●『君主論』研究_第一一章





『聖職者による君主政体について』
〔第一一章では「市民による君主政体」などに並ぶ、最後の政体として「聖職者による君主政体」が述べられている〕

・聖職者による君主政体は、力量や運命により獲得せねばならないが、これを保持するには力量も運命も必要としない。だって、宗教に根付いた権威だから。

マキャベリはアレクサンデル六世を例に出し、「財力と戦力とを備えた教皇がいかに強大か」と、教皇の強さを示し、しかし、それ以上の治世の方法については語ろうとしない。これ以降は、教会の世俗的権力が強大になっていく歴史を示すのみである。

アレクサンデル六世以前の教皇のウィークポイント
・封建貴族(オルシーニ家とコロンナ家)が教皇の近くで紛争を起こし、教会権力を弱体化させた
・在位期間が10年程度であり、両派(オルシーニ、コロンナ)を共に叩くことができなかった
・どちらか一方を弱体化させても、次の教皇がその勢力の擁護者であれば復活してしまった

アレクサンデル六世、ならびにそれ以降は
・オルシーニ、コロンナ両派を叩いた(※1)
・枢機卿職、司教職を売り、蓄財した

※1
第七章のボルジア(アレクサンデル六世の息子)が行った、オルシーニ、コロンナへの攻撃を参照
・軍備を持つオルシーニ家とコロンナ家を弱体化させるため、両家に与するローマ貴族を自分の側へ引き込み、過分な報酬で手なづけた
・コロンナ家、オルシーニ家の主だったものを離散、もしくは抹殺した


第一一章のまとめ

マキャベリは「聖職者による君主政体」、すなわち教皇が強大だということを示しながらも、教皇がどのように統治するかを語らない。「だって宗教だもん、適当にやってて大丈夫」ということか。また、それまではあまり強くなかった教会の力が、どのような過程で強くなったか、ということに関しても、単に「アレクサンデル六世が人並み外れてすごい教皇だった」という以上のことは何も言っていないに等しい。とにかく教皇は強い、それ以外別にいうことはない。第一一章はそういう章なのだろうか。


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