[荒廃]

 

見つかって
捕らわれて
蔑まれて
なのに何故
この心は喜ぶ?

首につけられた鎖は硬く
手首に掛けられた枷は重い
冷たい眼 冷たい手
人としての扱いすら此処には無いのに
それでも

「髪、伸びたな」
「うん・・・」
「少し痩せただろ」
「・・・そう?」
彼が口にするのはほんの僅かな違いで
自分ではそんなこと分からないのだけれど
見られている
見てくれている
ということだけが嬉しくて
ほんのりと微笑う。

 「ちゃんと食えよ」
綺麗な笑顔でそう言って、彼は食事を与えてくれる。
まるで普通に食事をするかのように
食器に乗せて。
両手が自由にならないのなんて知ってるくせに。
この両手の自由を奪っているのは他でもない彼なのに。
わざと食べにくいようなものばかり。

 「・・・食べさせて?」
自由とは程遠い毎日だから、乞うことは簡単に覚えた。
遊汝をそそる様な目線と言葉遣い、喋り方。
ねだる事もせがむ事も、誘う事さえも、一度覚えてしまえば簡単な事。
最早プライドなんて欠片も無い。
そんな物は、一度この男から逃げたあの時、捨て去ってしまった。
「ねぇ・・・」
自分を見下ろしたまま、何も答えない遊汝を「誘う」。
あからさまでない程度に甘えた声。
首を傾ける拍子に鳴る鎖の音。
下から見上げる眼も、僅かに開いた口唇も、
これはすべて武器。
捕らえられた自分に残されたものは、躯と声と仕草だけだから、
こうして、自分の欲しいものはプライドと引き換えに手に入れる。

「遊汝・・・」
語尾を掻き消えさせて名前を呼ぶと、
遊汝の瞳がすぅっと細くなった。
獲物を見つけて、捕らえて、残虐に弄ぶ前の獣のよう。
「・・・誘うのばっか上手くなりやがって」
膝を付いて、遊汝は言う。
細い指に顎を掴まれて、答える間もなく、痛いようなキス。
噛み付く様に口付けられて、逆らう術も反抗の思いも知らないまま、
遊汝の舌に犯される。
胸元に触れる指を受け入れる。

だってこの体は、遊汝の思いのままになる玩具。
自分は、遊汝の好きな時に、遊汝の気が済むまで相手をする動物だから。

本当なら逃げたくて仕方ない筈なのに、
からっぽの心はこの生活を快感だと言う。
「お前、俺のペットだよなぁ?」
耳元で、嘲るような口調で囁かれた。
冷たく見下す瞳を見返して、囁き返す。



「・・・嬉しい」

 

 <END>

 

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私があげたユナ×ミヤの絵を見て一瞬で浮かんだらしい。
テーマは「精神SM」だそうで。最後のセリフが私は好きよ。
雪緒さんは華代ちゃんのサイト(CLS)でユナミヤに開眼したんだろう(笑)。
私的にはタブーネタかなと思ってたんだけど、同人世界にタブーはないのね!
ステキだわ、同人世界。(笑)

 

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