●SS「獅子楽の真実」 |
※このSSはXYZさんのジャンプ感想にインスピされて書きました。 「おっ、大丸。お前、また買ってきたのか、月刊プロテニス!」 「おうよ! 今月も手塚さんが載ってるかもしれないからな!」 「ホント凄えよなあ、手塚さん。オレたちの尊敬する橘さんのチームにも勝ったっていうし」 「そうそう、それに無我も使えるらしいぜ、手塚さん」 「いまプロに一番近い中学生だって言われてるズラ!」 「あー、早く手塚さんに会いたいぜ! 全国大会が待ち遠しいタイ!」 「大阪に転校した千歳さんや、東京に転校した橘さんも元気かな。千歳さんや橘さんと手塚さんの試合が見れるなんて、ホント楽しみばい!」 「大丸はこないだから手塚さん手塚さんって、手塚さんのことばっか言ってるよなー」 「うん、でもオラも楽しみズラ。オラたちはきっと一回戦負けだろうけど、手塚さんや橘さんの試合が見れるってだけでも東京まで行く価値があるズラ」 「本当に楽しみばい。……ん、どうした大丸?」 「みんなこの記事見るばい。手塚さん、肘を壊したっとよ。心配ばい……」 「でも、この記事見る限りではリハビリが間に合えば大会には間に合いそうズラ。手塚さんを信じて待つズラ」 「それがそうもいかんタイ!」 「おあ! おめぇ千歳さんトコのミユキちゃんじゃなかとね!?」 「おお、懐かしいタイ! ミユキちゃん、千歳さんは元気にしちょるかぁー?」 「兄貴は壮健タイ! それよりみんな、ちょっと聞いて欲しいばい。あたしは手塚さんが手術を終えた後、手塚さんのリハビリをそれとなく手伝ってきたばい。でもダメばい。手塚さん、まだ怪我を恐れてよう肩が上がらんと」 「そ、それじゃあ……」 「今のままでは、おそらく……いや、確実に手塚さんは大会に間に合わんばい!」 「な、なんじゃと―――!!!!」 「おわ! 大丸、おまえ急に大きな声だすなと!」 「アホけぇー、これが慌てずにおられっかー! 手塚さんのテニスが見れんかもしれんと!」 「な、なあ、ミユキちゃん。オラたちで何か手伝えることはないズラか?」 「そ、そうタイ! オレら手塚さんのためなら何でもやるタイ! 何か手伝えることがあったら言って欲しいタイ!」 「うん、実は今日はみんなにお願いがあって来たんだ。たぶん、これをやれば手塚さんはイップスを克服できるタイ。でも、そのためにはみんなに泥をかぶってもらわないといけないばい」 「アホかぁー! 手塚さんのためなら泥でも何でもかぶるタイ! ここにいる獅子学レギュラーみんなが同じ気持ちタイ!」 「そうタイ!」 「そうズラ!」 「やるバイ!」 「みんなの気持ち、分かったよ……! じゃあ、みんな耳を貸して。ごにょごにょ……」 「うっ! そ、それは……! 確かに、この方法なら手塚さんは復活するが……!」 「でも、これをやったら、オレたち二度と手塚さんに顔向けできないズラ」 「やっぱり……ダメだよね、みんな。こんなこと出来ないよね」 「ご、ごめんよう、ミユキちゃん。オレにはこんなこと出来ないばい」 「オ、オラは……うう……」 「いや……やろう!」 「え!? 大丸! おまえ何言っとるか分かっとぉーか!? 二度と手塚さんに顔向けできないんだぞ!」 「そうズラ! 最悪、オレたちだけでやればいいズラ! 大丸は無理しなくてもいいズラ!」 「いや! おまえたちだけに泥をかぶせるわけにはいかないタイ! それにオレは獅子楽キャプテンばい! ミユキ! お前を人質に取るこの一番酷い役柄、オレが引き受けるばい!」 「だ、大丈夫かよ、大丸! おまえ、手塚さんに向かって暴言を吐かなきゃいけないんだぜ。それに、こんな小さな女の子にスマッシュをぶつけようとしなきゃいけないんだぞ!」 「そんな役だからこそオレがやらなきゃいけないタイ! オレは手塚さんのためなら何でもやるバイ! でも、これはオレのワガママばい! みんなに強制はできんと。オレと志を同じくする者だけ一緒にやってくれればいいバイ! そのことでオレは抜けた者を攻めたりはしないタイ! オレ一人でもやり遂げるタイ!」 「馬鹿野郎! 大丸、お前一人にこんなカッコ悪ィ真似させるかよ!」 「そうズラ! 水くせえこと言うんじゃねえズラ! オラたちは死ぬも生きるも一緒ズラ!」 「そうバイ!」 「やるタイ!」 「ありがとう、ありがとう、みんな! あ、お前はどうすると…。やっぱり無理かと……?」 「ご、ごめん。大丸。オレにはやっぱり無理たい。それにほら、オレ、こんな可愛いらしい髪形だし。ミユキちゃんが言うような悪役はとても無理ばい」 「お前! みんながこれほど言うとるのに、なんば言いよっとか! 髪型がどしたあ! みんながこれほど言うとるのに、それでもやらないズラか!」 「いいんだ殿馬」 「大丸……」 「責めてはいかんタイ。こんな汚れ役、やりたくなくて普通タイ」 「うう……ご、ごめんよ、大丸……不甲斐ないオレを許してくれ……」 「お前も、もう気にしなくていいタイ。その気持ちだけで十分タイ。じゃあ、参加してくれるみんな、明日9時に集合ばい。まずオレらのコートで練習して頂いとる手塚さんに、誠に遺憾ながら因縁をつけにいくタイ。もちろん手塚さんがリハビリに集中できるよう、可及的速やかにオレらは身を引くばい」 決行当日 「大丸、もう行くズラ! これ以上待ってたって絶対アイツは来ないズラ!」 「いや。あと、あと5分だけ待たせて欲しいばい!」 「大丸がそういうなら待つズラ。でも、待っても無駄だと思うズラ……あっ!」 「ほらみろ、殿馬! やっぱりアイツは来たばい! でも……あれ…………?」 「みんな、遅くなってごめんタイ! やっぱりオレもやるタイ! みんなにばかり泥はかぶせられないばい!」 「お、おう……それより、お前、どうしたと?その古臭い髪型……」 「それって、もしかしてリーゼントってやつ? それに髪まで染めて……」 「おう、これやってたら遅れたばい。ホラ、オレの髪型あんまりに可愛いタイ。手塚さんにバレたらいかん思うて、急いで髪染めてリーゼントにしてきたばい。少しは不良っぽく見よっとかね?」 「ハハ……お前、生活指導に怒られっとよ? 内申にも響くばい?」 「関係ないばい! 手塚さんに復活してもらいたい気持ちはオレも一緒タイ!」 「よし、みんなの気持ちは一緒ばい! ミユキが待っとると。急ぐばい!」 「おおーっ!」 手塚復活後 「良かったばい。手塚さん、復活タイ!」 「それにしても、手塚さんホントに強かったばい!」 「お、どうした。大丸なんで泣いとると?」 「……う、ううっ。いや、手塚さん、オレらのやっとること、全部分かっとったばい。『礼を言うぞ、お前ら』って言われて。嬉しかったばい。オレらの気持ち、手塚さんに伝わっとったばい!」 「そ、そういえば、畏れ多くて遠慮してたオラを……手塚さんは気さくに試合に誘ってくれたズラ!」 「手塚さんは人の心がよう分かる人ばい。一流のテニスプレイヤーは人の心を読むいうタイ。きっと、あのことタイ」 「……お、ミユキちゃん」 「ちょっとみんな聞いてよぉ〜。ウチらあんなに頑張ったのに、手塚さん一言の挨拶もなしに東京に帰りよったばい! ウチ悔しゅうて。あんな薄情な人とは思わんかったばい!」 「あははは、それは違うばい、ミユキ」 「なんばよっとか、大丸さん!」 「手塚さんはミユキとオレの関係も知っとったばい。ミユキがこれ以上オレの悪口言ったり仲悪い演技するのが、心の優しい手塚さんには辛かったばい。だから、あれからあえて一度も会わずに帰ったと。手塚さんは本当に思慮深い人ばい」 「そっかぁ……なんだ、ホッとしたよ。ありがとう大丸さん!」 「それにしてもミユキちゃん、テニス本当に巧くなってたズラ。誰かと秘密特訓でもしてたズラ?」 「えへへ、それはね……。いつも、ダ、ダーリンと二人で練習してたばい……てへっ」 「ダ、ダーリン!? みゆきちゃん、いつのまに彼氏作ったと!? それにテニスプレイヤーって……あっ……」 「あっ……」 「ね、大丸さん……」 「お、おう、ミユキ……」 <完> |
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