して…」
「なに、ほんの数分ほどだ。それにしても失神するほど感じてくれるとは、私も頑張った甲斐がある」
顔と言わず髪と言わず精液をはり付かせたままの裸のバレリアがにこりと微笑む。
そのあどけないとも言える笑顔が精液に彩られている様に男はたまらない興奮を覚えた。
再び肉棒を奮い立たせ、ついにそれを彼女の秘所に納めようと…
「…え?」
しかし彼の意思に反して肉棒は力をうしない、へたったままだった。
憧れの女性が裸で自分の精液まみれで目の前で微笑んでいるというのに、である。
「少し、張り切りすぎてしまったかな…君のモノを全て搾り出してしまったようだ」
「そ、そんな…」
どうやらさっきの百列手コキで根こそぎ搾り取られてしまったらしい。
まさかここまで来て挿れられずに終わるしかないとは。自分の不甲斐なさに涙が滲んでくる。
「俺って奴は…俺って奴はぁあ」
がっくりと男は項垂れる。だがその顎に細い指がかかり、そっと持ち上げられる。
「あ…んむっ」
「…ちゅっ」
キスされたのだ、と理解するまでに数秒かかった。
「バ、バレリアさん…」
「気持ちよかったぞ。最後まで出来なかったのは残念だが…」
「す、すいませんッス!」
土下座せんばかりの勢いで頭を下げる男に、くすりと笑みを返してバレリアは言った。
「いや、いいんだ。次の機会にはしてもらうさ」
「…え。次…?」
「ん…それとももう来てくれないのかな。私は次こそ君のモノで貫いてもらいたいと思っていたのだが」
バレリアのその言葉に、自責の念に潰されかかっていた男の顔がゲッシュ並の素敵な笑顔に彩られる。
「い、いえ! 来ますとも! きっと来ますともっ!」
明日からは一切休日返上で働きまくろう、と男は固く心に誓い力強く頷いた。
「そうか。君とまた逢える日を楽しみにしているよ…」

「ふう」
初めての客の相手を無事に終えて、バレリアは精液をたっぷり吸って重くなった髪をかきあげながら息をついた。
正直うまくできるかドキドキしていたが、なんとかこなせた。最初の相手が彼のような男でよかったと思う。
さすがにいきなり百戦錬磨の色と欲しか楽しみがなくなってしまったようなオヤジの相手をするのは気後れしていたのだ。
ともかく立派に客を満足させることも出来たし、これでアニタにでかい顔をされることもあるまい。
「私もやればできるんだぞ」
男の扱いはどうこうと偉そうに講釈を垂れてくれたがそれももう終わりだ。
私ももう一人前の娼婦だ。ふん、ざまあみろ。
とりあえず一風呂浴びてさっぱりしようと部屋を出る。するとほとんど同時にはす向かいの扉が開き、
中からひょっこりとアニタが顔を出した。
「おや、バレリア。あんたにしちゃあ、随分頑張ったみたいじゃないか」
精液塗れの彼女を上から下まで眺め、アニタは素直に感心したような台詞を吐く。
「フ、まあな。私がその気になればこんなものだ。わかったらこれからは…」
「は…は…」
「え?」
偉そうな態度は改めることだ、と続けようとした言葉は、アニタの後ろからふらふらと廊下に出てきた
何者かの姿の前に飲み込まれた。
「おっと、お客さんだいじょうぶかい? お帰りはあちらだよ」
スケルトンでも出てきたのかと思ったが、よく見るとそれは普通の人間の男性だった。
ただし骨と皮しか残っていないのではないかと疑いたくなるほど衰弱しきっており、両足で立っていることさえ驚くような有様だ。

「ア、アニタ、彼はいったい…」
「ん? いや、この人だけじゃないよ」
「なんだと?」
アニタがつと部屋の中へ戻り、すぐに出てくる。その両脇には最初の骨皮男とほとんど変わらない男性が二人抱えられていた。
「いやあ、あたしとしたことがちょいと張り切りすぎたかね。ここまでやるつもりはなかったんだが」
「アニタさま…」
「アニタさま〜」
「アニタさまさいこう…」
ぶつぶつとうわごとのように繰り返す三人の男性は、夢遊病者のような足取りでふらふらと去っていく。
その背中を呆然と見送り、バレリアはぎりぎりとアニタの方を振り向いた。
「いや、三人一度に相手にするとさすがにちょいと疲れるね。早く一汗流して、一杯ひっかけたい気分だよ」
口では疲れたと言いつつ、微塵も疲労など感じさせない飄々とした足取りでアニタが歩き始めた。
「ア、アニタぁぁ…」
「どうした、バレリア。あんたもさぞや疲れただろ、おごってやるからつきあいなよ」
口元に浮かべたにやにや笑い。これだからこの女は嫌いなんだ。ばかばかばか。
遠ざかっていくアニタの背中を見送りながら、バレリアは心の中で宣言した。

今度こそ見ていろよ…お前が三人なら私は五人だっ…!

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