ジーン×アグネス 著者:6_217様

異種の人々が行き交い、雑多な雰囲気のサロン。その一角に陣取っている小規模のグラスバー。
そこに今、一人の少女がだらしなく頬杖をついていた。
両の耳脇から下ろしている一房づつの髪が、彼女の心神を表すように鈍く煌く。
少女の名はアグネス。
巨大船に集う人々の導き手たる軍師。アグネスはその補佐としてここに乗り込んできた。
そこに待っていたのは繰り返される繁多な日々と、止まることを知らぬかのような砲撃の日々。
戦いに明け暮れるとはまさにこの事。彼女自身が望んで足を踏み入れた世界とはいえ、実際に
目が回る毎日だった。
かつて静寂に過ごしていた時に師が呟いた言葉が耳に残る。
曰く、碌な所じゃないよ、と。
「はあ………」
ため息と共に目の前に置かれたグラスを眺めた。嬉々として喉を潤さんと仕事をしたがっている
液体が揺ら揺らと。息を軽く吹きかければ、水面には小さな小さな海ができる。

アグネスとしては日々変わらぬよう振舞っていたつもりだったのだが、どうやら師には余りに分かり
やすい形に見えていたらしい。
師―――エレノア・シルバーバーグは外見や言動から、あまり周囲を顧みない人間のように思われる
所があるが、そこはやはり人心分析を生業としてる者である。押さえる所はきちんと釘を差して来た。
エレノアはやるべき時にきちんとできていればそれで良しとする気質で、逆に言えばやらねばならぬ時に
できない者を側に置こうとはしなかった。
アグネスにもそれを求めてきたという事である。
曰く、休める時は休む。
言いたい事はアグネスにも十分理解できるので、不必要に反論なぞして師の不興を買うようなマネは
流石にしなかった。

かと、言って。
「―――んで、いつまでそうしてるつもりなんだい?」
カウンター越しにルイーズの軽妙な声が届く。
「だあって………」
ガラス製のかき混ぜ棒を手持ち無沙汰にグラスに突っ込む。回転を加えられて落ち着かなくなった液体は、
自然現象のままに渦を作った。
休めと言われても、今のアグネスにはその際に起すべき行動基準が存在していなかった。
不覚。
正直に言えば、やる事が無いわけではない。彼女が目指しているのは師のような戦いにおける専門家であり、
学ぶ事は山程あるのだ。それこそ、各種専門書を読み漁ったり、地図の読み方を学んだり。
ただ、それをするにはある所に行かねばならない。
―――図書室。
今のアグネスにとってその方角は鬼門であり、どうにも近寄りたくなかった。
とすると、やはりする事が無い。
ぶくぶくぶくぶくぶくぶく……………
かき混ぜ棒の芯に開いている空洞から、液体に向かって何とはなしに息を吹きかけてみる。
何やら誰かさんを苛めているみたいなイメージがしてこそばゆかった。
「遊んでんじゃないよ、もう…」
呆れた目をよこしてくるルイーズに目を合わせないようにしながら、アグネスはふと横に気配を感じた。
そこにいたのは女体の神秘。身に纏っている布地はあまり肌を隠そうという気は無いらしく、見る者
の視線を逆に思う存分浴びたいと言わんばかり。
大事な所はもちろん覆っているものの、主張された体のラインは己が自信の裏付けか。
胸の頂きまでの曲線は、男なら見るだけで血流が迸りすぐにでも貪りたいと思うだろう。
肌の細やかさは女でも触れてみたい、撫でまわしてみたい、……舐めまわしてみたい。
そう思わせずにはいられない姿態の持ち主―――紋章師のジーンであった。

「ここ、よろしいかしら?」
たおやかな鈴の音とはこの事か、と一瞬にしてアグネスの脳裏に響いてくる声音。
気後れしつつも頷き、隣に腰を下ろすジーンを眺める。
気が付けばサロン全体の雰囲気も、何やら紅がかったような匂いに感じた。
一人の出現でこうまで変わるものか――さもありなん。ジーンの放つ魅力は男女問わないところがある。
群島一帯はその気候や海に囲まれている風土から、比較的開放された気質の持ち主が基本である。
そんな地域であったとしても彼女のような存在は稀だ。
落ち着かない。全くもって落ち着かない。
アグネスの視線はうろうろとジーン周辺を彷徨っていた。
「ほらよ。珍しいねえ、あんたがこっちに顔を出すなんて」
ルイーズに差し出されたグラスを口に運びながら、ジーンは頬を軽く緩ませた。
「たまには……ね。もっと色々な方とお知り合いになりたいし」
呟き、グラスを弄ぶ。
日頃は施設街で紋章師としての生業をこなしているが、せっかくこれほどの人々が集まる場所に来たのだ。
もっと交流をせねばあまりに勿体無いであろう。
そう言って、ジーンは自分が先ほど声をかけた隣の少女を見やる。
イスに座ってはいるものの、踵を細かく何度も床に打ち鳴らしている様子は誰が見ても分かりやすかった。
「アグネスさん、だったかしら?」
「は、はは、はい」
声を掛けられ、慌てて反応する様に思わず笑いが零れる。
「今日はどうなさったの、軍師さんのお仕事はお休み?」
アグネスにとってはジーンとの接点はあまり無く、話をしようにも共通するような話題がいまいち
思い浮かばなかった。かと言って、わざわざ声を掛けてまで隣に来た人と、全く会話をしない
というのも失礼のような。
それもあって、先ほどからアグネスなりに頭を高速で回転させていたところである。
しかし、ジーンの方から当り障りの無い話題を振ってくれた。
助かった。
「えっと、実は―――」

その言葉を皮切りに、アグネスの一人舞台が始まってしまった。
ほとんど師へ対する不平不満に終始したが、アグネスにとってはいいガス抜きになったようで、
ルイーズもジーンも下手に口を挟むことなく聞き役に徹していた。
ところどころに挿まれる師の意外なエピソードが話題のちょうどいいエッセンスにもなって、
聞いている二人も退屈することは無かった。
結局、この日はアグネスにとって貴重な時間をもたらしてくれた。

そして話も一段落し、時間もいい頃合になった時。
「さあてと、ぼちぼちかねえ」
ルイーズが見渡すと、サロンにいた人々が去り始めていた。皆明日への幕を開ける為に、今日の帳を下ろす。
アグネスもイスを下りると力いっぱい上体を伸ばした。思う存分喋り倒して気はかなり晴れていた。
ルイーズとジーンには感謝せねば。
「あの、今日はありがとうございました。すごく楽しかったです」
「いいのよ………お礼を言うのは私もよ。楽しかったわ」
静かに語るジーンに言葉にアグネスは気恥ずかしげに俯いた。今日、彼女と接してみてアグネスは
ジーンの持つ雰囲気が少し分かった。
あの瞳、声、仕草、全てが周りを包み込むように感ずる。
それは心地よい寝床で春の日を浴びているのとどこが違うのか、段々分からなくなってくるようだ。
惹かれない人はいないだろう。それは自分もだ。
その時、アグネスの肩にジーンの細い艶やかな指が掛かった。
「よろしければ、私の部屋にいらっしゃらない? おもてなししたいわ」
それは蠱惑の灯火。
自分の耳に届いた声にアグネスは若干酔っていた。
おそらく分かりやすく頬が染まっているだろうに、声を出すのも一苦労だ。
「い、いいんですか?」
「貴女さえよければ………」

部屋に漂う流動の煙気。薄く満ちては滅するを繰り返す。
鼻に感じるのはどこかこそばゆい華の香り。
師や自分の部屋との違いにアグネスはほんの少し目を疑った。これが麗しい女性が住まうべき所なのか。
進められるままにジーンの部屋へ足を踏み入れたが、アグネスの頭は早くも回転が鈍ってきていた。
接すれば接するほど、ジーンの声に正気を奪われていくような、力が抜けていくような。
一緒に歩いてきた通路でさえも彼女の仕草にアグネスは参っていた。
もし、自分が男だったら、きっと今にも彼女を押し倒しているのではなかろうか。
そして隠すほどに隠し切れていないその衣服を剥ぎ取り、豊満なる胸を吸い尽くし、その脚線美を舌で味わい、
秘の奥壷を何度も何度も………。
「アグネスさん……?」
「ひゃああい!?」
思わず上げた声にジーンよりアグネス自身が驚いてしまった。
自分の頭はどうなってしまったのか。考えたことすらなかった世界を想像とは言えあんなにも艶かしく。
ひょっとして自分は欲求不満なのだろうか?
不思議がるジーンの視線をごまかしながら、アグネスは勧められるままにベッドに腰を下ろした。
何だかベッドも自分の部屋のものよりも柔らかいような。実際は同じものだとしても使用者が違うだけで
何もかもが違うような気がしてくる。
見るとジーンも腰を下ろしていた。ただ、アグネスに寄り添うようにぴたと肌を接している。
これは……
「今日あなたとお話できてとても嬉しかったわ……」
「い、いえ、あ、あ、あたひ…じゃなくて、私もジーンさんとお知り合いになれてとても…」
口篭もってしまうアグネスにジーンは唇を振るわせる。
「とても?」
「と、とても……うれ、嬉しかったです……」
「わたしもよ…」

そう言って、アグネスの髪を優しく撫でる。その際、さらに接近してきたジーンの余りに巨大な胸元
がアグネスの視界に迫った。
揺れる様はあたかも人の神経の根本を揺らしているような感覚がする。
女のアグネスがそうなら果たして男であったなら。
部屋の空気が濡れているのか、ジーンの纏う布地が彼女の素肌に張り付いていた。
おかげでラインがより一層目に飛び込んできてしまう。
放っておくとアグネスは自分の体温がどんどん上がっていくのが感じられた。
こんなにも、鼓動を打つのは何故か――
「あなたとお近づきになりたいと……思っていたわ」
「え…?」
それは一瞬アグネスを引き戻した。予想だにしていない言葉は彼女の思考を働かせようとする。
だが、すでに鈍ってしまったネジはそうそう簡単には巻かれなかった。
「あなたのお仕事は大切なもの。心をすり減らす毎日。とても辛いものよ」
耳元で囁くジーンの響きはこそばゆいものではなく、アグネスの心音を一つ一つ鷲づかみにするように
聞こえてきた。でもそれは逃れようなどと思うものでは決して無く、もっと、もっと力を込めて
欲しくなるもの。
「そんなあなたを私は……安らげてあげたい…心地よくしてあげたい…悦ばせてあげたい」
声が出ない。
正確には出そうと思う気が全くなかった。ジーンの手がアグネスの背を優しくなぞった。
そして、もう片方の手をベッドの縁にかかったアグネスの太股にあてる。すべすべの指先は腿の坂を
上っては下り、下っては上り。徐々に手前へ導かれるその指先、いや爪をアグネスはただ見つめていた。
既に彼女の腿を覆っていたスカートの内部を蠢き、直に見えない光景を想像してしまう。
「さあ……」
その声にふとアグネスは間近に迫ったジーンに振り向く。
「息をゆっくり吸って………」
言われるままに吸い―――アグネスは意識が遠くなるのを感じながらベッドに倒れ込んだ。

後にして思えば、部屋に充満していた煙気は何がしか含まれていたのだろう。
それも今となっては何の意味も無い。
いつの間にか視界一杯にジーンが映っていた。彼女の長い髪がアグネスの視界を塞ぐ。
力は抜けているものの気分が悪いわけではなく、純粋に蕩けるような感覚の中にいた。
見ればジーンの唇がアグネスの指を一本咥えこんでいた。
口内に侵入した指先は温くざらついた舌とぶつかりその洗礼を受ける。
意思を持って指に襲い掛かるその柔らかな姿態は、くすぐるように、そして力を込めて攻めるように。
口を窄め丹念に嘗め尽くし、往復を繰り返しながら指の根本までジーンの唾液に塗れさせた。
その感触ははっきりしない頭の中でもよく分かった。優しい愛撫とその気持ち。
それを五本の指全部に施すと、逆の手もまた同じく丹念に、艶妖に、どこか嬉々として咥えるジーンの
表情は感じる者が見ればそれだけで達してしまいそうだ。
音が異様に耳に入る。
くちゅくちゅと、ちゅぷちゅぷと、じゅるじゅると、ちゅるちゅると。
恐らくあえて音をたてているのだろう。アグネスはジーンと目が合い、そこに浮かんだ顔に体が一瞬震えた。
口でされる事がこんなにも、こんなにも。このままでは自分は。
ちゅぽん…と、ジーンの口から指が解き放たれた。彼女の液に塗れたその手は捕まれたままだったが、
アグネスから動かそうとは全く思わなかった。
一言も発してはいないものの、ジーンから言わんとしてる事はすぐに分かった。今のアグネスなら。
「もっと………」
その先は言う必要は無い。
さっきより強く吸われアグネスの喉から思わず声が漏れる。潤滑液となるジーンの唾液はアグネスの
手から手首へ、そして腕へ滴り落ちてゆく。部屋の明かりに照らされ、それはひんやりとアグネスの
熱を奪っていった。

「さあ、こっち…」
その呼びかけと共にジーンはアグネスの両頬を掴み、思いっきり彼女に口付けた。
薄く琥珀を思わせる唇と、アグネスの小さな唇が形を変え、柔らかな感触を楽しむ。ぬるぬると
して覆い尽くそうとする動きに若干の抵抗を試み、アグネスはまだまだ物足りない渇きを訴えた。
それに答えるようにジーンからとめども無く施される粘液。糸を何重にも張り、ゆっくりと橋を
かけようと手を伸ばす。
口を開き、来るものを拒まずにひたすら受け入れ続ける。もっと、もっと。
息を継ぎ、喉奥から上げる声にアグネスは頭が痺れてきた。
どれくらい自分の喉に注ぎ込まれてしまったのだろうか。
喉は鳴る。まだ、まだ……
しかし、訴えは退けられた。ジーンは唇から滴る冷たい橋を何本も吸うと、体を起した。
そして覆っていた体をずらし、両手をアグネスの服へとかける。
暴かれる腹、開かれる胸元。ワンピース状になっていた服を脱がされ、瞬く間に下着のみの姿を晒してしまう。
かあっと瞬時に頬を真っ赤に染め、アグネスはジーンから顔を背ける。
よく考えれば、今日まさかこのような事態になろうとは夢にも思わず、ごくごく色気も何にも無い
下着を身に着けていた。
ジーンを目の前にして何やら情けないやら、気恥かしいやら。
だが、そんなアグネスの葛藤を知ってか知らずか、ジーンは自らの肌を最低限隠している服を躊躇無く
剥ぎ取ってしまった。

下着なぞの存在は一切許さず、彼女自身の姿がアグネスの目に飛び込んだ。
やはり主張の激しすぎる巨乳に目が行くが、横たわって下から見上げると、もはやその存在感に思わず
笑みは零れそうになる。薄く広がる恥毛の森も手入れされているのか、丁寧な形を作り、何やら触って
みたくなる。
見とれるアグネスに微笑み返し、ジーンは穏やかに手を伸ばすと、アグネスの胸の頂点を下着越しに
捏ねくりまわす。ジーンと較べてしまうと余りにささやかな膨らみだが、人並みの主張は欠かさなかった。
「ふぁん……んああ……」
先ほどのジーンからの粘液が媚薬代わりか、アグネスの体は彼女自身が思ったより反応を示した。
両手の指先を弾くように、時には突起を摘み引っ張り上げる。面白いように形を変える頂きは、
そのままアグネスの喉を鳴らし続けた。
だが、すぐに切なげにアグネスはジーンを見上げる。その答えはわかり切っていた。だが、ジーンは
あえて何も変えずに攻めを繰り返した。
爪先で突付き、穿るように、こねくり回す。物足りなさと、体の戦慄きにアグネスはどっちともつかない
声を立てた。
「んぁぁぁ…………はぁぁんんぅぅ……………」
目じりを潤ませ今にも零れ落ちそうな水滴を満たしながら、なお訴え続けるアグネスの視線にジーンは
ようやっと折れた。

するすると下着を捲り上げ、露になったアグネスの乳首はすでに真っ赤に熟していた。
食べ頃の色合いをジーンは見て取り、そっと口に運ぶ。期待に染まったアグネスの目はそれを見届け
つつも、その瞬間にはもたらされた痺れに目を背けた。
指に続き今度は胸中が粘液まみれに晒される。しゃぶられ、舌で突付かれる様を想像し、感覚の最奥が轟く。
片や口で、片や指で弄ばれる可愛らしい突起はジーンの胸以上に主張していた。
もっと、もっと。
両の頂きが唾液に塗れ、潤滑液を豊富に満たされると、ジーンは両方を摘み少しだけ引っ張り上げる。
「んんん!!」
反応した様子を眺め、嬉しそうに指を蠢かせる。離さぬようにしっかり摘みながら、擦り、捻り、
思う存分アグネスの喉を鳴らさせる。摘む力をさらに上げ、そのまま頂点を爪でつつき始めた。
アグネスの体はあちこちで声を上げていた。腿はきっちりと閉じ、擦るように腰を上下させている。
見れば秘部を覆っている最後の一枚には見て分かる程に湿り気が。
「ねえ……痛くないかしら………?」
どこか上ずった声をかけ、アグネスの様子を探る。もちろん手は休まることなく弄り抜いている。
口を開こうとするアグネスだが、流石にいう事を聞かず、目をジーンに向けるだけで精一杯のようだった。
その目に向かい、再び問いかける。
「痛くない……?」
健気にも首を横に振り、かわりにより一層強く喉を鳴らし声を漏らす。
摘まれた頂点をこれでもかと擦られ、いよいよアグネスの震えが収まらなくなってきた。
ぱくぱくと口を開き、定まらない目を何とかジーンへと向ける。
ジーンは顔を近づけ、

も………ぅ……………ぃき………………そ…う………?

その瞬間、ジーンは指先に込められた力をふんだん頂きに注ぎ込んだ。
「はああああ!!………っっっ!!!……………ふううんんんん!!!!!!」
迸りを堪えきれないように、アグネスの体は腰を浮かせびくんびくんと何度もベッドを軋ませる。
頭に広がる白い世界を溺れ、手足は幾度となく痙攣を繰り返した。
声にならない悲鳴を上げ、喉は役に立たないままに震える。
ひくついた瞼は自力で持ち上がることができずに、その下に覗く眼をかろうじて守っていた。
体の下を大きな奔流がひた走り、吹き上げる風に身を委ねる。
すぐには頭も体も言う事を聞いてくれる状態にはなりそうもなかった。
そんなアグネスを眺めジーンは口端を持ち上げると、目の前の少女が身に纏っている最後の布切れに手を伸ばした。
きっとこの下の口も先ほどの瞬間にはおおいに戦慄いたに違いない。それを表現するかのように領域を
広げた湿地帯が布地に広がる。
全くの無抵抗なアグネスからするするとそれを剥ぎ取ると、やはり想像どおりの光景が待っていた。
広がった秘口からとろとろと滴る愛液、そしてと何かを待ち受けんとする最奥。
すぐ上に鎮座する膨れて広がった淫核に、ジーンは挨拶代わりに舌と唇で舐め上げた。
「あぁぅぅぅ……んん!!!」
反応できる程には回復したのか、アグネスは鼻に抜けた声を上げると顔を何とか持ち上げた。
「可愛い顔………もっともっと鳴いて…」
「ジーンさ……………んんんんん!!!!!」

すぐさま仰け反って再びアグネスはベッドに身を委ねた。間髪入れずに攻められ、その度に体が馬鹿正直に
答えてしまう。ジーンの顔が完全に秘部に埋められ、聞こえてくる淫音がアグネスの耳をくすぐる。
次から次へと湧き出す泉をジーンは臆することなく吸い上げて掘りつづける。舌先で転がされる淫核は
先ほどの胸先とは較べられないほどの波を発生させた。
アグネスの肌をジーンの手が弄っていく。肌の表面とは裏腹にアグネス自身は自らの体温が爆発している
のはなかろうかと思った。意思とは完全に乖離した感応体となって、彼女を引きずりこんでいく。
次第に喉から漏れる声も、大きなものから段々と低く途切れ途切れになってきた。ひとつひとつがアグネスの
箍をはずすカギであり、それが積み重なっていき、彼女の扉を開けていく。
ジーンはその声を聞くと執拗な攻めを止めた。そして目の前にある最大限に広がった淫洞をしばし観察すると、
自らの細い指をその穴へ。
「いいわ…………すごくいい………」
恍惚とした声を漏らすとその指を上下左右に蠢かす。指先に感じる滑りや、皺の一つ一つを舌の代りとする
かのように淫壁を舐めまわす。
ぬちゃぬちゃとあからさまな音をたて、進入させている指を一本から二本へと増援する。
指を淫液で溺れさせながら、音をたてつづける。何度聞いても心地よい音なのを、ジーンは改めて理解した。
ふと見ればアグネスは顔をベッドに押し付けていた。自分にもたらされる官気に呼応するかのように肩が震えている。
できるならもっと奥へ、そしてアグネスをもっともっと。
しかし指では限界がある。そう、指では。
ジーンは空いた手をベッドの脇へ伸ばした―――

その瞬間はアグネスにしてみれば一瞬の出来事だった。
現実には相応の時間が掛かっていたはずだが、今の彼女には正常な時間は流れていなかった。
散々注ぎ込まれていたジーンからの淫戯が気がつくと止んでいたのだ。
鈍った体を何とか翻し、目線をジーンへ向けたその時。
「んん!!!!」
貫かれた―――確かに貫かれていた。
見ればジーンはアグネスに覆い被さるようにして彼女を見下ろしている。その眼はアグネスを凝視し、
且つ煌々とアグネスを照らしていた。
ジーンの腰回りからは人工の強張りが聳え、アグネスの陰奥へ深々と進入を果たしていた。
見上げればジーンの顔にはアグネスと同じように赤みが広がっている。アグネスを貫いている強張りは
同時にジーンの秘奥をも貫いていたのだった。
双方からの淫液がつたい、強張りはてらてらと光を放つ。
「さあ………いっしょに……」
どことなくのぼせ上がったような、上ずったような声を漏らすと、ジーンは強張りごと腰を動かし始めた。
波打つようなうねりをもってアグネスを攻め立てる。
淫口から膣壁を擦り上げ、先端を奥へ奥へと突き上げる。何度も出入りを繰り返しては擬似のカリ首を引っ掛ける。
あたかも実物を持っているかのような顔つきでジーンはアグネスを突き続けた。

「「っあ……っんん!…………あ、あ、!…………」」
細切れた呼び声が響く。
揺さぶられ、アグネスの小振りな胸が可愛らしく躍る。その上では豊満なる頂きが激しく踊る。
男ならばその光景を是非とも目に焼き付けたいはずで、アグネスもその動きに目を奪われた。
そして思わずその巨豊に手を伸ばし、頂を摘み上げてしまう。
その時のジーンの顔をアグネスは忘れないだろう。あやかしを思わせるその目。声を上げて悦楽を享受する様は本能の姿か。
これがあの麗しの紋章師と同一人物かと目を疑う。
だが、その紋章師の目に映っているアグネス自身もまた同じだった。
潤んだ目尻から放たれているのは明らかに雌の匂い。欲の力を惑わす女の力。
アグネスはジーンを犯し、ジーンはアグネスを犯す。
気がつけばお互いに腰を振り、一本の強張りを奪い合うようにして貪りあう。
何度も子宮口を叩かれ、焼くような痺れが襲い掛かる。
漏れていく声は階段を上るように確実に感覚を押し上げていく。

ジーンの乱れた髪越しに見える表情を、アグネスは一瞬可愛いと思った。快楽を貪らんとする姿の向こうに
一途な面が見え隠れしていた。過程だけをみれば自分は彼女の艶欲の慰み者にされているのだが、頭の片隅
では淡々とその波を受け入れて観察していた。
ひょっとして、これは日頃の仕事の副産物か。これだけの刺激に溺れながらまだ、頭に回転する余地が残っている。
頭上から聞こえるジーンの悦声は今にも頂上へ駆け上ろうとしているが、まだ十分には体が熟れてきていなかった。
答えは一つ、アグネスからもたらされる刺激が足りない。それがジーンにも分かっていて、アグネスを見る
瞳はどこか切なげだった。
自分が組み敷いておきながら自分だけでは達する事ができない。
「ああ…………」
幾度も擬似の男根を奥深に挿入され、子宮口を突付かれ、透き通る粘液を撒き散らされても……
これほどの美女が無我夢中に自分を求めていることに普通なら高揚感を覚えるところだが、今のアグネスには
たいした問題ではなかった。

私の腰の動き一つでジーンさんを逝かせられる。

「!?」
数瞬の後、二人の体勢は入れ替わった。不意をつかれれば誰だろうと造作も無い。それはジーン相手でも同じ事だ。
あっという間にジーンはベッドに横たわっていた。そして無造作に猛っている強張りをアグネスに掴まれたと思ったその時、
「ふうん!!?? ああ!? んんんん!!!!!」
後背位から腰を強く押し付けられた。さっきまでは一切無かったアグネスからの一撃。求めてやまなかったものだ。
「はあんんん!! ダメエエ…………はげし…………すぎいい!!」
ジーンの腰を鷲づかみ、男根をねじ込む様はまさに男そのもの。
「ふぅん!! ひああ!!………!!……ん!!」
鳴かせているのだ、今こうして美女の嬌声を上げさせているのは間違いなく自分なのだ。
ああ、これは男なら間違いなく感じているであろう、征服感。
止まらない、止められるわけが無い。

「こう? こうですか? ジーンさん………さっきまで、あんなに私を犯してたのに………今度は私に
犯されて………気持ちいいですか? いいですよね、そんなによがって………声が大きいですよ……こんな
にクリを膨らませて………音、すごいです、ぐちょぐちょ言ってます………胸おっきいですね………すごい
揺れてる………乳首も硬くてこりこりしてるし………イきそうですか…?……ダメですよ………まだ私が気持ち
よくなってませんよ…一人で先にイッちゃダメ………潮吹いてますね…私にいっぱいかかっちゃって……
びちょびちょ……ジーンさん、この穴に何本入れてきたんですか……?……いっぱい……いっぱい、入れて
きたんですよね、気持ちよかったですか?……この中にたくさん精液出されちゃったんですか?………
どぴゅどぴゅって……中出しされて精液まみれに……そうですよね、男の人なら…今のジーンさん見て射精
しない人なんていないですよね……穴だけじゃなくて、おっぱいにも、顔にも……射精してもらったんですか?……
どろどろの精子だらけに……ひょっとして、一度に何人にも………?……すごい……たくさんの精液、一度に
どぴゅどぴゅされちゃったんですか?………私、女ですから精液どぴゅどぴゅはできませんけど……ジーン
さんイかせる事はできますよ……こうして……こうして……子宮をいっぱい突けますよ……え?………ダメ?
……イッちゃうんですか?……もう……?……分かりました…いっぱいイッちゃって下さい……イキ顔見せて
下さい……精子まみれにされた顔を見せて下さい……ほら……ほら…ほら、ほら………どうです?……イく?
イく?……私も……私も…イく……イキます…一緒に……あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、
イくイくイくイく……………………
………………
…………
……
………………………ああああああああああああああああああああああ!!!!!」

そうか、とアグネスはふと理解した。
他者を思うままに操るとは、こういう事なのかと。
自らを勝利へ導く瞬間に感ずる達成感とはこの感覚なのではないだろうか。
軍師としての高揚と相通ずる物なのではないだろうか。
無論、師に言わせれば、戦いに快感を感じるのは狂人のする事だと一笑に付すだろうが。
それでも根本は同じなのではないだろうか。
この感触は一生忘れることはないだろう。
さあ、そうとなればこんな事をしている場合ではない。仕事はいくらでもあるのだ。
アグネスは身だしなみを整えると、肩越しに軽く振り返り、未だ法悦から戻らぬジーンへ微笑んだ。
その微笑みは師に似て―――

FIN

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