「シアルったら、寝坊なんかしてるぅ〜。悪い子〜♪」
…ん…な、何!?
妙に頭にくる声が聞こえた。これは…バカ王子。奴しかない。
「ほ〜らほらほら〜。起きないと、朝ごはん、み〜んな僕が食べちゃうんだからねぇ〜」
くっ。それだけは許せない!…仕方ない、起きるか。
「こらぁ〜!!僕の分もとっとけーー」
僕は急いで起き上がり、軽く身支度を整えた。
朝の日差し(正確には、バカ王子の言う通りに寝坊したので、もうすっかり
日は高いけど)が、すごく眩しい。そうか、昨夜は結局、眠ってしまったのか
…。やれやれ…。
バカ王子を追って、リイナが食事の準備をしている所へ辿り着くと、もうす
でに朝食は出来ていた。さすがリイナだ。この辺は、とても尊敬してしまう。
もし、男の僕の一人旅か、あるいはリイナ抜きのパーティだった場合は、きっ
ととっくに飢え死に決定だろう。
「もう。シアル、遅いじゃない。せっかくのスープも、冷めてきてるわ」
「ごめん、リイナ。じゃあ、いただこうっか」
僕の提案に、リイナは静かに、ミントは待ってましたと言った感じに肯定し
た。
「いっただきまーす!!」
…………やっぱり、リイナの料理はいつ食べても最高だ♪特にこのコーンス
ープは絶品なんだ。コーンスープマニア(自称)の僕が言うんだもの、たいし
たもんだよ。…あ、バカ王子もコーンスープ、おかわりしてる。
「お味はどう?二人とも」
「もう最高!!」
製作者(リイナ)の問いに、僕とバカ王子は同時に応える。
「でもぉ〜…」
「何?ミント王子?」
「ルークの料理の方が、数倍はおいしいよ!」
「…………」
ああ〜!!なんてバカなこと言うんだ、バカ王子は!!
例えそうだったとしても、普通は言わないだろ、そんな事。しかも、作った
本人の前で。デリカシーがないというか…。リイナ、怒らすと本当に恐いんだ
から〜。(←経験談)
「そう…」
「うん!!リイナも、ルークの料理、食べてみなよぉ〜。絶対、ハマるから、ね?」
「ん……」
あれ?珍しいな。リイナ、怒らないよ…。いつもの感じなら、ここでテーブ
ルごとひっくり返して、それからそれから…なのに。
「リイ…ナ?」
呼びかけてみても、返事はない。
ミントも、少しは悪かったと思ったのか、黙ってしまった。…嫌な雰囲気。
ここは、一応パーティリーダーとして、僕がとりもつべき、かな。
「まあまあ、二人共。朝食も済んだことだし、早くルークちゃん探しに行こうよ!」
とりあえず、無難な言葉をかけてみる。
「そ、そ〜だよねっ!!さぁ、家来達、行こうか!!!」
「そう…ね」
ミントはあせりながら、リイナは少しうつむき加減ながらも、応えてくれた
みたいだ。よかった。
「じゃあ、後片付けは僕がやるから、二人は休んでてね」
気つかうなぁ〜。
それから数時間後―
そろそろお昼ご飯の筈なんだけれども、不思議なことに、今日は全然獲物が取
れなかった。
いつもなら僕が適当な獲物を見つけて仕留め、それをリイナが調理する。主に
それで食料を賄っているんだけれど…今日は不調だった。
「腹減ったぁ〜!!もう動けないぃぃー。何か食べないと、死んじゃうぅ〜。シアル、僕を殺す気!?」
はぁ…………。
バカ王子が急かすおかげで、こっちも余計に追い詰められてしまう。
「シアル、もしかして腕鈍ったの?」
「なっ……」
もう、リイナまで(泣)
仕方がないので、とりあえずは適当な洞窟を見つけて休む事にした。
「もうダメェェ〜〜」
洞窟を見つけた途端、バカ王子は滑り込むようにして入っていった。
さっきまでの疲れはどこへやら、何か食料はないかと奥へ、奥へと入って行っ
た。この暗い中で、よくもまああんなに早く進めるな。
バカ王子を野放しにしておく訳にもいかないので、僕とリイナも急いで後に続
いた。
普通、天然の洞窟といえば、奥に進むにつれて闇に閉ざされていくものだ。
だが、ここの洞窟は僕達のそんな常識を、いとも簡単に破ってくれた。奥へ行
くにつれ…段々と明るくなっていってるんだ。
「これはまさか…」
一応、それ以上を口に出すのは控えたが、リイナも薄々感づいているのだろう。
…これが、ただの洞窟ではないことを。第一、天然の洞窟が奥へ行くにつれて明
るくなっていくなんて、考えがたい。これは、どう見ても人工物だ。それも、こ
んな所に居座るくらいだから、一般常識のある者が住んでいるとは考えがたい。
不安の色を濃くしながらも、おそるおそるミント王子が進んだ方向へ行く。
ミント王子の姿はもうすでに見えなくなっていたが、かすかに気配はあった。
「うわぁぁぁぁ〜ん!!シアルー、リイナー!!!!!」
「!!!!!」
今まで静かだった洞窟に、突如悲鳴が響き渡った。
ミント王子の声だ!
助けを求めているってことは…やっぱり、先の予感は正しかったらしいな。
僕とリイナは、声が聞こえた方向を頼りにして、早足で向かった。
本当は駆け足で向かいたい所なんだけど、足元に何があるかわからない。
でも、なるべく早くミント王子のいそうな場所へ向かった。…仮にも、一族の王子に何かあったら
ヤバイからな。いくらバカでも。
洞窟(この洞窟は、案外短かったみたいで、もう行き止まりだ)の最後の曲が
り角を越えると、今までで一番明るい場所へ出た。
そこで僕達が見たものとは…。

「くっ……」
「フンッ。どこぞのお役人様かと思えば、ただのガキではないか。ハハッ、生意気な…」
頭領らしき男が、油断をして笑い出す。つられて周りの男達もゲラゲラと下品
に笑う。
僕は、愛用の短剣を抜いて、構えた。
「おうっ、やるってのか!?」
「そうだ!!笑っていられるのも、今のうちさ!!!!!」
セリフの途中から、一気に間合いを詰める。
僕と頭領らしき男が対峙すると、奴はミント王子を仲間に渡して、自分も短剣
を抜いて身構えた。
短剣対短剣の戦い―勝敗は、腕のみがものを言う。お互いのプライドを賭けた、
真剣勝負だった。
いつのまにか、子分共も一歩引き下がって僕達の戦いを見守っていた。そして、隅にはリイナの姿も…。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!」
ものすごい咆哮とともに、相手はかかってきた。
力任せの攻撃だった。この巨体なら、正解と言える攻法だな。ならば僕は、そ
の隙をつくのみっ!!
「はぁ!!」
掛け声とともに、相手の空いた部分を狙って剣を出す。
「シアル!!!!!」
「おかしら!!!!!」
リイナと、向こうの子分共の悲鳴が上がった瞬間、僕と相手の剣はお互いの鼻
先で止まっていた。互角、か。
相手もそう思ったのか、動きが止まる。
「シアル!!シアル!!大丈夫だった!?」
「お、おかしらぁ〜」
リイナ、あちらの子分共が急いで駆け寄って来た。
戦い終えた二人は、同時に静かに短剣を下ろした。
「おあいこ、だな」
「そう、みたいだ…」
一同、安堵の息をつく。
「やるじゃないか、ガキのくせに」
「おじさんも、やるじゃん」
僕達はがっちりと、右手で握手をした。お互いを認めた証の握手だ。
