ハスワール新婚初夜(?×ハスワール) 著者:ウィルボーン様
慌しい一日は、一つの儀式を残して終わろうとしていた。ファレナ女王家の血を引く先の
斎主ハスワールさまと自分との結婚式は、内乱終結後の慌しさと政情の不安定さを鑑み、
ごく内輪で執り行われた。
参列者はごく少数の親族だけだったが、心温まる、とても良いものであった。
さて、夜である。結婚式の夜と言えば新婚初夜でもあるのだが、果たして自分はどうすれば
いいのだろうか。
ハスワールさまは斎主を長年務めており、処女であるのは元より俗世との関わりも薄いお方で、
夜のことなど知っているかどうか甚だ疑問である。
ノックの音がして、侍女が顔を見せた。
「ハスワールさまのお支度が整いました」
部屋に入ってきたハスワールさまをみて、心臓が高鳴るのを感じた。
白い夜着を身にまとって髪の毛を下ろした彼女は、38歳とは思えぬほどの初々しさだった。
穢れを知らぬ乙女という呼び方が、まさに相応しい。
…駄目だ。こんな彼女を汚すなんて真似は出来ない。神への冒涜だ。
「どうかなさいました?怖いお顔」
「いや、別に何でもありません。それより、お疲れになったでしょう。どうぞごゆっくり
お休みください。自分はここで警護かたがた、しばらく起きておりますので」
ハスワールさまの表情が小さく曇った。
「一緒にお休みにならないの?」
「いや、自分はその…」
言葉を濁していると、ハスワールさまが近づいてきて、背伸びをしてキスをしてきた。
もっとも、目測を誤ったのか、唇ではなく顎のあたりだったが。
「わたしたち、夫婦になったんでしょう?いつまでも王族とか斎主といった目でわたしを見るのを
やめてちょうだい。そりゃ、わたしだって若くはないし、その、色々大変だとは思うけど…」
「ハスワールさま」
「覚悟はできてるのよ?だから…ねえ。わたしが女だってこと、感じさせて?」
たまらず、言葉の代わりにキスを交わす。
自分は大ばか者だ。こんなことを彼女に言わせてしまうなんて。
少しでも力を入れれば壊れてしまいそうなほど華奢な彼女を優しく抱きしめ、唇に、まぶたに
頬にキスの雨を降らせる。
少し開いた歯列をこじ開け、無理に舌を挿し伸ばし相手の舌を絡めとる。と、びくんと
体を仰け反らし、ハスワールさまは床にへたり込んだ。
「大丈夫ですか?」
「ちょっと、驚いちゃったの。ごめんなさい、でも大丈夫よ?ね?」
頬を上気させながら上目遣いで話す彼女がいとおしく、そっと抱き上げてベッドへと横たえた。
そして体重をかけないように気をつけてのしかかる。
「お辛いようでしたらおっしゃってください」
そういうと、ハスワールさまは子供のようにコクンと頷き、手を伸ばして自分の首に絡めてきた。
キスを交わしながら、夜着の紐を解く。
ファレナ王家の血を汲みながら彼女の胸は少女のように小ぶりだ。しかし小ぶりながらも
形は良く、触れると吸い付いて離れないような張りがあった。
「ご、ごめんなさいね?わたし、胸が大きくなくて…」
ハスワールさまが泣きそうな顔をする。
「何をおっしゃるんです。とても美しいですよ。形も良くて、柔らかい」
「やだ、言わないで…っ、あん、あぅ…ん」
途中で声が乱れたのは自分が頂部分を口に含んだからで、ハスワールさまは体をくねらせ
ながら可愛い声を上げる。恥らいつつも抑えきれずに声を出すハスワールさまの表情は、
自分の欲望の炎を焚きつけるに値する、艶かしいものだった。なんとか理性が留めるが、
あまり長い間持たないかもしれない。自分も、こうしたことはしばらくご無沙汰だったから、
どうも初めて知った時の少年のように、つい性急になってしまいがちになる。
と、ハスワールさまが足をもぞもぞと動かしている。試しに手を下腹部に伸ばしてみると、
そこは熱を持っていた。
「ハスワールさま…」
「いや…恥ずかしい…わたし、ヘンなのかしら。体が熱くて…おかしいの…」
「もっと熱くして差し上げますよ」
するりと下着を脱がし、じかに下腹部に触れた。指でいじっているうちに、熱いものを
解放するかのように液体が溢れ出し、手を濡らした。
「あ…ッ!ど、どうしましょう」
「いいんですよ、これが正常なことなんですから。抑えようとしないで」
濡れた指をハスワールさまの口元に持っていくと、自ら進んで咥えはじめた。眉を寄せ、
快楽と羞恥の双方の感覚に身を焼きつつ、一心に嘗めあげる。ざらりとした舌の感触が、
自分の体の芯を熱くする。
空いた手で彼女の下腹部に触れ、指を一本中に入れた。
「ああ…っ!!」
悲鳴に近い声を上げ、彼女は体を仰け反らせた。初めて異物を呑み込んだということで、
体が拒否反応を示しているのだろう。指一本なのに、ものすごく締め付けてくる。
「…ぅぅっ」
「ハスワールさま、体の力を抜いて。大きく息をして」
ゆっくりと挿し抜きしていくうちに徐々に慣れてきたのか、彼女の表情からも苦悶の色は
消え去っていく。もう一本指を増やすと、最初にまた苦痛の表情を浮かべたが、徐々に
慣れていく。二本の指を激しく出し入れする時に生じる水音と、自分たち二人の荒い息遣い
が静まり返った部屋に響く。
「大丈夫ですか?これからちょっと痛いかもしれませんが、我慢できないようなら
おっしゃってください」
聞こえているのかいないのか、ハスワールさまは荒い息の合間に小さく頷く。
彼女の中に割って入り、膝を立たせて一気に押し入れた。
「あ・・・!!ああ、あっ」
ハスワールさまの中はものすごく狭く、入り口のところでつかえてしまう。彼女も額に汗を
浮かべ、必死に歯を食いしばっている。だが、まだほんの少ししか入っていないのだ。
いったん抜こうと体を浮かせようとすると、目じりにうっすらと涙を浮かべた彼女が
腕を掴んで頭を振った。
「大丈夫…だから、ね?」
長引かせるより一気にいってしまった方がいいのかもしれない。そう思いなおして、
再び体勢を立て直して押し入れた。
「ハスワールさま、少し、腰を浮かせてみてください」
「こ、こう…?」
角度が変わり、少し奥まで進む。ここならいけると判断し、目をつぶって無理やり貫く。
「……っ!!!」
ハスワールさまの声にならぬ悲鳴が聞こえた。
彼女の中は狭く締りがあり、気を抜くとそのまま果ててしまいそうだった。
一方のハスワールさまは半ば放心して、空ろな瞳で天井を見上げている。
「申し訳ありません、痛いですか」
「痛くない…って、今は、とても嘘ついてあげられないわ。でも、大丈夫だから、ね?」
荒い息の合間を縫うように、彼女が途切れ途切れに言葉を発する。
今日何度目かの「大丈夫」の言葉から彼女の健気な気持ちが伝わってきて、いとおしさが
こみ上げて、そっとキスをした。激しく求めるキスではなく、大事なものを守るためのキス。
そんなものが今まであるなんて思わなかった…。
少しずつ腰を動かす。大切な人を壊さぬように。欲望のままに彼女を傷つけないように。
動かすたびに彼女は小さく顔をゆがめ、シーツを掴む手に力が入る。彼女が力を入れると
中もますます締り、すでに限界の足音が近づいていた。
「あ…っ、あ、あぁ、あふぅ…」
くぐもった声の合間に、かすかに彼女の嬌声が交じる。それがよけいに五感を刺激する。
「ハスワールさま…っ」
いつしか獣のような咆哮と共に、彼女に欲望を叩きつけていた…。
「この年だと、赤ちゃん産むのは難しいのかしら」
全て終わり、腕枕の中で身を寄せてくるハスワールさまがポツリと呟いた。
「さて。自分はそういうことには疎くて…。今度シルヴァ先生にでも聞いてみましょう」
「わたしね、アルちゃんたちみたいな、素敵な家族を作りたいの」
「そうですね、自分も、ハスワールさまに良く似た子供が欲しいですね」
そういって、彼女の胸を指でまさぐる。体を重ねたことで、そういった気安さも生まれて
来たような気がした。
「ところで、いつまでハスワールさまって言うつもり?他人みたいで好きじゃないわ」
「では、なんとお呼びしたらいいですか?」
「ハスちゃんとか」
「ハ…」
絶句していると、ハスワールさまは鈴の音のような笑い声を立てた。
「冗談よ。あなたが好きなように呼んで」
「では、自分のことも名前で呼んでくださいませんか?」
「……」
ハスワールさまの顔が今日見た中で一番真っ赤になり、金魚みたいに口をパクパクさせる。
やがて布団を背中を向けて布団を被ってしまった。
「恥ずかしいから、練習してからにするわね?」
「いいですよ。時間はゆっくりあるんです。あなたが自分の名前を呼んでくれるのを、
楽しみに待っていますよ、ハスワール」
そういって、後ろから包み込むように抱きしめた。この幸福な時間ごと、抱きしめるように。