元ネタ: http://www.thegia.com/features/f010831.html より無断引用

GIA:
どれだけの人がICOのプロジェクトに関わったの?
プロデューサーとか、ディレクターとか、コンポーザーとか、その当たりの主要メンバーは?
上田:
だいたい20人くらいだったやんかー、ピークで23人、今は18人。
プロデューサーは海道賢仁さん、
ディレクター、ゲームデザイナー、アートディレクターは上田文人やんかー。
GIA:
ソニー内部でのチームとしてはかなり新参だって聞いたんだけど。他になにか作ってるの?
上田:
これがこのチームで最初の仕事やんかー。このチーム、シロウトっぽさを持ってて、開発作業のなかでもそれを忘れなかったんがいい感じに働いたんですやんかー。
ICOが単なる「ゲーム」らしくないのはそのせいやと。たぶん。
GIA:
このゲームを開発する中での話を聞かせてくれない? 最初PSXのタイトルとしてスタートして、プロジェクト上でコンセプトや狙いが変わったりした?
上田:
デザイン段階とゲームコンセプトはほとんど変わってない。
こういうことはめっちゃ珍しいことやと思うんやけどね、もうリリースの段階でPSXからPS2への変更が入るっていうのは。
GIA:
ICOがE3 2000でデビューした時って、ほんとに初期の段階で現在のには似ても似つかないよね。なんであんな早い時期に発表しようと思ったわけ?
上田:
驚くかもしれんけど、メインのゲームデザインはE3 2000の時とほとんど変わってないねん。ただ、そのときヨルダのAIは不完全やってんかー。
だから、ゲームのプレイは少年ひとりだったんで、それでみんな違いを感じてるんやと思うんやんかー。
早いうちに出したのはより多くの人とメディアにタイトルを意識してもらうのをめざしてたからやんかー。
GIA:
ICOで一番印象的なのは、あの不気味な物言わぬ怪物から、光り輝くプリンセスから、邪悪なクイーンまで発してる、あのおとぎ話のような大気だね。
どうして単純に中世のスタイルをとらずに、あの夢のような世界にしようと思ったの?
上田:
それはめっちゃクリアな理由ですやんかー。このタイトルは、大人から子供までゲームを楽しめるように、広い世代に向けて送りたかったんやんか。
GIA:
あの物言わぬ影の怪物は、ゲーマーにとって、従来の敵にくらべて反発を感じるように思われるんだけど、どうして煙で作ったの?
上田:
敵のふるまい(あるいは、キャラクタ)についてやねんけど、
もし人間とかほかの生き物に似てたりしたら、それは見た目「多すぎるやろー」と思ったんやんか。
それに影・煙である理由はほかにもあって、どこからでも現れることができるし、簡単に消えることもできるやんかー。もし現実的な敵を考えるとしたら、出現と消去の手段も別に考えないとあかんやんかー。
もう一つの理由は、ディスプレイ上でイコ、ヨルダ、敵がひと目でわかるようにしたかったから。
GIA:
ICOのマップって、信じられないほど有機的にできてて、 あたかも一連の障害ではなく、実際の城としてそこにあるように感じられるけど、どうやって設計したの?
上田:
プレイヤーが画面上で目にする、実際に利用できるものを、とにかくたくさん出したかった。
ゲームの全体にわたって、プレイヤーが建築物の構造を感じられるようにするのが目標やってんかー。
まるで、ゲームを始める前に、プレイヤーがそこに行ったことがあるかのようにな。
他のゲームにあるような日和見主義いっぱいの環境にはしたくなかった。
GIA:
ICOの凄いセンスを感じるのは、普通の第三者視点アクションとは非常に異なる、そのユニークなカメラアングルだ。カメラはすべて、アクションの最良の視界となるだけでなく、 情景のなかで一番「芸術的」なアングルから撮るように組まれているように思う。
これってプロジェクトのスタートからの意識的な努力によるもの? あとカメラのスクリプトにどれだけの仕事を費やした?
上田:
このカメラシステムを選んだのは、プレイヤーが方向を見失わないようにやねん。
カメラが切り替わるエリアには見えない線がひいてあって、これが細部を決めるガイドラインの役割をしたりもした。
各キャラクターの存在感をかもしだしてるのはカメラに限らず、その動きとSEのコンビネーションやねん。どれだけの時間をつかったかいうのは難しい。終了までの間、ずっとカメラスクリプトの調節はそれこそ一日中続いてたから。
GIA:
ICOは、ステータスインジケータはないし、イコとヨルダのコミュニケーションにいたるまで、すべての面において、他のゲームより厳粛で、倹約的に見える。
なんでそんなにミニマリズムのスタイルをつきとおすの?
上田:
最近のゲームはときどき複雑すぎると思うことがあるんやんか。
ICOというゲームがプレイヤーに要求するのは、創造性と、考えることだけやねん。
また、マニュアルなしでプレイできるように、覚えなければいけないものは最低限度にした。
プレイヤーは、戦闘シーンやパズルシーンを解決する過程を楽しんでくれたらいいと思う。
GIA:
譜面のある音楽ではなく、自然の音を使うことにした理由は?
上田:
BGMを使うのは最小限にした。本当に効果的な場面だけ、音楽を使うことにしたんやんかー。これがICOの世界の、エッセンスをかもしだしてると思う。
GIA:
ヨルダやイコが使ってる言語はどうやって作ったの?なんか基にしてる言語はある?
上田:
特定の言語を基にしてるわけやない。少年の言葉は中国語っぽい、少女のことばはフランス語っぽい響きって言われるかもしれへんけど。
GIA:
滑らかなキャラクターのアニメーションはどのように?
上田:
すべてのアニメーションはわれわれのアニメーションスタッフが手作業で。モーションキャプチャーを使ったときには出せないダイナミックさが出せるんや。
GIA:
行われたデモでは、あなたがヨルダの手をひっぱりすぎた時に、彼女の突然のスタートやコントローラのフィードバックによって、ヨルダの脆弱さを強調していましたね。
他にこんなしぐさで素晴らしい点はありますか?
上田:
いい例はヨルダが襲われたと気づいたときやろなあ。彼女には一人で戦う力がないので、走って少年の後ろに隠れようとするねん。
GIA:
ヨルダはなぜ弱いの? 私たちは最初彼女が盲目なのかと思いました。しかし、彼女は階段を苦にしないし、風車の上を見たりできるようです。彼女が自力で逃げられないのはなぜですか?
上田:
プレイヤーが自分で突き止めるまで、これは置いときましょ。何が起こるか知りたかったら、ゲームを遊んでみてください。
GIA:
このゲームは遊び方の習得が非常に簡単にできている。これはICOがそれほどアクション志向でないゲーマーにも挑戦してもらえるように考えたから?
上田:
もちろん。日本のゲームプレイヤーは特に、プレイしやすさ、とっつきやすさのないゲームを嫌う傾向があるんやんか。だから、できるだけシンプルさを維持した。
GIA:
ICOを待ち受ける市場は厳しい。開発者として、多くの人に届くように、市場にどう取り扱ってほしい?
上田:
まず、残酷なゲームが多いなかで、ICOは本当の「ヒロイックファンタジーストーリー」だぞと。次に、純粋なコンピューターエンターテイメントとして。
GIA:
ICOは日本ではあまり話題になっていないようだけど、アメリカの出版会のリアクションは驚異的でした。この反応は驚いた? このゲームは国際的な顧客の心を狙って設計した?
上田:
はい、米国市場/メディアから受け取ったフィードバックには驚き、喜びました。すごいフィードバックうけて、いまめっちゃハッピー。
GIA:
ゲームのほとんどはこれまで明らかにされてないよね。イコ、ヨルダ、クイーンのほかに登場人物はいる? それとも初期バージョンで見られたような一人での行動もある?
上田:
ICOは基本的に、大きな大きな城の中に見捨てられた二人のキャラクターについてのお話です。
GIA:
ICOチームの今後の予定は? 次に作るゲームは何か決まった?
上田:
いまのところ本当にわかりません。だけど、また新しいゲームシステムのゲームを作るつもり。
もちろん、一場面一場面ごとに、動きやビジュアルのクオリティにこだわっていくつもりですやんか。

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