シークレットウェポン。



 ―――そういう事なら使おうか…この秘密兵器。


「なぁアリス」
「ん〜?」
「アリス」
「ん〜?」
「アリスっ!」
「なんや〜?」
「いい加減こっち向けって!!」

 ぎしっとベットのスプリングが鳴る。別にベットに一緒に寝ている訳ではない。(それだったらよかったのだが)俺がベットの上で、少し体を浮かせた…ただそれだけだ。
 愛しい恋人はこちらに背を向けて、ひたすら仕事のパートナー(無言で無機質でとっても我が儘)のノートパソコンに集中している。かちゃかちゃとキィを押す音と、空調と、俺の呟きだけが部屋に響く。とてもよくない傾向だ、コレは。

 せっかく俺がこのGWに、論文も学会も研究もない休みを迎えたと言うのに、謀ったように恋人が忙しくなるとはどういう事なんだ!?

「アリスっ」
「なんや五月蠅いなぁ〜!俺は仕事中やっ。ほっとき!」
「………そ…っ!!」
「はぁ〜…ええよなぁ…そっちは休みで…」
「ちょっ!!お前がちゃんと、仕事を終わらせていればこんな事にはなってないだろう!?自由業だからって遊んでばかりだからだぞ!?」
「…………………………とすると英子はぁ…ここでこう……」
「聞いてくれアリスっ!」
「……うぅん〜…アリバイが成り立たなくなってまう……」
「アリスぅ〜〜……」

 声がずるずると間延びするが、一向にアリスは振り向いてくれない。
 ああ…寂しい……。

「…………………」

 このまま無視されるのはとても不本意だ。時間の無駄だし。相手にされていないというのがなにより腹に立つ。
 がたっとベットから降りて、俺はつかつかとアリスの背後に立った。こうなったら意地でも振り向かせてやる。締め切りなど知った事か!アリスが悪いんだ!
 すっと、アリスが弱いうなじを指先で撫でる。びくっと肩が震えた。その反応によし!と心の中でガッツポーズ……しかし……。

「う〜……ってえと江利が……雅俊と……こうなってぇ…九時に…」

 全然効き目ナシ!!

(じゃあここはどうだ…っ)

 ざっくりとした胸元が大きく開いた服。後ろに立つと、綺麗な鎖骨が見える。ゆっくりと手を這わせ…―――なんだか痴漢の気分だ…―――首を撫でるが反応なし。

(おかしいなぁ…アリスは絶対ここ弱かった筈……)

 その手をアリスの唇に。味わうように指の腹で下唇を撫でる。ここまで来ると本当にセクハラだ。嫌がらせ以外の何ものでもない。唇を割って、口腔内に指を浸入させる。いい加減拒むかと思えば……。

「ひゃから(だから)……えぃ(えり)が…ころひゃれ(殺され)……」
「だぁ――――――!抵抗しろよ抵抗!!」

 両手を降参のポーズにして、思わず叫んだ。しかしアリスのつぶらな瞳はまだディスプレイに注がれている…。本気で嫉妬するぞ…ノートパソコンに…このバ○オめぇ……!!
 顎に手をやり、俺は本格的に考え込んだ。この甲斐性なしの恋人を、どうやって振り向かせるか。冗談何かじゃない。これは真剣勝負だ。ここで引いたら恋の駆け引きにも絶対負ける。

 すっとアリスの体を知り尽くした己の手を見た。しかしこの手でちょっかいを出しても、今のアリスが反応しないのは既に証明済みだ。ならばどうするか。

「………言葉しかあるまい……」

 ふっと腰を折り、瞬きもしないほどじっと画面を睨み付けるアリスに囁いた。少し掠れ声で。ゆっくりと名前を。

「―――ありす」

 びくっと肩が揺れる。隙を逃さず、そのままで呟くように言った…アイシテル。

「うひゃあぁっ!!」

 がった〜ん!とパソコンが机から飛び上がった。マウスを手にしたままで、アリスが立ち上がったからだ。顔を真っ赤にして、囁かれた左の耳朶を手で押さえながら目を潤ませている。

「な、何すんねん火村ぁ!!びっくりしたやんかぁ!!」
「wow!やった!!」
「何がや!?俺の仕事の邪魔して何がたのし…んっ……ぅ、火村っ!!」
「もう絶対にあっちに振り向かせないからな。アリス…覚悟しとけっ」
「うわっ!!ちょ…っ!?何盛ってんねん君は!?俺は明日締め切り…っんぅ……!!ん〜〜!!!」

 頬を染めたアリスがまた可愛らしくて、ちょっかい出して振り向いてもらえればいいと思っていた考えがふっとんだ。大体言葉に反応して俺の技に反応しないのも少し気に掛かる。感じるツボが変わったのかも知れない。これは大問題だ…探さないと。

「わ〜〜!!変なトコ触んな!!ちょっと火村っ!?」
「少し黙れって。せっかくの休みなんだし……」
「俺は休みちゃうねんてぇ!!」

 じたばたと悪あがきをするので、俺はにっこりと微笑んでやった…服を脱がしながら。その笑顔に、びくっとアリスが怯えたような顔をする。またそんな可愛い顔するから…こいつは。

「アリス?」
「な、なんやねん……」
「愛してる」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 これはしばらく使えそうだな…なんて真面目に思いながら、行為を再開。俺の気分が最高潮になったのは言うまでもない。アリスは泣いていたが。
 まあ……お後が宜しいようで。

「よくないっ!!」

 ちなみにこの兵器、恋人以外には使わないように。…え?どうしてかって?まあ色々問題があるからだ。先生の言う事は訊いておけ、間違いはない。


 ―――…たぶんな。





home


青海さんからのリクエスト☆「締め切り前、アリスに構ってもらえない助教授」でした!!気に入ってもらえたかなぁ…(びくびく)こんなん火村先生じゃないかも…とっぽいただの兄ちゃん……。(汗)まあ…笑って誤魔化せ。あはははは(遠い目)
では…(ダッシュ!!で逃げ)



01/5/4 真皓拝


Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!