「もーー。ボクは決して ”バカ王子”なんかじゃあないんだからね!」
「はい、心得ています、ミント王子」
ふぅーー、これじゃあうっかりバカ王子とは言えないな・・・。
「ごめんないさい、ミント」
リイナも不満そうだが、謝っている。
うわぁ〜、あの気の強くて負けず嫌いのリイナが詫びてるよ・・・珍し〜。
その後、なんとかミント王子を説得して荷物を減らしてもらい(それでも、
みんなが思っているよりは多いと思う)、なんとか森を抜けられた頃には、も
う陽は傾いていた。
「ぜぇー、はー、ぜぇー、はー・・・。おーーい!シアル、ミントーー。主であるこのボクより先に行くなーーーーー!!!!」
「で、ですが・・・王子・・・」
「この!バ・・・あ、いえ、ミント。もう少し、体力をつけた方がいいのではなくて・・・?」
リイナは高ぶる感情を極力抑え、なるべく控えめに注意をする。
このバカ王子は、本当に体力というものが、ない。
1キロ歩いただけで息切れはするし、女のリイナ(もっとも、リイナの場合
は王女といっても踊りで鍛え上げているので、あまり比較対象にはならないが
・・・)よりも、いや、並の女性よりも劣っているだろう。
「う、うるさいなぁ、家来の分際で。第一、家来はそんな主を補佐する為にいるんだよね?ねぇ、シアル〜♪」
「は?」
僕がかなり面食らっていると、リイナが耳打ちをしてきた。
「つまり、あのバカ王子をおぶってって事でしょ?頑張れ、シアルー」
「げぇ〜〜〜」
ミントの方をゆっくり振り返ると、さっきの疲れはどこへやら、キラキラと
こちらを見ていた。
「じょ、冗談じゃないですよ、ミント王子。僕はこんなに荷物を持ってい
ますし、ミント王子の方が・・・・うっ」
僕がまだ話しているというのに、バカ王子ミントは構わずに背中の荷物の上
に乗っかってきた。お、重たい・・・。(泣)

僕が重いバカ王子をおぶりながらしばらく森の中を歩くと、すぐに辺りは暗
くなってきてしまった。適当な場所を見つけてテントを張り、野宿の準備をす
る事にした。
「はぁ〜、疲れた!!もうクタクタだよーー」
リイナは夕食の準備をしていて、僕はテントを張ったり薪を集めたりと働い
ているというのに、このバカ王子ときたら・・・。
何もしていないくせに、疲れたなんて百億年早いぞ!!
「リイナーー、夕食はまだぁー?シアルーー、早く火を起こしてよー」
「・・・・・・・・・」
リイナも無言だが、怒りは覚えているみたいだ。このバカ王子、どんなにわ
がままで好き勝手に育てられたんだか。
普通は、王子や王女といったら、わがままに思われるかもしれない。
けれど、僕やリイナみたいな大国の王族は、わがままよりもまずは礼儀や自
分の身を守る方法を教えられる。わがままなんて、いらないものは覚える暇が
ないんだ。
これでも僕も、小さい頃は結構苦労したもんだ。ま、昔話はまた今
度ということで。
「シアルー、お夕飯、出来たわよ〜☆」
「ホント!?ありが・・・」
「わぁ〜〜い♪夕飯だぁーーーーーーーーい!!!」
半刻後、リイナの嬉しそうな声がした。ミントの名を呼ばないのは、イジワ
ルで、かな。にしても、バカ王子。僕の返事よりも早くすっとんで行くなよ。
夕食はいつも通り、リイナの愛情たっぷりの手料理(もちろん、僕の好物の
コーンスープ付きだ!)だったが、ミントがほとんどたいらげてしまったため
に、出遅れた僕は少ししかありつけなかった。
「シアル・・・ごめんね。もっとたくさん作っておくべきだったね・・・
せっかく、王妃様風の味付けが上手くいったのにな」
「いや、リイナが謝ることないさ。母上風に味付けしてくれたのも、とて
も嬉しかったよ。ありがとう、リイナ」
「そんな・・・ありがとうだなんて・・・シアル・・・」
僕達がいい雰囲気(!)になっていると、すかさずバカ王子が出てくる。
「ね〜〜〜〜〜
え、シアルちゃ〜〜ん」
「ギクッ」
「んもう!!いいとこだったのにぃーーい!」
リイナの方も残念そうだったが、ミント王子の前ではイチャつかない約束だ
ったし。
早く、ルークちゃんを取り返さないとな。彼女のためにも、ミントの
ためにも、そして何より、僕達のためにも・・・・。