ボルス×リリィ 著者:3_375様
今夜の城の見まわり当番は、ゼクセン騎士団のうち2人である。
烈火の騎士ボルスは、先ほど自室の前で別れた相棒と巡回場所の分担を決め、先ほど解散
したばかりであった。建物の廊下を誰も起こさぬよう忍び足で歩きながら、腰に剣を帯び
左手にカンテラを下げながら辺りを見まわしていた。
今日も、何事もない平和な夜のようだ。
廊下を一往復した結果そう判断して、彼は自分の部屋へ戻るべく踵を返そうとした、
そのとき。
「うう…た、助けて…」どこからか、女のうめき声が耳に届いた。ボルスは弾かれたように
辺りを見まわす。その声は途切れ途切れで、苦しげだった。
「なんだ?…一体」声の正体を探すべく、腰の剣に手をかけながら一部屋一部屋近づいては
耳をそばだてていった。そしてその足は、ある部屋の前で止まった。
「(リリィ・ペンドラゴン…?あいつか)」相棒から伝染した、顎に指を当てるポーズで、
扉の表札を見やる。彼が敬愛するクリスと旧知の仲だが、彼とはまったく相性が合わない
ティント国の大統領令嬢である。
「(万が一にも拉致されかけているところを救ったとしたなら、クリス様からはもう感謝
されまくること請け合いだな)」心の中で不純な妄想を膨らませながら顔は真剣そのもの
で、リリィの部屋のドアノブに触れる。音を立てぬよう慎重にそれを引くと、どうやら扉は
半開きになっていたらしく軽く開いた。
「(……?何も、ないか…)」ボルスはカンテラをいたるところへかざしながら様子を見る
が、彼女らしい趣味の部屋のどこにも、乱暴狼藉を働くものは見当たらない。奥の寝台では、
部屋の主であるリリィが寝息を立てているようだ。
「(心配して損をしたな…帰って寝るか)」ボルスは部屋を出ようとしたが、再びリリィの
口から漏れる言葉に、踏み出そうとした足を止め、寝台のほうを振り向いた。
「ううん…助けて…助けてよ…」聞こえてくるその声は酷く苦しそうで、うなされているの
が手に取るようにわかる。カラヤの一件以降、健全な眠りを得られぬ彼は、同じように苦しむ
リリィを気の毒に感じて彼女を起こそうと近づいた、
…しかし。
「パパあッ!!」
「ぐわっ!!」眠っているリリィは、そのボルスに勢いよく抱きついた。正面から飛びつかれ、
危うく持っていたカンテラを取り落としそうになる。
「パパ、助けにきてくれたのね…?」眠ったままリリィは嬉しそうに言う。
「おい…俺はパパじゃないし、あんたを助けに来たわけでもないぞ!目を覚ませ!」ボルスは
顔を真っ赤にしてリリィをやっとのことで引き離すと、肩を掴まれた彼女の目が静かに開いた。
ぼんやりとしたその目は彼の姿を認めると勢いよく見開かれ。
「あ、あんたがなんでここにいるのよっ…!!?」あわや大騒ぎになりかけた口をボルスが
右手で抑えた。
「静かにしろっ…リリィ、あんたがうなされている声に呼ばれて入ってきただけだ」
「だからって、ノックもしないでレディの部屋に勝手に侵入してただで済むと思ってるの!?」
リリィも合わせて小声で糾弾するのに、ボルスはぎくりとしてわずかにうつむいた。
「それは確かに、その、忍び込んだのは…悪かったが。でも…あまりに苦しそうな声だった
から、誘拐されそうにでもなっているのではと思ってな…」
「誘拐!?…冗談じゃないわ!もう二度と、あんな目にあってたまるものですか!!」
誘拐という単語に敏感に反応するリリィに、ボルスは怪訝そうに尋ねる。
「二度と…って、あの演劇のネクロードとかいうヤツのことか?それなら大丈夫だろう、
あんたももう若くはないから…ゴフっ」何も考えず出た言葉が、リリィの鉄拳を誘う。
「さっさと出て行きなさいよこのタコ!だいたいね、あんたが私を助けようとしたのだって
おおかた、クリスの友達の私を助けることであのコの信頼が勝ち取れてあんなことやこんな
こと…って、不純なこと考えてたんじゃないの!?」
「いや、そういうわけじゃないっ!」半分図星を指され、女の洞察力に内心舌を巻きながら
必死で否定すると、目の前のリリィはフ、と笑った。
「まあ、そうね…あなた、クリスの忠実なイヌって噂だしね。きっと手出しもできっこないわ」
「な…なんだと!」ボルスの頬が怒りで紅潮する。
「あなた本当にわかりやすいもの。…おめでたい人はいいわね、ボルス卿!寝てもさめても
巡回してもクリスのことばかり考えて、私もそんなにお気楽に生きられたらいいんだけどね」
得意そうに指をつきつけるリリィは、相手の表情の変化に気づくことはない。
「くっ…女だからといって、…許さんぞっ!」顔面を、赤を通り越し蒼白にしたボルスは
静かに剣とカンテラをサイドテーブルに置くと、いきなりリリィの両の手を掴みギリっと
締めあげた。
「!?いっ…いたい!放してっ!!っ…やめてよっ…この馬鹿力!」振りほどこうとしても
騎士の大きな手は、女性の力ではびくとも動かない。彼女の柔らかそうな頬を伝う汗と、
伏目がちに震える長い睫、きりっと引き結んだ唇と…うなされていたときに自分で開いたの
であろう、大きく肌蹴た胸元に、ボルスは目を釘付けにされていた。
「いいわっ!上等よ、放してくれないならこのまま大声で助けを求めてやるだけだわ!」
リリィは痛みに顔を歪めながら、困るのはあんたよ、とばかりにボルスをちらりと見上げると
城中に聞こえるよう叫ぶべく、息を大きく吸った。
「(…ま、まずいぞっ)」成り行きで怒りに任せ腕を締め上げてしまったが、人を呼ばれては
どうしようもないとボルスは心中で慌てふためき。
「(ええい…ままよっ!)」そのまま彼女の腕を勢いに任せ引っ張ると、その唇を自分の唇で
塞いだ。
リリィの目が驚愕に見開かれるのには構わず、彼女のそれを掴んでいた両の手を放してその
まま身体を抱き寄せる。息を吸ったまま開いた唇から舌を口腔内へ侵入させて、激しく舌を
絡ませた。
「う…ん、ふっ」長い時間をかけて歯列とその裏側にいたるまで丁寧に責め苛むと、リリィの
腕の力が徐々に抜けていくのがボルスには感じられた。
不意に、リリィの身体を支えていた手が宙をきると、支えをなくした彼女の身体は引力のまま
にぺたりとそこに座りこんだ。ボルスもそこへ膝を折り、彼女の目を覗く。
「…大丈夫か。…立てるか」静かに肩に手を置いた。虚ろなリリィの目が彼を捉えた途端、
パンッという鋭い音が部屋に響いた。ボルスの口角からつつ、と赤い筋が流れ落ちる。
「…ひどいわ。…ひどい!」
「リリィ…すまない。俺がつい…」ボルスは切れた口は気にせず、リリィの方を困惑した
表情で見つめながら謝った。そうして、リリィの肩を支えて立たせるが、彼女は腰を抜かし
ているようでまたへたりと座り込んでしまった。
「怖い思いをさせてしまったな」
「…うわ…」
「何ていったんだ?」
「違うわって、…言ったのよ」ボルスの肩に腕を乗せながら、今にも泣きそうな潤んだ目で
相手に言葉を放つ。
「…こんな…腰が抜けるようなキスをして…ただ謝って、帰って行くのね…?中途半端で、
身勝手すぎるわよ…」
足が立たないリリィの身体を軽く抱き上げると、ボルスは寝台に彼女を運び横たえた。
つりあげた柳眉の下で瞬く、猫を彷彿とさせるリリィの瞳は、警戒をするような光を放ち
ながらそんな男の目を見つめていた。
「…言っておくが…途中で、やめることはできないぞ」深い蒼の瞳を見据えながら、ボルス
は確かめるように言う。「それでも、…いいんだな?」
「あなたの気性をわたしは知っているし、あなたはわたしの気性を知っているはずよ。
…ボルス」リリィはその目を笑うように細めて、さえずるように応えた。
「聞くまでもなくってよ」
「ああ…それは尤もだな」ボルスは薄く笑うと、先ほど彼が付けた女の腕の痣に、贖罪を
するかのようにゆっくり唇を落とした。
「んんっ…はっ…」リリィの、細い手首をいとおしむように触れていた男の唇はやがて
彼女の首筋を、頬を伝い、唇に辿り着くと貪るようにその内部を侵していった。リリィが
息を弾ませる。
そしてその唇によって、焦らされるようにネグリジェのボタンが外されていくと、リリィは
素肌に直接かかる吐息に肩をびくりと震わせた。
「あっ…んうっ」やがて彼女の身体に纏わりついたそれが静かに脱がされると、ボルスは
そこに現れたたわわな胸の膨らみを舌でなぞりながら、利き手でもう片方の頂をかるく刺激
していった。
「きゃっ」ひとしきりその感度のよい胸の感触を楽しんだ舌はつつ、と彼女の身体の下方へ
滑り、最終的にすらりと長く伸びた両の脚の間に導かれた。
「っや…見、見ないでっ。恥ずかしい」リリィは羞恥に頬を真っ赤に染めて男の頭を抑えよう
とするがその両手は軽く男の片手で束ねられた。
「もう、恥ずかしがることはないじゃないか。…リリィ…とても綺麗だ」ボルスが熱に浮かさ
れたように言葉を放つと、かかる息にリリィの脚はぴくりと反応した。
「!!! あアアっ!!」
舌はリリィの茂みの中央に触れ、ざらりとしたその先が小さな突起をなぞった。先ほどまで
の焦らされるような愛撫から打って変わりあまりに直接的な刺激に、リリィの身体は大きく
はねた。
その舌先は敏感な彼女の秘部を余すところなく蹂躙し、その都度リリィは身を捩って悶えて
いたが一瞬声にならない声を放つと身体を弛緩させた。
「…どうした?」ボルスが顔を上げて意地悪く問う。リリィは弱弱しい目をし、か細い声で
応えた。
「わ…わかってるくせに!あなたの舌はいやらしすぎるわ」
「俺にはおまえのこの身体の方がよほどイヤらしく感じるけどな」
「や…あっ!」リリィの身体に自分の影を落とすと、ボルスは先ほどまで彼が舌で触れてい
たところへ手を動かし、その指をつぷり…と内部へ差し入れた。そこは愛液で濡れてすんな
りと侵入を許し、内壁は侵入したものを更に奥へと導くように指に適度な圧力をかけてやま
ない。
しばしその、彼女の内部の感触を楽しみおもむろに指を引きぬくと、とろりと彼の手まで
愛液が伝い落ちた。それをリリィに眼前につきつけ、艶かしい表情で見せつけるように舐め
とる。
「ほら、こんなにひどく濡れているじゃないか?どこもかしこもイヤらしいな、おまえは」
「くっ…!悪趣味なことするのね」リリィは顔を歪めてその光景から目を背けた。
彼女の白い手足も、細い腰も、存在感のある胸も、ぷくりと赤い唇も、意思の宿る瞳も全て
がボルスの本能を惹き付けてやまなかった。発情したかのように勢いよく騎士衣を脱ぎ去る
と、すでに天を向いた己の分身をリリィの秘部にあてがう。
「ああっ…!…ン…っ」リリィが押し殺した息を声と共に吐き出してのけぞる。
「くっ…っ」ボルスは、後ろへ引こうとする彼女の腰を抑えながら自分の腰を進めた。
やがて根元まで入ってしまうと、彼女の中は熱く、すでに内壁が微妙な動きをして入って
きたものを締め付け始めていた。
水音と、肌の当たる独特の音をたてながら。
二人は互いの身体を貪っていた。リリィは身体の奥まで刺さっている相手の分身に激しく
衝かれながら喘いだ。ボルスは時々相手の唇も犯しながらリリィの体の内部の至る所、内壁
のあらゆる感じる場所を衝いていった。
「ボルス…っ!あ、あっ…それ以上動い、たら…あんっ、わたし、どうか…しちゃうわっ…」
リリィが切羽詰った目で懇願するように相手を見ると、その相手も苦しそうな表情で。
「っく…っ、…リリィ…俺も…もう、…気持ちよすぎて、限界がっ…」ボルスはうわずった
声で応えた。「…いくなら、…一緒だ…っっ!」彼の動きが止まると、リリィの中へたっぷりと
精が注ぎ込まれる。そして彼の分身を咥えこんだリリィの内壁は、その精を一滴残さず飲み込む
かのようにしばらく動きを止めなかった。
「…リリィ」二人が果ててから、わずかの時間が経過して。
ボルスは、彼の腕に頭を乗せているリリィに話しかけた。蒼の双眸がこちらを見る。
「…好きだ」そのマホガニー色の柔らかい髪を指でなぞりながら相手に言う。
「共にいて欲しい」
「……わたしも…同じ事を言おうと思ってたわ」
リリィのその目から、涙が一筋頬を伝い落ちた。
「あの…あの、クソガキ!!!」
翌日の壁新聞の一面を飾ったのは「烈火の騎士とご令嬢の熱愛発覚!?」の記事。
ボルスが何気なく見るなりそれをど派手に破いて自室に戻る様は、ゴシップを完全に認めて
いると同義であり。
「アーサーとかいったな。根も葉もない噂を記事にしやがって」
「噂ならばやがて消えるさ。…噂ならな」彼が不機嫌そうにどかりと腰をかけた向かいで、
その相棒パーシヴァルは目を細めて相手に言う。
「な、なんだ、その目はっ!?だいたい、意味深な言い方をするな…もういい!直接ヤツ
を問い詰めてやるっ」記事を握ったままドスドスと勢いよく部屋を出て行くボルス。
その旋風のように去った姿をみて、残されたパーシヴァルはひとり溜息を漏らして言った。
「本当にわかりやすい奴だな…だいたい、見られて困るコトをするなら始めからドアくらい
閉めておけ」
(終)