一途
―――――――――――――――――――――――――撮影と言われたら、紺がソロで、真と直、威介と遊哉が一緒という構成なのがいつものことだった。
それはあくまでヴォーカル、ギター、リズム隊という分け方に過ぎないのだけれど、
それでも、あまりに当然のように、直はいつでも真についてきていたし、
真も直がついてくるのが当たり前だと思っていたから。
「今日は真くん、遊哉くんと一緒で、先に撮るから。直くんは威介くんとね」
「あ、そうなんですか?」
スタッフにそう言われた時、思わず聞き返してしまった。
隣に佇む直も、戸惑ったような表情をしている。
「直さん、今日別だって」
「…うん」
「大丈夫?」
直の頼りない返事を聞いて、自分の口を衝いて出た言葉がそんなものだったのに、思わず苦笑する真。
自信過剰もいいところ。
直は自分がいなきゃやっていけない――まるでそんなふうに思ってるみたいな言葉。
「…じゃあ直さん、後でね」
「うん」
「寝ちゃ駄目だよ?」
「……寝ないよ」
やっと笑う。
その笑顔にすこし安心して、真は直と別れて遊哉のところに向かった。
ほぼ同時にスタッフに呼ばれると、紺と話をしていた遊哉も素直についてくる。
けれど、それで済むはずがないのが遊哉だ。
「なあ」
「何?」
「真と直って、むっちゃラブラブやね〜?」
「何でだよ?」
そんなことを言いながら、満面の笑みで覗き込んでくる遊哉は、まるで中学生のよう。
どうせからかうつもりで言っているのだからと、真もなるべくまともには取り合わないようにするけれど。
「直と一緒の時と顔が全然違うやん。むっちゃ嫌そう」
「別に」
「あ、倦怠期?」
「…………」
そう言ってガキっぽく笑う姿を見ていると、どうしてやろうかと思う心も否めないのだった。
×××
「…直さん、また寝て――」
椅子に座ったまま微動だにしない直を見て、威介は苦笑混じりに言いかける。
けれど、横顔を覗き込んだら、それが勘違いであることが分かった。
普段なら、暇があれば何分もしない内に眠ってしまう直なのに、今日は珍しくしっかりと目を開けていて、
しかもその視線は、撮影中の真にまっすぐに向けられている。
(…愛だねー)
名前を呼ばれたのも気付かないくらい、真剣に見つめている直。
一途としか言いようのない姿には、感慨さえ覚えさせられた。
(これなら真くんじゃなくても傍にいたくなるか)
そうふうに思って、知らず知らずの内に笑顔になってしまう。
それくらい、この二人の間の愛情や信頼は暖かで柔らかい。
けれど、そんな威介に紺が一言。
「…威介、何でそんな顔で直さん見つめてるの(怒)」
×××
その日の帰りに、真は直を自宅に連れ帰った。
それもさして珍しくないことで、直も、まるで自分の家にいるかのようにくつろいでいる。
「疲れた?」
ソファに沈み込んで、半分眠りかけてさえいた直に問い掛けると、首を横に振った。
疲れていないわけはなし、そんなことは分かっていたけれど、自分も隣に腰を下ろして、
もうひとつ聞くけど、と続ける。
「撮影どうだった?」
「…やっぱり、真の方がいい」
「それでも一応比べはするんだ?」
「…比べるまでもなくっ」
ちょっと意地悪で聞き返すと、直は珍しく強い語調で言い返してくる。
でも、真だって、直がそう答えるだろうことは予測済みだった。
あの後、帰り間際に威介が真に言った言葉――「直さん、ずっと真くんのこと見てたよ」
それを聞いて、無性に嬉しくて、直から直接確認したかっただけなのだ。
「…知ってたけどね」
頬を赤く染めた直に微笑みかける。
その言葉に直が抗議しようかどうか迷っている内に、そっと口付けた。
――やっぱり直には自分がいないと駄目らしくて、それが自分にも言えることで、
そんな相愛が成り立っていること。
それがいちばんの幸せなのかもしれないね?
―――――――――――――――――――――――――12000hitゲッターの華代ちゃんからのリク:“シンナオの甘々”です★
こ…こんなんでよかった?(どきどき)
何か似たような話を書いたような書いてないような…(死)。
まぁとりあえず楽しんでいただけたら幸いですにゃぁ★(雪緒)