●「てゆーか、チョー好き」徹底解析!!
「てゆーか、チョー好き」、この曲に関しては多くの意見が交わされている。
その中でも代表的なものを列記してみる。
  • 曲はアイドルポップなのにボーカルが男
  • ボーカルラインが高く、歌声がすごく辛そう
  • 「てゆーか、チョー好き」なのに、作詞 邪悪、作曲 殺
  • ホイッスルの入り方が変
と、やはり突っ込みどころ満載のようだ。しかし、誰が何と言おうとこの曲の真髄は詞である!!

今回はアマチュアレベルを遥かに逸脱した、この詞を詳細に解説してみたい。
なお、この詞を書いたのは癌邪悪役のギタリスト、邪悪(しゃあ)
自分の名前を
邪悪と書いて「しゃあ」と読むあたりから並大抵の人間ではないと思っていたが、この詞はあまりに酷すぎる!!

それでは以下に「てゆーか、チョー好き」の全詞を掲載し、ひとつひとつ詳細に読解を試みようと思う。



「てゆーか、チョー好き」作詞 邪悪 作曲 殺


ねぇ 神様 愛しの彼と
この夜に映った星を見てたら
もう 手と手は離せないまま
この夜の終りに堕ちてゆけたらいいね(笑)

君のその夢にそっとおじゃまして
叶えましょうラメで書いた文字は消えない

Let's 来てね KISSよりも ずっとずっと素敵な夜に
二人はいるの ふわふわ眠る瞳の奥
パフェよりも KISSよりも ずっとずっと甘いことだけ
きっと言える 君の全てが大好きだから

神様が意地悪をした?
コバルトの匂いで夢が覚めたの
だけど 放課後のあの教室で
口づけて弾けたロリーフェイスが笑う

君のその胸にそっと飛び込んで 
泳ぎましょシルクみたくすべる こんなふう?

Get's 来てね KISSよりも ずっとずっと素敵な事は
二人で行くよ 冒険の旅 裸足の海!
パフェよりも KISSよりも ずっとずっと甘いことだけ
見つけてアゲル 君の全てが大好きだから

いつもより ちょっと 背伸びして 飛び出すわ
もしも今日の君が気まぐれでも 側にいればご機嫌だから

抱きしめて キュンとなって そっぽ向いたあの日の午後は
どこかへ行ったわ 君の嘘なら歓迎なの
ちゃんと見て こっち向いて T-shirtがそれで濡れたら
歌ってあげる シアワセ乗せた 真夏の雲

Let's 来てね KISSよりも ずっとずっと素敵な夜に
二人はいるの ふわふわ眠る瞳の奥
パフェよりも KISSよりも ずっとずっと甘いことだけ
きっと言える 君の全てが大好きだから


ざっと全てに目を通していただけただろうか。
もう僕は
コピー&ぺ−ストするだけで嫌になった。
だが、いまさら引き下がるわけにはいかない。男たるもの一度言い出したことはやり通さねばなるまい。
最後にもう一度確認しておこう。
これを書いたのは二十歳過ぎの男性である。

(一番Aメロ)
ねぇ 神様 愛しの彼と
この夜に映った星を見てたら
もう 手と手は離せないまま
この夜の終りに堕ちてゆけたらいいね(笑)


ああもう彼は何を考えているのであろうか……。
僕が考えるに、詞において最も重要なのは初めの一言と終わりの一言である。終わりの一言は曲に余韻を持たせ、初めの一言は聴く者の心をつかむからだ。しかし、・・・
「ねえ 神様」はないだろ!?
これは軽く考えられがちだが、とんでもない!神様に「ねえ」から話しかけるだなんて、そんな乙女チックでオセンチな想像は普通の成人男子には絶対不可能だ!

い、いったい彼のボキャブラリーは何で構成されているのか…?普段、どんな書物や映像から知識を得ているのか…?
どういう流れで「神様」なんて単語を冒頭から使う気になったのか!?凡人にはさっぱりと理解できない。

そして、Aメロラスト。・・・・
なんだ、(笑)って!
たぶん本人に聞いたら「メールなど文字によるコミュニケーションが発達した現代女子高生の心情を表すにはこれしかなかった」とか大真面目に言いそうでまことに恐ろしい。

(二番Bメロ)
君のその夢にそっとおじゃまして
叶えましょうラメで書いた文字は消えない


ここもかなり強烈なセンテンスである。やはり最大のポイントは「ラメで書いた文字は消えない」であろう。
実際に、女子高生などの間で、ラメで文字を書く行為が行われているのかどうか、僕は知らない。
けど、何にせよ
邪悪は決して女子高生ではない!だから一体なんでそんなことが想像できるんだ!?

(一番サビ)
Let's 来てね KISSよりも ずっとずっと素敵な夜に
二人はいるの ふわふわ眠る瞳の奥
パフェよりも KISSよりも ずっとずっと甘いことだけ
きっと言える 君の全てが大好きだから


サビはヤバイ。本気でヤバイ。何がヤバイかって、まず「Let’s 来てね」が文法的におかしい!!
説明するまでもないがLet’s〜は「〜しよう」と人を誘う let us の短縮形である。次に「来てね」が来るのは明らかに間違いだ!
これは当時からずっとずっと思っていたことだが、こんなことをいうと「お前はそんな小さなことを気にしているのか。ロックじゃあねえなあ」とか言われそうで、恐ろしくて口に出来なかったのだ。だが
やはりこれはおかしい!
次の「ふわふわ眠る瞳の奥」もキツイ。なぜ、眠るの形容詞が「ふわふわ」なのか!?
「眠る」の形容詞に「ふわふわ」を用いることで「雲の中でふわふわと眠る気持ちよさそうな夢の情景」を喚起させるからだ。
その意外性といい、実際の効力といい、ここで「ふわふわ」を用いることは大正解であり、それをナチュラルに使う邪悪の才能はやはり人並みならぬものだが、何にせよ嫌な能力だ。
「パフェよりも KISSよりも ずっとずっと甘いことだけ」この部分は、おそらく「パフェ」「KISS」といった肉感的な「甘さ」を否定することにより、極めて精神的な、プラトニックな「甘さ」を表現しているのであろう。誰しも経験あるだろう「恋に恋する」状態を描いたものと思われる。その甘い高揚体験の思い出は誰の胸をも打つことだろう。しかし、それを最も強く感じているであろうのが、これを書いた本人、つまり邪悪だと思えば、感慨もある意味ひときわである。

(二番Aメロ)
神様が意地悪をした?
コバルトの匂いで夢が覚めたの
だけど 放課後のあの教室で
口づけて弾けたロリーフェイスが笑う


1番で夢の中での物語であったものが、2番から現実の話となる。
その転機となるのが、「コバルトの匂いで夢が覚めたの」であるが、
なんでコバルトなんだよ!!
いや、そもそもコバルトってなんだ!?少なくとも僕にはすぐには思いつかない。というわけで広辞苑をひいてみた。
「コバルト・・・鉄に似た灰白色の金属。その酸化物は青色着色顔料に供する。」
なるほど、どうやら化粧品の一種と考えてよいようだ。しかし、これが意味するところは何だ!?
あまり深刻に考えたくないので、これは今後の課題としたいと思う…。
そして、「口づけて弾けたロリーフェイスが笑う」、これはこの歌詞のなかでも最もキツイと言われる3つのうちの一つである。
ロリーフェイス・・・ロリーフェイ・・・
ロリーフェイスゥ!!!?
だから一体なんなんだ、それは。みなも冷静に考えて欲しい、「ロリーフェイス」などという言葉を人は日常で果たして使うだろうか?いいや、使わない!あえて使うとすれば「ロリ顔」だろう。なんでそんな言葉を使うか。やはり彼の言語感覚は常人では計り知れないということか。
そしてここもさっぱり意味がわからない。まず、それまで明らかに主体は女性だったが、ここでは少々曖昧になる。おそらくここでも主体は女性なのだろうが、2行目と3行目の意味の乖離も分からない。たぶん、本気で考えれば何かの結論は出せるだろうがこれ以上考えたくはない!

(二番Bメロ)
君のその胸にそっと飛び込んで 
泳ぎましょシルクみたくすべる こんなふう?


やっと折り返し地点だ。もうやめたいが、自分に鞭打って続ける。

ここは比較的楽な部類に入る。「胸に飛び込む」「シルクみたくすべるというイマージュの流れに特異な資質を感じるが、まだ常識で把握できる範囲である。しかし、やはり「すべる」の直喩に「シルク」を使うあたりは特筆すべきことであろう。これが「バロック時代、有閑貴族婦人とのアバンチュールな午後がどうたらこうたら」という流れならともかく、いったい、どういう精神構造をしていればこれまでの流れからシルクというイマージュが生まれるのか。不思議だ。

(二番サビ)
Get's 来てね KISSよりも ずっとずっと素敵な事は
二人で行くよ 冒険の旅 裸足の海!
パフェよりも KISSよりも ずっとずっと甘いことだけ
見つけてアゲル 君の全てが大好きだから


まただ!また間違ってる!!「Get’s来てね」はおかしいって!!
まあ、それは置いといて、ここで恐ろしいタームは実は「裸足の海」である。
一般的にも良く使われるこのターム、何が恐ろしいのかと思うだろうが、そんな「基本的なタームも彼のボキャブラリーにはある」というのが恐ろしいのだ。これまで、あれだけ独特なボキャブラリーを見せてきた彼が、一転して、ここで
王道ともいえるボキャを使ってくるのである。それは彼の余裕でも慢心でもなく、明らかに奇襲である。僕は「うっわぁ〜、ここでコレを使ってくるのか〜」と、ガクーッっと大ダメージを受けたものだが、みなはどうだろうか?

(間奏後Bメロ)
いつもより ちょっと 背伸びして 飛び出すわ
もしも今日の君が気まぐれでも 側にいればご機嫌だから


これはすごい!単純に良い。
「もしも今日の君が気まぐれでも 側にいればご機嫌だから」
は乙女の心情を直截的にあらわす!
あまりにストレート!あまりにリズミカルに!
しかし、
邪悪は乙女じゃない!!なんで分かるんだ!?

(ラスサビ1)
抱きしめて キュンとなって そっぽ向いたあの日の午後は
どこかへ行ったわ 君の嘘なら歓迎なの
ちゃんと見て こっち向いて T-shirtがそれで濡れたら
歌ってあげる シアワセ乗せた 真夏の雲


ここがまさに天王山である!!
ここのセンテンスには「3つのキツイ部分」の2つが含まれる。ここの攻略が今回の最大のポイントとなるだろう。
その部分とは「君の嘘なら歓迎なの」「T-shirtがそれで濡れたら」である!
読んでるだけで鳥肌が立つ。恐ろしい!あまりに恐ろしいタームだ!その他にも「キュンとなって」「シアワセ乗せた 真夏の雲」などあまりにも凶悪なタームが並んでいる。さあ、どこから手をつければよいのか・・・

・・・・・・・・・
十数分考えてみたが、
もはやこれには手のつけようがないという結論に僕の中で落ち着いた。というより、もう考えたくない。もういやだ。
抱きしめた後「キュンとなる」とか、そっぽ向いたのが「あの日の午後」だとか、「君の嘘なら歓迎なの」という言葉回しやセンス、「T-shirt」が横文字とか、歌ってあげる→真夏の雲→シアワセ乗せてる、のイマージュの流れとか、ああ、もうダメです!



総評

いや、そもそも邪悪の詞をひとつひとつ詳細に検討するという行為自体が愚かなものであったということだろう。
僕たちは邪悪の詞の前には激流に飲み込まれる木片の如くただただ流されるしかないのだ。
彼の詞は巨大な感情の団塊とイマージュの強烈な流れである。
しかもその中にトリッキーなフェイントや、するどいカウンターを混ぜてくる。
通常の精神の持ち主がこんな強大な敵を相手にすることは到底不可能だ。
我々に許される唯一の姿勢はただその詞の激流の只中にわが身をおき、鈍磨してゆく精神と肉体の中にマゾヒスティックな恍惚を見出すのみである。
つまり、
何も考えずにただ曲を聴き、聞き取れる言葉の節々からのみ、イマージュを喚起させる、のが正しい聴き方ではないかと思われる。
邪悪の詞にはそれだけでも十分な毒素を含んでいる。
並みの精神でそれを詳細に解釈しようだとか、いっちょ詞の意味でも深く考えてみようか、とか思ってはいけない。
危険だ。


しかし、邪悪はこれほど素晴らしい作詞能力をもっているのだから、ギターなどさっさと捨て置き、作詞家を目指すべきだと思う。
ミルシアエリアーデは我ながら極めてアマチュアっぽいバンドだと思う(これは決して悪いことではないのだが)。
しかし、唯一、彼の作詞能力だけはプロ級だと思う。
むしろ職業作詞家でもこれほどの詞は書けないのではないか?
確かに邪悪に応用性や汎用性があるかは疑わしいが、この詞のように彼の得意な分野の場合、比類なき力を発揮するのではないか?
おもうに
秋元康なみのポテンシャルはあるのではなかろうか??
実際、「さよならロンリネス」並の破壊力をもったタームが「てゆーか、チョー好き」にはいくつも散見される。十分、それだけの能力はあるとおもうのだが・・・



最後に

今回、邪悪の詞を詳細に検討した結果、自分との能力差を如実に感じ、すこし気分がおちこんだ。
いや、僕は何も悪くない…。相手が悪かった。ただ、それだけだ…。それだけのはずだ・・・。





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