永遠-とわ-に… <2>
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その日の夕食時、遊汝は何気なく橙に聞いてみた。
「あのさ、樹くんっつったっけ？どんな子？」
「樹はさ、なんかこう俺らと平気で馬鹿もやるんだけどなかなか本心を見せない奴でさ・・・
一緒に走ってても他の奴と違う、なんか渋い独特の雰囲気があるんだよ。俺も負けられねぇなって思う。」
箸を銜えたまま橙が言った。
その瞳は青春を味わう者のみが見せる輝きだった。
「何？姉貴、樹の事気になるの〜？」
ニヤニヤと笑いながら橙が肘で遊汝の脇腹をくすぐった。
「ばっ、馬鹿！！そんなわけ・・・」
「ま、樹彼女いないみたいだし、今度一緒にカラオケでも行こうや。」
「暇ならね・・・」
そんなことを言いつつも内心はかなり嬉しかったりする。
×××
樹も樹で橙に相談を持ちかけていたりする。
「なぁなぁ橙ちゃん、お姉さん彼氏いたりするの？」
昼休みに突拍子もなく持ちかけられた話題に、
橙は驚いて頬張っていた蒸しパンを危うく床に落としそうになった。
「何だよ、急に姉貴の話なんて・・・まさかお前！」
「そのまさかでさ・・・」
「好きなん？」
「まぁ、ぶっちゃけた話一目惚れ。」
（ははぁ〜ん、こいつら二人して両想いってやつぅ？！）
樹の最近の落ち着かない態度はここからきていたのか、と思うと
橙はどうにかしてこの二人をくっつけようと乗り出した。
「あんさぁ、樹・・・今日カラオケ行かねぇ？」
×××
数日たったある日。
遊汝の携帯に橙からメールが届いた。
『カラオケ行くんだけど女子のメンツが居ないから姉貴含めて３〜４人揃えてくれ〜！
駅前のボックスね。姉貴のだーいすきｖな樹もいるからさっ（笑）橙』
「・・・あのバカ・・・」
と言いつつも顔がひたすらにやけて仕方がない。
遊汝は同じ鮮燃蝶のメンバーである直と鈴音に声を掛けて
半ば無理矢理カラオケへ連れていった。
何も知らずに。
×××
「橙ちゃん、どうすればいい？」
「トイレにでも行くフリして途中で姉貴のこと連れ出しちゃえよ。後は俺らにまかしとけ。」
「おっけ・・・うーわ、緊張するーーー！」
「バカ、静かにしろよ。」
「あ、来た！」
「じゃ、頑張れよ。」
橙と樹はしっかりとこのカラオケを作戦にしていたのだった。
×××
遊汝がトイレに立ったのを追う様に樹も
「俺もトイレ」
と白々しくカラオケルームを出た。
「遊汝さん！」
「・・・？」
「抜け出しませんか？ここ・・・どっかファミレスでも入って・・・話が・・・個人的に話がしたくて・・・。」
遊汝は頬が紅潮していくのを隠すように頷くことしかできなかった。
そして二人はカラオケボックスを抜け駆けし、ぶらぶらと歩いてとあるファミレスに入り、話を始めた。
初めはぎこちなかったが、段々と話をするうちに徐々にうち解けて、
最後には「遊汝さん」「樹くん」呼びが「遊汝」「樹」へと変わっていった。
×××
それからも二人はよく落ち合うようになった。
学校帰り、樹は必ず遊汝を海の見渡せる小高い丘の上の大きな木の下へ連れていっては
夕日が海に沈むまで話をした。
告白をしたのもこの丘だった。
冬が来れば二人してバイクでスノーボードや温泉に行ったり、クリスマスを一緒に過ごしたりもした。
日の出走行はもちろん、バレンタインにホワイトデーと二人ならなんでも楽しかった。
ー全てが今は走馬燈のようだ。
そんな３月２０日、遊汝は１８の誕生日を迎えた。
樹はいつものように遊汝を丘の上に連れていくと小さな箱を手渡した。
「誕生日おめでとう」
照れくさそうな樹に苦笑しながら箱を開けると、
其処には小さな青い蝶の形の木彫りのオルゴールが入っていた。
曲名は「永遠に／ゴスペラーズ」と書いてあった。
遊汝は逸る気持ちでネジを回すと蓋を開けた・・・と其処にはもう一つプレゼントが入っていた。
ー銀のペアリングー
ご丁寧にもそのリングの内側には「Ｉ ｔｏ Ｙ」・・・樹から遊汝へと刻まれていた。
あまりにも完璧すぎる演出に遊汝はうっとりと甘い気分に乗せられてしまった。
そしてその夜初めて二人は躯を重ねた。
情事の後で樹は遊汝が聴き入っていたオルゴールの音に合わせて歌を口ずさんでいた。
「貴女の風になって・・・全てを包んであげたい・・・」
その歌詞には樹の今の気持ちが全て含まれていたに違いない。ーそして今も。
だが、その永遠に続くであろう幸せがあんな形で壊れるなんて誰が思った事だろうか・・・
（ｔｏ ｂｅ ｃｏｎｔｉｎｕｅｄ・・・）
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一筋縄ではいかなそうなこの後の展開！
樹さんの演出がすごいです！
続きが気になりますね〜。続きを待て！
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