●魔都、名古屋を征く





『名古屋、それはアメリカより来日したペリー提督の攻撃により、三千年前に廃墟となった死の都』(菊池秀行『魔界学園』より)

しかし、そんな名古屋も今ではすっかり復旧し、東京・大阪と並ぶ一大都市へと発展を遂げました。
今回はテニス劇場版のエキストラ参加のため岐阜へと赴く傍ら、ついでに名古屋にも観光に行ってきました。

10月20日 

夜行バスから降り立ち、名古屋へと着いたのが朝の6時。
とりあえず、駅構内をぶらついていると、早速、強烈なものが目に飛び込んできました。





「車内へ死体を持ちこむことを禁止します」

一体、名鉄で過去に何があったのでしょうか…。
想像もつきませんが、とにかくデインジャラスの一言です。
流石は魔都名古屋。

名古屋の恐ろしさを再認識した僕は、気を取り直して喫茶店へと入ります。
名古屋という都は喫茶店のモーニングが異常に発達していることで有名です。
コーヒーを頼むと「ゆで卵・トースト」が付いてくるのが基本。
中にはコーヒーを頼んだだけで「おにぎり・味噌汁・豆」などが付いてくる店などもあるそうです。
コーヒーにおにぎりって意味分かりません。流石は魔都名古屋です。

そんな中、僕が選んだ喫茶店は名古屋駅構内にあるベルヘラルド
さっそくコーヒー(399円)を頼みます。


(上図:コーヒー+ゆで卵x2+皿いっぱいの大量のパン)

これで399円。
その気になれば朝から一日分のカロリーを摂取できそうです。
流石は魔都名古屋です。


***

お腹いっぱいになった僕は、明治村へと観光に向かいました。
明治村は、明治時代の建物や資料を遺している広大な博物館で、僕のような時代劇好きにはたまらない観光地です。
なお、明治村は歴史の勉強になるためか、小学校の遠足にも頻繁に利用されています。
しかし、現代と過去を相対的に見比べるには、ある程度の経験が必要となるものです。
僕のようにハタチを超えた人間なら過去を振りかえり楽しむこともできますが、小学生の時分では視点は未来へとばかり行きがちです。きっと小学生の彼らには、明治村はそれほど魅力的な施設ではないのでしょう。
そして、明治村としてもそのことは十分に理解しているようで、なんとか子供たちの興味をひこうと様々な工夫を凝らしているようです。
その結果……



『ヒロブミを探せ!』

大量に並べられた偉人たちの顔の中から伊藤博文の顔がいくつあるか探そう、という謎の企画です。
何が悲しくて伊藤博文の顔を延々と探さなければならないのでしょうか。実にシュールです
果たして、こんなもので小学生が喜ぶと本気で思っていたのでしょうか。
現に、私の近くにいた小学生たちは見向きもしていませんでした。
極めて不可解ですが、流石は魔都名古屋です。

不可解といえばこれもまた不可解です。



これは「石川啄木の遺した歌は意外と食べ物関係が多くて啄木はグルメなんですよ」ということで子供たちの関心をひこうとしている企画です。
そのため、啄木の歌と、食べ物と、現代語解説がセットで並べられています。
しかし、上図の写真は不可解です。というのは……

『或る時のわれのこころを焼きたての麺麭に似たりと思ひけるかな』
(現代語解説:ぼくはそばが大好き。一度に十六杯も食べたことがあるよ

歌と現代語解説が何一つ合っていません
そもそも麺麭(パン)の歌なのに、なぜ蕎麦なのでしょうか
全く不可解で納得いきませんが、流石は魔都名古屋です。

ちょっとネタばかり探しすぎなので、明治村の他の(もう少しまともな)見所なども紹介しましょう。


(上図:当時の町医者。一つ一つは古臭いものの、全体の構成は今とさほど違っていない)



(上図:当時の赤十字看護婦の制服。スタイリッシュすぎて萌えない)



(上図:当時のレシピを元に作られたカレー。水っぽくて甘い。でも現代のカレーとあまり変わらない。ちょっと水っぽい普通のチキンカレー。そういえば当時はカエルとか使ってたはずなので、チキンカレーって時点で、実は全然当時のカレーじゃないことに食べた後気付いた。なんか悔しい)



(上図:帝国ホテルロビー。正直、明治時代の人間をナメてた。これはすごい。100年前に作られたものだけど今見ても十分ハイセンス。超美しい)


***

明治村を堪能した後は、名古屋でも最も混沌とした街、今池へと歩を進めます。
まずはユニー今池店の屋上を訪れます。
ここのゲーセンが今池では微妙に有名ならしいです。


(上図:噂のゲーセン)

吹きさらしです。
風がびゅうびゅう吹いてます。寒いです。
しかし、ゲーム自体は良いです。
1PLAY20円と安価な上にBGMも大きくしっかり聞こえます。
軽装だったのでメチャクチャ寒かったですが、吹きさらしであることを除けば確かに良いゲーセンかもしれません。
なお、屋内にはメダルゲームなどがありましたが、こちらもすごい。
こんな設定のぬるいメダルゲームは生まれて初めてです
いや、ぬるいというか、既にそういう次元の問題ではないかもしれません。
だって、メダルがなくなったら、辺りを見まわして落ちているメダルを拾ったり、たまにはお金自体拾ったりできるんです。ゲーセンの常識を超越していました。
でも、このゲーセンは遊ぶにはとても良い場所ですね。
こんなのが近くにある名古屋市民が羨ましいです。

また、スガキヤであんみつを食べました。


(上図:スガキヤのあんみつ。190円)

あんこにフルーツ、ソフトクリームまで乗っかって190円。
非常にリーズナブルです。名古屋市民が羨ましいなあ。
東京にもスガキヤあるけど、値段が全然違うんだよね。


***

その後、いちごメロンバーへと移動。
いちごメロンショーを見ました。
なんていうか、すごく居たたまれない雰囲気でとても良かったです。
さらに、何か良く分からないクジ(?)に当たったらしく、ポストカードをもらいました。


(上図:良く分からないクジが当たってゲットしたポストカード)

正直、もらっても扱いに困りますが、せっかくなので大事にしたいです。


***

その次はスーパー銭湯「スオミの湯」へ。
スオミの湯は今池では有名なハッテン場らしく、ハッテニストが実際にどのようなことをしているのか観察に行ったのですが、これといって目立つ行動はありませんでした。
何か、僕のような素人には分からない方法でコンタクトをなさっていたのかもしれません。
代わりに、明らかにカタギではない人たちがいたので、こっそり身内トークを拝聴しました。
ちょっと興味深かったです。


***

その後は大丸ラーメンへ。
深夜2時〜5時という凄まじい営業時間のこのお店。
メニューはラーメンしかないのに、カウンターにはソースやドレッシングが置かれています。
一体、これはどのようにして使うのでしょうか。
そんなことを考えているとラーメンがやってきました。


(上図:大丸ラーメン。凄まじいもやし)


噂には聞いていましたが、実際に現物を目の前にすると圧巻です。
丼いっぱいのラーメンの上に山のように盛られたもやし頭悪過ぎです。
何がしたいのか意味分かりませんが、流石は魔都名古屋です。

そして、さらに恐ろしいことに、このもやしには味が付いていません
スープにもやしを浸せば良いのですが、いかんせんラーメンの上にもやしがてんこ盛りですから、スープに辿りつくことなど出来ようはずもありません。
味のないもやしに辟易していると、隣の常連とおぼしきお兄さんが何の躊躇いもなくもやしの上からウスターソースをかけているではありませんか。
そうか、これはこうして食べるものなのか!
合点のいった僕はドレッシングをラーメンの上からかけて、もやしを食べます
感覚としては「ラーメンを食べる前に山盛りのもやしサラダを食べる」といった感じでしょうか。
このもやしが、また半パックくらいありやがるので、正直もやしを食べた時点で帰りたい気分に駆られます
でも、これでやっとスタートライン。ここまでして、やっとラーメンが食べれるのです。

で、問題のラーメンの味ですが、良いです。
賛否両論分かれるらしいですが、僕は好きな味です。
ラーメンを食べた後は、オヤジがうどんときしめんを茹でて丼に入れて差し出してくれます。
好きなだけラーメンに入れて食べろ、ということらしいです。
せっかくなので、ラーメンにうどんときしめんも入れて一緒にして食べます。
3種の麺がまじりあってムチャクチャな様相を呈しています。
ラーメンと呼んで良いのかどうかも分かりません。

しかし、ここまでしても不味くない。
最初にドレッシングを入れて、うどんときしめんまで加えて、なお不味くない。
これはすごいと思います。
昨今のラーメンはとかく味が繊細で、たとえば生卵を落とすだけで味が台無しになるものも多いです。
しかし、大丸ラーメンに至っては、ドレッシングをかけようが、ソースをかけようが、うどんを混ぜようが、きしめんを混ぜようが、スープに大差がないのです。
この頑強さはすごい。これぞまさにB級グルメです。

ちなみに、食後オヤジからハイチュウを貰いました。
山盛りのもやし+ラーメン1.5玉+うどん+きしめん+おまけのハイチュウ。
これで550円です。意味が分かりません。流石は魔都名古屋です。



(上図:宮本むなし。脱力感溢れる定食屋)

おまけ。宮本むなし
脱力感溢れるネーミング、脱力感溢れるマスコット。
しかして、その実態は名古屋一帯で見られるメジャーなチェーン系定食屋。
宮本むなしがメジャーなチェーン店という時点で、流石は魔都名古屋。


10月21日

3時間睡眠を取った後、半分寝ぼけながら岐阜へ移動。
本来の目的である「実写版テニスの王子様」のエキストラ参加のためです。
今回は守秘義務について何も言われなかったので、迷惑が掛からないであろう程度にレポートしたいと思います。

まず、みんなが気になっている点、「実写テニスは少林テニスなのか?」
この問いに対しては「おそらくNO」と答えるしかありません。
撮影の最中、スタッフからどうしても「まっとうな作品を作ろう」というオーラを感じてしまいました。すごく残念です。
例えば、リョーマがスマッシュを受けて倒れるシーンがあるのですが、これも、その場にぺたりと倒れこむだけです。

もし僕が監督ならば、スマッシュを受けるポイントで火薬をドカーン!
ワイヤーアクションでリョーマが吹っ飛ぶ。
発砲スチロールで作った壁を突き破る。
噴煙の中、血まみれで立ちあがるリョーマ…。

と、このように撮影したはずです。
それがなかったので、おそらく少林テニスにはならないと思います。
後はCGでのプラスアルファに期待するしかないですが、どうも「二人のサムライ」路線より、テニスミュージカル路線を狙っているように思われました。
ほとんどの役者はテニスミュージカルの人みたいだったし。
ただ、助監督の人が「手塚ゾーンはミスターマリックがテニスするようなもの」と説明していたので、一応そういう認識はあるみたいです。
だから、ミュージカルでブチャが飛んだくらいには、アレな内容の映画になると思われるのですが…。

それから内容的には青学vs氷帝がメインみたいです、おそらく。
プラスでオリジナルキャラ。というか、切原。


(上図:エキストラ用夕食。唐揚げカレーとゼリー)

出演者やスタッフにはこれにサラダが付きます。
でも基本的には同じものを食べます。
どうも現場は、時間はかなりもったいないものみたいで、昼休憩とかもすごく少ないです。
30分くらいかな?
僕が行った時は朝から晩まで13時間、昼食と夕食の時間を30分ずつ取っただけで後はぶっ通しで撮影でした。
役者は待機時間があるけど、スタッフはずっと気を張り詰めっぱなし。
こんなのが2ヶ月も3ヶ月も続くのかと思うと、映画スタッフだけは絶対やりたくないと思いました。


(写真:エキストラ衣装。氷帝の補欠)

おまけ。エキストラ衣装。
エキストラは主に3パターンの衣装を使い分けます。
氷帝の補欠ジャージ、青学の補欠ジャージ、私服で、氷帝・青学・一般人の3つの役をこなします。
青学側の応援席に行って青学ジャージに着替える、氷帝側の応援席に移って氷帝ジャージに着替える…といった具合です。


10月22日

名古屋3日目は霊峰マウンテンへの「登頂」を敢行。
そのため、現地案内人の北京ダックさん(+そのお友達)と合流します。
八甲田山も案内人を欠いた青森第五連隊は遭難しました。
やはり登山に案内人は必須でしょう。


(上図:霊峰マウンテン。暗雲立ち込め、まるでホーンテッドマンションのようだ)

案内人、北京ダックさんによれば「(3人いて)3つとも色物メニューを頼むのは無謀。1つは色物、1つは口直し用にまともな食べ物、最後の1つはかき氷にすべき」とのこと。
よって、僕たちは以下のメニューを選択。

色物:甘口抹茶小倉スパ
口直し:ヤングハラペーニョピラフ
かき氷:ココナッツミルク

腹も減っていたことだし、そこまで恐れるほどのものかと、正直この時は見くびっていました。


(上図:甘口抹茶小倉スパ。800円)

最初に甘口抹茶小倉スパが登場。
うむ、普通に食える。
緑色のパスタというのは食欲を損なうが、でも食べれる。
どっちかというと美味い。

……と、3口目まではそう思っていました。

しばらく食べたところで、激烈な気持ち悪さが襲ってきたのです。
甘い。甘すぎる。気持ち悪い。
あと、パスタが油べったりなのも気持ち悪い。
北京ダックさんいわく「甘口抹茶小倉スパは即効性のあるボディーブロー」らしいですが言い得て妙です。
重く、長いダメージが、すぐさま来ます。

その頃、口直し用のヤングハラペーニョピラフが登場。
これのおかげで大分助かりました。
でも、小倉スパを食べてる時は「このピラフ美味いなあ」なんて言ってたんですが、後で思い返してみるとピラフも大味で決して美味しくはありませんでした。
小倉スパを食べてる最中は「常識的な味=美味い」と味覚が錯覚を起こしてしまうようです。

後半はほとんど北京ダックさんが小倉スパを制圧し、最後にデザートのかき氷が登場です。


(上図:ココナッツミルクのかき氷。700円)

もう、アホかと。バカかと
3人で延々とかき氷を食べますが、チッとも減りません。
「もう満足だ。しばらくかき氷はいいや」というまで食べたのに、全体の1/5しか減ってません
名古屋はおかしいです。

完全にグロッキーな僕の目の前で、北京ダックさんは黙々とかき氷を食べ続け、最後に皿に残ったかき氷の解けた物をずずずーっと啜って完食。
ひ弱な東京人では名古屋のレディーには太刀打ちできません。

ちなみに北京ダックさんは岐阜の女の子。
岐阜大学農学部に在籍しているらしいです。
岐阜には昆虫博物館があり、そのため岐阜県民はみんな昆虫大好き
北京ダックさんも常日頃からしびれ薬を持ち歩き、スズメバチなどを見かけると即座に捕獲し標本コレクションに加えるそうです。
流石は魔都名古屋(と、その植民地の岐阜)です。
東京人の常識は通用しません。
ものすごいカルチャーショックです。


(上図:マウンテン駐車場奥に生えてるサボテン)

おまけ。
マウンテンの駐車場の様子。
サボテンピラフを頼むと、こちらのサボテンが利用されます。


***

予定ではこの後、巫女居酒屋「月天」へと行くことになっていましたが、しかし、マウンテンで負ったダメージは大きく、なかなかお腹が回復しません。
てか、歩いてるだけで気持ち悪くて吐きそうです。

「北京ダックさん、ちょっとまだ月天行くのは早いですよね?まだ食べれませんよね?」
「え?私は全然平気ですけど……」
「…………」

結局、月天行きました。
噂通り、巫女さんから「お客様は神様です」とのお言葉を頂きます。
どうせ適当に棒読みで言うんだろうな、とか思ってたんですが、意外と心がこもっててマジメに仕事してます。
ちょっと感動。


(上図:キュートな巫女さんも慣れた手つきでカクテルを作ります)

せっかくなので、名古屋名物の串カツ(味噌味)やひつまぶしを食べるも、マウンテンの後遺症のせいであまり食べれません。
一方の北京ダックさんは、もふもふと食べつづけてます。
この人は底無しか。リアル弥子さんか。



(上図:名古屋市大須にある謎のお好み焼き屋)

おまけ。
月天のある大須という街もかなりのカオスっぷりです。
上の店は商店街で発見したお好み焼き屋。


(上図:拡大図)

なぜかバニ−ガール。
異常に胴体の短いキリン。
何もかも意味が分かりません。
流石は魔都名古屋です。


***

というわけで、名古屋はとってもミステリアスな街でした。
みんなもマウンテンとか大丸ラーメンとか行った方がいいよ。
マウンテンは最低3人、できれば5人くらいで行くことをオススメします。
甘口抹茶小倉スパは5人で掛かれば楽勝だと思いますが、一人で太刀打ちできる代物ではありませんので要注意。
僕も、また機会があれば行きたいですね。


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