●『君主論』研究_第四章





『アレクサンドロスに征服されたダレイオス公国で、アレクサンドロスの死後にも、その後継者たちに対して反乱が起きなかったのは、なぜか』
〔第四章では、新しくゲットした領地がそれまでも君主制だった場合、どのような状況であればそれからの統治が簡単で、逆にどのようであればそれからの統治が難しいかを示している〕

君主政体の形――ひとりの君主と他は全てが下僕(A)
           ひとりの君主と封建諸侯たち(B)

Aの場合は君主以外の支配者(行政区長官など)はあくまで役人に過ぎず、臣民は彼ら役人に特別な愛情を抱いているわけではない。役人たちは君主の恩顧によりその地位を得たわけであるから、あまり君主に刃向かう気はない。また、刃向かったところで自分の管轄の臣民が付いてきてくれるわけでもないので無力である。Aの君主政体と戦う場合は、内部から崩すことができないため総力戦となるが、いったん打ち破ることさえできれば、その君主の血筋さえ絶やせば臣民は他に頼るものがいなくなるので、それからの統治は簡単である。

Bの場合は諸侯は固有の領土と臣民を持っており、その土地の臣民はその土地の諸侯を主君と仰いでる。個々の諸侯に力があり、また不平分子や政変を望むものは常に存在するから、Bの君主政体と戦う場合は内部から崩すことが容易である。しかし、鎮圧後も新たな変革を起こそうとする有力諸侯が絶えないため、Aと比べ、統治は難しいものとなる。


第四章のまとめ

君主政体の形――ひとりの君主と他は全てが下僕(A)
           ひとりの君主と封建諸侯たち(B)

Aの君主政体は戦う時は手強いが、倒してしまえば簡単に統治できる。
Bの君主政体は倒すことは容易だが、その後の統治が難しい。

アレクサンドロスの王国が無事に統治し続けられたのは、統治した国(トルコ王国)がAのタイプだったからであり、アレクサンドロスの力量というよりは、むしろこのことに依存している。


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