第二話 「新たな仲間」

「あ〜あ。見てらんないよ」
 不意に、後ろから声がする。
「誰だ!?」
「ふふんっ、ボクは・・・って、わあぁぁぁぁぁーー!!」
 ドスッ、ドタッ、バキッ、ヒューーーン・・・。

「な、何だ・・・?」
「さ、さぁ」
 確かに今、僕とリイナの後ろに立っている大木の辺りから声が聞こえたよう な気がしたんだけど・・・気のせいだったのか?
 しばしの沈黙の後、また後ろに人の気配がした。
 おいおい、こんな真昼間から、ユーレイの類か?

 「ハハハ、バカップル諸君。こんな森の奥で、何イチャついているのかな ?」
 その口調は、怒ってるようにも、うらやましがっているようにも聞こえた。
「何だと!」
 もしかしたら、王国の追手かもしれない。ここは用心しないと・・・。
「そうよ!!だ〜れがバカップルですってぇ〜!? 隠れてないで、出て 来なさい!!」
 リイナの奴、すっかり興奮しちゃってるよ・・・。
「いいよ」
 案外素直に出て来たその男は、年は僕達より1.2歳上で、少しちゃらちゃ らした服を身につけていた。顔立ちはなかなかよくて、髪は薄めの水色。随分 変わった奴だ。だが、先程木から落ちたせいか、全体的に土で汚れていた。

「よくも!バカップルって言ってくれたわね!」
 開口一番に怒鳴りつけるリイナ。同感だ。
「いーよねー、君達は幸せそうで。そんなに堂々とイチャイチャ出来ちゃ ってさぁーー。ボクとルーク・・・あ、ルークっていうのはね、ボクの フィアンセでね、今10歳のちょーーキュートな女の子なんだ。でさー −、そのルークがどうやら魔族に連れ去られちゃったみたいでさーー。 やっぱりかわいい子は大変だよね、誘拐とかさー。で、今ボクはルーク を取り返しに行く途中で、君達に会った。ボクをさしおいてイチャイチ ャしてる君達を見てたら、なんだか腹が立っちゃってさーー。ちょっと イジワルしようと思ったら、木から落ちちゃってね・・・参ったよ。ち なみに、ボクは、かの有名な森の神族の美しきプリンス、ミンティス・ トゥ・ペッパーさまさ。お前ら平民なんかと違って、偉いんだぞーー」

 それにしても、このミンティスとかいう王子はよくしゃべる。  おかげで、だいたいの事情はわかったけど。

よくしゃべるバカ王子

「フンッ!ってことは、あなたはそのルークとかいう女の子と会えない腹 いせに、私たちの邪魔をしたのね!?この、バカ王子!!」
リイナは、ものすごく頭に来ているみたいだ・・・。
「何だと!!誰がバカ王子だってぇ〜?ボクはれっきとした森の民の王子 なんだぞっ!!かの大国、ポルシェアの王女エルリアーム姫や、聖クレ イ王国のシアリール王子、サザーランドのエミュロス王子や、リーセイ ナ姫とかとも知り合いなんだぞ!!参ったか!!わかったら、ボクに謝 れ!!!!!」
「はぁ〜〜?」
僕とリイナは、同時に叫んでしまった。

 そう、こいつの言っている「聖クレイ王子シアリール」とは僕の事だし、「 サザーランドのリーセイナ姫」とは無論、リイナのことだ。
 だが、僕はこんなバカ王子は知らないし、恐らく初対面だ。きっとリイナもそ うなのだろうな・・・。
「ちょっとちょっと!!」
 リイナが反論し始めたが、僕は慌ててそれを制する。リイナは意外そうな顔 をしていた。
「まあまあ、リイナもバカ王子・・・じゃなくて、ミンティス王子も落ち 着いて。ミンティス王子、その、ルークさんの救出を僕達に手伝わせて ください」
「えっ!?」
 今度は、リイナもバカ王子も驚いていた。
「シアル!!どうして!?」
「フフンッ、やっとボクのすごさを理解したようだね。いいよ、同行を許 そうじゃないか。君達は、ボクの家来ということにしてやる。が、ボク のことは”ミント”と呼んでいいよ。どうだっ、心の広い王子だろ?  

「シアルのバカ!バカバカバカバカバカーー!!」
「わーかったから。ゴメンってば」
 早速旅立ちということで、テントや朝食に使った食器などを後片付けして 武器を装備していると、リイナが抗議してきた。ま、無理もないか。あんなバ カ王子の家来に、勝手になっちゃったんだもんな。

荷物の中身は?

「なんで、よりによってあんなバカ王子の家来なのよ!?もう、信じられな〜い!」
「そりゃあ・・・そうだけどさ。ほら、彼だって困っていただろ?ルーク って子が行方不明みたいでさ。”困っている人には救いの手を差し伸べ よ”っていうのが、クレイセントール王家のシルテ様以来の家訓だからね」
「ふーーん、そっ」
 僕の説得のかいもあってか、リイナも少しは納得してくれたみたいだ。
 さぁて、そろそろ日も高くなって来たし、そろそろ旅立ち、かな。

「さぁ、諸君。荷物もまとまったようだし、行こっか〜」
 バカ王子ーいや、ミントはいとも簡単に言ってくれたが、こっちはそれどこ ろではない。
 もともと、僕とリイナの荷物といったら、剣などの武具、野宿用のテント、 あとは食料と着替えが少々。これくらいなら、二人で分担すればー当然、男の 僕の方がたくさん持つけどー何てこと無いが・・・。このバカ王子の荷物の多 さといったら!!

「あの・・・ミント王子。なぜ、こんなに荷物が多いのでしょうか?」
 僕、思いきって尋ねてみる。
「知りたいか〜い?いいよ、開けてごらん♪」
 僕とリイナは、興味津々に袋を開けてみた。
「な、何これ〜!?」
 中から出て来たのは・・・化粧ポーチ(中には化粧道具たくさん)、豪華な アクセサリー類、きらびやかな服、折りたたみ式簡易ドレッサー、簡易ベット、 綺麗な模様の食器類などなど、男には縁のないものばかりだ。

・・・・

 僕とリイナは、しばらく唖然としていたが、
「このっ、バカ王子〜〜!!!!!」
 同時に叫んでいた。
 こんなバカ王子、見たことないや。

・第三話へ続く・

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