炎の英雄×サナ 著者:17様
うららかな日光が振り注ぐチシャの村。
丹精に育てられた葡萄畑の中、サナは珍しく大股で歩いていた。
可愛らしいその顔は不機嫌この上ない。
「サナ!英雄殿はどこにいらっしゃるんだ?姿が見えないんだが」
「……知りません」
声をかけた村人はサナに睨みつけられ怯んだ。
「英雄殿のおかげでグラスランドは平和を保つことができた。
この大地の恵みである葡萄も実ってくれて万々歳だ」
(英雄殿、英雄様ってもういい加減にして)
葡萄の収穫をしている村人の話題も“炎の英雄”殿のことばかりだ。
(昔は箒で葡萄をつまみ食いしたあの人のお尻をぶっていたのに、
態度をころりと変えているんですもの。みんな。呆れちゃうわ)
「おーい、サナ!」
黒髪の青年がずかずかと大股で歩いているサナのもとに走ってきた。
つっけんどんにサナは彼に応じた。
「何のようですか、“英雄様”?」
“炎の英雄”と持て囃されている青年は口をへの字に曲げる。
「何怒っているんだよ、サナ」
「怒ってなんていません」
つんとサナは顔を横に背けた。
草原にピクニックに行くのもリザードクランの族長が来たことで駄目になったとか、
馬に乗る特訓をする約束も急遽カラヤクランに行かなくてはならなくなって
先延ばしにされたことも『まったく』気にしていない。
「あのさ、俺……今度の祭りの時にみんなの前で
何か演説しなければいけなくなっちゃってさ、俺何話せばいいと思う?」
「適当に話せばいいでしょう。私には関係ありませんから」
「何だよそれ」
青年は明らかにむっとしていた。だが、腹が立っているのはサナも一緒だった。
「人が相談しているんだから、話に乗ってくれたっていいじゃないか」
「“英雄様”に相応しい御立派な話をすればいいでしょう?」
「あのなあ、サナ。俺だって好きで英雄やっているわけじゃないんだぞ」
ぷつんとサナの中で何かがぶちきれた。
「好きでやっているじゃない!ハルモニアとの戦が終わっても
英雄様英雄様ってもてはやされて有頂天になっているじゃない!」
サナと約束したことはいつも『英雄のお仕事』で破られてしまう。
待ちぼうけになったことも数知れずだ。いい加減にして欲しかった。
「サナ!」
「もう、英雄のあなたなんか知りません!」
だっとサナは駆け出した。
「おい、サナ待てよ!」
サナがはたと足を止めて振り返った。
「あなたなんて大っ嫌いっ!!」
踵を返し、今度こそサナは全力疾走した。
(大っ嫌いっ!!私のことなんて二の次になるんだから、
勝手に英雄様ってちやほやされてお山の大将気取っていればいいんだわっ!)
(……どうしたのかしら)
サナは上の空のまま単調な葡萄の収穫を手伝っていた。
「………サナ、サナ!!おまえ、その葡萄は熟れていないよ!」
「あ……ごめんなさい、おばさん」
まだ熟していない葡萄をサナの手からぶんどり、
フードを被った村人が盛大に溜息をついた。
「しょうがないねぇ。ここでの作業はもういいよ。心配なんだろう?」
「ええ……」
「言伝も無しに行方不明になって4日だもんね。さすがのあんたも心配するか」
『あなたなんて大っ嫌いっ!!』と絶交宣言してから4日。
サナの恋人はチシャ村のどこにもいなかった。
「なぁ、サナ……英雄殿の行方って本当に知らないか?」
「ええ、まったく」
(知るはずないでしょう。私はあの人と絶交したんですもの)
とは思いながらもサナは彼を心配していた。
(いてもいなくても私を苛々させるんだから)
葡萄を入れた籠を手にしたまま村の外でサナはぼーっと座っていた。
(……ほんと、傍迷惑ね)
頬に手をあてて溜息をついた。
「サナ」
ぽんぽんと肩に手が置かれ、サナは振り返った。
「……!」
「何しているんだ?こんなところで」
行方不明だった青年がそこに立っていた。
「……どこ行っていたのっ!?」
「ちょっと野暮用」
「なぁ……ちょっと付き合ってくれないか」
「え!?」
「こうして二人きりになるのも久しぶりだし、デートしよう」
「でも……」
どうせ、また仕事で駄目になるとかなんとか言わないだろうか?
「今すぐ?」
「今すぐだよ。拒否権は無し。もし拒否すれば……」
「拒否すれば?」
「今日の獲物としてサナを攫ってく。俺はしがない盗賊だからな」
「ふふっ」
思わずサナは笑みを溢した。
「ようやく笑ったな」
彼は少し疲れたような笑みを見せた。
かつん、かつん……と足音が反響する。
古ぼけた石が積み重なって建物のような構造になっていた。
とても洞窟の中とは思えない。
「ここは……?」
彼に連れていかれた場所は昔二人で見つけた遺跡だった。
「懐かしいだろ」
「ええ。あの時私が足を挫いてしまって、あなたはチシャの村までおぶってくれたのよね」
クスクスとサナは笑って柱のレリーフを撫ぜた。
あのとき二人だけの秘密にしようと約束をした。今となっては懐かしい場所。
「……サナに大事なことを告げなきゃならない」
ぽつりと彼が言葉を漏らす。彼の表情が真剣味を帯びていた。
「何?」
「俺はもうあまり永くはない」
「……え!?」
たしか真なる27の紋章を宿した者には不老不死が約束されているはずだ。
“炎の英雄”の片腕だったゲドは真なる雷の紋章のおかげで
実際の年齢は60を超えていたらしいが中年の様にしか見えなかった。
なのにもう永くは生きられないとはどういうことだろう。
「コレの代償だ」
そう言って彼は右手をひらひらと振った。宿していたはずの真なる炎の紋章がない。
「……どうして、紋章が……?」
「ここの遺跡に封印してきた。俺にはもう必要のないものだから」
「なんですって……!?」
拗ねた様に彼は口を尖らす。
「もう、ハルモニアからの自由を獲得して英雄騒ぎはいらないだろ?
俺だって英雄英雄って担ぎ上げられるのだなんてごめんだし、
サナには英雄の俺なんて大っ嫌い!って絶縁状渡されるしさ。
俺はサナと一緒に生きられればそれでいいんだ。永遠の命なんていらないさ」
選んだのは英雄という名誉でもなく、真なる紋章のもたらす力でもなく、一人の人間。
「……馬鹿ね」
「サナ……?」
ぽろぽろとサナは涙をこぼしていた。
「本当に馬鹿ね……だって、あなたは紋章を外して私と過ごせる時間を減らしたのよ。
不老不死が約束されているなら、私がおばあちゃんになってから紋章を外せば
よかったでしょう?」
「あ」
しまったという顔を彼はした。
まったくそういうことは考えつかなかったらしい。
「もう、自分勝手なんだから……」
「そうか、そういう考え方もあったな」
「あなたはいつも、いっつもそうね。何でも自分一人で決めちゃって
私には相談も何もしてくれないんだもの……わたしはいつも置いてきぼり」
「ごめん」
「でもさ、サナ。これでようやく俺は炎の英雄なんかじゃなくただの男に戻れただろ」
「どうかしら」
彼が真なる炎の紋章を宿す者だから、炎の英雄と彼を呼び崇めたわけではない。
彼の意思や理想が、グラスランドをまとめ、ハルモニアから自由を奪還する
力の源となったから彼を英雄とよんだまでだ。
たまたまそれに真なる炎の紋章がついていただけにすぎない。
「それに、もとからあなたはわたしの前ではただの我侭な男でしょう?」
ぎゅっとサナは彼を抱きしめた。
彼の体温が服越しに彼女に伝わる。……あたたかい。
(忘れていた……私の前では昔からこの人は英雄でも何でもなかったのに)
いつのまにか周りの声が彼を見る目を曇らせていた。
この存在がなくなるのがもうすぐだなんて信じられない。
「……サナ」
「きゃっ……ドサクサに紛れて、何するの」
彼の左手がサナのスカートの中をまさぐっていた。
「いいじゃないか、サナが俺に抱き付くってことはオッケーってことだろう?
ここには誰も邪魔する奴なんかいないし。俺だって溜まってんの」
「でも、私はなんの準備もっ……んむっ」
問答無用と言わんばかりに彼はサナの唇を奪った。
歯列の裏をなぞって、舌を絡めとる。
サナの力が抜けて、彼に身体を委ねるようになってから彼は唇を離した。
「……これで、準備完了だろ?」
「駄目よ……こんなところでやらなくても……」
サナは抗議の姿勢を見せたが、彼はまったく意には介さなかった。
「それじゃ、おまえのココがもう濡れているのはどうしてだ?」
スカートから左手を出してサナに示す。
彼の指にきらきらと光る粘液が絡まっていた。
「もう!……恥ずかしいじゃない!!」
恥じらいでサナの顔が真っ赤になる。彼は笑みを見せてその指をしゃぶった。
「うん、美味い……相変わらず、サナのジュース美味しい」
そう言ってごつごつとした無骨な指がゆったりとしたサナの衣服を剥ぎ取る。
「や、……ちょっと!」
彼は自分の服も埃っぽい床に放り投げて、その上にサナを抱きかかえたまま座った。
そうしてふっくらとしたサナの乳房を吸う。
彼の舌先で彼女の乳首が見る見るうちに堅さを帯びる。
「ぁふ、ふぁあっ」
チュパ……ピチャ……
猫がミルクを飲むように舌で舐めたかと思えば、形が変わるほど乳房を揉みこんだ。
「柔らかい……ふにふにしてるかと思えばこんなところが堅かったりするし」
そう言ってサナのピンク色の蕾を爪で弾いた。
「ぁ……ん」
びくっと彼女が硬直する。
彼の手を避けるように彼の首に白い腕を回し、しがみついた。
「サナ、こら、逃げるな」
苦笑して、彼はサナの腰をかかえて、クルっと彼女の身体を回転させるが、
サナが胸の愛撫から逃れようと彼の首にしがみつくので手が出せなくなる。
「それとも、もうこっちに手を出してほしいのか」
そう言って、彼は手でサナの足を割る。
くちゃ……ぬちゅ。ぬちゃ……
「!!」
さっき以上に彼女は反応を見せる。感度も上々で彼はほくそ笑んだ。
先ほどから、彼の分身も固く存在を主張している。そろそろ1発目を出したい気分だ。
「…ぁっ…意地悪。ふっ、いきなり……三本もい、れなくったって、いいじゃない」
「もう、俺の太腿ビショビショだから大丈夫と思ったんだよ。
ほら見てみろよ、サナのイヤらしいジュースでいっぱいだろ?」
彼はサナの柔らかな髪に口づけて、人差し指と中指と薬指の三本で出し入れを繰り返した。
その動きのたびにサナが喘ぎ声を漏らし、とろとろと淫水が彼の手に伝わる。
「や、ちょっと…ぁん…もぅ、やめてって、持ちそうもない、わ」
彼は彼女を横たえて、そそり立った肉棒に手を添えて花芯へとあてがった。
「……んじゃ、入れるか」
「ん……っ」
サナの肉襞が柔らかく包み込んで彼の肉茎を受け入れた。
「熱くて、やわらかい……」
サナの中で熱く滾ったモノが彼の腰の動きと共に蠢き始める。
ひんやりとした遺跡の中でサナの甘い声が反響していた。
「……んぁ……あっ……はぁ!」
腰のぶつかる音と共に、くちゃぐちゃと結合部から音が漏れる。
「やらしい声にやらしい音出しちゃって。聞かせろよ、サナ……もっと……」
「……やぁょ…、はずかしい」
「ここにいるのは俺達だけなんだから、大丈夫だよ」
恥ずかしくてサナは声を押さえようとするが、
彼の愛撫に、突き上げる快感に堪えきれず声を漏らす。
もっと出させようと捻り込むように彼は突きいれる。
「そ、んなことぃっ……ぁ…やぁ……ぁん!」
性急とも思える彼の動きに翻弄されて声をあげる。
サナは彼にしがみついた。
「ふぁ……ん…ぁ、ああっ……あぁ……あああああん」
最初は緩やかだった動きも腰が壊れるかと思うほどに激しいものになっていた。
「………くっ」
搾り出すような呻き声が彼から漏れる。
最奥まで突きいれた時に爆ぜて、彼女の奥にまで白濁液が注ぎ込まれた。
ぴく。
サナの中にあるものが大きくなった。
(また……!?)
「……さて、またやるか」
「ぇ……っ。もう何回目よ……無理よ、壊れちゃうわ」
焦点の定まらないままサナが頭を振った。
もう何度も身体を交じらせ、サナの腰は痛みを訴えていた。
「俺たちには時間がないんだぞ。今のうちにたくさんやっとかなきゃな」
(長くは生きられないかもしれないけど、まだ今日明日の話じゃないでしょう!?)
にっと彼は笑って猛抗議するサナに口付けた。
<了>