『扉の向こう6』







「なぁ、悟浄。お前なにやったんだよ。八戒めちゃくちゃ怒ってんぜ」
「るせぇ、猿は黙ってろっ」
「お前なーっ、折角心配してやってんのにっ」
「お前に心配されるほど落ちちゃいねーんだよっ。いいから、てめーは
八戒の手伝いでもしてやれって」
だってさー、ほんとに怖いんだぜぇ。
ぶつぶつ言いながら、たき火の方へ戻って行く悟空を見送って、俺は大きな溜め息をつく。
アレは一体なんだったんだろう。
夢だった筈だ。
例え、あまりにもリアルで、ニオイや感触までも、いまだに残っていたとしても。
アレは夢なんだ。
例え、同じ夢を同時に4人で見たとしても。
夢なんだ。

目の前にした三蔵の痴態。
(アイツはいつもあんなコトをヤってるんだろうか)
それとも八戒の言う通り、アレが俺の願望なのか。
4人で一緒の夢を見たというのに、何故、俺の夢なんだかわからねーが。
夢で見た三蔵の、理性もなにも、一発でぶっ飛んでしまいそうな色香。
(反則だろが、アレは)
目覚める直前。
もう少しでヤれるところだったのに。
細い腰をがしりと掴んで。
どうしようもなく昂ったモノを突き立てて。
どうしようもなく狭い場所に、いざ入れかけたとき。
目の前の姿が不意に消え去った、あの喪失感。
畜生ッ。

「一気に入れちまえばよかったんだよな」
「何をだ」
「どああああああっっっ」
突然、物凄く不機嫌そうな声が降って来て、飛びあがる。
「さ、さ、三ちゃん」
「いつまでもつまらねーこと考えてんじゃねーぞ」
「俺が何考えてたかわかんの?」
「エロ河童だからな」
目をあわせることなく不機嫌そうに呟かれて、思わず問いかける。
「....なあ、お前、俺にヤられんのイヤだった?」
途端に目の前の顔が真っ赤に染まった。
コイツ、ほんと初なんだよな。
「たりめーだろがっ! 二度と馬鹿なまねすんじゃねーぞっ」
「八戒のときは喜んでたクセにさ。結構本気で拗ねちゃってんだけど?」
「二度と拗ねないですむようにしてやろうか」
カチャリ。
物騒だねえ、ったく。
「なモン仕舞って、早く戻れって。お前が此処にいると、また八戒の機嫌が悪くなんだろ」
「るせぇ。なモン関係ねーよ」
そのまま、隣で煙草をふかしだす。
....コレは、もしかして、コイツなりの譲歩なんだろうか。
あんな夢を見て、顔も見たくないと言われても仕方がねえのに。
拗ねてた俺への気遣い?
まさかな、コイツに限って。
だが。
なんだか一人で拗ねてたのが馬鹿みたいな気がしてくる。
なんつーか。
コイツのこういうトコがたまんねーんだよな。
無意識なんだろうなァ。
どうしようもねえ凶悪坊主のクセに。
「オイ、何笑ってやがる」
「あん?俺、笑ってた?」
「自分でわかんねーのか。この馬鹿めが」
そういう口の悪いトコロも実は気に入ってんだけどな。
呆れたような顔で立ち上がった三蔵を、そっと指先で差し招くと
嫌そうな顔をしたまま、顔を寄せてくる。
その耳許に、唇を寄せて。
「なァ、残ってんの?」
「何が」
不可解そうな顔。
「だからさァ」
耳に触れる程近付けた唇で。
「お前のソコに。俺のアレの感触」
途端にこれ以上ない程に真っ赤になった三蔵が、滅茶苦茶に発砲してくるのを
必死に避けながら。
俺は笑いが止まらなくなって。
残ってんだ、コイツ。
なら、今回はコレでよしとすっか。

















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