ワカバ×ボブ 著者:ほっけ様

彼はボブ。「狂牙の紋章」を持つ、同盟軍兵士の一人だ。
露出の多い服に褐色の肌は南国出身を思わせる。
半獣人だからと過去に迫害されたことがあり、人間不信になっていたところを
同盟軍盟主、リオウ少年によって説き伏せられ(何度、「おれさまに何か用かよ!」を云ったことか)
軍入りをはたした。

自分のことを迫害するものはおらず、むしろ自分から寄って来る人のほうが多い。
戦争の時は緊迫しているものの、こうして本拠地をうろついているだけならば、
微笑ましい空気に癒されたりもしている。

最近の彼には悩みがある。
悩みというか、不満、というか。

夜。
普段なら空に向かって吠えたいところではあるが、なんとなく気分が優れない。
夜は涼しい。外の空気が気持ちいい。
最近は夜の散歩が日課になっていた。だけれど。
とある部屋を通り過ぎるたび彼の表情はだんだんと苛立ちを覚えてくる。

「…ね、ヒックス…」
「うん、いくよ…」
「ぁ、っ…あ…!」

まだ深夜というほど夜はふけていない。
戦士の村の二人はお盛んである。とっくにはじめてしまっていた。
おさななじみってそういうもんなんだろうか。

「…んっ…ぅ」
「アイリ…」

あぁ、ここは確か盟主のリオウの部屋だった気がする。
立ち止まらなくてもしっかり聞こえてしまう、なんか頭に来る。
部屋の位置を変えてもらわないと…。

「…ふふ、いいコだね…」
「ぁん…ティルさ…」
「ほら、ちゃんと舐めて…?」

3年前の英雄だとかいう、あの紅い服を着た男の部屋だ。
棒術の腕前もあり、容姿端麗な上頭脳明晰。真面目な印象があったというのに!
あの広間にいるぽけっとした少女を手篭めにしていたとは。

「おぉ…シモーヌ、君はなんと美しいのだ…」
「ヴァンサン、僕達のようなフレンドにはもう言葉なぞ要るまい…」
「何を云う、これに声を出さずにいられるか」

ノーコメント。

やっと外に来れた。なんで足音を立てないように神経使わないといけないんだ。
ボブはそう思いつつ、やっと辿り着いた目的の場所で大きく息を吸い込む。

かすかな風に特徴的な髪型が揺れる。
冷たい空気が腹に流れ込む、それが妙に心地よかった。
月明かりのせいかそれほど暗い気もしない。がらんと人気が無いのも、違和感があるが落ち着いた。

少し気を抜いている時に、軽快な足音が聞こえてくる。
ざっ、ざっと、早いテンポで刻まれる足音の主が見えてきた。

「あれ、ボブさんっ!寝ないんですか?」

未だとんとんと足の動きをやめないままその場にとどまり、
多少息を乱して声をかけてきたのは、ワカバであった。ボブの記憶のなかにはかすかにその名前が在る。
ただ遭う機会が多かっただけだ。一緒に行動することも多い。

「眠れねぇんだよ」

疲れたから今なら眠れそうだ。そう頭の中で思うも口には出さなかった。

「それじゃ、一緒に修行しましょう!」

聞き飽きた言葉。口癖なんじゃないだろうか。
ひとつのことに本当に真っ直ぐに打ち込んでいる、とても純粋な心を持っているんだろう。

「俺ぁいい。…こんな夜中にもしてるのか?」

手をひらりと振って断ると、ふとしたことに気づく。
今の時間は、少女が外をうろつく時間ではない。
騎士ズが取り締まっているものの、危険は危険だ。
いつ敵のスパイが来るかもわからないというのに。
倒せる力は持っていると思うが、もしもという時もある。

「はいっ!日々精進、ですから!」

呆れた。
夜は控えるように云おう。

「あ、そうだ、ボブさん。
 ちょっと新しい訓練方法を試したいんですけど、付き合ってもらえますか?」
「え、あ、お、おう」

言葉を発する前に少女の言葉にかきけされた。明るい声はよくとおる。
ほとんど勢いで頷いてしまったボブは、しまった、と自分の口を手でおさえた。

「ちょっ、待…!」

がぜんやる気のワカバは暴れるボブの手をひっぱり、軽い足取りで稽古場へと向かって行った。

夜の稽古場。
珍しく人は居ない、鍵を何故ワカバが持っていたのかはあえて気にしないことにした。

「ほっ、よっ」

バンダナの残りをひらひらと揺らしながら、準備運動をしているワカバ。
くきっと間接を鳴らしている傍ら、ボブは頬杖をついてそれを眺めていた。

「ほらっ、ボブさんも準備運動しなくちゃ!」
「…ぉう」

渋々とそこから立ちあがり、ワカバの動きを真似てみる。
時々無理な動きがあって体が軋んだ。痛い。

「うんっと…」

表紙に何も書いていないぶ厚い本を懐から取り出し、ぱらぱらとめくりはじめた。
ワカバが熱心に本を読むとは思えない。恐らくは、新しい修行の指南か何かだろう。

「それじゃ、ボブさん、そこに寝てくださいっ」
「あ?」

寝技の訓練ですよ!と説き伏せられ、その場に横たわる。
木造の床は冷たく、少しだけ出た腰にひんやりと冷たさが走った。

本があった部分から今度は瓶を取り出した。あの服は一体どうなっているんだろう?
ボブがそんなことを考えている間、ワカバは小さい口でそれを含む。
頬を膨らませたまま、ボブの体にその小さい身を重ねた。
そこで違和感に気づいた。だが少し遅かったようだ。

「んっ」
「ん"ーーーーっ!!」

まさかこういう展開になるとは思っていなかった。
ありがちすぎて少し呆れてしまうものの、自分がこうなっているとなれば
とっとと抜け出さないと、凄いことになってしまう。

「んく…」

ワカバの少し熱い鼻息が顔にかかる。
動けなくなる。甘い液体が口の中に流れ込んできた。
水のように軽く喉を通ったものの、甘ったるい味はしつこい。

口移しを終えてもまだ離れようとしないワカバを持ち上げようと手を出すと、
何か柔らかいものに触れた。
それが何かわかって、あわてて手を引っ込めようとしても、出来ない。ボブも男である。
頬に手を沿えて、段々と口づけは深く深くなっていった。
視界が霞む。飲まされた液体のせいかもしれない。
ボブは、自分がワカバの膨らみにあてた手を動かしていることにすら、気づくのに数秒を要した。

「こ…かな…っ」

荒くなった息を吐き出しつつ、時々肩を震わせてワカバはページに目をめぐらせる。
少女の足でボブの腰ははさまれ、視界はワカバの持つ本で埋まっている。
手が止まらない。

「…よしっ」

本を閉じて隣に置くと、ワカバはボブの手に自分の手を添えた。

「…ボブさん…」

…ぐきっ

「〜〜〜〜〜〜ッ…!」

大きく目を見開き、ボブの体が軽く跳ねた。
変なところに曲げられたのだ。折れてはいないが、動かすだけで痛みが走る。

「ちょ…手順は、まだ…」

頬を朱に染めて、荒い息でワカバは告げた。
その姿がボブを興奮させ、一瞬だけだが痛みを忘れさせた。

する…っ

手袋とレガースを外し、腰紐をほどいて橙色の格闘服をはだける。
普段は外にさらされない、黒い上も見える。
細い腰は、鍛えているのだろうがやはり細かった。

その上の裾を掴み、胸の上まであげていく。
あまり迷わない動作に少し興奮は削げるも、既にボブのそれは最大までのぼりつめていた。
少し焼けた肌。純白のサラシが胸の膨らみを覆い隠している。
微かに胸の先端がもりあがっていた。ワカバは自分の背中に手をまわし、ゆっくりサラシをほどいていく。

「…なん、で…お前…」

理由を聞くのには遅すぎる気がする。
先ほどまで行為に夢中になっていた自分を少し情けないと思いつつも、ボブはなんとか理性をかきあつめた。

「新しい修行っ、です!」

こういう時にも元気なのはどうかと思う。
そう告げた後、ワカバは自分の小さい胸に手を添えて、掴んだ。

「あ…っ」

びく、と肩が跳ねる。押し寄せる快感に耐えて、胸を掴んだまま、
ワカバは再び、ボブの体に自分の体を重ねていった。

「っ………」

肌の感触とは少し違う、硬いものがボブの上を擽るように這う。
力の入らない体を精一杯動かすものの、自身の興奮と感触のせいか、殆ど動いてくれない。

「お、もぅ…やめっ」
「だめ…ですっ、途中で…やめ、ちゃ…ぁっ」

自分でやっていることが理解できていないワカバ。タチが悪いことこの上ない。
そのくすぐったさが快感に変わってすぐに、ワカバは上半身を褐色のそれから離した。
気分がハイになってきた時にこれ。生殺しもいいところである。

「つぎ…は…」

息まじりにゆっくり吐き出された確認の言葉とは対照的に、素早い動作で
ワカバの手はボブのズボンの裾を掴み、一気に膝まで脱がせた。

「ーーーーっ!!」
「わっ…」

ぶるん、とそこから現れた男性の象徴に、一瞬驚きの息を漏らした。
流石に正気に戻ったボブは必死にズボンを戻そうとするも、急に自身に感じた感触に手が止まる。

「これ…熱くて…すごい…」

優しくそれを手でつつんだワカバは、手に納まったモノの感想を素直に語っていく。
制止の言葉を出したかったが、ボブは既に声も出せないほど追い詰められていた。

「えと…確か…これを…」

手で一物を弄びながら、ワカバは軽く下半身を起こして、膝丈までのズボンを裾があった位置までおろす。
簡素な下着に包まれた少女の下肢。足はきっちりと鍛えられていて、普段さらされている部分と少し色が違っていた。
それを見て、更にボブの興奮が高まり、心臓と自身の鼓動は早まっていく。

「ここに…」

する、とその薄布にワカバは自分のあいた手を滑り込ませた。
それと同時にボブの身体がびくんと震える。その理由をワカバは知る由もないのだが。

「ぁっ…」

己の秘された場所に触れた時、微かに知らない痺れが流れ、掠れた吐息を漏らした。
普段、身体を洗う時に触れるときには感じない…無意識に、そのまま指先でそこを弄りだす。

「んっ…ぇ…ぁ…っ」

自分の上で自慰をはじめられたボブは、それを握られたまま固まっていた。

「…………」
「はぁ…ぁ…ぁう…」

ハチマキのすぐ下の瞳は薄く細められ、微かに熱っぽい光を灯していた。
ワカバの身体が震えると同時にそれを握る手にも力がこもる。
ボブは死人のような目をして、必死で自分の上で起こっている状況を見ないようにしていた。
それの快楽も自制する。もし今我慢をやめてしまえば、どうなるかは言わずもがな、だ。
普段から溜まっている自身の欲を。さんざん自分が迷惑がっていたことで解消してしまうだろう。
まるでいつもとは別人の少女のー…その幼い秘部で。

だが、その我慢も無意味なことになる。

「…んっ…ぅ…あ…」

いけない、というようにか、薄くなった瞳を少しだけこじあける。

「…こ、こんなんじゃ…修行、たり…なぃ…っ」

上ずった声で紡がれた言葉は、ボブを一気に冷めさせるに値する言葉だった。
相手は全然、“そういうこと”をしている意識はない。
冷めた。…冷めたいのに、何故か身体の熱はおさまらない。

「…ボブさん…それじゃ、本番…です」

そう云うと、ワカバは己の蜜で湿った部分を横にずらして、微かに恥毛が生えはじめた部分を露出する。
肌とは違う色をした秘部を指でひろげ、手に握っていたものをその部分にあてがった。

「や、やめーー……ッ!」
「と、途中でやめちゃったら…修行じゃないですっ…!」

微かに自分も恐怖を感じているのか。少し震え混じりの声でボブをしかりつけるように言う。
ボブは依然暴れたままだが、それを気にせずに、ワカバはゆっくりと腰を落としていく。
既にしっとりと湿った部分は、難なく猛るモノを受け入れ、ぬむぬむと伸縮している。
すとん、とワカバとボブの肌が触れ合い、ワカバは軽く身体を反らせる

「はぁっ…」
「く…ぅ」

甘ったるい吐息と、何かを耐える呻き。
ボブの一物を柔らかく締め上げるその部分はめくるめく快楽を与え、
彼女もまた、びくびくと震える肉の棒の感触を感じて、溺れていく。

「ぁ…ふ…ぁぅ、ぁぁ…」
「や…め、動くなっ…ぅ…」

両手をボブの胸について、腰を上下させはじめる。
内膜を擦る感触に媚声をあげるワカバは、年齢不相応の魅力を醸し出している。
必死に抵抗をするも、その声すらも届かない。

たふたふと、小さめの膨らみが震え、そのさらに上にある口からは一筋唾を流し、稽古場の照明を弾く。
うっとりとした愉悦に染まった瞳はボブの褐色の顔をじっと見つめる。その表情は官能的に…笑った。

「く…も…や…めろ…っぅ」

ぎり、と床に爪を立てる。こうも自身を締め付けられては、流石に我慢も聞かなくなってくる。
特徴的な髪型のすぐ下、額に刻まれた紋章が輝くと、ボブはその姿を変えていく。
人間と狼の中間に位置する、本人のかつてのコンプレックス。人狼の姿に。
身体も人間のときよりかは膨れ上がった。無論、それも。

「ぁは…ッ…ん…んぅっ…!」

体内で膨れ上がったものに更に気をよくしたのか、上下運動がさらに強くなる。
粘膜を擦り合わせ、互いに声を漏らしていく。
口では抵抗しながらも、ボブが突き上げ始めるのにはさして時間がかからなかった。

「はっ…は…」
「ぁっ…ん…く、もう…そろ……そろっ…」

互いに限界を感じ始めた頃。既に自分を投げてるボブはワカバの言葉を聞くとさらに深く突き上げる。
自身に強くからみついたそれが強く脈動し、一気に強い痺れが二人を駆け巡る。

高い声を大きくあげて、びくんとワカバの身体は跳ねた。
それと同時に、遠吠えに似たものが稽古場の中に強く響き渡る。

「今日は、お付き合いありがとうございましたっ!」
「…あぁ」

稽古場の床に座り込んだボブ。きちんと人間の姿に戻っていた。
ぺこんと頭を下げるワカバはきちんと衣服を整えており、“いつもの顔”に戻っている。
重い返事を返したボブはふと、思いついたようにワカバに問う。

「…それで、何でこんなこと、したんだ?」
「あ、それはたまたまボブさんを見つけたからで、別に何で、ってわけじゃないですけど」

少し遅すぎるような気もする質問。まぁ、先ほどまで快感におぼれていたんだから、
そういう根本を忘れてしまうのは仕方無いといえば、仕方無い。

「……たまたま…って」

要約すれば“誰でもいい”という言葉に、ボブはぽかんと間抜けな顔を晒す。

「あ、それじゃ、そろそろ行きますねっ。最後のランニングが残ってるんでっ!」
「おい、待てっ!その本…ッ!」

踵を返して、入り口へと軽い足取りで向かうワカバ。
ボブが伸ばした手と、張り上げた声には気づかなかったようだ。ドアを開け放ち、夜の道を走っていく。

「……あー…もう」

不満をぶつけるべく相手も言ってしまい、何より自分が嫌悪していたものと同類になってしまったことに
肩を落として、深い溜め息をつく。
そのうち独り言の悪態にも疲れて、その場に寝そべり、大きないびきを立て始める。

無論、夜の遠吠えも忘れてはいなかったようだ。

後日。

「あ、ヒックスさんっ!少し、修行に付き合ってもらえますかっ?」
「あぁ、いいよ。僕も今稽古をつけようと思っていたところなんだ。」

その時も、少女はしっかりと、“例の本”を抱えていたそうな。

オワリ

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