●真・女神転生3 -総評‐







非常に、非常に良く出来たゲームでした。
しかし、このゲームは女神転生というよりも、『真・ポケモン転生』だった気がしますが。


・ストーリー面

ストーリーは、更地に戻された東京を舞台に主人公が各々のイデオロギー主唱者を助け、または挫きながら、新しい東京―世界―を創世するというお話です。
従来の真シリーズは極めてマクロな世界観で同じく創世を行ってきました。
一方、デビルサマナーやペルソナでは、世界はずっとミクロになり、より現実生活に密接したストーリーとなりました。
前者はあまりに世界観が巨大すぎ、またストーリー的にもロウ・カオスどちらかの神を助けるという形を取っていたため、主人公は神々の尖兵というイメージが強かったです。
また広げすぎた世界観は、少々形而上学的に過ぎる趣もありました。
後者は、現実生活に近い内容であるため、非常に感情移入しやすいものの(if...が特にそうでした)、一方、真シリーズのような強いカタルシスを感じることはありませんでした。
真3は、東京という生活に密着した空間に限定した上で、その中での創世ですから、ちょうど両者の中間点、いいとこ取りであったと思います。
さらに前回までのように「ニュートラルが理想的なコース」という暗黙の諒解もないため、思い通りに振舞えるのが良いです。
現在自分が住んでいる街を自分の選んだイデオロギーの世界に再構築できるのですから、「悪の魔王から世界を救う」とか「さらわれた姫を助けに行く」とかよりも、心奮わせるお話だったと思います。

ただ、問題はそのイデオロギー(作中ではコトワリと呼ばれます)が少なすぎたことでしょうか。
まだ1周しかしていないので確認してはいませんが、おそらく最終的に選択できるイデオロギーは3種類
作中では、最大7種類のイデオロギーが存在する可能性を持っていたのですが、途中でバッタバッタと倒れていき、最終的には3種類しか残らなかったのです。
7種類もあれば選択の楽しみはぐっと増えるのですが、3種類では、自分の理想にあったイデオロギーが見つからない恐れもあります。
少なくとも一周目は、自分の思った通り好きなように世界を創世したいと思うのが人情でしょう。
そんなときに、気に入ったイデオロギーがないというのはゲームとして結構痛いところだと思います。

だいいち、どのイデオロギーもクセがありすぎます。
僕のような人間は「ヨスガマンセー!」でOKでしたが、ごく普通の感性の持ち主では、どのイデオロギーにも共感できないのではないでしょうか。
僕の選んだ「ヨスガ」は、選ばれた強者のみの世界、というジャイアニズムですし、「ムスビ」の世界は、他者との関わりを断った自分一人で完結する気合の入った引きこもり思想です。
「世界は機能的に時を刻むだけで良い」という静寂の世界を志向する「シジマ」は、主唱者があまりに悪役くさい顔をしているので、なかなか彼に与する気にはなれないでしょう。
やはり、フトミミさんや祐子先生、ヒジリさん、サカハギさんと共に創世を目指すストーリーも欲しいところです。

エンディングに関しては、とてもあっさりしたものです。
これは賛否両論あると思います。
僕も、「いくらなんでもあっさりしすぎ!」と思う反面、「でも、こんなものかなあ」とも思いました。
しかしトール戦、バアル戦、そしてエンディングで、ヨスガの美しい面はしっかりと強調され、「ああ、ヨスガを選んで間違い無かった」と思わせてくれたので、それだけでもOKです。
ホントに、フトミミさんとか虐殺してた頃はどうしようかと思いました。
でも終わり良ければ全て良しです。

ストーリー全体を見ると、物語に強く激しい流れはありません。
ゆっくりと創世の時に向けて時間が流れていく感じです。
FFのように驚天動地のイベントの連続、一刻も早く〜〜〜へ向かわなければ!という強烈な動機を喚起させてくれるものではありません。
それが人によっては退屈に感じるかもしれませんし、ストーリーが詰まらないと感じるかもしれません。
ですが、真3は「東京の創世」という世界観それ自体を楽しむものであり、その世界観の下では強烈な求心力を持つストーリー展開はそれほど必要ではない、と考えることも出来ます。
乱暴に言えば、ストーリーを楽しむよりも雰囲気にどっぷり漬かれ、ということでしょうか。


・ダンジョン

上で、「ストーリーに求心力はあまりない」と書きましたが、その補完としてダンジョンの存在があります。
真3は従来のシリーズ同様、冒険のメインステージはダンジョンの攻略です。
そして、ストーリーに然程の求心力が無い以上、ダンジョン攻略は「そこに山があるから、登る」的な扱いとなります。
ですが、そのダンジョンがストーリーの補完となりうるゆえんは、真3のダンジョンが従来のシリーズのそれと比べても遥かにパズル的であることです。
ダンジョンは、ただただ広大無辺な退屈なものではなく、必ず何かの「仕掛け」が用意されており、頭を使ってそれを解かなければ攻略できないものとなっています。
そのため、ストーリー上、それほどダンジョンの攻略に動機を感じることが出来なくても、「ダンジョンを攻略すること」それ自体を愉悦としてプレイできるのです。

しかし、これは反面、「なんで解く必要の感じられないダンジョンで、こんな頭使わされなきゃならんのだ」と思う人もいるでしょう。
仕方ありません。
そこは愛でカバーしてください。

それに関して言えば、ダンジョンのパズル要素はかなり簡単です。
もちろん最初は悩まされますが、少し考えれば必ず攻略できるし、なにより「ここはパズル的要素があるよ」とダンジョン自体が主張してくれているので非常に親切だと言えます。
これはおそらく、簡単に解けることで「ダンジョンを解ける楽しみ」を上記のような人たちに訴えたいのだと考えられます。

しかし、僕は正直、ダンジョンはもっと難解な方が面白いと思うのです。
女神シリーズで最もダンジョンの面白いゲームは「真・女神転生デビルサマナー」だと思うのですが、あれはダンジョンがシリーズで最も難解ではないかと思います。
真3と違い、「ここがパズル的要素である」ことすら教えてくれません。
普通に進んでいたら絶対出られないとか、手動マッピングをしないと攻略しようがないとか、「何か秘密がある」ことに気付くまでが大変なダンジョンなのです。
しかし、それが分かった時、攻略したときの楽しみは格別です。
真3は悩んでも2、3時間もあれば攻略できるので、デビルサマナーほどの喜びはありませんでした。
真3をやった中で今のところ最も難しかったのは「破魔の霊扇」を入手するところでしたが、それですら、デビルサマナーの難解さに比べれば赤子の手を捻るようなものです。
というわけで、個人的にはダンジョンの難解さはデビルサマナーあたりにして欲しかったなあ、と。
デビルサマナーもゲーム全体から見ればそんなに難解なものでもないでしょうが、僕はこのくらいでイイです(苦笑)

あと、ソウルハッカーズ、ペルソナ以降の流れとして、ダンジョンの形が綺麗でないです。
if...とかだと、完成したダンジョンは綺麗な長方形や正方形になったりして、オートマッピングを見ながらウットリできるのですが、真3も残念ながら美しいダンジョンではないです。残念。


・武器、アイテムに関して

この作品では武器がありません。
主人公は代わりにマガタマというアイテムからスキルを引き出しそれを使用するのです。
これは、武器や防具に関わる煩雑な購入・装備・売却といった手続きを省略し、ゲーム全体をスピーディーにしたことで評価できますが、その一方、ダンジョンにおける宝箱の価値が相対的に下がってしまいました
ダンジョンで手に入るアイテムは大体が店で普通に購入できるものばかりで、強力な武器・防具がないため、宝箱を開ける喜びが失われています。
4種類程の「なくならないアイテム」以外は、取らなくても構わないものばかりです。
もう少しこの点を工夫して欲しかったと思います。


・戦闘面に関して

従来のシリーズでは、真1、2、if...では主人公の複数回武器攻撃がとてもカッコ良かったです。
ただ、複数回武器攻撃はカッコイイ反面、攻撃魔法の有利性を相対的に下げていました
デビルサマナー、ソウルハッカーズにおいては、攻撃回数を減らすことで、相対的に魔法が「使えるもの」になりましたが、やはり単発攻撃ではエフェクトの派手さは損なわれてしまいました。
真3は複数回攻撃がないということで、エフェクト面の爽快さは期待できないと思っていましたが、そんなことはなかったです。
というか、そういう問題ではなかったです。

このゲームは、主人公も強いが、敵も強い
うかうかしていると、スグ死にます。
カッコ良さとか爽快さとか、そういう以前の問題で戦略性が非常に高いのです。
確かに攻撃自体はシンプルなものになりましたが、戦略性が高いため、エフェクト以外の面で巧くいったときの爽快さがあるのです。

また、このゲームはプレスターンバトルというシステムを新たに採用しています。
乱暴に説明すると、敵の弱点を突くと攻撃回数が増える、というものです。
相手にターンを回してしまうと、反対にこちらの弱点を突かれ、大ダメージを受けてしまいますので、基本は1ターンキル
つまり、自分のターンのときに、出来るだけ敵を全滅させる必要があるのです。
そのためには敵の弱点を突く必要があり、それはつまり、敵の弱点に対し魔法を使うことになるのです。
これにより、魔法は「相手にダメージを与える」だけのものでなく、「攻撃回数を増やす」ものともなり、より優位性が上がったのです。
雑魚戦であっても大技を連発せざるを得なくなり、ただ攻撃ボタンを連打しているだけ、という退屈な戦闘ではないのです。

また、ボス戦もむしろパズル要素が高く、何をどうやって倒すか、トライ&エラーで探すことになります。
そこはFFに近いものがありますが、FFの、たとえば神龍・オメガなどとは違い、倒す方法が一種類限定というわけではないので、それよりは自由度が高いと思います。


・仲魔について

今回は「仲魔が成長する」ことがウリです。
いままでは使い捨てであった仲魔を、成長させることによりいつまでも愛用することができます。
またソウルハッカーズと違い、仲魔のドーピング(御魂合体)も容易です。
継承魔法のカスタマイズ性も高く、狙い通りの悪魔が作れるようでいて、それでいて、なかなかそうもいかない辺りがとてももどかしくてイイ感じです。
スキルがかなり自由に選べるのに8個までしか付けれないというのも良いですね。

ところで、仲魔は変化して別のより強い悪魔になるのですが・・・
これが微妙です。
たとえば、僕の寵愛していた夜魔リリムは変化して夜魔リリスとなりました。
とても強くなったのですが、可愛さ・可憐さ・清純さがランダマイザな勢いで下がりました。
また、変化するとリリムに捧げていた御魂やお香のステータスアップが消えてしまい、とても悲しかったです。
他にも、女神スカアハが地母神スカディになったり、ピクシーがハイピクシーになったあとクイーンメイブになったりと、強さの代わりに可愛さが失われていくのが多く、そこは本当に残念です。
まあ、それは2周目にて何とでも出来るのですが・・・。

あと、悪魔のラインナップが微妙です。
種族として死神が無くなったのも痛いですし、魔王や邪神、大天使の顔ぶれもソウルハッカーズに比べると寂しいものです。
魔王ツィツィミトルや死神ゲーデ、大天使ライラ、鬼女リャナンシーなどは特に使いたい育てたいと思っていたので残念です。
特に魔王はもうちょっと心踊るキャラクターを入れて欲しかったです・・・。


・総評

全体としてみると、システム面・バランス面では稀に見る良作だったと思います。
確かに主人公は理不尽なまでにスグ死にますが、セーブポイントも多いことですし、こまめにセーブを取っていれば殺されても然程ストレスは感じないでしょう。(こまめにセーブを取るのが嫌いな人には耐えれないでしょうが)
ストーリーは、全体の雰囲気は素晴らしいもののグイグイと引きこまれるといったものではなく、自分から果敢にコミットしていかなければノリ切れないものかもしれません。
それが人によっては退屈と感じるかもしれませんし、また別の人によっては上品に感じるかもしれません。
仲魔のカスタマイズ、悪魔全書の完成など、やりこみ要素は多いです。
ストーリーは置いといて、最強の仲魔を作ることに精力を注ぐのも良いでしょう。
創世という世界観をためらわずに受け止められて、ドラマチックなストーリー展開にさほどこだわらない人なら、真3は素晴らしく良く出来た作品だと思います。
ちなみに、1周目のプレイ時間はゆっくりやって約90時間でした。


『真・女神転生III』は完全版の「真・女神転生IIIアニマクス」が発売されたので、今から買うなら後者が良いかもしれません。



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