エレーン・ゲド×クイーン 著者:3_312様
寒すぎてなかなか湯からあがれなかったのが悪かったのか、
それとも考えにふけっていたのが悪かったのか、後から考えてもわからないのだが、
とにかく自分の白い肌を思惑ありげに眺めているエレーンをおいて「お先に」と立ち上がった瞬間、
フッと目の前が真っ白になったことだけは覚えている。
気がついた時には、クイーンは裸のままで脱衣場に転がっていた。
まだ痺れる頭をふりながら身を起こそうとして、彼女は両手が自由にならないことに気づいた。
「おやおや、お目覚めかい?」
霞む目で声のした方向を見ると、エレーンが化粧の最後の仕上げをしているところだった。
「もうすこしゆっくりしてなよ。疲れてるんだろう?」
のんびりと香水を付けるエレーンの姿を見ながら腕を必死に動かすと、
どうやら手首の辺りを柔らかい布で縛られているらしい。
「下らない悪ふざけは大概にしとくれ」
「いいじゃないのさ。たまには女同士の話でもしようじゃない」
エレーンは答え、上半身を起こしたクイーンのそばに膝をついた。その手がクイーンの白い背筋を滑る。
「悪いけど、あたしにそういう趣味はないよ」
「そうかい?」
エレーンが首を傾げる。
「それにしても、ほんとに綺麗な肌してるよね」
「あんたと違って若いからね」
クイーンが冷たく切り返すと、エレーンは人の悪い笑いを浮かべた。
「ふふ…傷一つない、白くて綺麗な肌だ。男に抱かれりゃ、普通傷の一つや一つつくだろうにさ」
「!!」
クイーンが口ごもったのを見て、エレーンは勝ち誇ったように彼女を見据えた。
「昼行灯に使いッぱに酒飲みジジイに、三人もそろってあんたのところの男どもはずいぶんと奥手みたいだねぇ。
かわいらしい若い坊やはカラヤのお嬢ちゃんを追っかけてるようだし。
やっぱりどうせならおばさんより若い子のほうがいいもんね。
それともあんた、全員から愛想をつかされたのかい?
決まった相手もいない女一人が男どもと一緒にいて、手がつかないってほうがおかしいものねぇ……」
「……バカにするんじゃないよっ!」
クイーンはそう応じるのが精一杯だった。
確かに端から見ればおかしいかも知れない、それは自分でも承知の上だったからだ。
「おや、図星かい?まあ、そう怒りなさんなって」
エレーンはニヤニヤしながらクイーンを眺めていたが、突然彼女の両足首をつかんだ。
「寂しいんだろ?ここは長いつきあいのあたしが慰めてやるよ」
「何が長いつきあいだってのよ!」
抗議の声も虚しく、両足をぐいと引き上げられると、クイーンの背中は床にたたき付けられた。
「ちょ、ちょっと、何するつもりなんだい!?」
「言っただろ、慰めてやるってさぁ」
エレーンは自分の脇の下にクイーンの太股を抱え込むと、露わになった恥部に顔を近づけた。
湯冷めした身体の、敏感な所に息がかかり、クイーンは思わず身をよじる。
「恥ずかしがることはないじゃないの。ついさっき、さんざんお互いの裸を見たんだからさ」
「それとこれとは…ああっ!」
秘裂を舌で舐め上げられ、クイーンが喘ぐ。
「うふふ…ちゃんと綺麗にしてても、ここは女の匂いがするね」
からかうエレーンに逆らおうにも手を縛られ、足を抱え込まれているので身体の自由が利かない。
エレーンはそれがわかっているようで、平然と茂みに顔を埋め、舌でクイーンの双丘を愛しみ始めた。
「はぅっ!…や…やめ……やめないか…ァァッ!!!」
「可愛い声出すねぇ。あんたんとこの男達、この壁の向こうでどんな顔して聞いてるんだろうね」
クイーンはなにか言い返してやろうと思ったが、エレーンの唇が花心に触れて軽く吸い上げると
もう何も考えられずに悲鳴をあげるしかなかった。
「ずいぶん感度がいいじゃないか。ご無沙汰だとこんなになっちまうもんかい?」
「…っ毎晩威勢がいいだけの坊やの処理をしてるあんたと一緒にしな…」
ようやくやりかえしかけたところでエレーンが蜜のあふれ始めた秘壺に舌を差し込み、
クイーンは言葉を切って唇を噛んだ。
「我慢しなくてもいいじゃないか。声を出した方が気持ちいいだろ?」
「うるさ…はっ…」
何を言ってもエレーンがやめようとしないと思ったクイーンは逆らうのをやめ、
ただエレーンを喜ばせないようにと歯をくいしばった。
こんな稼業をしている以上、好きでもない男に抱かれたことは数え切れないほどある。
それと同じで、相手が飽きるまでの辛抱だと自分に言い聞かせようとする。
それでも自分の一番嫌な相手、事もあろうに同じ女に犯されていると思うと、
クイーンの背筋を冷たい屈辱感が駆け上がるのを止めることはできない。
けれど全身が悪寒で凍り付くそばから、卑猥な音と愛撫される感触で身体の芯が焼けるように熱くなった。
外で誰かが騒いでいるような声がするが、クイーンは何も聞かず何も感じないよう目を閉じて唇を噛んだ。
突然物音がして、下半身が解放される。
ばさり、と柔らかいものが投げかけられる感触があって、クイーンは少しだけ目を開けた。
「…痛っ…足をひねっちまったじゃないか!」
エレーンが罵倒した。
「だいたい、ここがどこだかわかってるのかい?!
あんたがそんなだから、あんたのところの隊員もろくなもんにならないんだよ!聞こえてんのかい?ゲド!!」
その名前を聞いて、クイーンが驚いて身を起こす。
「そのろくでもない俺の部下と喧嘩するのはかまわん。だが、手を出すならば話は違うぞ」
「なんだい、偉そうに…カッコつけても場違いだよ?!」
「さえずるのは勝手だが、俺の部下に手を出すときには、まず相応の覚悟をしておけ」
先ほどまで男湯に入っていたはずのゲドは服も半分ひっかけたような恰好だ。
自分の身体を覆っているのが汚れのないシーツであることに気づいて、
クイーンはだいたいの状況を理解した。
おそらく騒ぎを聞きつけ、急いでルースから洗濯物を拝借してきたのだろう。
クイーンはなんとなくそんな小事に考えが至って、
ゲドが自分を助けに来たという大事のほうに気がつくまで少しかかった。
「大丈夫か?」
なんとか脚を動かして身を起こした彼女に、ゲドがたずねる。
「これ…解いて」
首を捻って背中に回された両手に視線をやると、ゲドはすぐに了解して彼女の腕を縛るものを取り去った。
改めて見てみると、ただのタオルだ。
自分が倒れたのを見て、エレーンもとっさに思いつき、手元の道具で間に合わせたというわけだ。
「立てるか?」
ぼんやりと考えていたクイーンの返事が遅れたのを見て、ゲドはそのまま彼女の背中に腕を回し、シーツにくるまれたままで立ち上がらせた。
「…ありがと」
「もし男に抱かれたいなら、そう言えばいい」
ゲドは唐突に口にすると、横目でじろりとエレーンを睨んだ。
クイーンも思いがけない台詞に、言葉を失っている。
「お前に誘われて断るような男は、そうはいないさ」
それが先ほどのエレーンの言葉に対する牽制であることに気づいたクイーンはすぐにいつもの強気を取り戻した。
「じゃあ、ここで抱いてよ」
「……………なに?」
「ここであたしを抱いてよ。あいつの目の前で」
普段からどこを見ているかわからないゲドの視線が、余計に遠くをさまよっているように見えるのは気のせいだろうか。
クイーンは構いもせずにまくし立てた。
「だいたいこいつ、あんたのことを昼行灯とか提灯アンコウとか朴念仁とか唐変木とかダイダラボッチとか好き勝手に言ったんだよっ!」
「そこまでは言っていなかったと思うが」
「聞いてたの!?」
「出歯亀をしていたわけではない」
「とにかく、見せつけてやりたいんだよ。誘われたら断らないって、今自分でいったばかりじゃないか。
あれは恰好をつけるための嘘だったのかい?」
「……そんなことはない」
ゲドは肩をすくめると、クイーンの身体を軽く押してそばの木箱に座らせた。
ほとんどひっかけただけだった服とシャツを脱ぐと、痩せて筋肉質の身体が露わになる。
クイーンの身を覆うシーツに手をかけ、ゲドはもう一度訊ねた。
「いいんだな?」
クイーンは答えるかわりにシーツを身体から滑り落とし、自らの腕をゲドの腰に回した。
ゲドの左手がクイーンの右腕を掴む。
「なに?」
「余興のようなものだ」
そう答えたゲドは、クイーンの手を握りしめ、先ほどまで彼女の両手を縛っていたタオルを取り出した。
右手と口だけで器用に二人の手首を縛り上げる。
「…あんた、意外と変態なのね」
「見かけ通りだろう?」
「自分で言ってどうすんのよ」
ゲドはくすりと笑ったクイーンの上で身を屈めると、彼女のうなじに手を添えて唇を重ねた。
たっぷりとクイーンの口内を味わったあと、ゲドの舌が彼女の頬を舐め上げて耳まで移動する。
「ぁ…!!」
クイーンは息を吹きかけられて甘い声を上げ、瞼を閉じたが、すぐに目を開くと勝ち誇った視線をエレーンに突き刺した。
エレーンが顔を背けて、出ていこうとする。
「逃げるんじゃないよ!」
突然耳元で叫ばれ、ゲドは思わず顔をしかめた。
「人の事をさんざんおちょくっといて、ただですむと思ってるのかい?
あたしんとこの隊長はあんたが子守りしてるようなガキとは違うのさ。しっかり見ていきな!」
「ふん、そうやって見られて感じるあたりは相当飢えてた証拠だろ!」
エレーンも負けずにやり返す。
「あんただって強がってるけど、目が離せないみたいじゃないか。
デュークはそんなに下手くそかい?それとも…あはっ…」
女同士の喧嘩に飽きたゲドがやや乱暴に形のよい乳房を鷲づかみにすると、クイーンはたまらず喘いだ。
骨張ったゲドの右手がクイーンの乳房の片方を揉みあげる。
さらにゲドは縛られた左手をもう片方の乳房に添え、まだ柔らかい乳首に口をつけた。
かすかに石鹸の香りが残るだけのクイーンの肌の匂いは、一夜に幾度も男と肌を重ね、そのたびに汚れを洗い流すせいで匂いを失ってしまう娼婦のそれとよく似ている。
どんな香水よりも卑猥な匂いだ。
そんな考えが浮かんでゲドの手の動きが止まると、クイーンは自分の手を添え、自らの柔らかい胸を揉みしだき始めた。
「まさか、女の抱き方を忘れたわけじゃないんだろう…?」
ゲドは答えずに彼女の手を振り払うと、円を描くように右手を動かした。
その間もしつこく舌で愛撫されているもう一方の乳首は、唾液に濡れ、少しずつ固くなってゆく。
「んっ…」
そこに軽く歯を立てられ、クイーンは喉を鳴らした。
もっと刺激を求めるようにゲドの後頭部に手を伸ばし、少し力を入れて自分の胸へと押しつける。
ゲドは幾度も彼女の乳首を甘噛みしたり吸い上げたりしながら、左手をクイーンの下腹部へと滑らせた。
離れないクイーンの右手もそれに引きずられ、秘唇から滴る自らの愛液で濡らされる。
「まだだな」
ゲドは呟いてクイーンの胸元から身を離すと、彼女の肩を押して箱の上に横たわらせた。
脚を掴んで軽く引き寄せ、湿った花弁に口づける。
「……くっ…」
その感触が与える快楽よりも、ついさっき与えられた屈辱の方を思い出し、クイーンは目を細めた。
それに気がついたゲドが顔を上げる。
「おまえのここに、エレーンの香水の匂いが残っているな」
「…………」
「心配するな。俺が消してやる」
ゲドはそう言うと、ふたたび茂みに顔を埋めた。
ゲドの舌は秘所の中を深くは犯さないまま、その周囲を、花芯を幾度も幾度も拭い続けている。
「あァん…はぁっ……」
その動きに答えるように、クイーンが声をあげる。
最初は喘ぎ声だったのが甘えるような鳴き声になった頃には、蜜壺からはとめどなく露があふれ、
ゲドの唾液と混じったそれはエレーンの刻んだ汚れを洗い流そうとするかのようだった。
ようやくゲドが愛撫をやめた。
「んっ……」
引っ張られる手の動きでゲドが立ち上がったのがわかり、クイーンは溜息をつきながら身を起こした。
「手伝おうか?」
片手だけでズボンを下ろそうとしているゲドの胸板によりかかり、自由な方の手で腰をまさぐる。
強引に下着ごと衣服を引きずり下ろすと、クイーンの目の前に色濃くそそり立つゲドの逸物が現れた。
その大きさに、彼女は思わず唾を飲み込む。
「…今更怖くなったか?」
「バカ言わないでよ。生娘じゃないんだから」
クイーンは言い返し、そのままむしゃぶりつくようにゲドのモノの先端を口に含んだ。
亀頭を幾度か軽くしゃぶってから口を離し、舌にたっぷりと唾液を乗せて裏筋を愛撫する。
ゲドは深く息をしながら前屈みになって身をよじりながら口淫を続けようとするクイーンの身体を眺めていたが、やがてその身体を引き上げて立たせた。
「辛そうだな」
「だったらそこに横になったら?たっぷりしゃぶってあげるから」
「いや、むしろ、このほうがいい」
何、と聞くより早く、ゲドはクイーンの左の太股に手をかけると、ぐいと引っ張った。
「!!」
バランスを失いそうになったクイーンが、慌ててゲドの首にしがみつく。
下腹部にゲドの怒張を感じたと思う間もなく、クイーンの腰はゲドの手で軽く持ち上げられ、そのまま一息に貫かれた。
「あああああああぁっ!!」
十分に慣らされてはいたはずだが、倒れないよう身体に力をいれているせいか、ゲドの肉棒を締め付ける力は強かった。
ゲドは持ち上げている脚を自分の腰に回してやり、もう一方の手をクイーンの柔らかい尻にあてた。
自分自身の右手が、ゲドの左手に導かれて自分の腰をゲドへと引きつけている。
いやらしい考えがクイーンの脳裏に浮かび、彼女はそれをうち消すように片足と片腕でゲドにしがみつくと腰をすり寄せた。
その動きと自らの重みで二つの身体がより深く繋がり、クイーンはゲドの胸に顔を埋めたままで声を漏らした。
身動きの度に結合部からは愛液と先走り液との混じり合った蜜が漏れ、卑猥な音が立つ。
手で彼女の腰を支えながら、ゲドが繰り返し突き上げる。
クイーンの膣は彼の分身をくわえ込み、きつく締めつけていた。
「少し力を抜け」
ゲドは自分のモノが太さと堅さを増すせいでより締め付けが強くなり、絡みつく内壁の感覚にそろそろ限界を感じて囁いた。
「あんたこそ……一発…出しちまいなよ…」
クイーンはしとやかさとは無縁の台詞を口にして、再び腰をすり寄せた。
「くっ…!」
その刺激にゲドはそれ以上クイーンの身体を味わうことを諦め、激しく腰を動かして絶頂へと駆け上がった。
「はぁっ…ダメっ…もう…ああン…イく…イく…っ!!!」
身体の中心でびくびくと震えるそれを感じ、クイーンがゲドの首に回した手に力を込める。
縛られたもう一方の手も、ゲドの手を痛いほど握りしめている。
ひときわ強く締め付けられたゲドの分身が弾け、クイーンの奥深くを熱で満たした。
ぐったりと力の抜けた身体から肉棒を引き抜くと、白く濁った液がクイーンの秘所からこぼれて太股を汚した。
腰に回していたが腕が離れ、支えを失ったクイーンの身体はそのまま床に倒れ込んだ。
ゲドは腕を縛っていたタオルを解き、何事もなかったかのように衣服を身につける。
「立てるか?」
「無茶言うんじゃないよ…」
クイーンはかろうじて呟いた。
「そうか」
それを聞いたゲドは木箱の上に置き捨てられたシーツを取ると、それでさっきのようにクイーンの身体をくるんだ。
そのまま抱き上げられたクイーンの視線が、ふっと壁沿いの棚に向かう。
「どうした?」
「あたしの服」
籠にまとめられた私物を首の動きで指し示す。
「あとで誰かに届けてもらえ。今日は必要ないからな」
「どういう意味?」
眉をひそめて訊ねると、ゲドは悪戯坊主のような笑みを浮かべた。
「ひさしぶりに俺をその気にさせたのだ。俺の気が済むまでつきあってもらうぞ」
「気が済むまでって…」
「今夜は眠れないと思っておけ」
絶句したクイーンを抱いたまま脱衣場を出ていくゲドを、エレーンは呆然としたままで見送った。
目の前で見せつけられた営みも衝撃的だったが、なによりゲドが笑ったことに驚いてしまったのだ。
ゲドに抱きかかえられたまま運ばれていく自分、という姿を見つめる城の住人の視線に耐えらえれず、クイーンは終始目を閉じたままだった。
軋む戸をくぐり抜け、固い寝台の上に下ろされてやっと目を開ける。
殺風景なゲドの居室の開いた窓からは、外の光が差し込んでいた。
「…明るい内からなにやってんだろうねぇ」
「エレーンの鼻をあかしたかったんだろう?」
「まあね。……明日辺り、デュークが女湯に乗り込んできたらどうする?」
「俺は知らんよ」
ゲドはテーブルの上の瓶に手を伸ばした。
「飲むか?」
「そうね。水割りで」
クイーンは答えて、ベッドの上に丸まっている毛布を引き寄せた。
ゲドがテーブルに転がっていたグラスを引き寄せ、瓶の酒と水差しの生ぬるい水を注ぐ。
「……それ、水が多すぎよ」
「そうか?」
今度は酒を足し直すが、量がいい加減なうえグラスからこぼれそうになっている。
「まったく…もう、それでいいから、頂戴よ」
クイーンはグラスを受け取ると、ほとんど一息にそれを飲み干した。
「あいかわらず、いい飲みっぷりだな」
ゲドが生のままのバーボンをちびちびと啜りながら言った。
「こんなの、水みたいなもんじゃないか」
「…もう少し飲むか?」
「いいよ、自分でやるから」
クイーンは毛布を身体に巻いたままで立ち上がった。
襟で毛布を引き合わせたまま、片手だけで水割りを作るクイーンに、ゲドが思い出して尋ねた。
「ダイダラボッチとはなんだ」
「…怒ってる?」
「いや、>336が聞いているようだが」
「魔法の呪文、かな」
「…ゲームが違う……」
「細かいこと気にしないでよ。男でしょ」
クイーンは言い返して、先ほどよりはマシな香りの水割りを口に含んだ。
「俺が男かどうかは、お前の身体が一番良く知っているはずだぞ」
「……フン、イヤらしい」
呟いて顔を背ける。
こちらを見ようともしないクイーンを見つめたまま、ゲドはグラスを空にした。
「自分のやったことが、今更恥ずかしくなったのか」
「あんたが無神経なだけよ」
「抱けといったのはお前だ」
「その気になったのはあんたじゃない」
ゲドは言い返すのも面倒くさくなったのか、口をつぐむ。
「恥ずかしいわよ、あんな所で……でも…嬉しかった」
最後はほとんど囁くような小さな声だった。
「脱ぎなさいよ。こんどはあたしがあんたにいい思いさせてあげるから。物足りないんでしょ」
クイーンはわずかに人の身体の形が残るベッドを見据えて言った。
ゲドがテーブルにグラスを置く音が響く。
半分ほどになった水割りを手にしたまま、クイーンはついさっき自分を抱いた男が服に手をかけるのを眺めていた。
「…面倒くさそうね。あんなこと言ったのに、気が進まない?」
「何を言っている」
「それとも、こうやって脱がされるのが好きなのかい?」
クイーンはグラスを置くと、半ばはだけたゲドのシャツの下に手を入れた。
押さえるもののなくなった毛布が足元に落ちた。
しなやかな指で胸板を愛撫しながら滑らせ、肩を抱いて身体を密着させる。
二の腕へ、手首へと服を落としていく間ずっと、なま暖かい息がゲドの耳元を刺激していた。
シャツのあとはズボンのボタンを外し、少しずつ引き下ろす。
いつの間にかゲドの腕がクイーンの腰に回り、堅いモノが下腹部に触れていた。
下着を脱がせ終わったクイーンがその腕をとり、そのまま押すようにしてベッドに身を横たえさせる。
自分もその上に跨って、そそり立つゲドの逸物に指で触れる。
その感触を確かめてから、クイーンは身を屈めて先端に口をつけた。
亀頭に幾度か唇で触れ、舌でそっとつつく。
そのまま舌で付け根まで裏筋をなぞり、片方の袋を吸い上げる。
舌の代わりに指が強く弱く竿をしごくと、それは少しずつ堅さと大きさを増していった。
クイーンは手を離し、その手で落ちかかってくる髪を押さえながら、再びゲドのモノに口を寄せた。
たっぷりと唾液を乗せたなま暖かい舌にまんべんなくなめ回され、ゲドが快感の深い息をつく。
クイーンは上目遣いにその表情を確かめると、少しだけ身を起こして先端を口に含んだ。
少しずつ、限界まで唇を進めてから、彼女は音をたててソレを吸い上げはじめた。
最初は軽くすするだけだったが、少しずつ吸引の力が強くなる。
自らの分身の感覚がなま暖かさから熱さに変わっていくのを、ゲドは身体で、クイーンは口内で感じていた。
いきなりクイーンがそれから口を離し、竿の根本を左手でぎゅっと握りしめた。
「……何をしている……」
「あんたに知って置いて欲しいことがあるんだ」
口元から唾液をすこし滴らせながら、クイーンは身を起こしてゲドの腰のあたりまでにじりよった。
見せつけるように、右手を茂みへと移動させる。
「あたしね…いつも、自分で慰めてたんだよ。あんたの寝顔見ながら…」
クイーンの白い指先が、まだ湿っている襞をかきわける。
「……知っていた」
ゲドは答えた。
「………じゃあ、なんで今まで……」
「一度愛してしまうと、別れが辛くなる」
ありきたりの台詞だったが、それ以上の意味があることは、クイーンもはっきりわかっていた。
「そんな、あんたの勝手な都合なんて知らない。あたしはただ、あんたに抱かれたいんだもの」
クイーンは呟いた。
秘所に指を這わせ、その先を入り口に差し入れてにちゃにちゃとかき混ぜる。
敏感な核を擦り、自分で自分を弄んでいるうちに、息が少しずつ荒くなり、にじみ始めた淫水がクイーンの手を汚した。
べとべとになった手をゲドの胸板にすりつけたクイーンの目が潤んでいる。
彼女は陰茎に手を添え、熱く濡れた蜜壺に導いた。
固く太いモノが、ゆっくりと秘所に飲み込まれていく。
熱を帯びた肉壁の感触は、先ほどに比べれば甘やかだった。
それでもゲドを締め付け、求めるようにぴったりと吸い付いて離れようとしない。
「ずいぶんと、いやらしいものを持っていたのだな」
手を伸ばしてクイーンの尻をなで上げながら、ゲドが言った。
「知ってたら、もっと早くから欲しくなってたかい?」
「…………さあな」
「口だけは相変わらずね。あんたのこれ、こんなにすごいのに…」
クイーンは、ゲドのモノの存在を確かめるようにゆっくりと腰を振り始めた。
ベッドが軋む音と、淫靡な水音に、クイーンの嬌声が重なる。
快感を求めるクイーンの腰の動きがゲドの分身を刺激し、痺れるような快感が染みこんできた。
締め付けが強まる一方で、あふれ出る愛液がクイーンの腰の動きを滑らかにする。
「はぁっ…固い…イイよ……もっと、もっとッ!!」
激しく腰を動かしてゲドを求めるクイーンの声がすすり泣きに変わり、膣を侵す怒張は与えられた快感のあまり震えはじめた。
「…うっ…あっ…ぁあっ…ぁあああーッ!」
掠れ声で幾度も鳴いたあと、ひときわ高い悲鳴と共にクイーンは達した。
求める力に逆らえず、ゲドの欲望も彼女の中に放たれる。
痺れるような感覚がひくと、ゲドは身を起こして自分の上で震えるクイーンの身体を傍らに横たえた。
身体から離れていくゲドの手を、クイーンが握って引き留める。
「ごめん…」
「なぜ謝る」
「あんたには辛いことだなんて、思ってなかったの…」
「気にするな。俺がその気になっただけだ」
ありがとう、と言うことができず、クイーンは握った手を頬に寄せた。
身体と心の両方にしみ入った歓びが、伏せた目から流れ落ちる。
頭がはっきりしてくるまでそうしていたが、ようやく目を開けて訊ねる。
「ねえ、子供、ほしくない…?」
「ずいぶん唐突だな」
「だって…あたしはそんなに長くは生きられないけど、あんたの子供がうまれれば、その子があんたと一緒に生きてくれるだろう?
50年か、100年か…それでも、まだ足りないかもしれないけど」
「…自分の娘と結婚するのは、犯罪だと思うが」
クイーンはまじめな顔で答えられて、吹き出した。
「飛躍しすぎよ」
「言い出したのはお前だろう」
「だから、そういう意味じゃなくて……」
「あんたの子供って、きっと立派な人になるとおもうんだ。
あのワイアットって奴の子が騎士団長になったんだから、あんたの子なら神官将様になれるかもよ。
そして…あたしの国とあんたの国と、返してくれるかも…」
クイーン自身も信じていないような夢物語を耳元で語られ、ゲドは無言で考え込んだ。
「…そうなったら、お前は女王様だな」
「あんたは王様になってね。そうすればちょうど釣り合うから」
そういわれて、今度はゲドの方が笑い出す。
「…いずれにしても、先立つものがなくてはな」
「先立つもの?」
ゲドは答えずに身を起こし、クイーンの上に覆い被さった。
唇を重ね、舌を口内に差し込んで舐め上げると、クイーンの舌がゆっくりと絡みついてくる。
疲れのせいか少し反応の悪いクイーンの身体を、ゲドはじっくりと味わい始めた。