ボルス×クリス 著者:3_375様
「……」
カラヤの民が彼女を見る瞳は、冷たい。
ゼクセン騎士団長、そして今は炎の英雄として祖国の者だけにとどまらずグラスランドの民からも注
目を浴びる、クリス・ライトフェロー。
ただなお、カラヤの村に火を放ち、力ないものをその手にかけた、汚名は拭い切れないでいる。あく
までまやかしのなせる業として、誤解を認めたものもいるが、依然として大半の、激しい気性を持つ
民は、憎悪をこめて彼女を見る。
「無礼な輩もいることでしょうから、俺が同伴しましょうか?」
「巡回でしたら、俺も同伴します」
「いや、いい。これは私の仕事だ。おまえたちは城内での有事に備え、ここにいてもらえるとありが
たい。…私は大丈夫」
騎士控え室で雑談をしている、見なれた面々が、くちぐちに同伴を申し出る。それを、軽く手で制し
ながら、クリスは今日何度目かの巡回に立つべく、さっと踵を返した。
「クリス様、何かが足りませんでしたね…」何かに気づいたロラン。
「俺もそのような気がしたが…パーシヴァル、何か気づかなかったかな?」尋ねるレオ。
「…いえ…ただ、カラヤの民のクリス様への視線…注意している必要がありますね。クリス様に元気
がないのも、おそらくそれか…」パーシヴァルの言葉は、途中からつぶやきに変わる。
「……」ボルスは、クリスが去った扉を凝視していたが、その目が険しくなる。
「俺、ちょっと!行ってきます!」皆の返事も待たず、その扉から飛び出すボルス。3人は、怪訝な
顔をしながらも、クリスの残した言葉に従い控え室にたたずんでいた。
なんてことだ!何かがたりないなんてものじゃない!
クリス様は剣を帯びていなかった…
それが何を意味するかは、彼ですら理解できた。普段あまりにも見なれた彼女の姿。当たり前のよう
に帯剣している姿に、剣を持っていないことが視界に入っていなかった。
「クリス様!どこですか?」息をきらせながらも走り、叫ぶ彼の目に、うずくまる銀色の髪の女性が
見えた。
「うう…」
「丸腰で挨拶にくるとはね!俺たちの仲間を殺された恨みが、たかだかこれだけのことで、まったくの
無になると思ったか!」
「炎の英雄だって、その手にかけた俺たちの仲間をよみがえらせる程の力はないじゃないか!」
その手には曲刀。クリスの肩に流れる血。筋違いの仇討ちの光景に、ボルスの顔は怒りで朱を通り越
して蒼白になった。
「貴様ら…」間に立ち、すらりと剣を抜く。まさに皆殺し、といわんばかりの形相に、クリスは慌てて
言葉をかける。
「ボルス、やめてくれ。これが人々に残っている気持ちだ。力でなぎ倒しても、押し曲げても、感情を
変えることはできない。剣を収めるんだ」
「しかし、武器を持たぬ貴女をこのように傷つけたことを許せない…」彼が振り向くと、肩の傷が痛々
しいクリスが映った。
「その者たちを切るより、私の傷を手当てしてくれるほうが…私はありがたい」辛そうに言われ、彼は
はっとして肩を貸し、その場を離れようとした。
「待て、逃げるつもりか、まだこちらの用は済んでいないぞ…」
「どうしたっていうんだい?あんたたち」剣をふるったカラヤの民の後ろから、族長ルシアの声が響い
た。
「いや…これは…」
「クリスと何を話して、何があったのか、ゆっくり聞かせてもらうよ」
その言葉と、戸惑う男たちの声をあとに、二人はそこを立ち去った。
「すまないな…」傷口に、トウタ先生からもらった薬をぬり、包帯を手際良く巻いていくボルスに謝罪
した。
「なぜ、あんな危険な真似をしたのです?剣を持たずに巡回するなど」少し詰問口調で言われてクリス
は、うなだれた。
「皆、心配しているだろうか」横を向いて、不安そうに問う。
「われわれは、すぐにクリス様が剣を帯びていないことに気づかなかった。そのことで自分を責めるで
しょうから、このことは俺は彼らに言わずに置きます」
「本当に、すまない」クリスは暖かいお茶をすすると、一息ついた。
「少しの間、ここにいましょう。ここはセバスチャン殿が好意で宿のお部屋を貸してくれています。
ここならあまり大事にならず治療できるでしょう」
他の騎士には、クリスが防具の物色のためビッキーのテレポートでカレリアに赴いたと伝え、今日で
二日になる。
よくボルスのつく嘘が皆にばれないものだ、と感心しつつクリスは温かい牛乳を一口飲んだ。
「トウタ殿の薬はすばらしいな。もう、傷がふさがっている」
「そうですね。まだ痛みなどはありませんか?」大丈夫だ、とクリスは腕を回す。ボルスは、その様子
をみてほっとした様子だった。
「一時は、どうなることかと思いました。もうあんな、無茶な真似はしないでくださいよ」わかった、と
うなずく。
「本当なら…貴女ではなく、俺が切られれば良かった…いや、切られるべきだったと思います…
戦火、ともいえぬ火の熱にうかされ、俺は…」クリスははっとした。今回のことで、彼は村での出来事
を思い出さざるを得なかった。同じように、自分を責めていた。
日ごろの熱く無鉄砲な彼からは程遠い表情で頭を落とすボルスを、クリスはなぜか、抱きしめずにいら
れなかった。
「クリス様…」突如としてふわりと腕がおおいかぶさり、彼はわけがわからず心底驚いた表情をしたが、
クリスの髪の香り、頬にあたる頬、腕の中の柔らかい感触に一瞬我を忘れた。
「クリス様、あなたを好きといってもよいですか?」お互いの息がかかるくらいの距離で、言葉をかけ
られるクリス。
「あなたをずっとお慕いしていました。世界を救う英雄といわれようと、あなたは、俺がずっと見てきた
あなたに他ならない」
「ボルス?」
「貴女に恋焦がれるものは星の数ほどいるかもしれませんが、それでも貴女だけを愛するこの気持ちは
誰にもゆずれません…」そこまで言って、彼の胸を虚脱感が襲う。
とうとう言ってしまった。もう、もどれない。
言ったことに後悔はしないが、もしも彼女が黒髪の同僚や、あるいはハルモニアからの間諜、はたまた
カラヤの族長の息子を愛していたのなら。
明日から気まずくなるかもしれない。いや、もう言葉を交わすこともできないかもしれない。
「ありがとう」煩悶するボルスの耳に、はにかんだ声が届いた。
「この年で、恥ずかしいことに…正面きって好きといわれたのは、おまえが初めてで…その…私も、
好きだから…」
あなたのその鈍感さも、好きです。
「ん…」初めてのキスは、軽く。何度か唇を合わせるうちに次第に熱を帯びたものになっていき。
「本当に…よいですね?」頬を上気させながら、クリスの体を覆うものをひとつひとつ取り去っていく。
そうして露になった雪のように白くふくよかな胸と、引き締まった腰のラインに、ボルスは思わず見惚れ
た。
何度、この姿を想像したことだろう。幾度夢のなかで裸の彼女をかき抱いたことだろう。
ボルスは、我慢できずその乳房にむしゃぶりついた。
「あはっ…や…あんっ」ふくらみの突端を舌で弄ばれ、思わず嬌声が口からこぼれる。
クリスの胸を堪能した唇は、今度はくちづけを落としながら彼女の体の下方へと移っていき、太股のつ
けねの薄く茂っている部分でとまった。
「あっ。だめ…そこは…はぅっ」
「なぜそう仰るのです…クリス様、とても綺麗ですよ…」力強い腕で太股が固定され、もがけばもがく
ほど秘めたる部分が相手の視界に映り、剰えその最も感じやすい突起を舌でなぞられ、クリスはぞくりと
した感覚に悲鳴のような声をあげた。
次第に、そこが唾液と愛液でぬめりを帯びてくると、ボルスは体勢を変え、クリスの鎖骨に口付け耳元で
囁く。
「ここからが本番ですから…力を抜いてください」
「え…本番…って、ちょっ…ああっ…!」言葉もまともに紡げないうち、彼女の体の内部に何かが
入ってくる奇妙な感覚が襲う。
「こ…これは、何?」
「俺の指です。…奥を、触って見ますよ」言うとボルスは、中に入っている指をより深く滑り込ませ、
窪みを刺激する。クリスはわけもわからず指から生じる快感に身を委ねた。
「何だか…不思議な…っ、気持ち…」率直な気分を口にすると、彼女の中を掻き回していた指の感覚は
いつしか消え、両足が持ち上げられると、引力に逆らいそそり立っているボルスの分身が目に入った。
「力を抜いて…俺のを、入れますから…っ」槍の狙いがさだまると、ずぶりとその先端が入り口に滑り
込む。ただそれは非常に狭く、思わず彼の口から喘ぎが漏れた。
「あん…い…痛ぁ…あつっ…あ、やあああぁっっッ」それが奥へと埋め込まれるにつれ、入り口の
裂けるような痛みが襲い、クリスは苦痛に顔を歪める。そんな彼女の腰を強くつかみ、最も奥まで一気に
貫いた。
「ゆっくり…では、貴女の痛みが…増すばかりなので…っふ…」根元まですっかり埋まったその分身は
きつそうで、あまりの刺激に限界が近いことを感じさせる。ボルスはその快感に喘いだ。
そしてゆっくり、そして少しずつ激しく腰を動かしてゆく。クリスも初めは異物の侵入に痛みしか感じ
なかったものの、だんだん刺激が快感に変わってくるまでに、そう時間はかからなかった。二人の嬌声が
交じる。
「…はあっ…あ…うんッ…」
「ク…クリス…様、もう限界…です…こ、このまま…」
「う…うん…来て…、そのまま…!あ、あああっっ…」二人に限界が訪れると、内壁がひくつくクリスの
中に、搾り出されたボルスの精が注ぎ込まれた。
「…気持ち、良かった」「それは俺もです」果てた二人は、毛布に包まり息を弾ませながら言葉を交わした。
「また…気持ち良くなりたいな」「それはもう、今でもいつでも」「…今はいい…」
結局、騎士団長クリス・ライトフェローがカレリアより戻ったとの知らせがもたらされたのは、出立より
二週間たってからのことであった。
Fin