ユミィ×フレッド 著者:???様
結界を抜け、原生林を奥に奥に進んでいくと少し開けた場所に出た。
グラスランドの部族、巫女だけの村、アルマ・キナン。
そこは大昔から生き続ける木々たちの原生林の隙間に間借りしているような、
そんな印象を受ける小さな村であった。
大きな城中心で生きてきたクリスにとってはギャップが大きいだろう。
そこそこ旅をしてきたフレッドやリコ、諸事情で旅なれているナッシュはクリスほどのギャップの
違いは感じないかも知れないが、それでも村に流れる空気とか匂いなどはには少々驚いていた。
だいたい、この村に来るときも入り口にたどり着けないように術がかけられていたのも、違和感の
原因かもしれない。それは全てこの村のあるモノが原因ということはあとで知ることになるのだが………………。
ひとまず、彼らはこの村の長の所へ向かった。
「とりあえず、宿を用意してくれるとさ。やつら、まだ話がしたいみたいだったけどユンが何か言って、
今日のところは許してもらえるみたいだ。なんだか、忙しそうだったしな。」
退屈そうにフレッドが言う。考えるより先に正義で動く彼にはさぞかし窮屈な村であろう。力の有り
余る彼にはこの村ののどかさは肌に合わなさそうだ。
「どうします? 宿で休みます?」
リコがクリスを見て問い掛ける。年頃の女の子には失礼かもしれないが少々ふくよかな彼女は自
分の主であるフレッドとは違い、細かい気配りが効く子である。
「そうだな、少し休みたい」
ココまで相当な強行軍であったために、騎士である彼女は剣を握らせれば一騎当千の強さを持つ
が旅なれていないクリスには少しキツイ。
ちなみにいっしょにいるナッシュは素性はよく分からないが、旅なれているのはよく分かる。そしてな
にか得体の知れない不気味さも持っていた。その不気味さも気持ちの悪いものでないところも彼の
得体の知れない所であった。
「そうですよね。ほらほら、フレッドさま。みんな疲れているんですよ。まったく疲れていないなんて
言ってるのフレッド様だけですよ。」
長い付き合いであるフレッドをリコが嗜める。どちらが年下なのか分からない。
「うるさい。俺はあの程度でなんか疲れてもなんともないぞ。」
意味も無く胸を張ろうとするが、
「フレッドさま、先行っちゃいますよ。」
リコが呆れたようにフレッドを振り返る。すでに他の仲間は宿屋に向かっていた。
きれいに空になった皿にフォークを置いて、
「ご馳走様でした!」
大きな声でフレッドが言う。アルマ・キナン唯一の宿屋で出された夕食は山鳥のソテーや木の実
のパンなど野趣溢れるもので、かなりのボリュームがあり、リコは半分くらい残してしまっていた。
クリスは何とか食べきれたのだが、彼女の普段の食事量からすると確実に多かった。ナッシュはし
っかり平らげて、唯一おかわりをしたフレッドだけがだったいま最後の皿を空にしたのだ。
不思議なもので、食事をしているときは奇妙なほど静かで礼儀よく食べていたのだが、食事が終る
がいなやいつものフレッドに戻ってしまう。
「みんなとっくに食べ終えてますよ、フレッドさま。」
食後のお茶を飲みながらリコがツッコミを入れる。こちらもどこか上品さがある食事の仕方であっ
た。それ自体は旅の途中でなんども見た光景なのでクリスもなれたが最初はビックリした。そりゃ
そうだ。ふだんの正義が猪突猛進しているフレッドやそのあとを必死でついていくリコを見ていたら
そんな風には見えないからだ。クリスがリコにそのあたりの理由に聞くと「騎士たるもの礼儀作法は
必須、何時いかなる時もそれは不変である。例え敵中だろうとも獄中であろうとも、騎士としての礼
儀を無くすのは騎士の命を絶つことに等しい! という祖父の言葉が身に染みているんです。」とのこ
とだった。リコも従者として一通りに礼儀は見についているようだ。クリスは自分の部下たちの一部
にフレッドの爪の垢でも飲ませないなとも思ったりもしたくらいであった。
「皆さん、食後のジュースはいかがですか?」
食事を終った頃を見計らってユミィが琥珀色の液体の入ったビンと人数分の陶器のカップをお盆
に乗せてきた。女性と少女の狭間から抜け出したような彼女はクリスたち一向をもてなす担当のようだ。
「あ、ください。」
少女そのもののリコが遠慮なくお願いする。
「それじゃぁ、私ももらおうか。」
リコに続いてクリスもジュースを注いでもらうとナッシュも琥珀色のジュースを注いでもらう。
フレッドさんは?」
ユミィは食後のお茶を飲もうとしていたフレッドの斜め後ろから聞く。
「え、ああ、あとでいい。それより砂糖はないか?」
「あらそれでしたら、砂糖よりもいいものがありますよ。」
そう言ってフレッドの横からお盆に乗っていた小さな入れ物を差し出した。
「これは?」
「このあたりの木の樹液から作ったシロップです。お茶には合うと思いますよ。」
トロリとした液体は甘い良い香りが香っていた。
「へぇ、じゃあ……………。」
シロップをお茶に入れて、軽く混ぜて口をつける。
「お、美味い。」
「そうでしょ。甘いけど甘ったるくなくていいのよ。」
賞賛の声を上げたフレッドに嬉しそうにユミィが答える。
「ジュースはどうします?」
「そっちも貰いたい。」
「フレッドさま、そんなに飲むとお腹壊しますよ。」
ジュースを飲み終えたリコがイラついた声を出す。
「リコ、俺がそんなヘマをすると思うか?」
紅茶を飲み終えて、ジュースに移ろうとしたフレッドが反論する。
「グリンヒルの一件を忘れたんですか?」
「う、それは……………。」
たじろぐフレッド。
「なにかあったのか?」
2人のやり取りを聞いていたクリスが問う。
「はい、じつはですね、」
「リコ、いい加減に止めてくれ!」
「私も興味あります。聞かせてください。」
ユミィも乗りだしてくる。ちょうどユミィの柔らかく女の子らしい胸がフレッドの肩に押し当てられて
ひしゃげる。
「グリンヒルでおじい様たちと……」
悪乗りするリコ。と、
「いい加減にしろ!」
顔が赤いのは怒りだけではない。フレッドが大きな声を上げる。ちなみにナッシュは苦笑しながら
若者たちの会話を聞いていた。
「ふぅ。」
あてがわれたベッドに腰掛けてフレッドは一息つく。リコはクリスとともに斜向かいの部屋になった。
さすがに2人旅の時のようにリコと相部屋ではない。リコも女の子だからな。フレッドは苦笑した。
あまりリコが女の子と認識しないのだが、たまに思い出す。
「少々寝るかな。このあとの儀式とやらに出ないといけなさそうだし。」
ここまでの疲れと柔らかいベッドで寝れることが重なったのか体が重く、鎧を脱ぐことも億劫になり
そうだが、やっとこさ鎧を脱いで、剣を枕もとにおいて目を閉じた。
ふと、ここまで体が重いのは何でだろうと自問自答したが、スグにその答えは出た。
「そういえば、あのシロップの効果なの………か。」
そして、フレッドの意識は心地よい世界に漂っていった。
目が覚める。
訓練の賜物で目覚めてから数秒で意識をハッキリさせる。寝込みを襲われた際の対処である。
もっとも今は殺気などはないのだが。
しかし、いささか状況がおかしかった。手足が動かない。
ベッドの脚から伸びていると思われるロープに四肢を縛られて、ベッドの上で大の字であお向けに
なっているというなんとも情けない状況である。
フレッドは大きく深呼吸をして四肢に力を込める。引きちぎろうというのだ。
しかし、腕にロープが食い込むだけで、ロープ自体は伸びも軋みもしない。
「くぅ、こいつはキツイかな。もう一回っ。」
そう呟いて両腕、両足に力を入れる。ギチッという音が聞こえそうなくらいに力を込めて引っ張る。
しかし、腕と脚首に赤い痕が出来るだけで、やっぱりロープ自体にはなんにも変化は無かった。
「だめですよ、そのロープはいろいろと処理をしてあって、そう簡単には切れません。」
聞いたことのある声が聞こえた。頭を動かしてなんとか声の主を捉えると、銀の壷を持って
申し訳無さそうな表情のユミィがソコにいた。先ほど給仕していてくれたときのアルマ・キナン独特の
服装では無く、豊満とはいえないが形が良さそうな胸を布で軽く止め、下半身の丘や腰を布で、
そう褌のように隠して、その上から腰布を巻いただけの煽情的な格好で。
「ごめんなさい。こんなことをしてしまって。でも少しだけ、少しだけ何も言わないで協力してください。」
そんなユミィの言葉を聞く暇が無いほどにフレッドは焦って目を逸らす。
「な、なにをしている。早く服を着て…………く、それよりこの縄を外してくれ!」
フレッドは激しく暴れようとするが、身体に力が入らない。いや正確には身体に力が入らないのでは
なく、四肢の感覚がないのである。その替わりのように内蔵や胸、腹、大腿や腰の感覚がいやに敏
感に成っていた。
「身体の感覚がおかしい原因はこの香です。さっきのシロップと作用してそんな効果が現れるんです。
大丈夫ですよ。別におかしなクスリでは無いですから。」
そういって、手にもった銀の壷を見せる。良く見ると薄い匂いの紫煙が立ち上っていた。
「さっきも言いましたが、麻薬や心を壊すような薬じゃないです。アルマ・キナン伝統の秘薬ですよ。
シロップにはちゃんと滋養強壮の効果も有りますし。」
ユミィがそう言って、カップに注がれた液体を口に含む。紅色の頬が少し膨らむ。
暴れるフレッドの頬にそっと手を添えて顔を近づけて行く。
それまで暴れていたフレッドはその動きを止めてしまう。ユミィは瞳を閉じ、そっとフレッドに口づけると、
ユミィの舌がフレッドの唇を舐めて、ゆっくりと強引にフレッドの口内に進入ていく。そして、甘く、どこか
苦酸っぱい液体がフレッドの口に流れ込んでいく。
「うぐぐぐぐうぅぅ、んんんんんんむむぐん〜〜〜〜!〜〜〜〜ん〜〜〜!」
口移しで無理やりに液体を飲まされていく。舌で何とか拒もうとするが、ユミィの舌がそれを邪魔する
かのごとくヌルリとフレッドの舌に潜り込み、フレッドの舌を押さえ込む。しだいにユミィの口内にあっ
た液体がフレッドに全て流し込まれる。しかし、ユミィの舌はかすかに残った液体の味の唾液を、舌
の柔らかい感触とともにフレッドに伝えていた。
部屋にはヌチャヌチャペチャペチャという舌同士の粘液が攪拌される音、時折聞こえる息継ぎの為の
息の音しか無かった。その息音も次第に熱の篭ったものに変化していく。ユミィの手がフレッドの頬を
離さまいとするように包みこむ。フレッドの頬にユミィの汗ばんだ手のひらの感触が伝わると抗おうと
する気持ちが萎え始めていた。