WJ8号感想 |
今週から荒木飛呂彦先生の「スティール・ボール・ラン」が新連載です。 いやはや、ジャンプは何気に質の高い雑誌になったのではないでしょうか。 ワンピースやナルトでお子様の人気を掴み、ハンター・デスノート・アイシールドで漫画オタクを押さえる。 武装練金・ごっちゃんと質の高い中堅漫画が脇を固め、いちご100%が男子中学生の股間を刺激する。 テニス・ミスフルで正気を失った婦女子を攻め落とし、極めつけが全世界で愛読される神漫画『BLACK CAT』。 なんというハイレベルな少年誌でしょうか。 ☆☆☆スティール☆☆☆ 久しぶりに荒木先生の漫画を拝みましたが、いやあ、久しぶりだとホントすごいですね。 冒頭の砂男が馬に追われるシーンなんて、ただごとではないですよ。 馬上の者たちの表情、砂男の奇妙なポーズ、それでいて不思議な整合感。 漫画の中の1コマではなく、一枚絵として素晴らしい。 迫力があるわけでもないし、動きが伝わるわけでもない。 しかし、魅力的です。何故か凝視してしまう。目が離せない。 砂男の走る後姿も然り。ありえないですよ。これ。 荒木先生がカリスマなのも分かります。 とまあ、絵描きでもない僕が荒木先生の絵の魅力うんぬんを語るなんて、おこがましいことこの上ないですね。 冒頭の砂男が「白人の走り方で」走るシーン。 これ、良いですね。 「走り方」というのは、万国共通のものではなく実は文化依存のものである、ということを描いているわけです。 ちなみに、本邦においても例えば江戸時代の頃の人々の走り方は現在のそれとは全く異なっていました。 昔の人は、現代のように腕と足を互い違いに振って走る、という走り方は知らなかったのです。 現在、僕たちがこのような走り方ができるのは体育授業の賜物なのです。 白人とインディアンの文化相違なんて他の何でも描けそうなものですが、ここで「走り方」という素材を引き合いにだすのがまさに鬼才といえるでしょう。(鬼才は、言いかえれば「感性がズレてる」ですけど、常人とズレた感性を描き切るのは力量でしょう) 物語はジョジョのパラレルワールドという設定らしく、サンドマンもスタンドらしきものを使いましたし、DIOもアブドゥルも出てきたし、胸弾むお話になりそうで楽しみです。 ストーンオーシャンは、ちょっと向こうに行き過ぎたきらいがあり正直付いて行けませんでしたが、今回は期待しています。 ☆☆☆ワンピース☆☆☆ 先日のことですが、友人が女性差別についての論文を書いたのです。 彼の論旨によると、女性の労働賃金が低いのは確かに性差別であるのですが、それは社会が女性を「競争から除外」することによるものなのです。 しかして、「競争からの除外」は一方で生命の安全へも繋がります。 競争とは敗者を生み出し、肉体と精神を酷使するためです。 現に男性の病気・事故・自殺・他殺などの死亡率は女性の倍近くとなっています。 つまり、賃金格差など女性差別はれきとして存在してはいるが、それは反面では、社会概念が女性の生命を比較的安全なものにしている、という事実でもあるのです。(Matarica 2004) ナミ「いいじゃない。恥かくくらい!!」 ゾロ「生き恥をさらすくらいなら死ぬ方がいい」 ロビン「諦めなさい。男ってこういう生き物よ」 これらの台詞には、まさに現代社会の状況が投影されていますね。 まあ、それは置いといて、今週のワンピース。 これまでとは違って単純なバトル路線を脱却しようという試みは評価したいです。 しかし、前回の空島編もサバイバルという新機軸を打ち出したまでは良かったのですが、結局ルフィ対エネル戦が長すぎてウダウダになってしまいました。 今回の3戦目、戦闘において、前回の轍を踏みそうなのが恐ろしいです。 っていうか、踏むんだろうなあ。どうせ……。 ☆☆☆デスノート☆☆☆ 2ちゃんねらーなら誰でもすぐにそれと分かる「えるしつているか」。 警察捜査陣には誰も2ちゃんねらーがいなかったんでしょうね。 しかし、コンビニ店員はいい迷惑です。 正当防衛とは言え、人一人殺したら夢でうなされますでしょうに。 ☆☆☆ボーボボ☆☆☆ 新たなる敵キャラ、泡玉のルブバさんの作り出したバブルマンにボコボコにされた田楽マン。 同じZブロック隊長でありながら、この扱いの違いは何なのでしょう。 ☆☆☆銀魂☆☆☆ よくあるテコ入れは美少女やらエロシーンやらを投入してくるものですが、今週銀銃のテコ入れは新撰組。 世間のなんちゃって新撰組ブームに乗じるという選択肢には空知先生のギリギリのプライドが感じられます。 それにしても、昨今の新撰組ブームはNHK大河ドラマのヒットを前提にそれにあやかろうとしているようで、まったく浅墓でアホらしいですね。 ☆☆☆LIVE☆☆☆ 相変わらずDQN描写は高いレベルで安定しているのですが、ハレルヤ・BOY路線のためか、いまいち乗り切れないです。 でも、梅澤漫画は終了してからそのすごさに気づくことも多いので、油断は出来ません。 ☆☆☆ミスフル☆☆☆ すごくダメダメです。武軍の監督さん。 大局が見えない云々いうくらいなら、バッターの裏に投げるくらいやって、敬遠を貫徹してください。 会場の声援ごときに惑わされてどうするんですか。なに逆ギレしてるんですか。 そんなんじゃ、ただのタチの悪い無頼漢じゃないですか。軍人じゃないですよう。 って、ミスフルごときに真剣に書くのもバカらしいですね。やめましょう。大人気ない。 ☆☆☆武装練金☆☆☆ L.X.E.に何故ボラードが!? このコマは、爆爵さまも攻爵さまもムーンフェイスさまも素敵だなあ。 ↑双係柱(ボラード) 仲良し姉弟は超常変人同盟ではあまり格が高くない様子。 まあ、彼らの格があまり高いと、同じ高校生でありながらそれまでスカウトもしてもらえなかった攻爵さまの立場がないですしね。 変人バーガーのシーンを見てたらジャンクフードが食べたくなりました。 ☆☆☆黒猫☆☆☆ なんか今週は長ェなあ…と思ったら、なんと大増23ページ! それにしても、流石は矢吹先生ですね。 デスノートは今週同じく23ページですが、こちらはじっくり味わって読むため15分もの時間を要してしまいました。 それに引き換え、黒猫はどうでしょう! いつもより4ページも多いのに関わらず、わずか2、3分でぺぺいと読んでしまえるのです。 さらに二度三度と読み返したいなどとは間違っても思いません。 僕も、感想を書くのでなければ、決して読み返したりはしないでしょう。 矢吹先生は、忙しい社会人や貧しくてジャンプが買えず立ち読みですませるしかない人たちのことも思って、このように何度も読み返す価値のない一見すると内容の無い漫画を描いていらっしゃるのですね。 なんと言う深慮! 矢吹先生は偉大です。 で、今週の内容ですが、クリードさまが自分を殺そうとしているセフィリアに対し 「正してやらねばならんだろう。その愚かな思い上がりの精神は…!!」 とのたまっていらっしゃいます。 僕たち凡夫はややもすると 「お前が世界征服を企むほど思いあがってるわけじゃないけどな」 などというツッコミをしかねませんが、これは決してそのような意味では無いのです。 言うまでもありませんが、星の使徒という革命集団は非常に紳士的な集団です。 星の使徒一人一人の能力は強大で、その力を十全に使うならば他者を殺めることなど意のままです。 しかし、彼らは人を殺すことを良しとしません。 彼らは有り余る強大な力を、わざわざ無駄にエネルギーを浪費することでセーブしているのです。 クリードさまの妄想虎徹LV2など、LV1に比べ明らかに性能が劣っていますが、これはおそらくクリードさまにとっての逆刃刀のようなものなのでしょう。不殺の象徴なのです。今回の闘いでも、おそらくセフィリアは死にはしないでしょう。 また、星の使徒は戦闘員一兵に至るまで非常に紳士的です。 銃撃は標的にあたらないよう足元の床を狙い、対戦車バズーカでさえ暴発しても死者が出ない程度の火薬量に調節していました。 そう、星の使徒は無血革命、とは言わないまでも、できるだけ死亡者を出さないよう細心の注意を払っているのです。 ですから、クリードさまのいう「思いあがった精神」というのは、セフィリアが自分に危害を加えようとしている、そのことではないのです。 そうではなく、セフィリアが人間を殺めようとしている、そのことを「思いあがった精神」といっているのです。 神でもない、ただの人間が自分の都合だけで他者を殺めるなど思いあがった蛮行である。身のほどを知れ。人の命を気安く奪うほどお前は偉いのか。 クリードさまはそう仰りたいのです。 敵役ですら、これほどの博愛精神を持っているのです。 矢吹先生の描く世界は先生の慈愛に包まれていますね。 矢吹先生の優しいお人柄が作品を通じて伝わってくるようです。 (船上で掃除屋同盟が二人死んでしまったのは不慮の事故です) しかし、その一方で僕たちの直面する現実は実に厳しいものです。 博愛精神に満ちた星の使徒がある一方で、そのアンチテーゼとして存在するのが、クロノナンバーズです。 星の使徒の面々とは違い、クロノナンバーズの方々はより現実的で容赦無い集団です。 今週はそのクロノナンバーズの冷徹非道な場面も描かれており、シビアな現実を僕たちに突きつけてくるのです。 では、クロノナンバーズの容赦無い冷徹非道な側面はどこに描かれているのでしょうか。 うっかりしていると、「バルドル・クランツの猛攻」がそれであると、あなたは読み取ってしまうかもしれません。 どうでしょう?黒猫紳士代表の筒井さん。 筒井さん「最悪です。5点ですね。 確かに正論ですが、それは誰が見てもわかることですから、出題者としては「バカ」と言われたも同然です。」 そうです。 確かにバルドル・クランツの猛攻も、クロノナンバーズの冷酷非道を表す一面に間違いはありませんが、そのようなことは誰の目にも明らかです。 僕たちは、ここで更に一歩進んだ読解をし、矢吹先生の真意を探らねばなりません。 そう。答えは、シャオリーの次の台詞にあるのです。 シャオリー「”グリン”として闘いに巻きこんだ以上、それぐらいはしないとね」 お聞きになりましたでしょうか。 なんという、冷酷非常、目的のためには手段を選ばない、恐ろしいアイディアでしょうか。 今週のセフィリアの台詞で、掃除屋同盟はクロノナンバーズ上陸のためのオトリに過ぎないことが明らかとなりました。 つまり、シャオリーの用意した掃除屋同盟のテストゲーム「グリンの部屋」は、単なるゲーマーを集めるだけの意味しかなかったのです。 クロノナンバーズとしては掃除屋同盟など、所詮オトリに使うだけの者たち。 どうせ犠牲にするならば、掃除屋として価値の無いメンバーを集めた方が良い、と考えたのでしょう。 そこで作られたのが「グリンの部屋」です。 あれは実力ある掃除屋を集めるためのテストではないのです、実力の無いただのゲーマーを集めることを目的としたテストだったのです。 掃除屋同盟最大の戦力であるトレインが失敗しそうになったのが、その確たる証拠です。 そして、わざわざ星の使徒にボコボコにされるためだけに送りこんだ掃除屋同盟。 騙されたとも知らない彼らは不憫ですが、仕掛け人であるシャオリーのフォローは、今週のたったあれだけ。 10人いた掃除屋同盟の、わずか二人の脱出を助ける、たったそれだけなのです。 なんという冷酷非情な仕打ちでしょうか。 掃除屋同盟10人のうち、二人は船上で命を落とし、二人は死にかけの重態、一人は重度の凍傷、今週助かった二人もわけの分からないナノマシンをインプラントされていますから、彼らの体に今後どのような変調が起こるか知れたものではありません。 始めから勝ち目の無い戦いをけしかけ、その挙句、彼らにはほとんどフォローもないまま使い捨てる。 クリードさまの言う通り、クロノナンバーズとは「任務のためには手段を選ばない」集団なのです。 確かに星の使徒はみな紳士的です。 ですが、世の中、みながみな紳士というわけではありません。 星の使徒で理想的な世界を描きつつも、一方ではクロノナンバーズの描写により過酷な世の中の現実をも読者に突き付ける。 流石は矢吹先生です。 敵役を紳士的に描き、一方で味方勢をアンチヒーローに描く。 圧倒的オリジナリティは今週も健在です。 予想は裏切り、期待は裏切らない。 矢吹先生は偉大です。 矢吹先生は偉大です。 |
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