学校ももうすぐ春休みで恒例の行事、大掃除。
十二支の分担はクラブ別で、大抵人数が多いほど過酷な場所か仕事担当となる。
最も人数の多い野球部は、毎年全教室のワックスがけを命じられている。
1学年8クラス、3学年で24クラス、特別教室に教員関連の部屋。
占めて50部屋は下らない。
いくら大所帯とはいえ、大変な作業である。
そのクラスの人が全ての作業をやるべきだとか、
箒で掃くだけの部もあるのにとか
とにかく不満の多い決まり事であるが
その日は隅々まで掃除すれば終わった人から帰れるし(部活も休みだ)
私語なども黙認されるため、密かに楽しみにしている人も多い・・のだとか。
どっちにせよ、野球部の担当するワックスがけは
掃いて拭いた後の仕事なので早く帰ることはできないのだった。
「あとは・・この部屋と・・あ、次の部屋で最後かい?」
牛尾は部員が担当する部屋リストを見ながらチェックをつけていた。
他の部活の人はとっくに掃除を終わらせて帰ってしまったので
今は野球部の僅かな人数が残っているのみである。
「・・・ああ、もう一部屋だろう?」
「3A以外は・・他の部員に任せてる場所だし」
「しかし・・毎年の事とはいえ、結構重労働也」
「ふふっ、そうだね・・ホント。もう3部屋くらい掃除したから終わった気だったよ」
蛇神はモップの柄で腕を支えると、溜息を吐く。
「・・主が人好しに譲り代わったのだろうに」
「用事があるって言ってたじゃないか・・それに・・」
「何だ」
「蛇神くんと二人なの分かってたからちょっと楽しみだったんだ」
確かに、二人で会うのも久しぶりだ。
普段は部活動だし、休みもない。
当然か、肌を重ねたのも随分と前になる。
「それで引き受けたのか」
「・・・そうだけど、ダメだったかい?」
殆ど変わらない背なのに、上目遣いで見られている様な気になる。
牛尾が無意識かこういう風に言ってきて、蛇神は折れなかったことがない。
「・・い・・否」
蛇神の理性がどうにかなりそうになる。
その証拠にふっと牛尾に近寄って、彼の腰を引いていた。
体操服しか着てないその身体は、細かった。
「・・・!何してる・・のッ・・///」
牛尾の理性が働く。
誰か来るかもしれないのに。
終わったって、報告に来てない部員が捜しに来るかもしれないのに。
大体、掃除中で・・・・・教室なのに・・。
いつものように事前に問うことなく蛇神の口唇が触れた。
肩に顔を埋めるようにして、牛尾の首筋に舌を這わせる。
こうすれば牛尾が黙る事が分かっているから。
自分に湧いた身勝手な性欲を受け入れて欲しいなんて言えなかった。
「・・・ちょ・・・、や・・・ぁ・・・」
あっという間に力が抜けて、牛尾は蛇神に抑えつけられてしまった。
壁と蛇神に挟まれて、ガクガク震える足で何とか立っている状態。
「・・何・・・考えてる・・のっ?・・教室・・・だし・・・見られたら嫌だよ・・」
「・・・やはり、無理か?」
「あ・・当たりまえ・・ッ・・」
誰かに見られたら。
それは今の牛尾の思考回路を繋いでいる事。
いつもは安心してしまう蛇神の匂いにも負けていない。
恥ずかしいと思いつつ、そのせいで夢中になってしまう牛尾だが、
今日ばっかりは絶対にそうなるわけにはいかない。
いつも見ている無機質な教室。
人がいる学校。
そんなところで動けない自分。
・・・空間は突然狭まる。
「・・っ・・は・・、ぁ・・」
固い決意も空しく、蛇神には止める気もないらしい。
牛尾は深く口付けられ気が抜けかけている。
舌も弄ばれ、もはや自力では立っていられない。
少し前から蛇神に支えてもらっている。
いっそ座らせてくれれば楽なのに。
・・・・いや、そうじゃない。
教室でこんな事やってちゃマズイでしょう。
牛尾はしばらくキスと感情とで行ったり来たりしていた。
頭ではダメだと思いつつも、声も出なければ力も抜けている。
このまま流されるほかはない。
「・・・・・・牛尾キャプテ〜ン、何処ですか??」
声がする。
廊下に響くそれは、二人を引き戻した。
「御門、そこにいろ」
「・・・っぅ・・ん」
牛尾は廊下側の壁を背に、ズルズルとへたり込んだ。
一番の死角になる教室中央の柱と机の影。
中途半端に脱がされかけで
とてもではないが、人前に出て行ける格好ではない。
頬どころか、足も赤みを帯びて見えた。
「・・・じゃ、蛇神さん自分らも帰ります。
みんな言っておいて、って帰っちまったんで野球部は自分らで最後です」
「分かった、伝えておく」
教室の牛尾から、厚いとはいえない教室の壁越しに足音が遠ざかった。
体中から気が抜ける。
見つからなくてよかったと、必死に納得したかったらしい。
しかし、今見つからなくても首にある痕は消えるはずもない。
しかも制服は部室。・・首は体操服では隠れない。
「・・御門・・」
「・・・・っ、・・何・・で・・ヤダって・・言ったのに!」
牛尾は戻ってきた蛇神に怒った。
恥ずかしくて、頭も回らない。
とりあえず、言いたいことを言ってみる。
「謝る。止まらなかった」
「・・・・・」
蛇神は少しずつ牛尾に近づいてくる。
キョリも縮まる。
再び、空間も狭まる。
「否・・・止まらぬ」
「・・は?」
「続きがしたい」
「・・・な・・っ」
後ろは壁で、前は蛇神。
しかし牛尾ももう、理性より欲が勝ちそうになっている。
・・・何かされて耐える自信はない。
「御門を抱きたい」
言ったが早いか、牛尾が気がついたときにはもう蛇神に抱えられていた。
狭い、机と壁の隙間。
密着感が高くて余計にドキドキする。
「・・今日ばかりは・・声は余り出すな」
「・・・ぅ・・んぁ、あっ・・や・・」
いつもなら必死になって耐える声。
そんな声を出している自分は恥ずかしいと思うけれど止まらない。
「・・声が響く也」
蛇神の指が牛尾の口に触れる。
「・・っぅ・・う、んん!」
さっきから散々扱かれている牛尾のそれから、ドクンと迸る。
もう何をされても過剰反応してしまって、
もう理性なんか残ってなくて、
・・・蛇神が欲しいと思う。
「・・・れて・・よ・・、も・・我慢・・できな・・」
消えるような声で牛尾は初めて自分から言った。
どんなに限界でも恥ずかしさが先に来て言えなかった。
「御門・・」
少しだけ体勢を整えられ、すぐにゆっくりと貫かれる。
自分に余裕がなくても、蛇神は牛尾が顔をしかめる事の無い様、抱く。
「・・・ぅう、・・っあぁ・・!」
「・・っ・・」
・・実際は顔をしかめるどころの話ではないが。
「・・ぃ・・った・・、や・・痛い・・み、ことっ・・」
「少し、我慢してくれぬか」
背中ごと抱え込んで、牛尾が慣れるのを待つ。
恋人が愛しい。
恋人のことを愛している時、
その人を欲しいと思うことは恥じる事か。
ヒトは空間を埋める。
触ったり、会話したり、抱き合ったり。
方法は違えど、相手を独占する。
どんなに遠い距離でも
どんなに狭い隙間でも
そこは共有空間。
「・・御門、動いても良いか」
蛇神の体操服の裾を握りしめ、牛尾は先ほどから動かない。
眉間の皺を見るに、まだ痛みがきているのか。
とはいえ、蛇神も限界が近い。
前触れもなく抱いておいて、満足させられないというのも歯痒い。
「御門?」
「・・・・・・・・っは・・、いま・・でもどうか・・なりそうなんだよ」
喋る僅かな振動でも互いの皮膚が擦れ、刺激だった。
「・・・こんな、とこで・・さ?・・見られたらどうしようとか思わない・・の?」
「思わぬこともないが、御門が愛しい方が勝った。
我はまだ制御できぬらしい」
牛尾なりの了承の仕方だった。
蛇神は少しずつ腰を動かす。
反応する所を擦る様に、ゆっくりと動かす。
最後奥まで届くように打ち付けると、牛尾の背が反り小さく痙攣を起こした。
「っあ!・・ぁ・・・ん」
牛尾がイクと、蛇神も連れて行かれる。
それだけ強い締め付けにいつも耐えられないからだった。
「・・・・っ、出す・・ぞ」
「掃除、してくれるんだよね?」
そういえば掃除の途中で、まだ今いる部屋を含めて二部屋残っている。
蛇神はともかく、牛尾は動けない。
掃除は当然、蛇神がするしかない。
「・・我がする。今回は我が悪い也」
「悪いとまでは言わないけど・・止めてよ?公共の場は」
今回は見つからなかったからいいにしても
毎回見つからないなんて思えない。
手を出される前に釘を刺しておかないと。
一緒にいるのは好きだし、
彼に抱かれるのも嫌いではない。
凭れて、時間を一緒に過ごすのが好き。
でもそれを『何処でもいい』と勘違いはされたくない。
お互いが心地よくなくては。
「・・・相分かった」
それは共有空間。
言葉では言い表せない曖昧な
それでも確かに存在するモノ。
end
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ハイ、お粗末さまでした。
久しぶりすぎて、さっぱり筆が進みませんでした。
特に致してるトコ、恥ずかしくて書いてられませんでした(をぃ)。
しかも家族が問答無用で部屋の戸を開けるので、相海も必死ですし。
脳内の萌えを発散の予定が逆にモソモソと溜まる始末で、どうしたものか〜〜
しかし、ひっさしぶりの裏更新がこれでいいのか、
暫くまた自分なりのSSの勘を取り戻すべく頑張りたいと思います。。。
読んでくださった方、ありがとうございました!
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