ブランキー×メル 著者:2_262様
なんとなく生きてる隙間にぽこっと空いた落とし穴があったりする。
なんとなく、なものだから何にも気付かず、すとんと落ちてしまう。
今日の彼女はとにかく、タイミングが悪かったわけで。
「ユミィ… 感じて、る? 」
「あ、はぁん! ダメ… ユイリ、こんなところで… 」
それはほんの一瞬のことのように彼女は感じた。ちょっとだけ寝苦しくて、眠れなくて向かった露天風呂で思いのほか気持ち良くて、ちょっとだけうたたね。
「ウソ… つかないで… じゃあ、コレはなに…? 」
「イヤ… そんな意地悪しないで… 」
メルがほんの少しのうたたねから目覚めると、露天風呂の岩陰から聞こえるそんな甘い会話。しかし、どうやら甘い会話の主ふたりは、まだメルのことに気付いてないらしい。
「キレイだよ… 誰よりも… 」
「はぁ… はぁ… ユイリ… ユイリ…! 」
だからといって! これはどういうことなのよ!
苛立ちとともに、頭をもたげる好奇心。岩陰からは時折激しく動くのか、強く水面を弾く音が響く。興味は膨らむ。ユイリとユミィ、誰もが認めるアルマ・キナンの美女ふたり。
「もっとわたしを感じて… ユミィ… 」
「わたしも… ユイリをもっと感じたい… わたしを触って、あなたの熱が忘れられなくなるように… 」
岩陰から少し顔を出せば、絡み合うキレイな肢体が月明かりに照らされて、幻想的ともいえる光景を映しだす。不思議とメルに恥ずかしいという気持ちは湧いてこなかった。それはとても美しくて、恐ろしいくらいに彼女を惹きつける力を持っていた。
大きく、息を飲むメル。そんな彼女に気付く様子もなく、肌を重ねあうユイリとユミィ。
「はぁ… はぁ… はぁ…っ! 」
ふたりはお互いの生殖器をこすり合わせて、そのまま達した。そのまま倒れこむようにして、寄り添い、しばらくすると寝息をたてはじめた。
そうだ、今のうちに、ここから出ないと…。
メルは覗きに没頭していた自分に少し違和感と嫌悪感を覚えながら、露天風呂をあとにする。自分の部屋に戻る途中も胸の早鼓ちが止まらなくなってることに気付かないフリをして、無理やりベッドに入って、眠ってしまおうとした。
…ダメ…みたい…。
眼を閉じた瞬間にあの風呂の景色が音付きで蘇ってくる。ドクンドクン、胸の音がこんなに大きく響くなんて。
「ねぇ、ブランキー… 起きてる? 」
メルは自分の右手に問い掛ける。
「…ったりめぇだろ。あんなの見て簡単に眠れるかっての! 」
「そっか… そうだよね… 」
あれ? ブランキーに話しかけてるだけなのに、どうして、ドキドキは大きくなるの?
「なぁ、素直になっちまえよ」
ドクン! ひときわ大きな鼓動。身体が熱くなっていく。間違いのない感覚。
「やさしくしてやるからよ」
「ブランキー…? 」
ブランキーがゆっくりと動き出す。シャツをゆっくりとたくし上げて下着の上から、まだ膨らみきってない胸をやさしく愛撫する。
「ダメ…! ブランキー…! 」
「力が入ってねぇよ」
全てを見透かされたようなブランキーの言葉にまた胸が飛び跳ねる。身体を流れる血がゆっくりと逆流するような、不思議な高揚が迫るのが、わかる。
「大丈夫だ… メル。お前のことは俺が、一番分かってるんだから… 」
ブランキーはずるい。そう言われたら何も言い返せない。再開される愛撫。けむくじゃらの彼の腕が甘い快楽を伝える。
「はぁ… はぁ… ブランキー… 」
少しだけ熱い彼の舌が、つんと突き立ったメルの乳首を転がす。時折、それを口に含むようにすると、ひときわ大きく、柔らかい声が口元からこぼれていく。
「どうだ? 初めて、『感じた』か? 」
「うん… 」
小さく彼女は頷く。
「どうして欲しい? 」
「えっ… そんな… あっ」
ブランキーは胸への愛撫を留めることなく、彼女へ言葉を投げかける。
「言ってみろよ。どうして欲しい? 」
「言えないよ…っ! ハぁ…ん! 」
彼女は気付いてしまっていた。自分の股間からすでに何か生暖かい液体が流れ出していることを。そして、自分がそれをブランキーに『どうして欲しい』のかを。
羞恥のあまり言えないその言葉。ブランキーだって分かっているはずだ。しかし、彼女の羞恥心の壁は絶えず重ねられるブランキーの行為のせいでもろくも崩れ去ろうとしていた。
「ひ、やぁ、や… いや… あん! 」
ブランキーの唇が押し当てられて、舌が絡みつき、唾液が零れ落ちる。彼女からも同じように唇を求めると不思議と心が軽くなった。
自分の欲望を少しだけ肯定したから?
そうかもしれない。快楽を遮る羞恥心が薄くなると、身体はもっと熱くなった。溢れた愛液はシミとなってベッドに広がる。
「もう… ガマン出来ない、から… おねがい… 」
そう呟いて、彼女はその右手を自らの意思で動かして、その滴る蜜の源へと。
ブランキーは何も言葉を発することなく、薄い茂みの底へ、真っ赤な舌を伸ばす。
「ふあっ…! は… ぁんんっ! 」
初めて入りこんでくる異物の感覚に戸惑いながらも、その快楽を受け容れる。
ブランキーの舌は固く、しっかりと彼女のなかに入りこみ、その内側から心ごとすべてを溶かしてしまいそうで、それが律動し、揺らめく度に、悦にまみれた声が空気を震わせ、ふり乱された髪は、ベッドの上でせわしなく絡み合う。
「はぁん! あぁ、あっ! はぁっ……ぁっ! 」
激しく意識を揺らす甘い震動がひときわ強くなった瞬間、彼女の全身の力が抜けて、ふわりと浮かんだような奇妙な感覚が訪れ、そのままベッドへ沈み込む。
ワタシハ、イッタ。
股間から最後の愛液がどろりと流れ落ちていく。呼吸は落ち着かず、ブランキーの熱はまだ身体中に残っていた。
少しずつ虚脱感が生まれる。それから逃げようと、右手を、ブランキーを胸に抱く。ブランキーは黙ったまま、表情ひとつ変えずに彼女の胸へと収まっていく。
わたしのせいで生暖かくなった、ブランキーのからだ。
彼女は眠りについた。何も知らない少女の顔に戻って。