相愛
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例えばね、
もしキリトにその両手足がなくても。
もしキリトのその顔が焼け爛れても。

俺は、キリトのことが好きだよ?



――そう言うと、キリトは一瞬呆気に取られたような顔をした。
すぐに持ち前のポーカーフェイスを取り戻して、馬鹿にしたように返してくる。

「何言ってんの?」
「ヒドイな〜キリトさんは」
唐突な言葉に、きっとびっくりしたのだろう。
まじまじと見詰めてくるキリトの視線が急に恥ずかしくなって、潤は冗談めかした口調で言い返す。
「だって、両手足なかったら化物じゃん」
「それがキリトなら、って話だよ」
「お前…変態だったのか?」
「…………」
どうも――というか、所詮、キリトの話術には敵わない。

反論は諦めて、ならどう返そうかと迷っている内に、キリトの口唇で呼吸をふさがれる。
感じ慣れた体温と、キスの仕種。
続けて体に触れてきた冷たい手に、少しだけ身を竦める。

――面倒な恋愛。
好きな時に会えない。
会える時だって、場所は限られる。
――リスクだらけの恋愛。
人に知られちゃいけない。
人に見られちゃいけない。
キスひとつ自由にはできない。
なのに、どうしてこんなにのめり込んでいるんだろう?

「…っキリ、ト…」
上がった息のままで呼ぶ。
返されるのは噛み付くようなキス。
「…痛いよ…」
鬱血するほどに強いやり方は、確かに痛い。
けれど、これは快楽。
体中に紅く残る痕をつけられて、そうして悦ぶ自分を否めない。
「…どこがいいの? この、“恋愛”?」
口唇を僅かに離した至近距離のままで、キリトが問うてくる。
本意の読み取れない、どこか狂気じみたような眼をして。
伝わる快感に溺れることを許さないような――そんな眼。
「…ん…っ…や、ぁ」
「何で? どうして、そんなにハマってるわけ?」
逃れようとして首を打ち振っても、キリトは容赦なく問い詰めてくる。
顎を捕らえられて、見つめ合わさせられた。
答えられないこちらの心を見透かしているかのように、彼は薄く笑う。
そして尚も、こう言うのだ。
「教えてよ」
「ぁ!」
口ではそんなことを言いながら、体にはきついくらいの快感を与えてくる。
こちらの弱いところを知り尽くした愛し方。
そんなふうにされたら答えられないのに――キリトだってそれは、よく知っているのに。

「…痛…っ! 何して…」
「ね…どうして?」
首筋に噛み付く狂暴な口唇から、背筋に響く甘い声。
キリトのこのギャップが好きだ。
…好き。
(ああ…)
もしかしたら、理由はそれだけ。
眼や鼻や口唇、それに輪郭や髪の色。体つきみたいな、外見的な部分。
それに、声も仕草も、その謎だらけの性格だって、
「全部…」
「全部?」
「…好き…だか…ら…」
――だから、こんなことまでするんじゃない?
ヒトの本来の目的を無視した、快楽だけのセックス。
それだって時折痛い思いをして、決して楽じゃないのに。
「好き…」
呟いて、自分から口付ける。
ようやく答えが見つかった気がした。


×××



「――潤」
疲れて、半ば眠りかけていたところに呼びかけられる。
裸のままの肩に毛布をかけてくれながら、キリトは口を開いた。
「お前がそんなに俺のこと好きならさ…」
「なに?」
そこで切れらた言葉に続きを促すと、こちらを向き直るキリト。
一瞬あってから、彼はにっこりと微笑んだ。

「…俺は、潤がキチガイになちまったら面倒見てやるよ」




<END>

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鬼畜キリトにぞっこんな潤(笑)。
初のキリ潤ですよ〜めでたい!タイトル決めにのち&雪緒、二人で悩みまくる・・・。
雪緒ちゃん曰くテーマは『「好き」が全てを支配する』だそうです。

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