ユン×クリス 著者:タマポ様
アルマ・キナンの夜は静かだ。そこはまるで森の中の神秘な泉のようで、ユンは泉に降り立った妖精のように、クリスには見えた。
ユンは、クリスを見上げ、頷く。
「ね、きれいでしょう。でも、クリスさんはもっときれいです」
「……」
「銀の乙女…お国ではそう呼ばれているんですよね。
月光と夜光草にその髪が輝いて、クリスさん、本当に女神様みたいです」
「銀の乙女…か。私はそんな大層なものではない。そんなものは人が勝手に私に押しつけた幻影だ」
「そう呼ばれるのは、嫌いなんですか?」
「当たり前だ。私はただの人間に過ぎないんだからな」
ユンは、おぼろな光りをまき散らす夜光草の中に、ふわりと座った。
手を引かれ、クリスも並んで腰を下ろす。
クリスの肩から腰へと流れ落ちる銀色の髪に、ユンは一輪の夜光の花を摘み取って挿した。
「クリスさんは、難しく考えすぎなんですよ」
「そうだろうか」
「今夜あなたは、自分が何を本当に求めているのか分からなくて、宿から抜け出したのでしょう」
「…ユンには、そんなことまで分かるのか」
ユンは小さく笑い、「口寄せの子ですからね」と呟いた。
「でもね、クリスさん。自分が何を求めているのかなんて、分からなくてもいいんですよ。
あなたはあなたの望むままに振る舞えばいい。もっと肩の力を抜いてもいいんです」
クリスは軽く眉をよせ、ため息をついた。
「誰も彼も、私に肩の力を抜けと言うが…私はずっとこうして生きてきたのだ。
今さらそれを変えることなど出来ない」
「生き方を変えろだなんて、言ってませんよ」
可笑しそうにユンは笑って、クリスの髪に手を滑らせる。
ユンの細い指先がクリスの髪を撫で、やさしく頬をすべり、唇をなぞる。
驚くクリスの肩を押し、ユンはそっとクリスを草の上に横たえた。
「ユン、何をっ…」
「肩の力を抜くって、こういうことです」
草の間に横たわるクリスに寄り添って、ユンは首筋にあたたかな息を吹きかける。
「う、うわっ…ユン、やめろ!」
「じっとしててください、クリスさん。楽にして、感じるままに声を出していいんです」
言いながら、ユンはクリスの首から耳へと唇をすべらせ、白い耳にふっと息を吹き込む。
「あっ…!」
耳に息など吹き込まれて、何故だか分からぬままにクリスの身体はピクリと跳ねた。
「ユ、ユンっ、何か…変だ…っ」
「いいんです、クリスさん。今はすべてを忘れて、私と心をひとつにするんです」
「そ、そんなッ、ユンっ!」
ユンの小さな舌がクリスの耳にさし込まれ、ねっとりと熱い感触がクリスの身体を震わせる。
「どう、して…っ!」
「耳、感じやすいんですね、クリスさん、可愛い」
舌と息づかいで耳をさいなみながら、ユンは片手でクリスのベルトを緩め、上着をはだけた。
薄い下着をたくし上げると、豊かな胸がこぼれた。
夜目にも白い乳房は、豊かに張りつめて天を向いている。
桜色の乳首は、少し堅くなって乳房の先で息づいていた。
「クリスさん、とてもきれい…」
ユンが細い指でクリスの乳首をつんと弾くと、クリスはヒッと小さく息を呑み込む。
ユンはその小さな手には余る大きな乳房をやさしく手のひらに包み、円を描くように揉み上げた。
「ん…ぁあん」
思わず、クリスの唇から甘いうめきが洩れる。
ユンの愛撫は、優しく、ゆっくりとしていたが、女としての快楽を何一つ知らないクリスにはそれで充分だった。
ユンはクリスの乳房を撫でるようにやさしく揉み、時折焦らすように乳首を軽くつまむ。
そうしながら、耳から首すじへと唇を這わせ、うなじを唇と舌で愛撫すると、それだけでクリスは全身を震わせ、仰け反るのだ。
「ぁあっ、はぁッ…んん…っ」
自分でも知らぬうちに、クリスは次第に艶めいた声で喘ぎ始めていた。
ユンに触れられた肌が融けそうに熱く、身体の奥に疼くような感覚がある。
「どんな感じですか、クリスさん」
「…わ、分からな…ぁんッ」
「なんだか身体が融けてしまいそうで、自分が自分じゃなくなってしまいそうな感じじゃありませんか」
「そ、そうかも…っくぅ…んんっ」
「こうしたら、もっと融けそうになりませんか」
ささやくなり、ユンはきゅっと堅くなった乳首を口に含んだ。やわらかく舌先でころがし、次の瞬間には揉みしだくようにねぶり上げる。
「ひァァッ…ンッ、ハァ…ん!」
片方の乳首を舌で舐め、もう片方の乳房を手のひらでやわらかく揉みしだきながら焦らすように乳首を刺激する。
「ふぅ…んぁっ、ぁぁん」
次第に高まるクリスの喘ぎを聞きながら、ユンは丹念にクリスの胸ばかりを愛撫した。
いつしかクリスの全身はこわばり細かく震え、唇からは小さな悲鳴のような声が切れ切れに洩れるようになっていた。
頃合いを見て、ユンはクリスの胸を解放した。
「…んぁ…」
急に乳房をなぶる手が離れたことに、クリスは甘えた声を立てたが、そのままぐったりとして、もどかしい余韻の波に小さく喘ぎ続けた。
ユンは横たわるクリスの着衣に手をかけた。
先ほどはだけた上着を脱がせながら、堅く天を向く乳首を軽く吸ってやると、すっかり感じやすくなったクリスの身体はビクンと跳ねる。
ズボンを脱がせようとすると、クリスは少し身をよじり、呻いた。
「だめ、クリスさん、じっとして」
やさしく、だが命令するように言って、ユンはクリスの着衣をすべて取り去った。
均整がとれた大柄な身体は、月光に照らされぬめるように白い。
胸の谷間から下腹部にかけてのラインを、指先でゆっくりなぞると、クリスは驚いたように小さく叫んだ。
「ユン…、何を…!」
「黙って。力を抜いて、私を感じてください」
ユンはクリスの膝を立て、淡い茂みに静かに顔を埋めた。
その瞬間、クリスは大きく仰け反り、甲高い悲鳴を上げる。
「ヒッ、ァアアッ…ンアア…何…っ」
ユンは、クリス自身でさえ触れたことのない花芯を、舌先でやさしく撫でた。
舌を細かく震わせ、痛みを与えないようにそっと刺激する。
「アッ、アッ、アアッ…んんっ、ダメっ、おかしくなるぅっ!」
クリスは狂ったように身体を反らし、叫んだ。
行き場のない腕が夜光草の葉茎をわしづかみにし、細かく震える。
硬直し、ともすれば伸ばしそうになる両脚をさすってやり、ユンは少し顔を上げた。
怯えたように首を振り続けるクリスをなだめるように、静かに言う。
「それでいいんです、クリスさん。あなたには時々、こうして本当のあなた自身を取り戻す時間が必要なんです」
「う、嘘っ…こんな…っ、ヒィッ、ぁんんっ!」
ユンは花芯から濡れそぼった泉へと舌を這わせ、細かく震わせるように、時には強くねぶり上げるように愛撫した。
「ヒァァッ、ぅんっ、ハァッ…」
「クリスさん、きれい。こんなに濡らしてしまって、かわいい」
したたるぐらいに後から後から溢れる液をすくい上げるように舌でねぶり、敏感な花芯も指で軽く刺激する。
泉の中に分け入るように舌を挿し入れれば、クリスは苦しげな、それでいて甘い悲鳴を漏らす。
ひときわ高い悲鳴をクリスが上げ、全身を痙攣させてぐったりとするまで、そう長くはかからなかった。
「ア、アアアーーーーーッ!…」
最後の一声を鳴いて、崩れ落ちるようにぐったりとしたクリスの上に、ユンは自分も上着を脱ぎ捨てて覆い被さった。
豊満な胸の上に、未熟でかわいらしい乳房が重なる。
肌がなめらかに触れ合い、ユンは満足げにささやいた。
「ねえ、肌と肌が触れるのって、気持ちがいいでしょう」
「…ん…」
ほとんど夢うつつのクリスの乳首に、ユンは吸い付いた。
「んっ、ァッ…」
一度達したばかりの身体は敏感で、クリスは苦しげに眉を寄せて身をよじる。
ユンは先ほどのようにやさしくではなく、少し強く乳首を吸った。
「も、もう…ダメだ…」
喘ぎながら懇願するクリスの脇腹を撫でながら、ユンは笑った。
「まだよ、クリスさん。まだこれから」
気だるげに悶えるクリスの下腹部に手を伸ばし、すっかり濡れそぼった泉に細い指をつぷりと挿れる。
「ん…っ、んくぅっ」
「気持ちいい、クリスさん?」
「あ…はぁぁ…」
ぬめるそこに、ユンはさらに二本の指を挿れてゆっくり抜き差しした。
そうしながら、乳首を舐め、吸い上げる。
「ぅああっ、ユンッ、変になりそ…!」
「変になっていいから、クリスさん。気持ちいいのね」
「ァ、ァアッ、ハァっん…イイ…ッ」
「ふふ、よかった」
ユンは微笑み、クリスの股間に抜き挿しする指の動きを次第に早めていった。
乳首を刺激する舌も、少しずつ激しさを増し、時折軽く歯を立てて甘噛みする。
「ンア、ユンッ…、まだっ、アアッ…」
「もっとしてほしいのね、クリスさん」
「イヤッ、くぅ…んっ、ハァァッん!」
細い指と小さな舌で与えられる刺激に、次第にクリスは我を忘れていくようだった。
激しく身体を波打たせ、か細いユンの肩に爪を立てる。
「クリスさん、もっと感じて…」
さらに激しくユンが攻めたてると、クリスは大きく全身を仰け反らせて切ない声で叫んだ。
「イッ、ア、ア、んはああぁぁっ!」
二度目の絶頂感がクリスを襲い、クリスの身体はだらりと力を失った。
あたたかい液のしたたるクリスの股間から、ユンはそっと指を抜き、身を起こした。
意識があるのかないのか、ぐったりと目を閉じているクリスに、静かに語りかける。
「最後の夜を、クリスさんとこんなふうに過ごせて、私、嬉しいです」
横たわるクリスの顔をのぞき込み、そっと唇をあわせる。
「アルマ・キナンの女達は、たまにこうして女である自分を解放するの。
クリスさんにも、これが必要なのよ…
でも、私がクリスさんにしてあげられるのは、今夜が最後…」
ユンはクリスに上着をかけ、静かに立ち上がった。
「クリスさん、忘れないでね、今夜のこと…」
ユンはそっと草を踏み分けてその場を後にし、後には夜光草の中に横たわるクリスだけが残された。
もうろうとした意識の中に、ユンの声がいつまでも響いていた。
『…忘れないでね、今夜のこと…』