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 他の誰よりも前から紺のことが好きで、他の誰よりも近くにいる割に、
威介は特に紺を独占する素振りも無ければ、独占しようとする素振りも無く、
むしろKAMIYAや流維が紺を慕って、そのあとをついて回るのを、
笑って見ているような余裕さえ見せている。
 そんな威介の本心が分からなくて、釈然としなくて、やりにくくて。
だからツアー中、たまたま威介が一人でいるのを見かけた時、
流維は考えるよりも先に率直な問いを投げつけていた。

「威介さんって、紺さんのことどう思ってるんですか」
「…流維くん、いきなり何」
「答えてくださいよ。紺さんのこと好きなんですか?」
「そりゃあ好きだよ。大好き」
「そうじゃなくて、紺さんを自分のものにしたいのか、ってこと聞いてるんです!」
 あっさりと好意を認めた威介に、癇癪を起こした子供みたいな勢いで問い返す。
必死という言葉を体現しているような流維の様子を見て、威介は苦笑した。
「自分のものも何も…別に、紺ちゃんをどうこうしたいってわけじゃないし」
「じゃあ、恋愛感情って訳じゃないんですね」
「いや…、何て云うんだろうなー。
何か、何時でも俺が居るよ、俺が守るよ、って云う存在じゃなくて、
紺ちゃんが本当にヤバイ時にこそ、必要としてくれるような存在になりたいわけ」
「じゃあ、紺さんと付き合いたいって訳じゃないんですか?」
 白か黒かと言った明確な答えが欲しいのだろう、
威介の遠回しな表現を、流維は手厳しく追及してくる。
中高生の恋愛のような正直さと勢いとにやや圧倒されて、
威介は少しの間口を噤んだ。
 紺が好きなのは事実だ。
けれど、それが恋愛感情かと問われたら、はいといいえでは答えられないものがある。
それに、もしこの想いが恋愛だったとしても、
自分の想いだけを一途に貫けるほど威介は子供ではなくて。
「…どうなんですか」
 黙り込んだ威介を、流維は更に問い詰めてきた。
「うーん…紺ちゃんのこと好きだし、独占したいと思う時もあるけどね。
でも、今の紺ちゃん、そういうことを考えられる状態じゃないっしょ。
そういう時に無理矢理押して、余計悩ませるような真似したくないの」
「それ…暗に俺を非難してます?」
「いや?別にお前がどうとか云ってるんじゃなくて、それが俺のやり方ってこと」
 軽く肩を竦める。
確かに、流維の好意を前面に出して紺にまとわりつくやり方は、
威介から見たら感心できるものではなかったけれど、
それもまたひとつの愛情表現であることには変わらない。
それに流維から見たら、威介のやり方もまた、感心できるものではないのだろうし。
 結局、第三者から見たら、同じ穴の狢なのだろう。
「だから…まあ、無理にこっちから求めないだけで、諦めた訳じゃないし。
紺ちゃんからはっきり断られたわけでもないしね、今はこのままで良いんだよ」
「それ、逃げじゃないですか!そんなの紺さんに失礼です!」
「それはお前の持論。大体ね、そんなこと云っちゃ艶くんが可哀想じゃん」
「艶?何で艶なんですか」
「何でだろうねえ」
 宥めるように云われて思わず云い返すと、威介は曖昧に笑った。
「…ま、似たような立場だから、かな」
「似たような?威介さんと艶が?」
「思い当たらない?」
 問い返されて、艶の顔を思い浮かべてみる。
いつもへらへら笑っていて、流維のところに来たり、たくみと何やかやで遊んでいたり、
masashiを構いに行っていることもあれば、一人で煙草を吸っている時もあるし。
愛想が良くて、あれで結構面倒見も良いのに、その割に何となく掴み所の無い感じ。
そういうところは、確かに少し似ているかもしれない。
 けれど、曖昧な立場に留まっているのが失礼だと言った流維に対して、
艶が可哀想だと返してきたと言う事は――。
「…艶も、中途半端な立場にいるってことですか」
「中途半端、ね。そういう言い方もあるかな」
 どうしても攻撃的な物言いになってしまう。
威介は特に怒るような様子は見せなかったけれど、
それが逆に、子供扱いされているような気がした。
「それ、艶が云ったんですか」
「何を?」
「自分が威介さんと似たような立場だって」
「いや?艶くんはそんなこと一言も云わないし、俺からも云ったことないよ。
俺が勝手にそう思ってるだけだから、安心しな」
「…そうですか」
 何となく釈然としない気持ちはあるものの、あくまで口調を荒げない威介の態度を見て、
流維は渋々と引き下がる。
 ――けれど確かに、改めて考えてみると、充分に納得の行く理屈だった。
艶は何時でも何処でも流維にくっついているわけではないけれど、
流維が何かで傷ついたり凹んだり怒ったりしていれば、いつのまにか傍に来てくれている。
愚痴も泣き言も聞いてくれるし、時に八つ当たりしても、拒絶しても、
艶の方から流維を置いて離れていくようなことは無い。
 そんな艶に、どれだけ救けられたことか。
そして、艶のそんな言動は、威介が初めに言った言葉そのままだ。
 普段からべったりくっついていなくても、
本当に辛い時にこそ、必要としてもらえるような存在になりたいと。
それは全て相手が好きであるが故に取れる、一種の愛情行動で、
なのに無理に相手からの愛情を求めたりしないのも、思いやり故。
 そんな威介の態度を非難したけれど、艶が示してくれるこの優しさには、
流維は遠慮無く甘えているのだ。
 その事実を、今更のように自覚した。
「まぁ…ほら、俺のことは別にどう言っても構わないけど、
あんまり言うと、間接的に艶くんまで傷つけることになるかもよ?」
「…………」
「自分を大事にしてくれる人のことは、傷つけないようにね。
結局自分も傷つくだけだから」
 黙り込んだ流維に、穏やかにそう言い残し、威介はそのまま行ってしまった。
金に染められた髪の揺れる様子を見送りながら、流維は口唇を噛む。
 ――余り話したことのない流維に、あれだけ不躾な物言いをされても怒る様子無くひとつなく、
それどころか、こんなに上手く流維を納得させてしまうなんて。
(…威介さん、結構考えてるんじゃん)
 そんな人間性を持つ威介が、意外に手強い存在のように思えた。



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や、あり得ないと思いつつ。
流維がいっさまを認める訳が無い。(何故)
そして艶さんといっさんっていう組み合わせも何か厭。
まあ威介+流維って訳でも無くて、
単にいっさんって紺ちゃんに対してそんな態度を取ってて、
流維は其れが気に入らないんじゃないかなぁって思ったので。
でも流維は実は紺さんを馬鹿にしてたらしいネ。(鬱)

因みに「follow」にも「見守る」って意味があるそうで、そっちの意味です。
watchとかobserveが何か厭だったので。(何故)


2001.0823.ゆきお。

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この威介はぁ、手強いよ。(何)
理想の人だよね…こんな人いたらいいな。
でも実際は流維タイプに走っちゃう人のが多いよね?
好きな人にはガーっといっちゃうっていう。
そういう人にしてみれば、ゆっくりその人を見守ってるっていうのは
理解しがたいんじゃないかな。
でもね…見守ってるだけで倖せってのもあるよ、ね。


のち

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