アイ


「・・・おう辰羅川か・・・相変わらず勉強熱心なこったな」
合宿の夜、犬飼の見舞いにきていた辰羅川は羊谷に捕まった。
ふと目にした夏の大会への資料を見ていたため、不覚にも気付くのが遅れてしまった。

この監督に背中を見せるのはどういう意味でも危険すぎる。

「わ・・私は、犬飼くんのお見舞いに来ただけですので失礼します」
スッと身体の向きを変え、部屋を出ようとする。
「ほぅ?犬飼だけは可愛がるんだな、辰羅川」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて、煙草を吸う。
「なっ・・!そんなことは・・。その前にそんなことを言うのはどうかと思いますが」
「図星だろうが」
お構いなしに羊谷はズバズバと口を開く。
「・・・いくら監督とは仰っても、そういうお話は聞く気はありません」
「ほ〜。そんで?どうやってこの部屋を出るつもりだ?」
唯一の出入り口には監督がでんと構えている。後ろを振り返っても犬飼が寝ているだけだ。
「せっかくだから、遊んでくか?」
「は!?何ですって?」
煙草を缶に押し付けると、羊谷はズイと近づいて来た。

「お前も無防備だよなぁ、浴衣なんて」
がっしりと頭を掴まれて、強めに髪を引っ張られる。
「・・痛ッ・・何するんですかッ!!」
「あんまり騒ぐと犬飼が起きるぞ?俺は構わんがお前は嫌なんじゃないのかぁ?」
「・・・最低ですね・・」
なんとでも言えよ、といった表情でさらに空いている手で首をなぞる。
「嫌だよなぁ?でも抵抗してこないなんて、俺はラッキーだ」
くっくっと、喉を鳴らして笑うと口を近づける。
「煙草臭い・・」
「大人の魅力だろ?」
そのまま口をつけられ、すぐに離された。
「・・何をしてくれるんですか!」
「お〜お〜、怖いねぇ。そうやって騒いでると本当に犬飼が起きるぞ」
辰羅川はピタリと動きを止める。
「犬飼にバレるのがそんなに嫌か、虐めがいがありそうだ」
さらに羊谷は辰羅川の髪を引く。
「・・・いい加減にして下さい・・、何で監督に・・こんなこと・・」
「されなきゃなんないんだ、ってか?」
辰羅川の頬を軽く舐めてまた含み笑いをする。
「ひ・・ぁ」
「お前がそんなカッコで俺の前に来たからだ。そんだけだ」
信じられない、とでも言う風に辰羅川は目を見開く。
「ま、犬飼を起こしたくないんなら、せいぜい頑張って声を殺しとくんだな」
「・・ま、まさか本当に!?」
「心配すんな、ヤる時は抱えて移動してやるよ」
「・・そういう問題ではありません!」
何でこんな監督に好いようにされているんだと情けなくなってくる。

『頭脳派気取りで線の細いソフトキャッチャー』

この男に言われた、屈辱の言葉。なのにどうして・・・。
「お、静かになったじゃねーか」
羊谷が辰羅川のメガネを外し放り投げると、不安になった辰羅川はギュッと目をつぶった。
「・・・それは、肯定の合図と取ってやるか」
「・・結構です・・っ」
「ち、まだ折れねぇか。それなら言う事きかせるまでだがなぁ」
フッ、と笑い再び辰羅川の首に舌を這わせ、浴衣の肩に片手をかけた。
「・・は、ゃ・・っ」
「はっ、可愛い声出してんじゃねーか、全然説得力ねぇな」
そう言うと羊谷は露になった辰羅川の胸へと肩から手を移動させる。
「強気ないつもも、からかいがいがあるが、こっちもおもしろいな」
「・・・違・・っ、もうやめ・・て下さい」
いつもの辰羅川らしからぬ、弱々しい抵抗を見せる。
「誰が止めてやると思う?」


一方の犬飼は目を覚ましていた。
衣擦れの音で起こされたといった方が正しいのかもしれない。
起きた途端に耳に入ったものは羊谷の声と弱く抵抗する辰羅川の声。
さすがの犬飼にも何が起こっているのか見当は付いたが、
辰羅川が自分にバレるのは嫌だと散々頑なに拒否している手前、
目を開けるわけにも、起き上がるわけにもいかず、寝ているフリをしてるしかない。
(とりあえず・・どうすんだよ・・)
いつもは自分に好きだと言って包んでくれる辰羅川が、今は羊谷のされるがまま。
普段なら、辰羅川は自分のものなのに。
(ち・・辰を取り戻しに起きたら羊谷のクソヤローに何を言われるか・・)
二人とは反対の方向にゴロンと寝返りをうつと、うっすらと目をあけた。
(そんで辰にも・・嫌われるかもしんねー・・・)
ギュッと目を瞑って、嫌な事は考えたくないと思う。
(いつも・・いつもだったら辰が・・俺にシてくれるのに
 ・・何だって・・あんな奴に・・ヤられてんだよ・・)
すぐ横で羊谷の手はさらに辰羅川を辱めていて
だんだん辰羅川の声が甘く、大きくなってくる。
「い・・っやぁ・・」
「ちょっと反応しだすのが遅せぇな・・・ま、それも可愛いけどな。くっくっく」
羊谷はチラリと犬飼の方を見て、ニヤリと笑う。
犬飼は背中に妙な視線を感じた。
(言いたい放題言いやがって・・どーせ俺が起きてるのも気付いてるんだ・・・
 ・・でも・・辰のこんな声・・初めて聞いた・・)


ガリッと辰羅川は羊谷の腕に爪を立てている。
よほど力が入っているのか羊谷の腕には深く跡がついていた。
「・・ったく、さっきから痛てぇんだよ、何が不服だ?」
羊谷は辰羅川の手を剥がすと、胸の突起に乱暴に吸い付く。
「ぁ・・やっ、あぁ!」
ずっと引っ張ったままの辰羅川の髪をさらに強く引く。
「・・痛ッ・・、そ・・そっちこそいい加減、髪・・放して・・」
「・・いいぜ、・・でもな」
辰羅川を押し倒し上からの視線を注ぎ、
浴衣の帯を取ると、両手を頭の上で纏め上げる。
キツく縛りあげられて辰羅川の手は全く動かせなくなってしまう。
「これならもう爪立てられねぇだろ。ついでに逃げれもしないな」
「・・・・・犬飼くんは・・・起きて・・いないでしょうね?」
「こんな時にも犬飼か?全く保護者だな、お前は・・・。
 これで犬飼が起きてたら面白いのになぁ〜?」
「なっ・・嫌です!好きでもなんでもない貴方に好いようにされてるなんて・・、
 知られたくありません!!」
「はぁ〜?聞こえないな」
知っていてはぐらかすと、羊谷は辰羅川自身に触れ、弄びだした。


(オ・・オイオイ、やっぱりこんなトコで寝てなんていられねぇよ)
辰羅川の喘ぎ声が気になって、正直眠ったフリも辛い。
(で・・でも起き・・られないよな)
羊谷に翻弄され、辰羅川は自身から雫をこぼしている。
「いっ・・いやぁ・・、止め・・て、下さ・・」
(起きるフリしてみるか・・?)
その時、羊谷はとんでもない一言を発した。
「おい犬飼、起きろ。・・といっても起きてるよなぁ?」
辰羅川の表情が固まると同時に、犬飼もビクついた。
「監督命令だ、従えよ〜?」
「なっ・・何が・・監督・・命令・・・ひゃぁ・・」
羊谷は辰羅川自身を強めに扱いて口を間接的に塞ぐ。
(ど、どうする・・・)
「犬飼、辰羅川がイイ顔してるぞ?」
(そんな辰は見たくない・・俺の前では優しくて・・不敵で・・・けどっ)
犬飼の目に涙が滲んできた。
「・・・犬飼・・くん、み・・見ないでくださ・・・ッ・・やぁ、ぁあ・・・」
「お前は黙ってろ。ヤってないだけマシだろうが」
言葉とは反対にさらに強く扱くと、辰羅川はビクビクと震え始めた。
「もう・・・もう止めろ・・」
二人に背を向けたまま、犬飼が呟いた。
「何だァ?犬飼。お前泣いてんのか、くっくっ。辰羅川は大事だもんなぁ。
 俺に好いようにされてるのがそんなに悲しいのか」
辰羅川はカッと目を見開き、羊谷を睨む。
「・・犬飼くん・・に・・何かしたら・・タダじゃ・・すましませんよ!!」
「そんな赤い顔で睨まれても、凄みも何もないぞ、辰羅川〜?」
さらに辰羅川を弄び、犬飼をも挑発する。
「・・止めろって言ってんだぞ、辰は俺のもんだ・・・」
犬飼は背中を向けたまま起き上がり、ガタガタと肩を揺すっている。
「ほう・・じゃあ、辰羅川をこのまま放って、退室してやるよ」
「!?」
「温泉で月見酒だ」
そういうと羊谷は辰羅川から手を放し、自分の浴衣を整えさっさとどこかへ消えてしまった。

かなり乱された格好で、手も縛られたまま床に放り出されている辰羅川は、
恥ずかしくて、どうしていいのか分からない。
「・・・辰・・、大丈夫・・なのか・・」
相変わらず後ろを向いたまま、犬飼が話し掛ける。
「い・・犬飼くん・・」
耳まで真っ赤になって犬飼は続ける。
「俺は・・今、辰を助けた方がいいのか・・?それとも後ろは向かない方がいいのか・・・」
辰羅川はハッとして、少し身じろいだが、はだけた部分は元に戻らなかった。
「・・手が自由で・・なくて・・解いて下さると助かるのですが・・」
「はぁ?あのヒゲ、辰に何しやがったんだ・・」

辰羅川の要望通り、後ろを向かず犬飼は辰羅川の手を解いてやった。
手が解かれると、辰羅川は慌てて浴衣を元に戻した。
「あ、ありがとうございます・・犬飼くん」
「とりあえず・・辰が・・・無事じゃねぇーけど・・助かってよかった」
後ろから犬飼にもたれかかり、背中に顔を付ける。
「怒ってはいませんか・・私が監督に・・・されかけたこと」
羊谷が途中で放り出したため、辰羅川の身体はまだドクドクと震えている。
いつもなら犬飼としかしない・・ことを、監督に強制的にヤられた屈辱が頭をよぎる。
「辰が・・望んでやったんなら怒る・・。でも辰は望んでなかった。俺にも分かる」
「そう・・言っていただけると・・嬉しいです・・・・ん、や・・犬飼くん・・?」
犬飼は辰羅川のほうを向くと、勃ちあがっている辰羅川に触れていた。
「辰、今辛いんじゃないのか?
 ヒゲに触るだけ触られやがって・・いや・・違う。
 辰には・・いつもして貰ってる・・から今日くらい・・してやってもいいぞ」
返事を聞くより先に、少しずつ手を動かし始める。
「・・犬飼く・・、やめ・・、貴方がこんなことしなくても・・良いのですから」
犬飼から与えられる、決してこなれた観のない刺激にも、
今の辰羅川にとっては堪らない刺激らしく、無意識に腰が浮く。
「そんなこと無い・・・・辰・・カワイイ」
そのまま辰羅川を畳の上へと組み敷くと、そっと口に口ををつけた。

触れるだけの優しいキス。犬飼から積極的にしてきた初めてのキス。

辰羅川は目を大きく見開いたが、すぐ緩く微笑んだ。
「犬飼くんこそ・・今日は積極的なんですね。
 いつもとは違いますが、私も嬉しいです」
「・・恥ずかしいこと言ってっと・・怒んぞ」
キスをしている間、辰羅川に触れていた手が動きを止めていたせいで、
辰羅川は普通に喋る事ができた。
「こういうところが可愛くて仕方がないんですよね」
フフッと意味ありげに辰羅川は呟き、笑う。
「・・馬鹿やろ・・」
犬飼は軽くグーで辰羅川の頭をこつくと、
再び辰羅川自身に触れていた手を強く動かし始める。

「・・・あ・・愛してる・・・、辰・・」

いつも辰羅川が犬飼に囁く言葉。
でも今日は犬飼が、自分の身体の下に収まっている辰羅川に。
「っふ・・、あ・・、あぁッ・・!」
聞こえているのかいないのか、辰羅川はただ、その刺激に身を任せた。


「・・・チッ。入れやしねぇ」
月見酒と言い訳し、出て行ったはずの男はその部屋の入口襖越しにいた。
「・・しかしあの犬飼がねぇ。俺が煽ったとはいえ・・」
クックッと喉を鳴らすと顔を手で覆い隠し、静かに笑い出した。


end
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つーか・・何が書きたかったの、私。
最初はただ、羊辰エロを書きたかった(ハズ)なのに・・
エロくないし!!ヤってないし!!裏なのに!!!(そういう問題か)
やっぱり犬飼を起こしたのがまずかったか・・!?(当たり前)
辰犬が大前提の羊辰のち犬辰!!ていうか長(笑)!
辰受けにかなり萌えです。あわわ。
でも辰攻めも好きです(ハッキリしろよ)。

つ・・次は羊牛か、蛇牛で!牛受けが書きたいです!
ご拝読ありがとうございました。

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