●ストリートファイターの思い出





 僕が小学生の頃、ゲーセンにストリートファイター2は現れました

 初めてやったのはブームになる少し前だったでしょうか。とりあえず最初に選んだキャラはガイルでした。理由はなんとなく。見た目がカッコ良かったからですかね。
 何せその頃は僕も小さな子供。兎にも角にも、まず技が出せませんでした。CPU相手に勝利することなど、夢のまた夢。当分の間の僕の目標は、ソニックブームを出すことでした。
 ソニックブームのコマンドはご存知の通り、←タメ→Pなんですけど、まずこの「タメ」というのが曲者でした。
タメってのは何秒ためればよい物なのか???今では1秒程度と分かってますが、当時はそんな知識はありません。技が出ないのはタメ時間が短かったからだろうか?と、4秒も5秒もためていたものです。
 
 そんな僕にもついにソニックブームが出るときが来たのです。いつも通り←にタメて、→と同時にP。すると接近していた相手を捕まえ、バックドロップをかましたのです!
おお!ついに出た!これがソニックブームか!!

 しかし、これはただの強P投げでした。ですが、当時の僕にはソニックブームが何なのかも分からなかったため、てっきりこの投げをソニックブームと勘違いしていたのです。
また、同じように垂直ジャンプ強Kをかなり長い間サマーソルトだとも思っていたのでした。

 そしてそれから当分の後、ついに本当にソニックブームが出るときが来たのです!
忘れもしない、対ブランカ戦。「ソニックブゥム!」の掛け声と共に、ガイルの手から黄色く回転する光が飛んでいったのです。いやあ、アレは感動しましたね。思わず、「で、でたぁ!」と叫んでしまいました。(そして後ろの小学生たちから「ガイ●だ。ガ●ジがゲームしてるぞ」なんていわれました)
 もちろん、そのソニックブームはブランカにガードされてそれっきりだったんですが、いや、コッチはもう試合に勝ったような勢いでしたね。本当は全然たいしたことはないんですが、当時の僕の感覚からすれば「あんなスゴイ技を出したんだ。ガードしてもすごくダメージを与えたに違いない」という感じです。この頃は体力ゲージなんて見る余裕ありませんでしたしね。もちろんその後ブランカには負けましたし、ソニックブームも出ることはなかったんですが、とても嬉しい気持ちで帰路についたのを憶えています。

 それから数ヵ月後。僕がたま〜にチマチマやってたスト2にブームの兆しが訪れ始め、親しい遊び友達などもスト2をしていたことが発覚します。当時、小学生だった僕の感覚からいえば、ゲーセンのゲームについて友達と共通の認識があるなんて想像も及ばないことでした。
「お前もスト2やったことあんの!?アレ、めっちゃ楽しいよね!」ってな感じです。そしてその友達とスト2談義。いわく、

友達「波動拳って絶対出ないよな〜」
「え、リュウとかケンとか使ってるの!すげーーー!!!」

 当時の感覚から言えば、出せる必殺技というのはボタン連打技か、極まれに出るタメ技だけでした。コマンド技しかないリュウやケン、ダルシムは僕の中では他のキャラとは別格、とてもじゃないが手の出せないキャラだったのです。

友達「下、右下、右、パンチだろー。その通りレバー入れてるのに、出ないんだよなー」

 その頃僕たちは、律儀にレバーを下→ニュートラルに戻す→右下→ニュートラルに戻す→右→パンチ、と入力していたのです。だって、説明書き読む限りはそうとしか思えませんからね。当然ながら、これでは技が出るハズもありません。

僕「波動拳出ないよなー。昇竜拳なんて、一生出せねえと思うぜー
友達「全くだよ。昇竜拳って一体どんな技なんだろーな。めちゃくちゃカッコイイんじゃないかな
僕「きっと出しただけで相手が大ダメージ食らうような技だと思うなー
友達「そうだよな。あんな難しいワザ出ないもんなぁ」

 と、いま考えれば信じられないような会話をしていたものです。その後、正しいレバー入力法が分かり、波動拳・竜巻旋風脚は比較的出るようになりましたが、昇竜拳だけはいつまでたっても高みの存在でした。が!そんな昇竜拳をついに友達が出したんです!

友達「なァ・・・。こないだ、オレ昇竜拳出したぜ」
僕「ええっ!!マ、マジかよー!!い、いったい、どんなワザだったんだ!!!!?」
友達「い、いや・・・。たぶん、見たら幻滅すると思う、ぜ。今度、ゲーセン行ったときやってやるよ」

 友達はそんなことを言っていましたが、僕には信じられませんでした。その頃の僕のイメージでは、昇竜拳は「巨大な龍が現れて、10秒くらい画面上を燃やし尽くす」というものです。きっと友達はもっとすごいものを想像していて、それで裏切られたんだろう、そんな風に思っていたものです。
 友達はゲーセンでわざわざ200円もかけて(最初の100円では昇竜拳が出なかった。もちろんCPUには殴られ放題)、昇竜拳を見せてくれました。僕は・・・我が目を疑いました。だってリュウが上の方に飛んでるだけなんです。
 波動拳は遠くの敵を攻撃できるスゴイ技です(この頃は波動拳が絶え間なく出せれば対戦では勝てました)。竜巻旋風脚はとにかく見た目が派手でカッコイイ!なのに、なのに・・・それらより遥かに難しい、昇竜拳がこんなもの・・・。僕は激しく幻滅しました。

 ですが、そこは子供。それでもまだ幻想を抱いていたのです。
「あんなに難しいコマンドで、あんなに当たりにくい技なんだ。きっと当たったら全体力奪うんだよ!
なんて思っていたものです。そのころファミ通などで「最強の技!昇竜拳!」なんて書いてあったものですから、てっきり「当たればすごいダメージ」だと思っていたんですね。
 何せその頃は、「昇竜拳を出せたらお赤飯」のレベルです。まさか、敵に当てるなんてそんな芸当できません。さらにその頃は「対空」という概念自体がなかったもので、飛んでくる敵に当てるものだなんて、想像だにしなかったのです。
 今考えれば、確かにスト2の昇竜拳は最強の技です。空中ガードが出来ないこのゲームで、飛んできた相手を確実に落とせる、というのはものすごいことです。また、この頃の昇竜拳は上昇中が無敵です。あらゆるジャンプ攻撃に勝つことができる、って今考えてもスゴすぎる技です。ヴァンパイアセイバーなんて「せめてシャドウブレイドに飛ぶまで無敵があればなァ」なんて言ってるレベルですよ。飛ぶまでどころか上昇中ずっと無敵なんて、洒落にならん技ですよ!
 しかし、悲しいかな。その頃の僕たちには「判定」という概念もなかったんですね。攻撃というものは、例えばパンチなら腕が相手に当たれば確実にダメージになると思っていたのです。腕と腕がぶつかった場合なんてこと考えもしなかったのです。そんなわけで、昇竜拳が最強である理由「無敵」「対空」「判定」が全て理解できなかった僕たちには、「昇竜拳はきっと威力がすごい」としか考えられなかったわけです。


 それから数年後。僕が中学生の頃、ついにスト2はSFCに移植され、こんな僕でも練習してとうとう昇竜拳が出せるようになりました。一生出せないと思っていた昇竜拳が出せるようになったのには少し感動を覚えたものです。
 その頃には流石に昇竜拳が無敵である理由もなんとなく分かってましたし、威力がたいしたことないのも分かってました。それでも相手の飛び込みに合わせて昇竜拳を出すと友達からは拍手が起こったものです。今では空中ガード対策でギリギリまで引きつけてから昇竜やら、相手の地上攻撃を読んでカウンター昇竜なんてのも基本ですが、昔はこういう平和な時代だったのです。

 その後の僕はバルログ使いになって、フライングバルセロナの対処法(昇竜やらバックジャンプKやら)が知られるまでは友達相手に猛威を振るったりと楽しく遊んでましたが、しかし、今考えても始めてソニックブームが出たとき、あの時が一番スト2が面白かった時期だったと懐かしく思ったりするのです。





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