パーシヴァル×リリィ 著者:3_375様

今週の、ビュッデヒュッケ城の深夜見回り当番は、ゼクセン騎士団の面々であった。
夜中の0時をすぎると、誰からともなく着替えを始め部屋を出るのである。
広い城内でも西側の部屋が連なる一帯の廊下を、軽装で剣のみを帯びたパーシヴァルは
大きな足音を立てぬよう歩き回っていた。
東側を見まわることとなっていたボルスと、自室の前で解散して十数分が経つ。
今夜も何事もない平和な夜になりそうだと、不意に出そうになる欠伸をかみ殺しながら
行き止まりをひき返そうとした、そのとき。

彼の耳に、女性のものらしいうめき声が聞こえてきた。
「なんだ?この声は…言葉責めにしては、物騒な感じがするな」
パーシヴァルは独りつぶやくと、声が聞こえてくるドアに近づき、耳をそばだてる。
その部屋はティントの大統領令嬢、リリィ・ペンドラゴンの部屋であった。

怪しいことに、そのドアはわずかに開いており、その隙間から声が漏れているようだ。
「(リリィ嬢か…?何か苦しんでいるようだが)」
業とらしく咳払いをし、そのうえノックをしてみるが、返事はない。
「うう…た、助けてぇ…」そして聞こえてくるのは、何やら不穏な内容のうめき声。
パーシヴァルは、意を決して中に足を踏み込んだ。

部屋の中は綺麗に整頓されており、リリィの趣味らしい調度品、また置いてある小物など
には荒らされたような様子は全くない。
そして、部屋の主である彼女は、奥の寝台で寝息をたてているようだ。
「(…何も、ないようだが)」
パーシヴァルは、部屋に無断で侵入したことに少し後悔し掛けたが、そこへまたあの声が
耳に届いたので、息をひそめて寝台に近づいた。
「パパ…怖いよう…ここから助けて」どうも声の主は、リリィ本人であったらしい。
背を丸めて小さくなって眠る彼女は額に汗をかき、苦しそうにうなされていた。
「(これは…起こすべきか?)」顎に指をあてた得意のポーズで、パーシヴァルはしばし
考えていたが、うなされるリリィの肩を揺らして、覚醒させようと試み始めた。
「リリィ嬢。…起きて下さい」しかし、リリィは苦悶の表情のまま寝返りを打つばかりで、
どうも肩を揺らしたくらいでは意識は戻らないようだ。
日頃相棒を起こすときのように頬を叩いたり足蹴にするわけにはいくまい、…彼は一つの
結論を見出すと、寝台で眠るリリィの横に腰掛け、彼女の上半身を起こし顔をこちらへ
向けた。
眉を顰めて目を閉じるリリィの表情は硬いが、その長い睫に整った鼻梁、ほの赤い頬に
柔らかそうな唇、それらは男を魅了するに十分なものだった。

「…失礼しますよ」彼は不敵に笑うと、リリィの唇に自分の唇を重ねた。
彼女の眉間に皺が寄るのには構わず、口腔内に舌を滑り込ませる。
その内部をくまなく舌で蹂躙し始めた頃、不快そうなリリィの瞳が色を帯び、目の前の
男を捕らえた。

「ふァっ!!?」リリィが驚きの息を漏らすと、パーシヴァルは口惜しそうに唇を離す。
つ、とその間に銀の糸が一筋現れて消えた。
「なっ…!パーシヴァル、なんでっ!?」跳ね上がるように起きたリリィは顔を真っ赤に
して、両の手で口を覆う。
「お目覚めですか?リリィ嬢。…あまりにうなされておいででしたので、揺り起こしたの
ですが、あなたが中々目覚めないもので」寝台に腰掛けたまま、パーシヴァルはしれっと
した口調で言った。
「どういうつもりよっ!?…目覚めるも何も、人の部屋に勝手に上がりこんで、こんな
こと!」リリィは、夢でうなされてネグリジェの胸元が肌蹴ているのも忘れ、パーシ
ヴァルに指をつきつけて叫ぶ。
「ノックはきちんとしましたよ。それに鍵はおろか、扉を半開きにして眠るとは、無用
心にも程がありませんか?リリィ」パーシヴァルは相変わらずの不敵な笑みで、さりげ
なく敬称を略しながら言葉を続けた。
「そ、それは…っ!私だって、疲れてドア閉めたかわからない間に寝てしまうこと
だってあるわよ!だいたいね、それよりまずあなたの方が不法侵入じゃないのっ!
自分が何をしたか…」
「…デュナン統一戦争の時の夢でしょう?あなたが見ていたのは」

「えっ」リリィは、彼女の怒声を遮ったパーシヴァルのその言葉に目を見開いた。
「ティントが吸血鬼ネクロードに襲撃され、街はゾンビの巣窟になったとき、あなたは
誘拐されて恐ろしい思いをなされた。今では演劇でも知るところになりましたが、さっ
きは…父や誰かに助けを求めておいででしたが」
「…ええ、確かにそうよ!だからといって、それで来たのがあなたってこと?冗談じゃ
ない!もうあの頃とは違うの…自分の身は自分で守りますから、ご心配なく、パーシ
ヴァル卿!!」リリィは、誰にも見られたくない弱点をはからずも目撃された気恥ずか
しさから、もう部屋から追い出すほどの勢いでパーシヴァルに食って掛かった。

「あなたらしいですね、リリィ。だがあんな無防備に泣かれては、男の俺としては守らず
にはおられませんよ。…それに」
だがパーシヴァルにはまったくもって堪えたふうでもなく。
その様子にやや怯んだ、リリィの瞳を強い視線で凝視すると。

「そんな扇情的ないでたちで誘われて何もせずにいられるほど、俺はできた男では
ありませんから」

「なっ…!ど、どこを見て…っ」
リリィは胸元に気がついて、音がするほど勢いよくネグリジェの襟を合わせたが時すでに
遅く。
パーシヴァルはずいとリリィに顔を近づけると、抵抗するリリィの頭を抑えて貪るように
彼女の唇を奪った。彼の胸を叩く手は小さく、力は弱い。
「ん…んんっ…!」
うなされていて意識が戻る直前の、不快なような甘いような、本人にも理解し得ない感情
がよみがえる。
「やっ…いやっ!」パーシヴァルが唇を離すと、リリィは涙に潤んだ、懇願するような目
で相手を見上げた。
「…こんなこと…やめて…」
「……」パーシヴァルはどうしようもない罪悪感にかられたが、リリィの大きく見開いた、
弱弱しい瞳は肌蹴た胸元以上に彼の征服欲に火をつけてやまず、また快活な強い普段の
彼女と今の彼女のギャップは彼の興味を過剰にひいた。

「あなたが好きだ…愛している、リリィ」そしてその感情は、パーシヴァルの口をついて
飛び出した。
「うそ!嘘よっ!!」
「…嘘ではありません。どうやら俺は、あなたに恋をしてしまったようですよ」
まるで冗談のように軽く聞こえる言葉と裏腹に、強い力がこもったパーシヴァルの目を見て、
リリィは一筋涙を落とす。
そのリリィを、パーシヴァルはきつく抱きしめた。

レースのネグリジェのボタンを外しながら、パーシヴァルはリリィの首筋から胸元へキスを
落とす。そのしぐさの一つ一つにびくりと身体を震わせるリリィ。
やがてボタンがすべて外れると、パーシヴァルはネグリジェに隠れたたわわなふたつの膨ら
みの先端にある、桃色の胸の突起を口に含んだ。
「!!っっ!」リリィの細い体が、弓のようにしなるのを見ながら、彼は自分の舌と利き手
の指で感度のよい突起をしばし弄んだ。
「気持ちよかったら声を出して頂いても、いいのですよ?…あまり派手に騒いでしまうと、
不審に思った相棒が巡回に来てしまうかもしれませんが」
ドアはパーシヴァルが入ってきたとき同様、半開きだ。いつ不審に思った者がここに踏み
こんでくるかわからない不安が、リリィの羞恥心をかきたてた。
「はっ…恥ずかしいわよ…あんっ!!」顔を赤くしたリリィは声を殺していたが、突然耳
を甘噛みされると不覚にも声が漏れてしまう。
「感じるままに声をお出しください。…俺はあなたの鳴き声が聞きたいのです」
パーシヴァルは滑らかな動作で自分の騎士衣を脱ぎ、寝台にのぼるとリリィのすらりと長く
伸びた両脚の間に指を滑り込ませた。

下着の上から触れるそこは熱を帯び、湿度が高く。
リリィの、羞恥に赤く染まったり快感に堪えて唇を噛んだりとくるくる変わる表情を楽しみ
ながら、パーシヴァルはその部分を執拗になで上げる。
「あ…あうッ」
「まだ直接触れてもいないのに、こんなに濡れてしまって」愛撫していた指を舐めあげなが
ら、パーシヴァルは艶かしい目でリリィを見ると、彼女は唇をきつく引き結びながら視線を
そらせた。
「言葉責めなんて、悪趣味ね」
「本当のことを言っただけではないですか、リリィ。…この下着も、外してしまいますよ。
…よろしいですか?」
「いちいち聞かないで頂戴!…す、好きにすればいいわ」
「畏まりました、リリィ嬢」キッと気丈な、だがどこか面妖な光を湛えた瞳で睨むリリィの
身体を覆う最後の一枚の布を脱がせて、パーシヴァルは満足そうに微笑む。
「…綺麗ですよ」シンプルに賛辞を放つと彼は先ほどまで布があった場所へ指を伸ばした。
リリィは直接男の指がそこへ触れたことで、再びびくりと身体を震わせた。

「あっ…いやっ…んっ…」感度のよいリリィの身体は、パーシヴァルが直接そこを触れ、
刺激し、舌を這わせるたびにしなり、のけぞり、喘ぎ、白い肌に脈を集中させて十分な反応
を見せてくれる。

「…そろそろ、俺があなたの中に入りたいと欲しているのですが、いかがです?」

「だから、何度も言わせないでよッ…はあっ…」
与えられる快楽で我を忘れそうになるのを堪えて、リリィは自分の胸に影を落としている
相手に言った。パーシヴァルはそれを聞くと、騎士服の下衣を脱ぎ、下半身を露にした。
天を衝く勢いで猛っている彼の分身が、先ほどの愛撫で十分なほど濡れそぼったリリィの
秘部の入り口に触れると、リリィは顔をこわばらせた。

「んっ…」唇は重ねられ、長い舌は唾液をからめとりながら。
ゆっくりと、それは内部に侵入していった。

「あっあああアっっ!!」そのスピードがもどかしく、パーシヴァルがリリィの細い両足
を肩にのせ、腰をつくように進めると、流れるほどの愛液のためかリリィの身体の最奥
までの侵入をあっさりと許した。
奥を衝かれる感覚にリリィは高い声で喘ぎ、ぎゅっと相手の背中をつかむ。
パーシヴァルも、一度中へ誘われたら出られぬかのように彼自身を咥え放さないリリィに、
先ほどまでの余裕を失いつつあった。
「動きますよ…っ」
「や、ん…あ、あ、あっっ…!」わずかに溜息を漏らしながら、リリィの内側の感じる
ところを一つ一つ確かめるかのように動き貫く。
リリィも頬を上気させて、貫かれるたび嬌声を形のよい唇から漏らした。

「あっ…あん…だっ、ダメ…っ…これ以上動いた…ら私、おかしくなっちゃ…うっ」
息を弾ませながらリリィが哀願するのを、パーシヴァルは愛おしそうに見、しかし腰の動き
を止めずに彼女の耳元で囁いた。
「…っ…俺も限界です…いくならば一緒に、リリィ」
「やっ…はあっ…んっ!…あ、ああっ!パーシヴァル…っ!!」一番感じる場所を衝かれ、
リリィの内部がパーシヴァル自身をきつく締め上げると、搾られるままに彼の自身も己の精を
解き放った。

「…は、はやく行ったほうが、よいんじゃなくて?皆が心配するわよ」リリィは裸で一緒に
寝台に横たわる男に、のろのろと視線を移して言った。パーシヴァルは彼女の唇に軽くキス
をする。
「心配はしませんよ。今日の当番はボルス卿と俺の二人だけですし」
「だから!そのあなたの相棒だって、あなたがいつまでも戻ってこなかったら怪しく思って、
探しに来ちゃうかもしれないでしょ!?」
軽く憤慨するリリィの頭を腕で支えながら、パーシヴァルは可笑しそうに答える。
「それは問題ありませんよ…おそらく、朝までいても。彼は洞察力も観察力もすぐれて
いますからね」
「…??あ、そう。大層彼を評価しているのね」リリィは訳もわからずただ笑う相手を
不思議そうに見るだけだった。

そして、半開きのドアの影で、数刻前ちらりと中の様子を覗いてからそこを動くことが
出来なくなっていたボルスは。
「(やばい!ここにいたのバレてるっぽい!!)」静かになり剣の音も立てられず、
ますますそこを動けなくなっていた。

(終)

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