オマエはオレが守ってやんなきゃダメなんだ
笑えるくらい自信過剰
飛んだ勘違い

オマエ、本当はオレのこと嫌いなんだろう?
合わさらない目線、震える手足、で一目瞭然
オマエがオレから逃げたかってることもわかってる

それでもオレはバカだから
まだ心の何処かで信じてんだよ
――オマエがオレを必要としてるって


×××


ミヤミチはオレがSに引き入れた。
こいつはどう考えてもボーカル向きの性格じゃなかったけど、
そこそこ歌えるし、顔もいいし。
何か…魅かれるものがあったんだよな。
今思えば、一目惚れってやつだったのかもしれない。

メンバーに反対されようと、オレはミヤミチを推した。
カイキさんもそこそこ気に入ってくれたようで、
正式にSのボーカルになるのにそう時間はかからなかった。

メンバーに、バンドになかなかなじめないミヤミチに
かなり手を焼いたことも事実だ。
性格に難有りでメンバーから疎まれているのも知ってた。
でもその分だけ、オレだけに見せる素顔が愛しくて。

ミヤは人前であまり笑顔を見せず、人前であまり喋らなかった。
それでもオレの前だけでは、笑ったし、喋ったし。
2人の所に人が加わるとまた黙りこくって俯いちゃうんだけど。
オレだけには心を開いている、そう思っていた。

コイツにはオレがいないとダメなんだ
そう思って、オレはミヤを可愛がった。
笑えるくらい自信過剰だった。
かなりの勘違い野郎だと思われてもしょうがない。
でもその頃のオレにはミヤが全てだったし、
こいつが笑ってくれるなら何でもしてあげよう、
そんなカンジだった。


×××


「なぁ、ミヤ……」
「……」

時折ミヤミチは急に鬱状態になることがあった。
大抵そういう時はオレの部屋の隅でうずくまっていた。
元々根暗なこいつだったけど、そういう状態の時は
とてもじゃないけど話し掛けられる雰囲気でもなかった。
変に刺激してもマズイから、そういう時はそっとしておいた。
何を考えているのか、何を思っているのかわからなかったけど、
オレにはなんかひどく痛々しく見えた。

ある晩、酒の勢いも手伝って、少しハイになっていたオレは、
いつものようにうずくまっているミヤミチに、思い切って喋りかけた
繊細なこいつの心に土足で入って行くことは、正直怖かった。
取り返しのつかない傷を負わせてしまうような気がして。
でもリーダーとして、友達として、そして恋人として、救ってあげたかった。

「オマエさ、塞ぎこんでてもいいことないぜ?
ほら、笑う角には福来るって言うじゃん」
「……」
「零名とか樹みたいにさー明るくバカやってた方が楽しいって、絶対。
それにオマエ笑ってる顔の方が可愛いじゃん」
「ゆな……ほっといて」
「放っておけるかよ。オマエ自分がどんな顔してるかわかってんの?
オレには必至に助けを求めてるような…そんな顔に見えんだよ。」
「……」
「おい、だからさ…」
「触らないでよ!」

パンッ
肩にかけた手を振り払われる
ほんの一瞬の空白

自分の存在が全てが否定された
そんな気がした
誰もオマエに助けられたくなんかない
オレを睨み付けた目が、そう言っていた

コイツの心の中にオレの入り込む隙間はないんだ、と
オレは初めて気付いた

コイツはオレを愛してると思ってた
言わなくてもそういうもんだと
オレにだけは心を許してると思ってた
それはオレの自惚れだったのか?
それじゃオレってスゴイバカなやつみたいじゃん

はっと気付いたときにはもうミヤミチに手を挙げていた。

衝撃に崩れたミヤミチの怯えた目と、か細いうめき声と…
オレの手に残るジーンとした感触と。

呆然としているオレの横をフラフラと擦り抜けて、
着の身着のままで出ていったミヤの背中を見送ることもできず、
オレは1人でベッドに沈んだ

オレ、酔ってたんだ。
だからあんなことしちゃったんだよ。
しょうがなかったんだ…
ミヤ、悪気はなかったんだよ

そのまま寝てしまって、起きたらもう日は昇ってた
ミヤ、前「自分の部屋が嫌い」っていってたっけ。
静けさに押しつぶされそうでイヤだから、
自分の部屋が嫌いなんだってさ。
だからよくオレの家にいたわけなんだけど。
そのオレの家から出ていったなら、
次に行く先はきっと事務所であることは容易に想像できた。

もしかしたら、オレが迎えに来るのを待っているかもしれない
事務所には誰かしらいるだろうけど、1人で不安かもしれないな
あいつ殴られたことなんて生まれて初めてだったんだろうな…
悪いことしたな
そんな風に色々と考えつつ、オレは足早に事務所へと向かった。

格好悪ぃけど、殴ったことはちゃんとミヤに謝ろう、そして許してもらおう
そう意気込んで開けた事務所のドアの向こうでは、
そのミヤミチが珍しく樹なんかと談笑していた。
ちょっと意外な組み合わせで正直拍子抜けしたが、
思った通り事務所にいたことに、自分への自信が少しわいた。

「何で君はそうやってバカなことばっか言ってるわけ」
「バカってーー相変わらず酷いな、ミヤ君は…」

その様子にちょっと嫉妬なんかしつつ、元気そうなミヤの顔を見て安心した。
実はミヤもあんまり気にしてないのかもしれない
そんな風に前向きに考えて、オレは2人の方に歩み寄る。

「ミヤ」
オレの言葉に反応して、振り返る。
樹の影に隠れるように一歩後ろに下がるミヤミチ。
目に怯えと軽蔑の色を浮かべて。

言い様のないくらいのショックだった。
「ミヤ君どうしたの?」
樹が少し焦ったような顔でミヤミチを覗き込む。
「樹、どけ」
「えっ、あ、はい…」
「さぁ帰るんだ!」
「痛いってば!」

ミヤの細い手首を力一杯掴んで、
無理矢理事務所から連れ帰った。
何でだ、何でオレがこんなに親切にしてやってるのに
こいつはオレを拒む?
自分勝手な考えだなんてわかっていた。
でも手を伸ばせば届くこの男が
完璧に自分のものにならないもどかしさは、
耐え難かった。

自尊心を傷つけられたオレの独占欲は
もう押さえがきかなくなっていた

なぁミヤ、オレはオマエを自分のモノにしたいとか
オマエをいじめたいとかそういうんじゃなかったんだ。
好きだったんだよ。
でもオマエがオレを拒むから。
だから…無理矢理オレのモノにするしかなかった。
オレから逃げられなくするしかなかった。

だってオマエ、オレが目を離すと逃げようとするし…
オレはオマエがいなくなったらイヤだし
だからオマエをつなぎ止めておくために、
オレは…

オレがいないと何もできないくせに。
オレがいないと寂しいよなぁ?
オマエはオレが守ってやんなきゃダメなんだ。
なぁ、そうだよな、ミヤミチ?

つなぎ止める鎖が欲しくて、オレはミヤを無理矢理犯す
ミヤを殴る ミヤを縛り付ける
ミヤはそんなオレを軽蔑の眼差しで見る
その目が気にくわなくて、オレは更に殴る

続いていく
どうしようもない日々

なぁ、そんな顔しないでくれよ。
そんな目でオレを見るなよ

頼むから……
もう一回笑ってくれよ


×××


傷つくのが怖くて
相手を傷つけることで
自分の身を守る

オレは弱い

なぁ、オマエあの時泣いてた?
オレが殴った時、オマエ泣いてただろ?
殴った後、オレすっげー情けない顔してたっしょ
すげー後悔した、あの時
何で殴ってしまったんだろう

でももう戻れない
あの時の2人には戻れないんだよ

オレはあの頃を想い、
あの頃のミヤの笑顔を想い、
あの頃を取り戻すために、
また今夜もアイツを殴るのだろう




end



―――――――――――――――――――――――――


ユナミヤ好きな人、ごめんなさい
ていうかミヤ君ごめんなさい
私……文書けないんで、許して下さい
そんな私が何でユナミヤなんて大層なモノを書こうと
思ったかっていうと…いやー色々あってさ、色々。(何)
人間関係って難しいな、と思ったり。
でもそんな経験を文章にできる程、私には文章力がなかった。(死)

何だかんだで私は遊汝が好きなんですよね。
トークイベントとか、握手会とかそういう場所での遊汝を見ていると
「鬼畜だけど実はすっごい優しい人」に見えるんですよ。(笑)
それに実際遊汝は、メンバーに嫌われまくってるミヤを1人でかばってたわけだし、
凄いミヤミチのことが好きだったんだと思います。
でもミヤはそんな遊汝を裏切って逃げたわけで。
まぁ、そんなことを前提に書いてみました。
もう一生SSは書かないって決めたのにぃ!(ヤケ)

2000/9/23 nochi


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