◆101◆
「ほら、ビール」
「いらない」
「なんでや?」
「キライ」
「嘘付きいな。この間までエライ好きやったやん」
「今はキライ」
「ほな何飲む?ワインか?」
「キライ」
「なら、バーボンはどうや?」
「キライ」
「・・・あんなあ、くど」
「キライって言ったらキライって言ったら、嫌いなんだよ」
「・・・・そしたら、何が好きなんや」
「教えない」
「俺は好きやで、オマエが」
「・・・・・・」
「好きや、って百辺。それでも足らんなら千回でも言うわ。それでも足らんのやったら・・・」
「・・・イヤだ」
「言わせへん」
平次は、新一の唇を、塞いだ。
「・・・・・・ばかやろう」
「しゃあないわ、諦めえ。死んでも治らへんで」
「キライだよ、お前なんか」
「好きやで、オマエが」
「キライ」
「百回言えや。俺は百一回言ったるわ。千回言ったら、千一回言うで。一万回言うなら・・・」
「ズルイ」
「ズルない。本気やもん」
「言っとくけど」
「ん?」
「さっき言ったこと、本気じゃないから」
解っていると、平次は、唇で応えた。