娼館シリーズ・ノーマがんばる!(???×ノーマ) 著者:義勇兵様
わたし、ノーマ!
「スゴい魔法使い」の人を探して旅をしてるんだ。
それというのもおかしな紋章の呪いでヒョウの姿に変えられちゃったエッちゃん…
わたしの幼馴染のエルンスト君を元に戻すためなんだけど、これが思ったよりも大変。
「自称」スゴい魔法使いの人はどこにでもいて、そういう人たちはわたしたちのことをネギしょった
カモかなにかと間違えてるんじゃないかって感じで、平気で適当なこと言ってお金だけ巻き上げようとしたりするんだよ。
最初の頃は何回かそういうのにひっかかっちゃったりもしたりして…
宿屋さんに泊まるお金もなくなって、エッちゃんにひっついて眠ったりしたこともあったっけ。
もともとそれまでもエッちゃんが一緒だとどこの宿屋さんも泊めてくれなくて、
わたしの部屋の窓の外にきてもらってこっそり毛布をかけてあげたりしてたんだけどね。
そのうちエッちゃんが言い出して、大道芸みたいなことをしてお金を稼ぎながら旅をすることになったんだけど…。
わたしは本当はあんまり気が進まないんだよ。
だってエッちゃんを見世物にしてお金をもらうなんて、やっぱりいい気はしなかったから。
凄く頭がいいんだね、ってお客さんはみんな言うけど、そんなこと言われてもエッちゃんは嬉しいはずないもん。
エッちゃんはヒョウじゃないもん。人間だもん。
なんだかエッちゃんばっかり苦労してるよ。
わたしがやることって言えば、エッちゃんが見せた芸に感心してお金を払ってくれるお客さんに
「スゴい魔法使いの人、知りませんか?」って聞くだけ。
そもそもエッちゃんがこんなになっちゃったのはわたしのせい。
満月の夜に、あるいは何か必要があって少しの間だけ人の姿に戻るたびに、
エッちゃんはそんなことないって慰めてくれるけど、やっぱり悪いのはわたし。
だから、もっとわたしががんばらなきゃだよ。
エッちゃんのためだもん、辛いことなんか…ううん、辛いことはやっぱり辛いけど、我慢しなきゃいけないもん。
だからわたしは…。
はあ、と一人溜息。
今までみたいなやり方じゃ、いつまでたってもエッちゃんを元に戻すことなんてできないって思ったから、
わたしは一つの決心をした。
ここはずいぶん大きな街。わたしたちはしばらくこの街に滞在して
本格的にスゴい魔法使いの人を探すことにした。
エッちゃんには夜は酒場に入って、噂話をいろいろ聞き込んでくるから待っててねって言ってある。
エッちゃんに嘘はつきたくないけど、ホントのことを知ったら絶対止めるに決まってる。
わたしが今いるのは、いわゆる娼館と呼ばれる場所。
前に街を歩いてたら、そういう職業の人と間違えられたことがあるんだよ。
慌ててそんなんじゃないって言ったら、だったらそんなまぎらわしいカッコしてんなって…。
その時は頭にきただけだったけど、それならわたしにもできるかもって思って面接を受けてみたら
拍子抜けするほどあっさり決まっちゃった。それはそれでなんか複雑だったけど、とにかくよかったよ。
ここにはいろんな立場の人が来る。
その中にはきっとスゴい魔法使いの人のことを知ってる人だっているはずだよ。
それにお金もたくさんもらえるし、これから旅をするのも随分楽になるはずだもんね。
むりやり明るい方向に思考を向けてみるけど、やっぱりそんなに簡単なものじゃない。
ここに来てからどれくらい経ったっけなあ。
思い出そうと指折り数えてみたけど、なんの意味もないと思いなおして途中でやめちゃった。
「ノーマちゃーん、ご指名よー」
ああ、またかあ。なにか手がかりだけでも見つかるならやる気もでるんだけどなあ。
「ノーマちゃーん?」
「はーい!」
上辺だけでも元気に返事。
とにかく今日もがんばってみるよ。
もしかしたら今度こそ手がかりがつかめるかもしれないもんね。
わたしは自分に気合を入れて、娼婦の控え室を後にした。
「こんばんはー、ノーマでーす」
明るい挨拶といっしょに部屋の中へ。
人によっては挨拶の仕方が悪いっていきなり怒り出す人もいるから、とにかく元気に愛想良く。
「やあ、待ってたよ」
よかったー、わりと普通っぽい人だよ。
はっ! ちがうちがう、心配するのはそこじゃないよ。
わたしはスゴい魔法使いの人の情報のためにここにいるんだよ。
あらためて見ても、やっぱり見るからに普通そうな人だよ。今夜もあんまり期待できないかなあ…。
「へー、なんかエッチな服だね。ここの仕事着なの?」
「え、ううん、これは自前で…」
うーん、やっぱりわたしの服ってエッチなのかなあ。わたしはそんなつもりないんだよー。
「自前なんだ? そっかー、ノーマちゃんはエッチな女の子なんだね」
ぴらっ、とスカートをめくられる。
「きゃっ! もう、エッチだよー」
別にめくられても下はレオタードだから下着が見えるわけじゃないじゃん、とか
そもそも前で留めてないから最初から丸見えじゃん、とかは言いっこなし、だよ。
「ははは、オレもエッチか。ノーマちゃんといっしょだねー」
「あははは…」
なんか明るい人だなあ。
別にこんなところ来なくてもよさそうなのに。
「さーて、それじゃあ時間ももったいないし、はじめよーか」
「う、うん。あの、脱いだ方がいいのかな」
「いやいやいや、それには及ばないよ。こんなエロい服を見たら脱がしてみたくなるのがオトコってもんでしょー」
もんでしょーって言われても、わたし知らないよー。
エッちゃんはそんなこと言わないけどなあ。
「ふんふんふーんと…ノーマちゃん、ロリ顔のわりにオッパイ大きいよねー」
わざといやらしい手つきで胸を揉みながら、"彼"はニヤっと笑ってみせた。
そういえば名前も聞いてないけど、まぁいいか。わたしが聞きたいのは名前なんかじゃない。
「それそれそれ」
「きゃっ、きゃうっ、それだめぇっ」
「おっと、ノーマちゃんの弱点はこの可愛い乳首なのかなー? じゃあもっと攻めちゃおう」
「ひゃああっ…!」
きゅっ、と乳首をつまみあげられて思わず声が上がっちゃう。
その間に、彼はするするとわたしの服を脱がしていた。その手つきは随分慣れてるっぽい。
見かけによらず、こういうところに通いなれてる人なのかな。
「そーれ、オッパイちゃんのお出ましだー」
「あ、は、恥ずかしいよお」
別に演技じゃなくて、それはわたしの本心。
もう両手の指じゃ数え切れないくらいの男の人に見せたけど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいよ。
「乳首ナメナメしちゃおっかなー」
ちゅうっ、ちゅうっ、とわざと音を立てて乳首に吸い付いてくる。
舌の動きもやけに滑らかで…やっ、ちょっと感じちゃうよ…。
「ちゅうっ、ちゅうううっ」
「そ、そんなに吸っても、オッパイでないよぉ…」
「おっとそいつは残念」
にやにや笑いながら、彼は私の手をとると自分の下半身の方へ導いていった。
「ほら、ノーマちゃんもオレの触って」
「う、うん…」
おそるおそるそこに触れると、そこはびっくりするほど硬くなってた。
ズボンのジッパーを下ろして中身を取り出すと、びんっ、と擬音をつけたくなるくらいの勢いで飛び出してきた。
「す、すっごい元気だよ…」
「私の愛馬は凶暴です」
「えっ?」
「いやなんでもない」
とりあえず肉棒に手を添えて上へ下へ擦り上げる。
ここのところ毎日やっていることだから、結構慣れてきちゃった。
その間にも彼の手は止まらずに、片手は胸を揉みしだきつつ、もう片方を股の間にそっと差し入れてくる。
「あっ、そこは…」
すっかり脱がされて隠すものはなにもないそこに、長い指がするりともぐりこんで掻き回す。
「ひあっ、あん、ああんっ」
「まだ余裕があるっぽいねー」
指の数が増えた。二本の指を別々に動かして、わたしの秘裂の中を縦横無尽に這い回る。
同時に固く立ち上がった乳首をこりこりと刺激しながら、首筋に舌を這わせて嘗め回してきた。
やっ、なにこの人…うまい…!
「やあんっ、気持ちい、気持ちいいよぉっ」
いくつものポイントを同時に刺激されて、思わずあえぎ声が出ちゃう。
普通そうな人に見えたのに、見た目どおりの人じゃないみたいだよー…。
「こっちはどうかな…っと」
「やあっ!?」
胸から手を離して、わたしの肌の上を滑らせながら指がお尻の方に移動した。
「そ、そこはやだっ! そこはやめっ」
静止の声はさらに秘所に飲み込ませた指の刺激でむりやり止められた。
お尻なんてやだっ…! そう言おうとするけど、与えられる刺激が強すぎて言葉にならない。
口からは意味をなさない喘ぎがひっきりなしに漏れるだけ。
「ひゃうっ、ひょこ、しょこ、そこ、はっ…!」
それでもなんとか言葉にしようとがんばってみた。でもやっぱりムリ…。
もうダメだよ…と観念した時、お尻の穴のギリギリまで迫っていた指がぴたっと止まった。
それと一緒に首筋を舐め上げる舌も、股間の指も止まる。
「はあ…はあ…え?」
「いや、ゴメンゴメンちょっとやりすぎたかな。オレ、エッチは楽しくがポリシーだからさ、
ノーマちゃんが嫌がるならお尻はやめとくよ」
「あ…ふ、ふぅ…あ、ありがとう…」
「や、どういたしまして」
わたしの息が整うまでの間、彼は裸で荒い息をついて横たわるわたしを楽しそうに見つめてた。
「んじゃま、そろそろいっちゃう?」
これ以上ないほどに反り返ったそれを指差して、彼はニヤっと笑ってみせた。
「う、うん…」
経験の少ない人なら、手とか口で終わらせちゃってそこまでやらなくてもいいこともあるんだけど。
この人はちょっと勝手が違う。わたしがどう頑張ってもリードするのはムリそうだよ。
ひどいことはしなさそうだし、いつもよりはきっと楽なはず。
「ねーねーノーマちゃん、おねだりしてみてよ」
「えっ、おねだり…って?」
「オレのコレ、ほしいってアピールしてみせて」
「え、ええっ」
そ、そんなこと言われても困るよー。
わたし別にそんなのほしくないし…
「はやくー」
「う…こ、こう、かなあ」
自分で秘裂を広げて、見せ付けるようにしてみる。くぱぁっ、と恥ずかしい音がして、顔が赤くなるのがわかった。
「こ、ここに…そ、それを挿れて、くだ、さい…」
「んー? それってなにかなー」
「ううう」
どうしても言わなきゃダメなのかなあ。彼の顔を伺ってみると、凄く楽しそうにニコニコ笑ってた。
「ノ、ノーマのここに、あなたの…その、その…ペ、ペニスをずぶって、挿れて…」
「んー、ペニスかー。ま、いいか」
なんとか満足してもらえたみたい。彼は自分のモノを握ってわたしのそこに狙いを定めて、
入り口を何度も擦ってみせた。
「やぁんっ、はあ、はあぁんっ」
背筋を電気が駆け上るみたいなゾクゾクした感じがして、思わず震えちゃう。
そんなわたしの反応が楽しくて仕方ないみたいに、彼は笑顔を絶やさない。
「じゃあ、いっくよー」
ずぶっ!
勢いをつけて腰が押し出されて、わたしの中がどんどん犯されていく。
彼の愛撫でどろどろになっていたそこは信じられないくらいスムーズに彼のモノを飲み込んでいた。
「どうかなー、ノーマちゃん。感じてるー?」
「う、うんっ感じてる、よっ。気持ちいい、よっ!」
「オレもすっごく気持ち良いよー。お揃いだね」
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ…
腰をグラインドさせるたびに、肌がぶつかりあう音が響く。
わたしの割れ目からは絶えることなく愛液が滲み出ていて、彼の肉棒が根元まで刺さるたびに溢れ出て
彼とわたしの肌に飛び散っていく。
「は、ああああああっ!!」
彼の動きが激しくなって、膣内が激しく掻き回される。肌を打ちつける音のリズムも早くなって、
彼の限界が近いことがそこからわかった。
「このまま中に射精してもいいのかなっ」
「あ、あの、できれば外、にっ…!」
娼館の決まりでは、お客さんは中に射精すことも許されている。
それでもわたしは今までいつもそう言ってきた。
わたしがホントに望んで受け入れたいのはエッちゃん一人だけだから。
「りょーかい…っと!」
わたしの中から肉棒が勢いよく引き抜かれる感覚があった。
その瞬間、肉の竿の先端から白い欲望の証がどくどくと溢れ出る。
飛び散った精液はわたしのお腹や胸に雨のように降りかかり、顔にまで飛んできた。
「はあ…はあ…」
荒い呼吸をつくわたしの身体の線に沿って、精液が滑り落ちていった。
「あの…スゴい魔法使いの人のこと、何か知らない?」
情事が終わって寝台の上で枕を並べながら、わたしはそう切り出した。
館長さんには余計なことは言わないようにって言われてる。
前にわたしにそう聞かれた人が館長さんに文句を言ったらしい。
でもこの一言を口にしたいがために、わたしはガマンしてこんなことしてるんだもん。
なにを言われたって、これだけはやめられない。
お客さんの反応はいろいろ。
興味なさそうに知らないって一言言うだけだったり、興が削げるようなこと言うなって怒り出したり、
なにも知らないのに思わせぶりな素振りだけ見せて、わたしにもっといやらしいことさせようとしたり。
でも今夜のお客さんはそのどれとも違ってた。
「スゴい魔法使い…ノーマちゃん、弟子入りでもしたいの?」
「ううん、そういうんじゃないよ。でも、どうしても会わなきゃいけないんだよ」
「へえ…」
首をめぐらせてわたしの顔を覗き込んで、わたしがこれ以上ないくらい真剣な顔してるのを見ると
彼はちょっと口を噤んでから喋り出した。
「なんか事情があるんだね」
「うん」
「どんなの? …って困った顔しないでよ。別に無理に聞いたりはしないって」
ちょっと笑ってから、彼は言葉を続けた。
「ファレナの女王国にそんな人がいるって聞いたことあるなー」
「ホントっ!?」
今までで一番有力な…っていうか、初めてのまともな情報。
わたしはそれに餌を目の前にした魚みたいに食いついた。
「ファレナの、ファレナのどのあたり!?」
一口にファレナって言っても広い。できればもう少し詳しいことが知りたかった。
「うーん、オレも実際会ったわけじゃないから。正確な場所教えてあげられればいいんだけど、ごめんね」
「う、ううん…」
わたしは愛想笑いを浮かべながら、一生懸命考えていた。
たとえ他になにも情報がなくったって、今までなにもなかったことに比べればずっといいや。
とにかくファレナに行ってみよう。それからのことは行ってから考えればいいよね。
とりあえずそう考えてたわたしに、彼はもう一つヒントをくれた。
「そういえばノーマちゃん、ストームフィストって知ってる?」
「え? ううん、知らないけど」
「ファレナの結構デカい街なんだけど、近くそこで闘神祭ってのがあるんだよ。
次期女王様の婿を決める武道大会でさ、すごい数の人が集まるんだって。
だからそこに行ってみて、いろんな人に話を聞いてみればもうちょっと詳しいことがわかるんじゃないかなー」
「ファレナのストームフィスト…」
絶対忘れないように口の中で繰り返しつぶやく。
そこに行けば、スゴい魔法使いの人の手がかりがつかめるかもしれないんだ!
「ちょっとは役に立てたかなー」
「うん! ありがとう、えっと、お名前…」
お礼を言おうとしたけどまだ名前を聞いてない。でも、彼は朗らかに笑ってわたしの問いには答えなかった。
「オレの名前なんてどうでもいいじゃない」
「でも…」
もう一度聞いてみたけど、彼はやっぱり答えなかった。
代わりにちょっと真面目な顔を作って、わたしの目を覗き込んでくる。
「行くのかい?」
「うん」
一瞬の間もおかずに答える。
「そっかー。オレ、ノーマちゃんのこと気に入っちゃったから、ちょっと残念だけどさ。しょうがないよね」
なんて答えればいいのかわかんなくて黙ってると、彼はにっこり笑ってわたしの頭を軽く撫でた。
「がんばってな。もう会うこともないだろうけどさ、オレ、ノーマちゃんが早くスゴい魔法使いに会えるように祈ってるよ」
「うん。あの…」
「んー?」
「ありがとう、だよ」
その日のうちに私は娼館をやめた。
いきなりのことだったからそれなりのお金を館長さんに払わなくちゃならなかったけど、
手がかりがつかめた以上、わたしはすぐにでも旅立ちたかった。
「さあ、エッちゃん! 目指すはファレナのストームフィストだよ!」
まだ朝日も昇りきらない朝早く、わたしはエッちゃんと並んで滞在していた街を出た。
ストームフィスト。たくさんの人が集まるその街に行けば、きっとなにかがわかるはず。
雲ひとつないよく晴れた空の下を、エッちゃんと並んで歩き出す。
ファレナ女王国へ――。
様々な陰謀渦巻くその土地で、激しい戦乱に巻き込まれることになることを、
その時のわたしは知る由もなかった。
(終)