『扉の向こう5』 「うっわー...声が反響してスゲェ事になってんぞ」 「お風呂場は響きますからね」 「やっ…ちょっ…てめっ、なにっ」 突然抜かれた指のかわりに入って来た生暖かいモノ。 「貴方にはいつでも僕のニオイさせていて欲しいですから」 なんだっ、ソレはっ。 「なっ…トコ舐め…ひッ」 「感じ…ます?」 「やっ…舌…入れな…」 思いきり押し広げられた痛みよりも、その生々しい感触に身体が震える。 こんなトコロが感じるわけはねぇのに。 八戒の舌のカタチがリアルに感じられて。 「こ、金禪っ。なんということを」 「うるせーなっ、今イイところだろがっ」 「アンタもヤりて−んだろ?だまって見てな、オッサン」 「それにしても舌で繋がるっていうのは、局所以上にイヤらしいものですね」 「....アンタの言い方がヤラしいんだって」 「ひ..ぁ...あッ......やっ...」 舐めまわされて、吸い上げられて、噛み付かれて。 気が狂いそうなくらい高揚しているのに、与えられない決定的なもの。 「...すご..い...まだ足りないみたいですね...」 「...ち..がっ...あぁッ!」 「ちゃんと身体、支えてて下さいね」 「...ひ..ぁっ!」 「金蝉っ!」 「ココにもたえきれない奴一人ってか」 「見てるだけでイけるんだったら、別にヤる必要ないじゃん」 「500年分溜ってますし仕方がないですね」 「なんかお前が言うと生々しい…」 「あ…ぁあっ…」 「このままイれますから…前支えて…」 「やっ……出来な…」 「じゃ、浴槽の縁に捕まって、ね。腰をこっちに…」 「…んっ」 「おいっ、正面だぜっ」 「三ちゃん、すげ色気…」 「ひぁぁっ...!」 「しっかり掴まっててくださいね。皆さんに貴方のイイ顔が見えるように...」 「....バレてるか。やっぱ」 「気付かなかったら余程の鈍感ですよ」 「...三ちゃん、気付いてねーよ」 「なんつーか、こーゆーとこ金蝉童子だねぇ」 「抜けてるってコトですか?」 「ンな身も蓋もねーコト....」 「あっ...あぁ...っ」 「イイ...ですよ..三蔵。」 「はッ...あ.....っ...はっか...いっ」 「三蔵…綺麗です…ほんとに」 「っあ…ふ…いっから…やくっ」 「もうイきたい…?」 「八戒ッ…」 コイツの余裕が悔しくて唇を噛み締めたとき。 今まで放っておかれた前を、八戒の手がやんわりと握ってくる。 「ねぇ、顔あげて…もっと前を見て?」 「ひっ…い」 「いきますよ…んっ」 「ああっ…いッ」 前と後を同時に刺激されて。 ただひたすらに絶頂に向かって上り詰めていく。 もう何も考える余裕なんてなくなった、そのとき。 「悟浄」 八戒の声。 なんで、この状態でアイツの名前を呼ぶんだ? 「そんなところで見ていてもつまらないでしょう?」 ....なに? 「こちらにいらっしゃいませんか?」 八戒? スパーク寸前の頭で、必死に意味を考える。 「悟浄」 突然、名前を呼ばれて飛び上がるほど驚いた。 「そんなところで見ていてもつまらないでしょう? こちらにいらっしゃいませんか?」 いらっしゃいませんかってアナタ。 爆発寸前のモノ。 激色っぽい三ちゃん。 そして何よりも。 コレは俺の夢だ。 少しくらいイイ思いしてもいいだろ。 そのまま迷うことなく、目の前の硝子を開けて入って行く。 「よォ」 突然目の前に現れたのは、紛れもなく悟浄本人で。 「お楽しみじゃん、三ちゃんってば、淫乱だねぇ」 これは、どういうことだ。 考える隙もなく、目の前に悟浄の昂ったモノを突き付けられる。 なにしやがるっ。 叫んでやりたいが、その途端に突っ込まれかねないと唇を固く閉ざす。 「なによ、ソレ。八戒のならヤるんだろ?」 この野郎。目が覚めたらぶっ殺してやる。 改めて決意した時。 「なんだァ、後ろ、空いてんじゃん」 え? そのとき、初めて、八戒が消え去っていることに気付いた。 「なら、後ろでイイや、俺」 「貴様ッ、なにしやがるっ」 突然、背後にまわった悟浄が腰に手をやってくる。 「やめろッ」 「悪いけどさ、今更、止まんねーのよ。どうせ夢なんだからさ、いいじゃん、これくらい」 そういう問題じゃねーだろがっ。 喚く間もなく、突き付けられたモノ。 「じゃ、有り難くいただきマス」 「やめっ」 ぐいっと押し付けられたモノが入ってくる感触。 やめろッ! すべての見栄も建て前もかなぐり捨てて、叫ぼうとした時。 「三蔵っ!!」 突然の覚醒。 急激な目覚めによる酷い嘔吐感の中。 俺は、八戒に抱き締められていた。 「三蔵っ、大丈夫ですかっ」 「....はっか...い?」 コレハ、ヤッパリ『ユメ』ダッタンダ。 惚けたままの頭で、それだけを理解する。 目の前の心底心配そうな顔。 きっと酷く魘されちまったんだろう、そう思ったとき。 「何もされませんでしたかっ」 「ああ、多分.....」 って、なんでお前が知ってんだよっ。 夢だったんじゃねーのかッ? 「....多分ですか....」 思わず口を閉じる。 マズイ....かもしれない。コイツ、目が座ってんぞ。 「多分....って、どういうことでしょうね」 「知るかっ、全部は入ってねーよっ」 ....情けねえ。一体なんのハナシなんだ、これは。 「つまり、少しは入ったワケですか....」 俺が悪いんじゃねえだろ、そんなモン。 「だいたい、お前がアイツを呼んだんじゃねーかっ」 「三蔵っ、僕が好きでそんなことすると思ってらっしゃるんですかっ」 ....少しは、思うぞ。 酷く気まずい沈黙の中。 「よぉ、何痴話喧嘩してんの?」 大欠伸しながらやってきた奴。 「どうやら、諸悪の根源がいらっしゃったようですね」 地獄の底から響く八戒の声。 どうやら、わざわざ俺が撃ち殺すまでもなさそうだった。 |
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