●『君主論』研究_第三章 |
『複合の君主政体について』 〔第三章では第一章にて示された「付け加えられた新興の政体」、すなわち「新しくゲットした領地」の治め方が書かれている(テキストによれば「まったく新しいもの」も含まれているようだが)〕 新しくゲットした領地は本来的な困難が生じる。 ⇒人民は事態がよりベターになることを望んで支配者を変えるが、しかし、領地の新たなる獲得には破壊行為が伴い、それによって住民に被害をもたらしてしまうから。結果、被害を与えた人民は敵に回り、導き入れてくれた者にも彼らが思うほどの満足を与えることはできないし、さりとて恩義があるので強硬的な手段も取れない。新しくゲットした領地での統治は最悪の状態からのスタートといえる。 上記のごとく新しい領地は最悪の状態からスタートすることになる。 マキャベリはこれを具体的事例に即して説明し、ルイ十二世の例を挙げる。 即ち、ルイ十二世はミラノを占領するも、ロドヴィーコ公に直ちに奪還された。 これはルイ十二世がミラノを占領したとき、「最悪の状態からのスタート」であったことによる困難さゆえである。 ・どうやれば最悪の状態から上手いこと統治できるか 新しく獲得した領地――習慣と制度が似ており、君主制が敷かれていた場合(※1) 言語・風習・制度などが違う場合(後述) ※1……基本的にはそれまで支配してた君主の血筋を絶やすだけでOK。ただし、法律や税制は変えてはいけない。 言語・風習・制度などが違う場合――君主が自ら新しい領地に移り住む 兵を送りこむ――殖民兵(○) 防衛軍(×) 近隣の弱小勢力を庇護する その地域の強大な勢力を弱める 強大な外国勢力の侵攻を警戒する 君主が自ら新しい領地へ移り住むのは、変事に対し早急な対処を取れるため。 送りこむ兵は防衛軍よりも殖民兵がベター。殖民兵は維持に金が掛からず、また被害を最小に押さえることができる。つまり、被害に遭うのは殖民兵に家屋と土地を奪われた民だけであり、彼らは奪われたことで貧しくなり、完全に無力化されるので復讐を恐れることもない。一方、防衛軍は維持に金が掛かり、また点々と場所を変えて野営するため新しい支配地の全域に被害が及ぶ。そして、全域から君主は恨みを買うことになる。そのため、マキャベリは防衛軍よりも殖民兵を推している。 近隣の弱小勢力を庇護する時は、彼らの勢力や権力があまり大きくならないよう気をつけねばならない。 マキャベリは「ローマ人はこのような規則を正しく守った」という。 ローマ人は以上のような原則を守るために実行力(戦争)を行使した。 回避できる戦争、先延ばしできる戦争でも、その後の政体保持まで考えるなら、戦争を起こした方がベターとのマキャベリの判断。 その後、ルイ十二世は再度ミラノを奪う。 このときは「招き入れた者への恩義」を顧慮しなくて良いため、強硬手段をもってより堅固な政体を作ったはずである。 しかし、にも関わらずルイ十二世は二度もミラノを奪われた。 これについてマキャベリはルイ十二世の判断ミスを以下のようにまとめている。 ・教皇に手を貸したことで、ルイに付いていた弱小勢力軍が離れていった ・教皇に手を貸したことで、教会権力が大きくなった ・ナポリ王国攻略のため、スペイン王と手を結び、ナポリを分割統治した。これにより、スペインという強大な外国勢力を招き入れてしまった ・自らはミラノに移り住まなかった ・殖民兵を派遣しなかった ・その地域において牽制となっていたヴェネツィア人から領土を奪った(パワーバランスを自分の不利な方向へ崩した) 「他者が強大になる原因を作ったものは自らを滅ぼす」 第三章のまとめ 新しくゲットした領地を治めるのは、代々続いてきた領地を治めるのよりも難しい。 新しく獲得した領地――習慣と制度が似ており、君主制が敷かれていた場合⇒A 言語・風習・制度などが違う場合⇒B A:それまで支配してた君主の血筋を絶やす。法律と税制は変えない。 B:言語・風習・制度などが違う場合――君主が自ら新しい領地に移り住む 兵を送りこむ――殖民兵(○) 防衛軍(×) 近隣の弱小勢力を庇護する その地域の強大な勢力を弱める 強大な外国勢力の侵攻を警戒する 「他者が強大になる原因を作ったものは自らを滅ぼす」の原則 |
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