ジョウイ×ジル 著者:11様
暖かい陽射しの降る、うららかなある日。
庭に咲くたくさんの花達に水をやりながら、抜けるような青空を見上げる。
この生活を始めて2月近く経つが、新たな発見をする度に驚く毎日だ。
望むもの全てが手に入ったあの頃と比べると不自由さは否めないが、
彼女は感じたことのない充実感に包まれている。
優しい太陽の光を吸い込んだ鮮やかな黒髪が少し熱を持ち始める。
水やりを中断しようとしたその時、家の中から自分を呼ぶ声が聞こえた。
「お姉ちゃん、ゴハンできたよー。」
あどけない声。
彼女は水の少なくなった如雨露を水道付近に置き、家の中に戻る。
「はい、どうぞー。お姉ちゃんほど美味しくないと思うけど……。」
「ありがとうピリカ……でも、こんな事までしてくれなくても良いのよ?」
「うぅん! お姉ちゃんはする事いっぱいあるし、私のできることはお手伝いしたいの!」
御日様のように明るい笑顔を向けてくれる。
この笑顔に何度励まされたことだろう。
「ごめんなさいね。私がもっとしっかりしないとね……。」
「お姉ちゃんは頑張ってるよ! 私知ってるもん、夜中にお料理練習してたの……。」
「ピリカ……。」
ピリカは自分の気持ちを伝えたくて、解かって欲しくて、涙目になっていく。
この子の笑顔が曇ることが今の私には何より辛い。
「さ、食べて! この前よりはちょっとは上手くなったかな? えへへ。」
「…そうね……。いただきます。」
強いわね、あなたは。
私もあなたと一緒の時は、寂しさは紛れる……あの人のいない寂しさが……。
スプーンで湯気の立つスープを掬う。
「……どぉ?」
「…………。うん、すごく美味しい。ピリカはお料理の才能があるのかもね。
私なんかすぐに追い越されちゃうかも。」
彼女がニコリと笑ってピリカにそう告げると、ピリカもニコニコッ、ニコッと笑顔を返してくれた。
「ホント!? えへへー、嬉しいなぁ。今日のはちょっと自信あったんだよ。」
「うふふ……。」
バン!
突然、大きな音を立ててドアが開いた。
その開いた戸口に2人の男が立っている。
立派な髭をたくわえた左の男が睨みつけてきた。
「ジル・ブライトだな?」
「え……」
もう忘れてかけていた名前を呼ばれ、彼女の身体がかたくなる。
その反応を見た男がニヤリと笑い、女に近づいてきた。
「噂は本当だったんだなぁ……こんなところにハイランドの王妃様がいるなんて…へへへ。
こりゃ高く売れそうだぜ。おっと…ヘタに動くとその綺麗な顔に傷がつくぜ……。」
男は腰に填めた大型のナイフを持ち、ジルの前でちらつかせる。
「ひ……」
部屋の明かりに反射して鋭い光を放つそれは、彼女達の身を竦ませるのに十分なものだった。
ナイフを持った男がジルの腕を掴む。
「おら、来るんだよ! そっちのガキも早くしろ!」
男がピリカに手を伸ばそうとした時、ジルが素早く自分の胸の中に匿った。
「お願いします! この子は…、この子だけは助けて下さい!」
「そいつは聞けねぇな。俺らの顔を見られちまったからな……。」
「そんな!」
「早くしろ!」
あの人から託されたこの子だけは守らなければ…そんな思いが彼女を突き動かした。
ピリカに目が行っている男にジルが咄嗟に組みつく。
「こ、こいつ!」
「ピリカ、逃げなさい! 早くっ!!」
必死に叫ぶ。が、所詮女の力で男にかなうはずもなく、ジルは壁に叩きつけられた。
戸棚の皿が床に落ち、派手な音を立てて割れる。
「この野郎! 調子に乗りやがって……!」
「あう!」
バシーン!と平手で頬を叩かれ、後方へ叩きとばされた。
「お姉ちゃん! 止めて、お姉ちゃんに乱暴しないで!」
ピリカが涙を流して懇願する。
「うるせぇ! ガキにゃ用はねぇんだよ! この……!」
男がナイフをピリカに向かって振り被った。
ジルの顔が青くなる。
「やめて―――ッ!!」
ドス!
「うぐっ……」
ドアの方で鈍い音がした。皆が目をやると、男の仲間であろう者が腹を押さえて蹲っている。
そしてもう1人、精悍な顔つきの男が立っていた。
「なっ…なんだ手前ェは!」
「御婦人に暴行するとはいただけないな。」
そう言うや否や、精悍な顔をした男がナイフを持った男に突進する。
その素早い踏み出しに反応が遅れ、鳩尾にきつい一発をもらい髭の男はその場に崩れ落ちた。
嵐が過ぎ去り、荒れた部屋に静寂が戻る。
「あ…あなたは……?」
ジルはピリカを抱き寄せ、得体の知れない男を警戒しながら問う。
「はい、私は元ハイランドの兵士です。ジョウイ様に命を助けられた御恩がありまして、
失礼ながらもずっと護衛させていただいておりました。
お助けに上がるのが遅れた事、お許し下さい……。」
その男は、ジルの前で跪く。よく見ると、とてもがっしりとした体躯の持ち主だ。
男の正体が解かり、安堵の表情を浮かべる2人。
「い、いえ……助かりました。本当に有り難う……。」
「御怪我がなくて本当に良かった……では、私はこの2人の処置をしてきます。
今夜はもうお休み下さい……。」
のびた男共を担ぎ、その兵士は家を後にした。
一睡もできなかったジルは、傍らで眠るピリカの寝顔を見ながら朝を迎えた。
普段は同じ部屋でそれぞれのベッドを使っているのだが、さすがにあんな事があった後だ。
昨夜は一緒に寝たいとピリカが言い出したのだ。
自分の無力さを改めて思い知らされた一夜だった。
彼女が彼女である限り、いつ昨夜のようなことが起こるか解からない。
この子を危険に晒す訳にはいかない……やはり、離れて暮らすべきなのだろうか。
それはとても辛い選択だが、ピリカの身の安全を考えると……。
ジルが頭を悩ませて数時間、陽が上り始めた頃、ふいに表が騒がしくなりだした。
数匹の馬の鳴き声が門の前で止まる。
昨夜の悪夢がジルの脳裏に甦る。
戸口が開くと同時に、ばたばたと数人が家の中に駆けこんで来た。
「……!!」
何事かを話しているが、この寝室までは聞こえてこない。
武器になるものを探すが、大した物は見つからなかった。
その間にも家中のドアは乱暴に開けられ、どんどん彼女達の部屋に近づいてきていた。
ジルはピリカを胸に抱き、じっと寝室の入り口を見つめる。
ピリカも異変に気づいたのか、眠そうな目を擦りながらゆっくりと目を開ける。
ついに開かれたドア。
そこから部屋に飛び込んで来た人物は、想像し得ない人達だった―――。
「……ジル! ピリカ!」
「あーっ! いたぁ! ピリカちゃん!」
その声に、寝ぼけ眼だたピリカが大きく反応した。
「ジョウイお兄ちゃん! ナナミお姉ちゃん!!」
がばっとジルの胸から飛び出したピリカが2人に走り出す。
ジルはまだ事態が飲みこめず、ベッドから出れずにいた。
「良かった…! どこもケガはないんだね、ピリカ?」
「うん! お姉ちゃんが守ってくれたんだ!」
ナナミがジルに歩み寄る。
「大丈夫でした? ケガしてない?」
「あ…は、はい。」
ジョウイがピリカを抱き上げ、ジルの傍へと近づく。
「ジル……良かった……本当に……。」
ピリカを片腕に座らせ、そっとジルの肩を抱くジョウイ。
その温かさを肌で感じた瞬間、ジルの眼から止めどなく涙が溢れ出した。
「でね、でね、ジョウイったら急に走り出すんだよ? 私達も一緒に行くっていうのに。ねぇ?」
ナナミが隣に座っている少年に言う。その少年は苦笑をナナミに返している。
あの後、ジルは初めて顔を合わせたジョウイの幼馴染という2人を紹介され、
夕食を済ませた後、リビングで話をしていた。
旅先で絶えず情報を提供してくれていた者から昨夜の出来事を聞いて、
道中馬を一匹潰してまで駆けつけたそうだ。
皇都ルルノイエが陥落する直前に会ったきり、ジョウイの行方はわからなかった。
もう一生逢う事は無いと思っていた夫が現れたショックはとても大きい。
もちろん、それが驚きと喜びの割合が多くを占めていることは自明の理だ。
ジルは、言いたい事は積もるほどあるはずなのに、なかなか言葉が出て来ない。
それはジョウイも同じで、再会してからの2人の間には数えられるほどの会話しかなかった。
重くなりがちな場の雰囲気。
「あ……ね、ね、ピリカちゃん、今日はお姉ちゃん達と一緒に寝ない?」
ジョウイの横にぴたりとくっ付いていたピリカがナナミを見る。
「え……でも……。」
「お姉ちゃん、久しぶりに一緒に寝たいなぁ。
あ、それとお姉ちゃん達の旅の話、してあげる。」
ピリカはジョウイとジルを交互に見上げる。その瞳は不安げに揺れていた。
「…大丈夫だよ、ピリカ。すぐに出発するつもりはないから…。
明日、たくさんお話しよう。」
ジョウイの言葉を聞いて、ピリカに笑顔が戻る。
ピリカはナナミの手をとってぐいぐいと引っ張り、
「ナナミお姉ちゃん、じゃあ早くお話聞かせて? お兄ちゃんも一緒に行こうよ!」
そう言って2人を客室へ連れていく。
「え…今から? でももうちょっと後で……」
「よぉし、それじゃあね、旅先であったナナミのすごい勘違いを教えてあげるよ。」
「え、え、ちょっと、何よぅ…そんなの知らないよ? 私。」
「夜中にトイレに起きたジョウイをね、ナナミがお化けと間違えて……」
「あー! 待って、待って、それ言わないで、お願い!
あ、ピリカちゃん、そ、それよりもっと面白い話があるからそっち教えてあげる!」
ナナミが逆にピリカを引っ張って客室に入っていく。
くるりと少年がジョウイとジルの方に向き直った。
「ジョウイ……じゃあ、今日は先に休ませてもらうよ。
ジル…さん、お先に失礼します……。」
そう言って、彼も客室に入っていった。
「彼が…同盟軍のリーダー……私達とさほど変わらないのに……」
ジルは閉められた客室のドアを見ながら、誰に言うともなく呟いた。
あの若さで一軍を率いることがどれだけ辛く、厳しいことなのか。
だがそれは、目の前にいるジョウイにも当てはまる。
ジルがその辛さを目近に見てきたため、少年が余計に不憫に思えてならなかった。
(あはは――っ!)
客室の中から笑い声が聞こえる。
ピリカの大きな笑い声。ここに来てからは一度も聞いたことのないはしゃぎ声に、
ジルの表情は自然と和らいだ。
「ピリカ……あんなに元気になって……有り難うジル、あなたのおかげだ。」
ジョウイがジルに優しい笑みを向けて話す。
「いえ…。あんなに嬉しそうなピリカは私は見た事がありません。
やはりあの子には、貴方が必要なのですね……。」
ジョウイの笑みを受け止められなくて、ジルは顔を伏せてしまう。
それは、ピリカを危険な目に合わせてしまった負い目からか、
自分ではあの笑い声を引き出せなかった無力さからなのか。
「………すまない。僕は犯した罪を償わなければならない。
今この時も苦しみ続ける人達がいることを、自分の過ちを、この身に刻み込まなければ…」
「……。」
とても苦しそうに言葉を吐くジョウイ。
判っていた事なのに…。敢えてその理由を口にさせてしまった自分の気遣いの無さに
苛立ちを覚える。
「しかし、この場所も安全とは言えないな。他の場所を探してみよう……。」
「……貴方と共に行ってはいけないでしょうか……」
「え……?」
「貴方の傍なら安全でしょう? ピリカもきっとその方が……」
言ってはいけない事だと判っているが、言わずにはいられない。
願うだけなら神様もお許し下さるだろう。
「……それはできない。僕とあなたが一緒にいると、さすがに怪しまれてしまうだろう……」
「わかっています!」
ジルは激昂した。こぼれる涙を拭おうともせず、言葉を続ける。
「でも……それでも、私は貴方といたい…。どんな家でも、2人で住むには広すぎます……」
「………ジル………」
そっとジョウイに寄り添い、ジルはその厚い胸に顔を埋めた。
そんな彼女の細い両肩を抱き、ジョウイは優しく包み込む。
「……。ごめんなさい……我侭を言いました。」
「……今日はもう休もう。」
その夜、ピリカには大き過ぎるベッドで、ジョウイは眠りにつこうとしていた。
お互いのベッドでよく一緒に眠るため、ベッドはピリカの身長に合わせてはなく、
ジルの身長に合わせられている。
すぐ横のベッドからはジルの静かな寝息が聞こえる。
このまま眠ろうとした時、ジルの意識がこちらに向けられているような気がして、
ジョウイは彼女のベッドの方を向く。
ジルの眼は開かれ、その黒い瞳は暗い部屋の中で月の光を映し出していた。
「………ジル、眠れないのかい?」
「………。」
ジルは返事もせず、じっとジョウイを見つめている。
「……やはり、抱いてはくれないのですか……?」
「………。あなたは僕に縛られる必要はない。もっと自由に生きていただきたい……」
その言葉を聞いて、ジルは毛布を跳ねのけて起き上がる。
「私は! 私の意志で貴方に抱かれたいのです!
それでも縛られていると言うのですか!? 私は自分の意志も持たない人形だと!」
「ジル……」
ジョウイもゆっくりと上体を起こす。ベッドから出て、ジルのベッドに腰掛けた。
月の光がジルの肌に反射している。その肌は青白く光り、とても幻想的に見えた。
「……それがあなたの望みなら、僕はそれに従おう。
こんな事でしか僕はあなたに温もりを与える事が出来ないのだから……。」
ジルの顎先に指を添え、顔を上に向ける。
唇を合わせるだけのキス。
お互いの息が交わる。ジルの所在無さ気な手がジョウイの背中に回され、
より近づくためにその身体を引き寄せる。
ジョウイは固く閉じられたジルの下唇を軽く噛み、口腔を開かせた。
少し開いたその口腔から自分の舌を侵入させ、ジルの戦く舌を誘い出す。
「は…っ」
舌を捉えられたジルの口から甘い吐息が漏れる。
だらしなく開かれた口内から、分泌された唾液が垂れ流れる。
控えめだったジルの舌の動きが次第に激しくなり、ジョウイの舌を求める。
ジョウイは寝着の上からジルの胸をそっと包む。
中心の突起はすでに硬くしこり、掌でゆっくりと転がすと、ジルの身体が身悶えし出した。
「あぁ…ジョウイ、もっと…もっと!」
頬を上気させるジルを見ながら、ジョウイは優しく愛撫を続ける。
絹のような肌触りの太股をなぞりながら、上方の秘部に指を到達させた瞬間、
ジルの身体が目で見て判るほど、ビクリと大きく震えた。
「あ……!」
自分の大事な場所を初めて触れられ、ジルは目を大きく開いてジョウイを見つめる。
そこはすでに熱い液体で濡れており、下着はその液体を吸い重くなってしまうほどだ。
「ジル……いいかい?」
ジョウイはジルの了解を得ると、シルクであろう高級そうな手触りを残す下着を寝着ごと脱がす。
かすかな糸を引いて脱ぎ捨てられた下着を傍らに置き、ジョウイは自分の衣服を脱ぎ出す。
ジルはその間に上着を脱いでたたみ、ベッドに潜り込んだ。
全てを脱ぎ終わったジョウイもベッドに潜り込み、ジルの上に覆い被さる。
はっきり見えないジルの秘所を自分のモノで探っていると、ジルが脚を上げてそこへ導いてくれた。
「ジョウイ……」
一度、自分のモノを秘口にあてがうと、ジョウイはゆっくりと体重をかけてジルの中に入っていく。
十分に潤ったジルの膣内は、さして激しい抵抗もせずジョウイを招き入れた。
「ジル…辛いかい?」
「いえ……それほどでもありません…。貴方のお好きなように動いてください……」
ジョウイは時間をかけてゆっくりとジルの中を行き来する。
動く度に絡み付いてくるジルの膣内は、まるで意志を持つ生物のように
ジョウイのモノに喰らいついてくる。
「んん……ぅ、貴方を、お腹の中に感じます…!」
ジルはジョウイが動く度に発生する快楽を全身で受け止める。
「ジル、本当に平気なのかい? 痛いのならこのまま……」
「だい、大丈夫、私は大丈夫ですから、つ、続けて、ください…貴方を、もっと、感じたい…っ」
息も切れ切れに、ジルはジョウイに懇願する。
ジョウイはジルの腰を掴んで、そのまま後ろに倒れこんだ。
ジルの肢体が露になり、月の光に照らされる。
「きゃ…、はっ、恥ずかしい……!」
ジョウイの行動が解からず、彼の両肩を握っていたジルが今度は上になり、
白く華奢な身体に玉のような汗が光っている。
「ジル……こんなに濡れている……」
2人の繋がった部分に手をやり、ジョウイが指で溢れる蜜を掬い上げた。
「あぁ…! ごめんなさい……私、貴方の事を考えると…、身体が熱くなって……っ、
ごめんなさい…、どうか、どうか嫌いにならないで下さい……ごめんなさい……!」
ジルは薄桃色に染まった顔を両手で隠す。
ジョウイはそんな彼女をとても愛おしく想い、顔を覆っている手をそっと退けた。
「ジル……君のその気持ちはとても嬉しい……こんな僕を慕ってくれるのか?」
「そんな……。私は、ずっと貴方をお慕いし続けていました……」
ジルはジョウイに口づける。自ら舌を絡ませ、唾液の受け渡しをする。
ジョウイは流れ来るジルの唾液を喉を鳴らして飲み、下から腰を突き上げ始めた。
「ぁん! はぁ! あッ……愛しています、愛しています……ジョウイッ!!」
ジルは彼の肩の下に手を潜り込ませ、身体をくまなく密着させてお互いの体温を感じ合った。
ジョウイの腰の動きに合わせるように、自らの腰を振る。
そのぎこちなくも懸命な姿に、ジョウイは欲望をそのまま彼女の中に解き放つ。
「ジル……好きだ、好きだっ!!」
「あッッはァァァ!!」
びゅく! びゅっくっ……、びゅぶ……。
「うぅ……」
ジルはジョウイが吐き出した欲望の証を自分の体内で受け止め、
なおも余波の治まらない彼のモノを膣内で感じていた。
2人はどちらからともなく浅いキスを交わした。
まだこの行為を終わらせたくない、という想いが2人を突き動かす。
お互いの唇を愛しみ合いながら、長く、長く、そのキスは続いた。
ジョウイが昼頃目を覚ますと、客室のベッドはメイクされており、
幼馴染の2人はすでに発った後だった。
そっと置かれていた手紙には、2人の行き先が告げられていた。
「御二方が、『朝は弱いから起こさないで』と……。」
いつの間にか、隣に立っていたジルが静かに口を開く。
久々の“家族”対面への、あの2人なりの気遣いだったのか。
「……行かれるのですか?」
ジルの表情がわずかに曇る。
ジョウイは手紙を丁寧に閉じて、ジルに向き直った。
「いや、もう少しここにいるよ…。ピリカとも約束しちゃったしね。」
穏やかな笑顔をジルに向ける。はっと軽く息を吐いた彼女の表情にもう翳りはない。
「でも…、貴方が朝弱いなんて、私存じませんでした……ふふっ」
口元に手を当てて、とても楽しそうに微笑む。
彼女がいつでもこうして笑えるように、ジョウイはここにいるべきなのかも知れない。
ジルを幸福にすること。
それもまた、彼――ジョウイ・ブライト――の科するべき罪。
完