いつの間にか降り出していた雨に、大関は顔をしかめる。
朝家を出るときから怪しい空模様だったものの、傘は持ってなかった。
と言うのも、実際のところは、あまりにうるさく“傘持ってけよ”と繰り返す樹がうっとうしくて、
それに反発して持って来なかったのだ。
(ちくしょー…あいつ、雨呼びやがったな)
あいつと言うのはもちろん樹のことだ。
居候までしていると言うのに、責任転嫁どころか完璧な八つ当たり。
あまりの態度だが、これが大関の性格なのだから仕方ない。
(仕方ねぇな、走るか)
激しく降っている雨を眺めて、一瞬考えてから、大関はそう決めた。
あいにくこの近くにはコンビニもないし、最寄りのコンビニまで行って傘を買ったところで、
その時点でびしょ濡れになっていることは間違いない。
そうして雨の中に一歩踏みだそうとして
――その時、ポケットに突っ込んであった携帯が鳴った。
ディスプレイを見ると、“いつき”の文字。
携帯を耳に当てて、大関はあからさまに不機嫌な声で答える。
「…んだよ」
『あ、大関?今どこにいる?』
「駅だよ」
『雨降ってるだろ。だから傘持ってけって言ったのにーー』
「うるせー!お前があんまり降る降る言うから降ったんだろ!」
『どういう理屈だよ…』
八つ当たり気味に怒鳴ると、電話の向こうで樹が苦笑するのが分かった。
『とにかく待ってろよ、迎えに行ってやるから』
「いらねー」
『だって濡れたら風邪ひくだろ』
「ガキじゃあるまいし、風邪なんかひかねーよ」
『いいから待ってろって、すぐ行くから。いいな、待ってろよ?』
「だからーーー」
一方的な樹の言葉で、通話は切れた。
機械音に切り替わった携帯を耳から離して、大関は溜息をつく。
(…ったく、どこまでお節介なんだよ)
大体、6人家族だというのに、人一人居候させる時点で、かなりのお人好しだ。
そして、家族に対しても愛想の悪い大関のフォローをしたり、栄養が偏ってるだの
寝るときはパジャマを着ろだの、事細かに人の面倒をみて。
その上、遊汝にいじられてもニコニコ笑っていたり、好んで橙や零名のお守りをしたり、
良く平気だなと思う反面、どこまでお人好しなのかと呆れてみたりもする。
今日だって折角のオフなのだから、家で好きなことをすればいいのに、
この雨の中、わざわざ自分の忠告を無視した奴を迎えに来ようとするなんて。
(底抜けのお人好しだよな。お人好しっつーか、バカじゃねーの)
そうやって悪態をついてみるけれど、ならどうして、言われた通りにおとなしく待っているのか。
それはやっぱり、口ではどんなにひどく言ったとしても、
大関は大関なりの信頼を樹に寄せているからなのだった。
(補足→その後)
樹 「あ、ちゃんと待ってたんだ?」
大関「だって駅まで来て俺がいなかったら、お前哀れじゃん」
樹 「あわれって…口悪いなー(苦笑)」
大関「放っとけよ。…って言うかお前、何で傘一本しか持ってきてないんだよ!」
樹 「え?…あ、忘れてた」
大関「お前…バカだろ…(呆)」
樹 「何だよ、傘なんて一本あれば充分だって」
大関「お前と相合い傘なんて嫌だ。大体何で人を迎えに来といて傘忘れるんだよ、この役立たず!」
樹 「そんなに怒んなくてもいいだろー。せっかく来たんだから一緒に入って帰ろうぜ」
大関「俺に触るな!」
(以下続く)
END
―――――――――――――――――――――――――ゼキイツ〜♪ゼッキーかわいいよぉ。
愛するがゆえに素直になれないという。
自主盤倶楽部のコメントペーパーには「樹+大関」の
相合い傘が書いてあります。ゼッキーが書いたのね。
かぁわいいじゃなぁい(嬉々)。
コメント by のち 2000615